そろそろ夏の吹奏楽コンクールのシーズンですね
吹奏楽コンクールでは【技術】【表現】の二項目で審査されます。
さてこの【技術】【表現】、どの順番で練習したらいいでしょうか?
答えは
最初から両方同時に
です。
このことについて書いた記事を読みやすく編集して再アップします。
『本番まで音楽の練習にたどり着かない』とは?
長年の友人であるアマチュア奏者の方と久しぶりにゆっくりお話しました。彼女は音楽が大好きな洞察力のある素晴らしい女性です。
彼女がここ何年かモヤモヤしていることがあるといいます。それは
「本番までに“音楽”の練習までたどり着かないのがもどかしい」
ということ。
彼女は社会人吹奏楽団に参加しています。
5年目になるそうですが、
・週に1回の合奏等の内容がタテ・ヨコの整理のみに終始する
・音楽表現への言及や練りこみをする前に演奏会やコンクール当日になってしまう
・毎年同じ反省や失敗パターンを繰り返すのは何故なんだろう?
それがとてもモヤモヤすると話してくれました。
つまり、合奏練習において音楽表現の練習期間が短く、消化不良の演奏となってしまうのが残念だと考えているのです。
では、【技術】と【表現】、一体どのような順番と配分で練習すればよいのでしょう?
音楽表現は最初からやる
練習の過程において、音楽表現っていつから実行するのでしょうか?
それは、譜読みや音楽表現の地図を作った後、初めて実際に音を出して練習するところからです。
もう、最初から全てを含めて練習するのです。
ゆっくり練習だって音楽表現練習を含みながらやります。
分けて考える必要は全くありません。
ちなみに、タテ・ヨコ揃ってから表現を付けるというのは、すでに「タテ・ヨコ揃えること」を脳に教え込んでから変更を加えることになるので能率的とは言えません。
なぜなら、音楽表現と演奏技術は一心同体だからです。
演奏技術と表現は一心同体
愛読している「ガラスの仮面」という漫画に、演劇少女の主人公・北島マヤが大きな気づきを得る場面があります。その気づきとは
「まず気持ちがあって、その気持ちのために動作やセリフがある」
ということです。
器楽演奏でも全く同じことが言えます。
まず始めに表現したいことがあり、そのための音・長さ・リズムを作曲者は譜面として残します。それを読み取り、具現化するために技術があります。
技術が先ではありません。
しかし、表現するためには技術を磨く必要があります。
つまりは、
技術と表現は一心同体
なのです。
吹奏楽コンクール本番でやりたいことを最初からやる
ですから、練習開始直後のゆっくり練習/譜読み練習の時点から、【何を表現するのか】と【技術の練習】を同時にやりましょう。
ゆっくり練習の段階から、本番ではどう客席に聴こえて欲しいか、また本番でどのように技術を使って演奏したいかを考えて練習しましょう。
そこから逆算して、練習プロセスを段階分けし、健康に上達していくように練習計画を立てましょう。
そうすることで、スムーズで自由で説得力のある演奏になり、本番でも自信を持って演奏できるようになります。
これは個人練習でも合奏練習でも一緒です。
間違いと失敗は最高の学びになる
音楽表現も同時にして演奏技術を駆使しようとするとき、音をミスしたり運指を間違ったりします。
でもそれは良い間違いです。
やろうとしていることをやって、失敗し、そこから情報を得ているからです。
脳の中でメンタルと演奏のバランスを取る練習にもなります。
逆に「まずは技術を整えよう!」「間違ってはいけない!」と音楽表現を無視し、無機質でメカニックな練習をすると、いざ表現を付けようとしてもうまくいきません。
ついたとしても、とても機械的で苦しそうで暗くて伝わらないものになります。
なぜなら、その無機質メカニック練習が脳に深く記憶されるので、表現をしようとしても無機質演奏の方を脳が採用するからです。
表現付きの演奏を脳が命令してくれるには、新たな電気信号回路を作らなくてはいけません。これにはとても時間がかかります。それこそ間に合いません。
なので、初めから表現付きの練習をし、失敗を重ね、本番でやりたいことのための電気信号回路を作っていく必要があるのです。
表現したかったことと実際に起こったことをよく観察して、次の練習プランを立てましょう。
コンクール練習で大切なこと
表現はまず自分のものです。
あなたの音楽表現は、あくまで、あなたのものです。
これは吹奏楽コンクールに限りませんが、表現は個人発信であることが良いです。楽譜を読み感じたことは、まず自分のものです。
その上で、チームで協力するからこそ、生命力あふれる演奏が実現するのです。
指導者やパートリーダーの皆さんにも、ここを注目していただきたいです。
私がとても心配しているのが、日本の吹奏楽部(団)のリハーサルが、トップダウン方式に偏っていることです。
指揮者やコンマスのいう通りにしていれば良い演奏ができるのでしょうか?それで金賞が取れるからオッケーなのでしょうか?
吹奏楽のような大人数での合奏体になっても、奏者個々人のアイディアや表現がその団体の大事な表現の素です。それを合奏練習で「意見表明」するのです。
そして意思表明があって初めて、指揮者やコンマス等が、バックグランウド知識や研究成果を元に、提案と交通整理をしていくものではないでしょうか?
様々な音楽表現アイディアを出し合って、そこから選択したり、新たな方向が見つかるからこそ
「合奏体」としての生命力が生まれます。
あなたの音楽表現は、あくまで、あなたのものです。大切にしてください。
その上で仲間たちと協力したり、試行錯誤するのが吹奏楽などの醍醐味ではないでしょうか。
本番でいきなり表現しようとしても遅い
また、舞台上での演奏は、基本的には前日の練習までで身についたことを思う存分やり切ることが大切です。
演奏=Playingは、ただやるべきことをやるだけ。
演奏という、体と心の非常に入り組んだバランスを使いながら、一度始まったら後戻りも立ち止まることもできない時間の芸術をやりきるには、とってつけたような「こう表現しよう!」は混乱を招くことが圧倒的に多いです。
オランダの恩人の1人が教えてくれたことは
練習はとにかく考えに考えてやるるように。そして自分が何をやっているかよく観察してテクニックを磨くように。
そうすると本番は何も考えなくていい。
本番で何も考えなくても最後までやり切れるようにするのが練習。ただ音楽だけに集中ための練習を本番前までに終えておくように。
ということでした。
本番中は考えているヒマなどないのです。
だから、練習の最初から技術も表現もコミコミで行うのが本番のための練習になります。
ゆっくり練習の時期から、作品を味わいながらコツコツやっていきましょう。
まとめ
いかがでしたか?
コンクール曲に取り組み始めた段階から、必要な技術を表現も交えながらゆっくり習得していくことに意識してください。
そうすることでもっと自由で、説得力のある、美しい技術と表現に溢れた演奏になるでしょう。
また、そのためには練習期間やメンバー構成に合う選曲をすることが大切なのは言うまでもありません。
練習期間もコンクール本番も、心から楽しんでのびのび演奏できますように!
(初出:2018年)
(改訂:2020年6月、2021年7月、2021年6月)
Stay healthy, calm, and smiley
湘南藤沢出張型クラリネット教室&吹奏楽コーチ
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浅原ルミ子
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