ピンチ!!「あおぞら吹奏楽!2024」 | "楽音楽"の日々

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音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

奈良県明日香村は、日本の古代史に興味を持っている人間にとっては憧れの場所です。

文献がほとんど残っていない古代は、日本の歴史大好きな私にとってイマジネーションを広げてくれる時代で興味がつきません。

 

京都橘高校吹奏楽部は、2017年にも「ムジークフェストなら」に参加しています。その時は、開催地について深掘りすることはありませんでした。今回、再びこのイヴェントでパフォーマンスを見せてくれることになって、現地のことを調べてみました。

 

国営飛鳥歴史公園は、明日香村の中にある史跡の周辺を整備して、町内の5箇所に点在しています。発見当時話題になった「高松塚古墳」や「キトラ古墳」などがありますが、最も有名なのは「石舞台古墳」でしょう。

 

 

歴史の教科書で見て強烈な印象を残してくれたこの古墳は、7世紀に作られた方墳で、蘇我馬子の墓と伝えられています。決定的な文献はありませんが。正方形に近い形の盛土で作られていたはずですが、風雨で侵食されて現在は石室だけが残されています。そんなことを知らなかった学生時代は、その姿だけが強烈に印象に残ったのでした。

 

で、今回の「ムジークフェストなら2024」は、その「石舞台古墳」を中心とするエリアで開催されたのでした。6月1日のことです。

前回参加した2017年は特設ステージだったのですが、今回はここ数年使われている「あすか風舞台」という常設ステージでの開催でした。

恒例のフラワークラウンさんの「晴天祈願」の下方にも「石舞台古墳」が描かれています。

 

「あおぞら吹奏楽!2024」と題された今回のイヴェントは、例年どおり奈良近郊の学校が複数参加して、ゲストには各地で引っ張りだこの「ブラック・ボトム・ブラスバンド」が呼ばれました。更に、トリを飾るスペシャル・ゲストという形で京都橘高校吹奏楽部がパフォーマンスを披露しました。

 

今回は、撮影するには不利な「逆光」の形になって、撮影者の皆さんは苦労されていたようです。そんな中で安定のクオリティを保ち続ける「慶次郎前田」さんの撮影・編集で、「コンサート・ステージ」をご覧ください。

 

 

昨年の台湾で大緊張のMCデビューした今期の部長ですが、冒頭のインタビューでは明るく朗らかでとても素敵です。

プログラムは、前回の「TAIWAN PLUS」で披露したものからピックアップして、更に「宝島」を加えた構成です。1年生を鍛える時期なので仕方がないとはわかっているものの、この選曲は私にとって退屈です。振り付けなどのパフォーマンスがない「座奏」で「京都橘らしさ」を出すのは、とても難しいですよね。とは言うものの、京都橘ならではの「特別感」を求めるのはファンとしての「高望み」なのでしょうか?

 

 

 

さて、気を取り直して後半の「マーチング・ステージ」です。

 

 

ブルーメ・タイプの衣装で登場です。よく見てみると、靴もソックスも着替えています。まぁ、当然でしょうけどね。こちらも「慶次郎前田」さんの動画でご覧ください。

 

 

「Winter Games」は、1年生を含めた全員での演奏です。ステージからはみ出してしまうので、残念ながらカラー・ガードの1年生のうち2人は舞台袖です。

それにしても、スーザフォン8本はヴィジュアル的に圧巻です。ローズパレードではどうなるのか、期待が膨らみます。

 

MCは、昨期から引き続いて安定のホルンちゃん。「Here We Go」の決まり文句も、今期はちょっとクールに決めています。

 

「Celebration」は、絶対にアメリカでもウケるナンバーになりましたね。今期のパターンとして、テナー・サックスのソロから2本でハモるという形にしてきました。良いアイデアですね。終わった二人の笑顔が眩しいです。

 

そして、今回のイヴェントにおいてファンの間で騒然となったのが、「September」のピアノによるイントロでした。

多くの撮影者の方々は、心優しくその部分をさりげなくカットして動画をアップされています。世界中で、しかも繰り返し見られる京都橘の動画であることを考えれば、正しい判断だと言えるでしょう。

私も、最初に見た時は「一体、何が起きたんだ?!」と思いました。たくさんの動画をじっくり見て検証してみると、いつもの京都橘ではありえない異変に気付きました。それは、「譜面台」です。通常、京都橘のマーチング・ステージでは、譜面台は一切使いません。それは、パーカッション・セクションでも同様です。ところが、今回のステージでは、ピアノの前に譜面台があるのです。しかも、ピアノを弾いているのは、今までピアノを弾いている姿を見たことのない3年生です。私のお気に入りの部員で、ずっと注目してきているので間違いないと思います。

 

ここからは、私の推測です。

本番当日になって、この曲のピアノ担当が突然欠席することになったんでしょう。ブラスエキスポでピアノを弾いていたサックス奏者なのか、別の部員なのかはわかりませんが。事前に欠席がわかっていれば、譜面台が必要にならないように練習しているはずです。多分、突然の欠席という緊急事態だったのでしょう。ピンチ!!急遽の代役だったのでしょうが、本人にとっては悔しい結果になりました。

ということで、最善を尽くしたけれども残念な結果になったんだと私は理解しました。

失敗を次に繋げる京都橘のことです。きっと複数の部員がピアノを担当できるように、練習を繰り返していることでしょう。常にステップアップを目指していく姿勢が、京都橘の最大の魅力のひとつだと思っています。

 

さて、この曲の見どころ(聴きどころ?)を、いくつか。

カラーガードが、1年生4人を含めた8人体制のお披露目。1年生はいずれも笑顔がないし動きも硬いんですが、これからが楽しみです。

アルト・サックスのソロは、「泣き虫サックス」として人気になった2年生の男子。「良い音してるなー。」と感心していたら、引き継いだ副部長は更に華やかな音色。さすがです。

最前列に揃ったトロンボーンは、11人。迫力満点だし、ヴィジュアル的に壮観です。

 

そして、かなりこなれてきた「Think」です。今年の定期演奏会でお披露目された時点で、今までに見たことのない独特の振り付けで注目していましたが、かなり良い感じになってきました。これで、全米を驚かせて欲しいと思ってしまいます。

この曲において目立っているのが、ピッコロです。吹奏楽器の中で最高音を担当しているうえに、基本的にひとりです。目立つ音なので失敗は許されませんし、曲の「効果音」的な使われ方をする例がしばしばあります。これを担当している部員は、昨年2年生の時から重責を担っていますが、今年の安定感は素晴らしいです。特に、この曲では最高音からのグリッサンドが数カ所あって、とてもカッコ良く決まっています。

 

1年の間をおいて復活の「Memories Of You」は、アメリカでのパフォーマンスを探っているのかもしれません。

ソロを吹くのは、多分クラリネット・セクションのリーダーですね。精神的余裕が見えるソロは、とても気持ち良いです。

 

ラストの「Sing, Sing, Sing」における吹奏楽器は、既に自信に溢れているようにも聞こえます。もう、完成間近か?なんて思わせてくれます。ただ、違和感があるのが、メイン・ドラムです。フィル・インなどが、かなり個性的で今まで聞いたことのないパターンです。そう、3年生の彼女です。多分、ステージでこの曲を叩いているのは、これが初めてだと思います。今期のこの曲は、2年生の部員が叩いていたはずです。見返してみると、その2年生部員の姿が見えません。この日は、欠席だったようです。ということで、3年生の彼女が全編に渡ってメイン・ドラムを叩くことになったようです。彼女はパンチ力が足りませんが、リズム・キープに関しては実に見事です。今までの経験が、ここに結実しているように思えます。

「September」におけるピアノのトラブルばかりが取りざたされているようですが、ピンチはそれだけではなかったんです。ほとんど話題になりませんが、メイン・ドラムを一人が叩くことになるとは、本人が一番重圧を感じていたはずです。崩壊しそうなピンチを救ったのは、メイン・ドラムを担当した彼女だったと私は思うのです。実に見事なプレイでした。

 

 

ということで、ピンチを切り抜けた京都橘高校吹奏楽部は、一層その強さを増して行くことでしょう。

 

 

 

最後に、このイヴェント全体のパフォーマンスを収めた動画をご紹介しておきましょう。

奈良のレヴェルの高さを実感すると同時に、ゲストのブラック・ボトム・ブラスバンドの見事なパフォーマンスも堪能できます。