TOKYO2020 3000m障害(1) | 鈴木 彰の ミドル・シニアランナーのためのランニングブログ

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@runnerのCEO、e-Athletesヘッドコーチの鈴木彰が、なるべくプライベートな部分は避けつつ、主に概ね40歳以上のミドル・シニア(中高年!)ランナー向けにランニング関係のあれこれを綴ってみようかなってとこです。

 

陸上競技は30日から―

その最初の種目は男子3000m障害予選です。

 

 3000m障害って?

 

 そもそも市民ランナーには馴染みの薄いトラック種目の中でも、とりわけ知られていない・よく分からない種目であるとも言えるでしょう。

 

 3000m走る間に、でっかいハードルを28回、水濠を7回飛び越えるというとんでもない競技です。ハードルはともかく、水濠ですよ、水濠!普通にビチョビチョになります。。。

 

 ヨーロッパで伝統的なスポーツとされるクロスカントリーをトラックに再現したのが起源とされています。ハードルは倒木、水濠は小川みたいなもので、森の中でそういうのを飛び越えながら走るって感じですね。

 

 国内では、高校から実施されていますが、古くから「穴種目」とされてきました。1500mや5000mでは厳しいけど、3000m障害なら県大会へ行けるかも?インターハイでも通用するかも?みたいな感覚です。選手層も薄いですし、走力が劣っている部分を障害超えでカバーすることも可能です。

 

 とはいえ、トップへ行くにはやはりきちんとした走力が必要です。この種目で一流になろうと思ったら、1500mのスピードから10000mのスタミナ、そして障害飛越の高い技術を必要とします。

  

 私事で恐縮ですが~30年に及ぶ私の指導歴において、全国大会規模の優勝者は3名出ていますが、そのうちの1名がこの種目です!一応、日本学生チャンピオンを出していて、実はけっこうこの種目の指導は得意です。ハードルの飛び方も教えられますよ。自分ではもう飛べませんが。。。

 

 ハードルを飛ぶ技術には、「飛び越える」のと「乗り越える」のとがあります。普通にハードル飛びするのが「飛び越える」。一方、ハードルに片足をかけて飛ぶのが「乗り越える」で、消耗が少なく、技術的にも簡単ですが、「飛び越える」選手よりどうしても遅れが生じます。

 

 穴狙いの高校生はほぼ100%乗り越えていますが、世界のトップになると飛び越える選手が増えます。ずっと乗り越えて、ラストスパートに入ると飛び越えに変える選手もいますね。

 

 水濠はどうしても乗り越えなければなりません。(昔、飛び越えた、とんでもないケニア選手もいましたが…)できるだけ遠くに・浅いところまで飛びたいところですが、その分消耗しますので、その加減が難しいところです。

 

 ハイスピードでボンボン飛んでいかなければならないので、接触や転倒も少なくありません。激しい競り合いになると、終盤はもう脚が上がらなくなってくることもあります。おそらくこの種目を専門にしていて、転倒経験のない選手はいないのではないでしょうか。五輪や世界陸上の決勝でも珍しいことではありません。

 

 伝統的にケニア勢の強さが際立ちますが、あの長い脚でスイスイとハードルを飛び越え、水濠を乗り越えていく…。その上で激熱なラストスパートを見せたりします。最後のハードルでけっ躓いて勝負が決まることもあるので、終わるまでハラハラドキドキですよ。

 

 

 一般に「3000mSC」と表記されますが、この「SC」は、「Steeple Chase」の略です。歴史的な意味がありますが、すごく長くなるので省略。(wikiに詳しく出ています。)

 日本では、「サンショー」で通っていますね。ちなみにご年配の陸上経験者の方は、この「SC」を「スクラッチ」の略だと思っている方が少なくありません。古くは「サンスク」とも言われていました。なにがスクラッチなのか、なぜそうなっていたのか、その経緯は未だに不明です。

 

 今回は、日本から3名の選手が出場します。

 なかでも、超新星!弱冠19歳にして日本記録保持者の三浦龍司選手への期待が高まります。

 

 

 3000m障害(2)に続く!

 

 

 【水濠】

 本番は窪みのところに水が入ります。手前の方から走ってきて、ポンと乗って、向こう側へ飛びます。遠くへ飛べば浅いところに着地できることになります。(いちばん深いところに落ちる高校生もいます…)

 この写真はレーンの外側に設置されている外濠ですが、新国立競技場は、レーンの内側に設置される内濠になっています。