愛と平和の弾薬庫 -25ページ目

愛と平和の弾薬庫

心に弾丸を。腹の底に地雷原を。
目には笑みを。
刺激より愛を。
平穏より平和を。
音源⇨ https://eggs.mu/artist/roughblue

●「GREAT」
 

1 Honey Baby Honey
2 
Thin Dog Blues
3 
Connie Island Baby
4 Wild Child
5 
Pretty Beat Up
6 
Moon Walker
7 
Planet Song
8 
からかわないで
9 
Living In The Dark
10 
Lost Angel

[Credits]
all songs are written & played by
-NINGEN-
SHO-ICHI vocal & guitar
SHIBUYA guitar
RYO bass
ABEMA drums
-guests-
Sato-san engineering, 12strings guitar on 5
Ohno Chorus on 4
Izumi ryos: Yoneki, Tateoka, Furubayashi, Shinya, Sugai voices on 3
HIROSHI KATO illustration
Recording: ITOON B/2 Studio, Sendai, 1987

セカンドとなった「たったひとつのうた」では、ベーシストが流動的、
キーボード、管楽器、弦楽器等、4人以外の楽器参加も多々あった。
さらには録音時期がかなりバラバラ、そういうことを考えると、
この「GREAT」こそがやはり、渋谷圭が全能力を注ぎ込んで仕上げた、
「伝説のバンド/人間の最初にして最後の本格的な記録」と言っていい。
Vocalのショーイチは、のちの活動を知った耳には「まだまだ青く」はある。
がしかしこれはこれで、マッドマンでのショーイチとはまったく違う「生々しさ」を
たたえていて恐ろしくさえ感じられる。
渋谷圭が目をつけて引っ張ってきたという「先輩リズム隊」は、
この盤において、他にも数多(あまた)いたであろう先輩方ではなく
なぜアベマと了くんでなければならなかったのか、
そのへんの理由を見せつけている。
さすがに渋谷圭が少々無理して引っ張ってきたリズム隊、
その完璧な技量、ひたむきさ、底力、一曲一曲の中で迸るほどである。
そしてもちろん渋谷圭本人。
一曲一曲を盛り上げるためならギターの2、3本普通に担いでスタジオ入りする男。
「曲の性格」を見極め、執拗なまでに押し込められるそのフレーズフレーズには
一分の隙もなく、無駄もない。

弾くことで弾かない
(→弾いていることを感じさせない→耳を歌に導く、リズム隊の働きを強調する)、
弾かないことで弾いている(→わざと隙を作る→音の輪郭をハッキリさせる)、
そんなギター。
渋谷圭、曲を形作るために生まれてきた、まさにギター仙人である。

●「たったひとつのうた」

愛と平和の弾薬庫-たったひとつのうた

1 風の街から
2 
まっさかさま
3 
Day By Day
4 
雨の女
5 Back In The Night
6 夢嵐
7 
あいたい
8 
朝早く君を呼ぶ
9 
イミテーション
10 
Goodbye Baby
11 
Monkey
12 
カーテン
13 
おてあげ
14 
大寒町
15 
ガラクタ
16 
Bad Boy 

Credit
NINGEN
佐々木彰一 vocal & guitar,saxophone
渋谷 圭 guitar,vocal
渡辺 了 bass
阿部昌彦 drums
engineering & mixing 相沢 仁
Recording: ITOON B/2 Studio, from March ’89 to febuary ’90
songs were written by
1,3,4,5,6,7,8,9,10,12 佐々木彰一  2,13 佐々木彰一 & 渋谷圭
11 Dr.Feelgood、14 鈴木博文、16 Carl Perkins(日本語詩 佐々木彰一)
Cover design 荒川恵理
Thanks to join
木村益久 bass on 8、戸田武彦 sax on 7,8
レスター小田原 banjo on 10, pedal steel guitar on 3
山本晃史 bass on 4,12、高橋秀基 konnga on 4
奥澤‘cindy’麻子 violin on 7、泉沢みゆき trumpet on 13、荒川恵理 bass
川村真紀、佐藤修一、佐藤明子、泉沢紀康 voices on 10

●「GREAT」


愛と平和の弾薬庫-Grat Ningen


1 Honey Baby Honey

2 Thin Dog Blues

3 Connie Island Baby

4 Wild Child

5 Pretty Beat Up

6 Moon Walker

7 Planet Song

8 からかわないで

9 Living In The Dark

10 Lost Angel

[Credits]
all songs are written & played by
-NINGEN-
SHO-ICHI vocal & guitar
SHIBUYA guitar
RYO bass
ABEMA drums
-guests-
Sato-san engineering, 12strings guitar on 5
Ohno Chorus on 4
Izumi ryos: Yoneki, Tateoka, Furubayashi, Shinya, Sugai voices on 3
HIROSHI KATO illustration

Recording: ITOON B/2 Studio, Sendai, 1987


セカンドとなった「たったひとつのうた」では、ベーシストが流動的、キーボード、管楽器、弦楽器等、4人以外の楽器参加も多々あった、さらには録音時期がかなりバラバラ、そういうことを考えると、この「GREAT」こそがやはり、渋谷圭が全能力を注ぎ込んで仕上げた、「伝説のバンド/人間の最初にして最後の本格的な記録」と言っていい。
Vocalのショーイチは、のちの活動を知った耳には「まだまだ青く」はある。がしかしこれはこれで、マッドマンでのショーイチとはまったく違う「生々しさ」をたたえていて恐ろしくさえ感じられる。
渋谷圭が目をつけて引っ張ってきたという「先輩リズム隊」は、この盤において、他にも数多(あまた)いたであろう先輩方ではなくなぜアベマと了くんでなければならなかったのか、そのへんの理由を見せつけている。
さすがに渋谷圭が少々無理して引っ張ってきたリズム隊、その完璧な技量、ひたむきさ、底力、一曲一曲の中で迸るほどである。
そしてもちろん渋谷圭本人。一曲一曲を盛り上げるためならギターの2本や3本軽がる担いでスタジオ入りする男。「曲の性格」を見極め、執拗なまでに押し込められるそのフレーズフレーズには一分の隙もなく、無駄もない。

弾くことで弾かない(→弾いていることを感じさせない→耳を歌に導く、リズム隊の働きを強調する)、弾かないことで弾いている(→わざと隙を作る→音の輪郭をハッキリさせる)、そんなギター。
渋谷圭、曲を形作るために生まれてきた、まさにギター仙人である。


●「たったひとつのうた」


愛と平和の弾薬庫-たったひとつのうた

1 風の街から

2 まっさかさま

3 Day By Day

4 雨の女

5 Back In The Night

6 夢嵐

7 あいたい

8 朝早く君を呼ぶ

9 イミテーション

10 Goodbye Baby

11 Monkey

12 カーテン

13 おてあげ

14 大寒町

15 ガラクタ

 16 Bad Boy

Credits

NINGEN

佐々木彰一 vocal & guitar,saxophone
渋谷 圭 guitar,vocal
渡辺 了 bass
阿部昌彦 drums

engineering & mixing 相沢 仁
Recording: ITOON B/2 Studio, from March ’89 to febuary ’90

songs were written by
1,3,4,5,6,7,8,9,10,12 佐々木彰一
2,13 佐々木彰一 & 渋谷圭
11 Dr.Feelgood
14 鈴木博文
16 Carl Perkins(日本語詩 佐々木彰一)

Cover design 荒川恵理

Thanks to join

木村益久 bass on 8
戸田武彦 sax on 7,8
レスター小田原 banjo on 10, pedal steel guitar on 3
山本晃史 bass on 4,12
高橋秀基 konnga on 4
奥澤‘cindy’麻子 violin on 7
泉沢みゆき trumpet on 13
荒川恵理 bass
川村真紀、佐藤修一、佐藤明子、泉沢紀康 voices on 10

Patti Smithを見られた感動をどんなふうに書き始めたらいいのか、さっぱりわからない。

でも何か書き留めておかないことには気が済まない。

まったくまいる。自分ってやつには。

で、もうめんどくさいからひとことでやっつけちまおうかと思う。


ロックは現実だったのだ!!

 

だってもう現実に目の前に現れるなんて思ってなかったのだ。

John Lennonは死んじまってるし、the doorsのJim Morrisonなんて知り合った時にはもう死んじまってるし、

MickもKeithも生きててRolling Stonesには会おうと思えば大枚叩けば会えるけれど、

二万も五万も払わなきゃ会えないようなやつらはもうロックじゃねえし。

だから俺にとってのロックが目の前に現れるなんてもうないことだと思ってたのだ。

ところが去年の夏か?秋か?なんとPatti Smithがなななんと仙台に来てくれるなんて、

まるでなんかの間違いみたいな情報が!でもそれは間違いでもなんでもなくて7000円払えばPattiに会えるというまるで夢みたいな確かな情報で、俺はもう離縁されてもしゃあない、と思いつつママにねだった。7000円なんだけど、ソウル・フラワーより3000円も高いんだけど、いい?と。ママ・セッド「行けば?」。そしてついにやってきた2013年1月22日。ああ、ついにやってきてしまったよ、この日が。


Pattiはメンバーと一緒に仙台Rensaの狭いステージにあまりにもあっけなく姿を現した。

ホールじゅう、そりゃ大興奮だ。仙台にこんなにPatti Fanがいたとは、そっちのほうにも俺は感動した。

あとはもう、これです。


                愛と平和の弾薬庫-patti 20130122list

清志郎やソウル・フラワーのライブに慣らされちまった身に一時間半のライブはあっけなく感じたし、

ここ↑で(medley)と書かれてるR&R Medleyの後に「R&R Nigger」とかアップテンポのが続くかと思ったら

それはなしでQueen of Punkはあくまで過去なんだなあと思い知らされたりもしたけれど、

新譜の「Banga」に収められていたApril FoolやFuji-San, Bangaは緊張感とスリルにあふれてたし、

古い曲も、Jim Morrisonがもし生きててthe doorsの曲をやったらこんなだったかもなあ、って感じに

深く丸みを帯びた優しさにあふれた歌になってて、

俺が大好きなロックは、なるほど、こうして歳をとったのだなあ、と目の前が広がる思いで、泣けた。

きょうはあたりさわりなく普通にやってきてほしかったが、そうは問屋が卸さなかった。

朝、カーテンを開けば一面の雪景色。真っ白。夕方、風も強い。仙石線止まんねえべな。

Patti Smithに会いに行くのである。待ち合わせの場所は初めて行く場所で迷わないか心配だ。

そのうえ、この天気。

彼女とは俺が十九かハタチの頃に出会った。

Frederickという曲が入ったWaveというアルバムを渋谷陽一のFM番組で聞いたのが最初のような気がするが定かじゃない。でもラジオが最初だったのは間違いないと思う。

あれから30年以上、ついに会える。

会えるなんて思ってもいなかったが、会える。

きっとちびるでしょう。


愛と平和の弾薬庫-べかおうせ

テレビをつけてても何一つまともなものをやらないので

「男はつらいよ・望郷編」(第五作/1970)のビデオを引っ張り出して見ましたよ。

倍賞千恵子さんのための映画でした。すばらしい。泣けます。

昼間はMichelle Branchのエブリウァーとか、なんでそんなCDを俺が持ってんだ?

ってなのを聞いてましたが、今はしっかり「Cante Diaspora」聞いてます。

ところでDiasporaって何よ。開放?解散?離散?李さん?

むつかしいんだ、Soul Flowerのアルバムタイトルは、実際。

はてさてなんでMichelle BranchやElsaやSuzannne VegaやThirdeyeblindや

k.d.langやUB40なんてやつらのCDを、とかってやたら急に対象Musicianが増えたが、

そんなやつらのCDをなんで清志郎ドアーズSoul Flower Union一辺倒の俺が所持するに

至ったかと言うと、コゴタノーリンが会社に持ってきたからだ。ただで配るために。

なんで音楽のおの字ぐらいしかしらないような彼がそんなCDを持ってきたかはしらないが、

持ってけってんなら持ってく。そんでもらってきたんである。

Altanなんてのもなぜか混在してたし。

20枚ぐらい持ってきて、聞けたのは数枚。

Altan、Todd Rundgren、松田樹利亜、山崎まさよし、そしてMichelle Branchであった。

ことにAltanは思った以上にアルバム一枚の満足度が高かった。

ありがとう、コゴタノーリンと心で思わなくはないが、絶対本人には言わない。

言ったら終わりだ。

大体にして自分がどんなCDを担いできたかなんて全然わかってねえんだから、言う必要はないのだ。

残念な男、コゴタノーリン。

つくづく金が好きなんだなあみんな、と思い知らされた一年の終わり、

さっきまで清志郎の「KING」を聞いてて、今はSoul Flowerのマキシシングル

「ルーシーのこどもたち」を聞いてます。はあ、きたかさっさー!(秋田音頭だ!)

次はミシシッピーガッデムだぞ。うつみようこだ。

11月に出た中川敬のソロで聴いた「女はつらいよ」があんまり素晴らしいので

二階堂和美のオリジナルの「女はつらいよ」をYouTubeで聞いたら中川がぶっ飛んだ。

中川敬が「ファンです」と公言してはばからないのが納得できる。

さて、来年は原発がどんどん再稼働していくのでしょう。

なぜならみんなお金が大好きだから。それ以上に好きなものがないから。

将来を生きる人たちや、いや、それどころか福島の人たちにさえ思いは到らず、

ただ大好きなお金をくれそうなやつらを国の仕切り役に選ぶ。

ああ、「KING」のジャケットの清志郎の顔のすっきりしてることよ。

ああ、「秋田音頭」のJIGENの声の清々しいことよ。

それにしてもソウル・フラワー・ユニオンの活動は東北のメディアにはまったく乗らないのね。

及川の「ロックンロ-ル黄金時代」(Date FM)だけじゃねえか。

ひでえ世の中なのだ。

でもそんなおかげで中川も桃梨も好き勝手に慰問ライブを続けていられるのかもしれない。

そうだ、別に俺たちにはラジオもテレビも必要ないのだ。必要はないのだ。

んなもななくてもやるやつぁやるし、それは伝わってくるし、楽しもうと思えば楽しめるのだ。

でもなあ、Soul Flowerや桃梨のCDはちゃんと売れて欲しいよなあ。

まあ、キューンレコードが存続できてるってことはそれなりに売れてるからなんだろうから、

俺が気にする必要なんてないんだろうけどさあ、

なんか、東北の人間としては申し訳ないような気分なのだ。

仮設住宅にお住まいの皆さま、自宅を再建の時にはどうか、

神棚に彼らのCD、できればSoul Flower Union一枚、中川のソロ一枚、

桃梨のを一枚、せめてそれぐらいは置いていただきたい!

しっかし、来年はマジでどんどん原発再稼動なんだろうなあ。

で、また参議院選挙でもあの「おれたちにお金をくれそうな人たち」が勝つんだろうなあ。

なんでや。

 闇は余計なことばっか考えさせるから怖い。こうして三人でメシなんて食ってると、不思議なぐらいすべてはオーライって感じだ。なんてわけがない。

こんなの普通に考えたら10日どころか、今こんな一瞬が存在してるだけで充分異常だ。今度電話が来たら富岡にも訊いてみるべ――なんでお前んとこはひと月ももったんだ?

 「いやあ、幼ななじみみたいなもんすから」 とか、明るく笑うだけかもしんないが。

奈美恵がメシを食い終えた。箸を茶碗の上に置いて「ごちそうさまでした」、使ってた茶碗と箸を持って立ち上がる。彩子はニコニコしながらその様子を見てる、だけだったらよかった。奈美恵がごちそうさまを言ったその時だ、彩子はニコニコしながら言った。

「はーい、おいちかったでしゅかぁ? うーん、よかった!」

で、うんうんと無表情で頷いた奈美恵の頭を、いい子いい子って感じに撫でた。マジ凍りついた。やっぱ狂っちまったんだ。

でもこの俺がいつまでも固まっちゃいられない。つうか固まったりしちゃいかんのだ。彩子の言動はいたって自然でごく普通、って顔をしてなくちゃならない。でないと、どんな均衡がいつどんなふうに崩れるかわからない。とにかくあらゆる種類の疑念も驚きもまだ、事態の正体が判明するまでは、表現禁止だ。

 台所に食器を置いただけで別に洗ったりすることもなく、奈美恵は俺たちがまだ食ってる居間のほうに戻ってくるとベランダの窓を開けた。太陽が真上に上がるときのうみたいにあっつくなる。でもやっぱりまだ5月、ひんやりした空気が部屋に入ってきた。ベランダの枠にもたれて隣りのパーマ屋の屋根を見下ろしながら、奈美恵がついに口を開いた。

 「彩子さん、別に狂ったりしてないから」

 話しかけられた瞬間、俺はギュッと緊張した。口を開いていいのか、黙ってたほうがいいのか、そこからしてわからない。すると奈美恵は続けた。「だから安心して。それから、わたしの言うことに返事はしないほうがいいみたい。彩子さんの前でわたしを見る時はただニコニコしてて。それぐらいなら大丈夫みたいだから」

 言って奈美恵は微笑んだ。ちょっと悲しそうだった。

俺は、わかった、と頷こうとした自分をとっさにぐっと抑えこんだ。その代わりに目を細め、微笑み返した。まるで野良猫でも見つけた時みたいに。

そんな俺たちのやりとりを、彩子はなぜだかうんうん頷きながら見ていた。奈美恵の言葉が聞こえなかったわけがないのに、この反応はおかしい。まるで一人だけ別の空間にでもいるみたいだ。そんな彩子が、箸を動かすあいまにぽつんと言った。

 「何てしようね、名前」

 「名前?」

 思わず聞き返しちまった。まずった……と思ったが、大丈夫、俺の疑問を特に気にもとめず、ちらっと俺を見てから奈美恵のほうを見やり、彩子は言った。

 「あの子の名前」

 あの子の、名前?

 奈美恵の名前さえ、彩子はまだ知らないってことか?つうか、知らないんだったら訊きゃあいいだけの話で、何も俺たちが命名する必要なんてない。

 彩子はぼんやりした目線を奈美恵のほうに向けてる。きっとマジで「あの子の名前」を考えてるんだろう。別にどこも狂ってない頭で。

 つうことは何だ、彩子はマジで奈美恵をそういう存在だと思い込んでるってことだ。名前を付けてやんなくちゃならないような存在、だと。例えば捨て子、にしちゃでか過ぎるから、そう、記憶喪失の少女とか、そんな感じに。狂ってない頭で。

 でもそれにしても何だ、彩子の奈美恵への接し方はどう見ても、赤ん坊を相手にしてるそれだ。記憶喪失の女の子を相手にしてるって感じじゃない。

 いったい、きみは何つってこの部屋に上がり込んだんだ?とっととそのへんを聞かせていただきたい、きみは彩子にとってどんな存在の女なんだ? と、奈美恵に強く問い質したい気分が高まった。でもこっちからは話しかけられない、らしい。だったらそっちからとっとと教えやがれ! がつがつメシをかっこみながら思った。もうこれ食ったら出かけなくちゃなんねえんだぞ!

 ずっと奈美恵のほうを見ていた彩子がふっと言った。

 「ジェニファー、って感じでもないかな?」

 横文字の名前か。一応、Jでつないどこう。

 「ジャニス」

 「アンジェリーナ」

 別にJじゃなくてもいいようだ。

 「シャインちゃん」

 「真っ黒なシャインちゃん、いいかも!」

 いやいや、よくない。早口で俺は続けた。

 「ルーシー、サリー、パティ」

 つうか、なんで横文字なんだ?そう思ったところで彩子が言った。

 「ふかっちゃん」

 「フカ、ちゃん?」

 急に横文字じゃなくなった。

つうか、フカ?鮫?なんでいきなりそんなに可愛くなくなるんだ?でも彩子は言う。  

「可愛くて、なんかこうモジモジしてて、でも態度はけっこうはっきりしてて、なんか深谷エリみたいじゃん」

 女優の深谷エリに感じが似てる?で、フカちゃんじゃなくて、ふかっちゃん?なるほど。つうか、全然似てねえけど。どっちかっつうと柴原コウっつうか、それもちょっと違うが。

その時ふいに、外を向いたまま奈美恵が言った。

「ルーシー、サリー、パティだって。スヌーピーじゃん」

 それを言うなら「ピーナツじゃん」だ。スヌーピーはタイトルじゃない。つうかよ……俺は奈美恵を睨んだ。そういうこっちゃなくて!お前が口にするべきは、どうして彩子がお前の名前を決めようとしてるのかってことだ。

お前は彩子にとって、どんな名無しの存在なんだ?記憶喪失か?捨て子の赤ん坊か?それともまさか何だ、あれか?仔猫にでも見えてるってのか?がぁいぃぃぃ仔猫ちゃんにでも。

 仔猫ちゃんにでも……。

まじまじ彩子を見た。少しして見つめ返された。ニッと笑ってみせた。ぱっつんぱっつん、かなり変になった。でも俺の顔なんか全然気にしてない様子で彩子は言った。 

「ね。ふかっちゃんじゃダメ? それともシャインちゃんのほうがいい?」

 あわてて首を振った。それだけはダメだ。

 「ふかっちゃん!いいってそれ!あいつはふかっちゃんだ!」

彩子が奈美恵を呼ぶたびに、あんなやつを思い出させられたんじゃたまんない。

 「よかったねえ、ふかっちゃん!きみはきょうからふかっちゃんだ!」

言って彩子は、ベランダの奈美恵に向けて箸を突き出した。

 もしそうだとすればすべてに合点がいく、がしかしとんでもないとしか言いようのない、そんな憶測が熱く俺を包んだ。

 がぁいーでしょおぉ。トイレにはあららららとついてく。で、ニコニコ。さらには、おいちかったでしゅかぁ&なでなで。

奈美恵を仔猫に置き換えると、ほとんどすべての場面がゆったり穏やかに平和に、ぴったり収まる。

 奈美恵がぼそっと言う。

 「ジャニスのがよかったんだけどなぁ」

 ってことは、何だ、そういうことなのか?

 彩子には、奈美恵が猫に見えてんのか?

 「猫?」

 気がつくと奈美恵に向かって言っちまってた。やーばやば。あわててメシをかっこんだ。

 「そうみたい」

 奈美恵が横に立った俺を見上げ、言った。

 「なんだか真っ黒の仔猫に見えてるみたいなんだよね、わたし」

 マジかよ……。口から出かけた言葉をぐぐっと飲み込んで、俺は奈美恵に微笑みかけた。

「ふかっちゃん、か」

奈美恵がぼっと言った。

「じゃあ、きょうからわたしは深谷奈美恵だ」