週イチ合奏の際、周囲の仲間へ演奏について
アドバイスをする場面があるでしょう。
有益な情報のやり取りは
演奏や楽団活動に大いに役立ちます。
しかし、内容や声がけ方、タイミングによっては
逆効果になる場合があります。
すなわち、アドバイスを受けた方が
・不安になる
・恐怖を覚える
・混乱する
・人権を侵害されたと認識する
場合です。
(吹奏楽部が怖いって思われるの、この辺も絡んでくるよね・・・)
特にこれからの吹奏楽コンクールシーズンにおいて、
団内の雰囲気悪くなる原因も大概これです。
私のメンターコーチサービスでも、
楽団仲間からのアドバイスについて
どう受け止めたらいいか困っているという
セッションが多いです。
《関連記事》
たくさんのアドバイスを素直に受け取るには?〜音楽ライフメンターコーチご感想
いろいろ考察している中、
アレクサンダーテクニーク教師のバジル・クリッツァーさんが
似たような発信をなさっていました。
アマチュア楽団やアンサンブルの場でよく起きるのが、
— バジル・クリッツァー (@BasilKritzer) September 25, 2020
『頼んでもいないのにアドバイスやダメ出しを押し付けられ、傷付く・迷う・モヤモヤする・調子を崩す』
・
・
・
その「被害」に会う側は、相手がどれだけ悪気がなかろと、お世話になっているひとだろうと、
第一の論点が役に立たないアドバイスや有害なアドバイスをもらったときにどう自衛するか?
— バジル・クリッツァー (@BasilKritzer) September 25, 2020
第二の副次的な論点がアドバイスする側はアドバイスの結果に責任または関心くらいは持つべき
というものなのですが、『頼まれたか頼まれてないか』を気にするひともいるようで意外。https://t.co/EZhQinhj6p
なるほどです。
ユトレヒト音楽院では
プロフェッショナル・コミュニケーション
という必須クラスがあります。
ここではリハーサルに置ける
フィードバックの手順や目的などを実習を交えて学びます。
また、楽器や音楽を教える授業でも
実習で声がけの内容や手順、マインド、などを学び
査定の際にも厳しくチェックが入ります。
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これらの勉強と、私の経験を通して
お互いがハッピーになる合奏中アドバイスの与え方のアイディア
を以下の項目にのっとって書きますね。
アドバイスが生きるには
相手を尊重することが大前提です。
また、互いに人間として対等で平等であるかもポイント。
バジルさんも書いていましたが、
頼まれもしないアドバイス授受でよくある関係性は
・年長者が年下に
・先輩が後輩に
・男性が女性に
という、
人と人の対等性とは異なる原理の力学が働いて起こるパターン。
あの、定期演奏会前日に突然OBがやってきて
それまでの手順やリハを壊すパターンのヤツです
自分が相手より
年上でも
先輩でも
男性でも
役職等立場が上でも
相手を人間として尊重しているか
相手との間に対等で平等な関係を築けているか
をまずはよく観察しましょう。
たまに
「俺、フランクに話しかけるから大丈夫」
とおっしゃる方もいるのですが、
それは本質ではありません。
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演奏に関するアドバイスって誰の為なのでしょうか?
アドバイスによって望む変化の目的とは何でしょうか?
社会人楽団、あるいは吹奏楽部として活動するとき、
以下の2点が健康な目的だと考えます。
①合奏体として
楽譜にある音楽の意図を
舞台上で今できる最高の質で演奏するため。
②個人として
アドバイスを受ける相手が上達し、吹ける場所が増え、
音楽活動がより楽しくなるため
②は特に社会人楽団で大切にする点と考えます。
注目して欲しいのが
「自分の見栄のために他人にアドバイスしていないか?」
という観察点。
・自分のいる楽団が下手だと思われたくない
・自分のパートが下手だと思われたくない
・つまりは自分のレベルを低くみられたくない
が動機となって、相手にアドバイスしようとしていませんか?
この様な場合はどうしても上から目線になりがちです。
また、アドバイスの本質からは離れます。
そして、
悪気がない=効果のあるアドバイスではない
ことを事実として理解すると楽になると思います。
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ニコラス・コックス先生のマスタークラス。アドバイスの与え方も勉強になりました。
たとえ正しいアドバイスでも、
それを実践するか否かは
受けた側に選択する権利があります。
同じ箇所に対するアドバイスでも
人によってピン!とくる言い方や手法は違います。
誰に言われたか、によっても受け取り方が変わります。
時間が経ってから「なるほど!」と飲みこめることもあります。
「私のアドバイスを無視するなんて!」
なんて怒る必要はありません。
その楽団が作品の意図を演奏として具現化しようとする限り、
到着点はどの手法をとってもほぼ一緒です。
だって、そこに素晴らしい作品が存在しているのですから。
怒ってもしょうがありません。
チームとして同一作品に取り組んでいるわけですから
仲間を信じる方にパワーを使うことを私はオススメします。
もし「期待通りでなかった」場合も、
「期待」とは本人以外にとって都合のいい希望でしかないので
相手を攻める理由にはなりません。
攻めたところで、済んでしまった演奏は戻ってきません。
それよりも相手を励まし、
次回に向けて建設的な作戦や意見交換をした方が
社会人楽団としての目的にマッチするのではないでしょうか?
オーケストラでも吹奏楽でも
・指揮者
・コンサートマスター/ミストレス
・セクションリーダー
・パートリーダー
など、信頼すべき役割が置かれています。
こういった方々は全体を見て合奏中にアドバイスをします。
例えば、音量やタイミング関しては
指揮者が
・ホール等演奏会場の想定
・音楽的意図の実現
を元に指示を出しています。
なので、今座っている場所から
「もっと大きく吹いて」
「もって小さく演奏して」
とアドバイスを送るのは、
指揮者の仕事を邪魔していることになりかねません。
奏法のスムーズさのために
「息をもっと入れたらレガートつながるかもよ」
「圧力あげたらタンギングうまくいくかもよ」
とアドバイスするのはありだと思います。
どうしても、「ここをアドバイスしたい!」と考えたとき、
・その内容は全体バランスに関することなのか
・奏法に関することなのか
をまずは明確にしたらいいですね。
その上で、前述の担当者に一旦相談した方がいいのかを判断しましょう。
また、四方八方からアドバイスを受けても
当の本人が消化できず、混乱する場合がほとんどです。
心理的不安の中に陥入れば、状況はますます悪化します。
なので、アドバイスしたいことがあっても
他の誰かが既に行なっているのであれば
グッとこらえて状況を見守るのが有効です。
そして、
「何か困ってる?」
「やり方分からないことある?」
とフォローアップに回るのが
相手にとって救いになるでしょう。
オトナ「宿題やったの?」
コドモ「あ〜、今やろうと思ってたのに!やる気無くした!」
こんな経験ありませんか?
同様にアドバイスのタイミングも
よりハッピーになるものとそうでないものがあります。
■ハッピーなタイミング
合奏開始前
休憩中
練習後の食事会で
比較的時間に余裕がある時がいいですね!
■アンハッピーなタイミング
・合奏中のスキマすぎる隙間
・指揮者が話している最中
・誰かがアドバイスをした直後
・相手が思考している最中
・休みの小節を数えている最中
最後のはね、
本当にいるんですよ。。。
一生懸命数えているのにコソコソ話しかける人。。。
見失うじゃん!
受けたアドバイスを理解するには
一定の時間/期間が必要です。
1日あたりの脳の考えたり覚えたりする容量(Working Memory)も限りがあります。
さらに情報過多や時間のなさで脳が混乱すると理解度は下がります。
ですので、アドバイスがある時は
タイミングも大切。
相手の心理的安全を壊すようなタイミングを避けるよう
観察してみましょう。
とくに合奏中においては
「言いたい時に言う」のがアドバイスじゃありません。
間違いや、未完成の箇所を
「間違ってる!」
「できてない!」
ってダメだしだけしてませんか?
これはアドバイスではありません。
また、間違いやミスについて
本人はすでに自覚している場合が大半です。
それを外部からグサグサ刺しても
望みの演奏への変化は起きません
相手が落ち込み、心理的不安を抱くだけです。
変化を求めるアドバイスをしたい場合、
・状況を観察し
・分析し
・具体性を持った内容
にしましょう。
また、その場ですぐに解決することもありますが、
練習や理解に期間が要る事例もよくあります。
その際は、
・具体的な練習方法を伝え、
・一緒に軽く練習をしてみて
・次回まで何回か反復してもらうよう
アドバイスしましょう。
その際、楽器なしの練習方法であることが
より現実的です。
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ちなみに、アドバイスのつもりが
ただの文句になっていないかも
大人としては省みたいところです。
さて、一緒に演奏する仲間がいてこそ
その楽団は成り立っているわけです。
人財は貴重。
アドバイスを受ける相手が上達し、
吹ける場所が増え、音楽活動がより楽しくなれば、
楽団の活動は自ずと充実していきます。
そんな音楽的交流が進むアドバイス/フィードバックの手順の提案です。
①明るく声をかける
②良かったことを伝える
③助言があるけど話していいか許可をとる
④事実を伝える
⑤何か困っているか尋ねる
⑥具体的なアドバイスをする
⑦フォローアップ、エンカレッジメント
①〜③がアドバイスやフィードバックを伝える際に
もっと大切な要素です。
私は結婚して17年が経ちます。
夫のことが大好きで大好きで仕方ないし、
喧嘩もここ10年以上していません。
ですが、それでも相手にイラっとすることはあります。
このように、好き同士で結婚した二人でも
何かあるのです。
ましてや楽団などは赤の他人が数十名規模で構成します。
それぞれが多種多様なバックグラウンドを持っています。
思い通りにいくわけないのよ〜〜〜
そこは諦めて〜〜〜
しかしそんな中、
・互いを尊重し
・お互いに対等で平等であり
・丁寧なプロセスの
・具体的なアドバイス
は、とっても役にたつと思います。
また、無理やり仲良くする必要もありません。
その合奏体が音楽の意図や楽団の目的を達するために
最大限協力すればいいのです。
協力=仲がいい、でなくてもいいのです。
そして、個人が器楽演奏を通して幸せになり、
仕事や勉強への力になり、
周囲のあなたを愛してくれる人が幸せになるのが
大切なことだと考えています。
楽団がよりハッピーになることを応援しています!!!
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