「クロスオーヴァー」なら、これ!!「Deodato 2」 | "楽音楽"の日々

"楽音楽"の日々

音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

テーマ:


1973年リリースのEumir Deodatoのセカンド・アルバム「Deodato 2」の最初の曲が、この「Super Strut」です。
聴きなじみのある曲で、今でもテレビなどでも耳にしますし、サンプリングのネタとしても重宝されているようです。

でも、じっくり聴いてみると、不思議な曲です。
Aメロがないんですね。いきなりJohn Tropeaのアドリブ・ソロです。こんなの、普通ではありえません。
この曲の魅力は、グルーヴィーなリズムとブラジル音楽特有のコード進行の気持ち良さに尽きると言えます。


デオダートと言えば、CTIレーベルでの第1作「ツァラトゥストラはかく語りき(Prelude)」でいきなり大ヒットを記録したという、恵まれた人です。
$"楽音楽"の日々-Prelude
もちろん私も名盤だと思いますが、アルバムをトータルに見ると、この「Deodato 2」のほうがはるかに完成度が高いと思うのです。
$"楽音楽"の日々-Deodato 2

日本盤のタイトルにもなったGeorge Gershwinの「Rhapsody In Blue」は、「ツァラトゥストラ~」の二番煎じで、それほど新しさは感じません。悪くはないんですけどね。

The Moody Bluesの代表作「Night In White Satin」は、1967年の曲ですが、1972年にロング・ヴァージョンが大ヒットしました。



プログレを代表する曲として有名ですが、流行ものを取り入れることを得意にしていたCTIレーベルらしい選曲とも言えます。

Deodatoのアレンジは、原曲の魅力を壊すことなく、さらにドラマティックな構成にしています。ほとんど、ギタリストJohn Tropeaのための曲という感じですが。



アナログ・シンセのソロとホーン・セクションが印象的な、魅力溢れるカヴァーだと思います。プログレッシブ・ロックのファンも、一聴の価値ありです。

モーリス・ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」をアダプテーションした「Pavane For A Dead Princess」は、今聴いても古さを全く感じさせない美しさです。



19人のストリングスの上で、Deodatoの生ピアノがせつなく美しいメロディを奏でます。
このシンプルな美しさは、絶品です。

ラストは、おなじみの「Skyscrapers」です。
たぶんDeodatoも、マンハッタンの摩天楼をイメージしてこのタイトルを付けたんだと思いますが、今でもニューヨークの摩天楼群を捕らえた画像にこの曲が流れることがしばしばあります。




全体にとっても聴き易いサウンドなんですが、この録音が1973年というのがポイントです。

ジャズにブラジルのボサノバを持ち込んだのは、サックス奏者のStan Getzです。
それから10年して、ブラジル生まれのDeodatoが、ジャズとR&Bのグルーヴとボサノバのコード進行を組み合わせて曲を作ったのです。
この気持ち良さに気付いたジャズ・ミュージシャンたちが、試行錯誤しながら作り上げていったのが、のちのフュージョンです。

ただ、この作品ではまだ洗練されていなくて、各ジャンルのテイストがゴツゴツと重ね合わさっています。
そのライヴ感が、とても新鮮です。
まさに、「クロスオーヴァー」という言葉がぴったりです。

これが洗練されてこなれていくと、フュージョンやスムーズ・ジャズになって行くんですねー。

ジャズとロックを組み合わせたMiles Davisがクロスオーヴァーの元祖だと言われていますが、私はDeodatoだと思っているのです。
ラテンのテイストが入ってこそ、フュージョン音楽へ繋がるものだと思っているからです。


この作品の後、多くのミュージシャンが試行錯誤を始めて、とっても面白い作品を連発する時代になるのです。

ブラジリアン・フュージョンの傑作と呼ばれているGeorge Dukeの「Brazilian Love Affair」は、明らかにDeodatoの影響を受けていますもんね。


キーボーディストとして超絶テクニックを持っているわけではなく、全体のサウンドを作り上げることの才能に長けたDeodatoは、この後プロデューサーとしてKool & The Gangをスーパースターにするのでした。
$"楽音楽"の日々-Kool & The Gang
1980年の彼らの大ヒット曲「Celebration」は、ディスコにはまっていた私は当然大好きだったんですが、Deodatoがプロデュースしていることを知ったのは、ずいぶん後になってからのことでした。

この頃のDeodatoは、彼のトレードマークであるブラジルのテイストが全く感じられなくなって、リーダー・アルバムにも魅力を感じなくなってしまいました。
このあたりの作品については、また後日。


ラプソディー・イン・ブルー/エミール・デオダート

¥1,500
Amazon.co.jp

Best of/Moody Blues

¥1,246
Amazon.co.jp

Celebration: The Best Of Kool & The Gang 1979-1987/Kool & The Gang

¥1,246
Amazon.co.jp

にほんブログ村 音楽ブログへ
にほんブログ村