連歌 オリオンに幼き恋を打ち明けて
連歌ごっこで遊びましょ | 退屈な日もある思い出はとぎれとぎれや冬ぬくし あき坊 (1)蔵のパン屋は声弾みをり 愛 (2)オリオンに幼き恋を打ち明けて あき坊 (3)冒頭はオーソドックスに。思い出はとぎれとぎれや冬ぬくし 蔵のパン屋は声弾みをり オリオンに幼き恋を打ち明けて 蔵のパン屋は声弾みをり 付句が眼前に生まれて感慨深い。俳句で繋げるのもいいが、長句短句を繰り返す方が世界が広がる感じ。世代性別その他文化の異なる人が「群れ」て、ことば遊びをするのは危険でもあるので、自句自解をお願いしたのは意味があった。最も刺激的だったのは、舞踏さんの一句I'm just a woman fall in love. 舞踏 (26)であった。個人的な趣味を申し出て、ご本人の了解もいただけたようなので、I'm just a woman,fallingintolove.とさせていただくが、加害者と被害者として再会し I'm just a woman, falling into love.薔薇の香は白息恋に落ちにけり I'm just a woman, falling into love.いい感じだなぁ、黙して味わうのみ。俳句が世界に広まるのはうれしいが、短い三行詩として認知されているところは不満である。その苛立ちを解消してくださったのが、この英文であった。その前段として、Iloveyouと告るの無理だ ジョイ (4)がポストされたことは見逃せない。『Iloveyouと』を『あいらぶゆうと』と七音に読ませている。なるほど、合点した。また使われている「告る」は私のごとき旧人類は「のる」と読んでしまうが、『こくる』なのだ。意味は「恋心を言語化して伝える」のようだ。嘗ては「こくる」は「木で鼻をこくつたやうな西隣 一茶」と、「くくる」の意味で使われたけど。オリオンに幼き恋を打ち明けて Iloveyouと告るの無理だ蝉時雨既読のつかぬライン待つ Iloveyouと告るの無理だこうなると、『蝉時雨既読のつかぬライン待つ mjt (5)』 mjtさんも若々しい。ひと時代前には、「カタカナ」が俳句に持ち込まれ、その斬新性は嬉々として受け入れられた感がある。ひらがなを使わずに漢字だけを並べる(表現)方法や漢字を全く使わない方法に対して、「カタカナ」の使用であった。江戸俳句にもカタカナは用いられたが、のこる雪やたとへは銀のすりハかし 初花やふたつミつよつちこさくら二句とも捨女だが、カタカナの単独使用なら普通で彼女に限った事ではない。「すりはがし」「三つ四つ」と使い方のルールはよくワカラナイけれど。そして、いよいよ横文字の登場だ。それも「七音」。もちろんネイティブの発音を自ら聞いて筆記すると、音数は異なるかもしれない。しかし、異言語を自国語に取り込む際は常に近似である。その曖昧さが、やがて文化的な曖昧さとなって、自我の確立に悪影響がないとは言えない(余談だが)。我が道楽のスキーに、Rossignolロシニョールというフランスメーカーがあるが、何音か?略して「ロッシ」と呼ぶので、これなら3音とわかりやすい。ロシニョールを「ロシニョル」と言って通じるかは知らないが、日本語では「古参兵が降参した」と「こさん」「こーさん(こうさん)」は明確に使い分けられている。いろいろ考えると、考えること自体が楽しくなってしまうので切り上げるが、再掲加害者と被害者として再会し I'm just a woman, falling into love.薔薇の香は白息恋に落ちにけり I'm just a woman, falling into love.詩として読むと、「加害者と」の方が好きかな。「加害者」「被害者」の詞が詩にふさわしいかどうかは検討の余地がありそうなので、「再会」に焦点を当てて読んでほしい。その上で、非常に衝撃的でした。 蝉時雨既読のつかぬライン待つ mjt (5)日焼の跡に肩紐二本 愛 (6)冷感のタンクトップの白眩し 舞踏 (7)心穏やかに読んでいられたが、視点を替えると色っぽい。蝉時雨既読のつかぬライン待つ 日焼の跡に肩紐二本冷感のタンクトップの白眩し 日焼の跡に肩紐二本肩紐が小麦色の肌にかすかに食い込んで、なまめかしい。連絡を待ちかねている彼を袖にしたばかりかもしれない。そんな中、新しい彼氏と海へ行ったか_?そして、こちらの彼はタンクトップの彼女と並び歩きながら熱中症対策など世間話をしながらも、オスの視線が彼女の肩紐を見ている。彼女はそれに気づいているはず。恋の駆け引き?けふは悪魔とビバカーニバル ももこ流 (10)ドリフだよ45歳差夫婦だよ あき坊 (11)まどろむやうな鴛鴦ならむ ももこ流 (12)ドリフだよ45歳差夫婦だよ けふは悪魔とビバカーニバルドリフだよ45歳差夫婦だよ まどろむやうな鴛鴦ならむ夫婦も長くやっていれば、お互いの心に見知らぬ「悪魔」も登場するさ。それを押さえ込めるのはそれぞれのそれぞれへの感謝の気持ち。「加藤綾菜さんは困難な時期を乗り越え」と作者の解説があってよく理解できた。オシドリは水面下の水かきを必死に動かし、時には木の枝に留まり、見た目ほどには寛いだ人生ではないかもしれないが。冴ゆる夜や愛には愛でシミュレーションももこ流 (29)高鼾とは図太かりけりmjt (30)善哉を分けて夫婦を確かむる あき坊 (31)冴ゆる夜や愛には愛でシミュレーション高鼾とは図太かりけり善哉を分けて夫婦を確かむる 高鼾とは図太かりけり冷気の満ちる部屋に一人居て、明日会う男を思っている。そしてふと想い出した。「アイツはすぐ寝ちまいやがるからなぁ」などと事後のことを。高齢のご夫妻は、前夜から小豆を準備して、昼近くにはできあがった善哉を椀にとりながら、「塩が効いてるね」などと話している。もりもり食べて、食後は高いびきで寝入ってしまった。歯を磨かずに! いつもそうだから、老妻は怒っている。小春日や牛すじ煮込む小料理屋 ももこ流 (35)もう一杯と思い出かがる mjt (36)良い仕上がりになった。途中の曲がりくねった山道もようやく里に下りた。ちょっと寄って行くか。小春日や牛すじ煮込む小料理屋 もう一杯と思い出かがる 一人の酒なら、思い出がふさわしい。小春日だから、昼酒かな。それと、牛すじなら、少し歯ごたえの残っているくらいでお願いします。