去る8日、キューバの映画ポスター作者として有名なアントニオ・フェルナンデス・レボイロ(1935年12月26日生まれ)が、移住先のスペインで亡くなりました。享年85歳。
謹んでお悔やみ申し上げます。
経歴
1935年12月26日、カマグェイ県ヌエビータスで、スペイン移民の両親のもとに生まれる。
ハバナ大学で、医学を学んだ後、建築を学ぶ。
英語の旅行雑誌「Habana Picture Guide」の創刊や、建築家リカルド・ポロと共にハバナで芸術学校の建設に携わる。
1963年、ICAIC(キューバ映画芸術産業庁)ポスター部に入所
1964年、スリランカで開催された国際ポスターショーで「HARAKIRI(邦題:切腹)」が特別賞を受賞。キューバで初めて国際的な賞を獲ったポスターとなると同時に、キューバの映画ポスターの存在を国際的に知らしめる。
以後、約20年間に渡り、ICAICの真に実験的な環境のなかで、アールヌーボー、アールデコ、ポップアート、幾何学的構成主義、サイケデリック・アートなど様々な影響を受けつつ、自由かつ大胆で色彩豊かな作品を生んだ。
(その一方で、同性愛者だったがゆえに迫害されたという説もある)
Marysolより
FBの投稿でレボイロ氏の訃報を知ったのは9日夜だったのですが、そのときも今もネット上に「訃報記事」が殆ど見つからないのが不思議でなりません。あれほどの重要人物なのに、もし存在が忘れられているのだとしたら悲しい…。
今回参照した記事の筆者は「彼の残した芸術的遺産ゆえに、いつまでも尊敬と感謝の対象であり続けるだろう。そして、その素晴らしい作品群は、今後もキューバのグラフィックデザイナーにインスピレーションを与え続けるだろう」と結んでいるのに。
ちなみに同筆者は『Moby Dick(邦題:白鯨)』のポスター(上)について「復讐に燃える主人公の執念という通常の解釈とは違い、人間の支配に抵抗する本性(自然)の眩しいほどの豊かさを表現している」と評していますが、それを読んで『キューバの恋人』のポスター(日本とは対照的!)を思い出しました。
*「日本のポスターに比べて非常に色鮮やかで、『とべない沈黙』というより大きく羽ばたいていきそうですが、どういう解釈をしたのですか?」という私の質問に対するレボイロ氏の返信。
私は映画をとても気に入った。
私はポスターを描くさい、内容を忠実に表現する必要はないと常に思って描いてきた。それよりも、人々が映画を見たくなるよう注意を引こうとした。
蝶の羽は、建築家という私の仕事柄、製図用コンパスを使って描いた。
文字は近くに寄って読めればよいくらい小さくした。
色彩は非常に適切で、キューバの色だ。映画はそこで上映されるのだ。
私は日本映画のポスターをたくさん描いて非常に好評を得た。日本の映画を素晴らしいと思っている。
レボイロ氏のポスターから溢れ出る〈自然の豊かさ・力強さ〉。
それこそ氏にとってのキューバだったのでしょう!
キューバの豊穣な魅力が、レボイロ氏のポスターと共に永遠でありますように。
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