『だれもが愛しいチャンピオン』公開記念トーク・イベント | MARYSOL のキューバ映画修行

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【キューバ映画】というジグソーパズルを完成させるための1ピースになれれば…そんな思いで綴ります。
★「アキラの恋人」上映希望の方、メッセージください。

『だれもが愛しいチャンピオン』公開を記念して、昨年11月26日に「セルバンテス文化センター東京」で試写会とトーク・イベントがありました。そのときのメモを文章化してシェアします。

質問者は、セルバンテス館長
ゲストは、ハビエル・フェセル監督、アテネア・マタ(ソニア役)、プロデューサー 

写真左から:ハビエル・フェセル監督、小塚崇彦、アテネア・マタ、セルバンテス館長

 

館長:アテネアさんは脚本とどう関わったのか?
マタ:嬉しい質問です。最初はソニアの存在は小さかったし、コジャンテスもいなかった(?)。ハビエルに相談されたとき「男だけのスポーツ映画にしないで」と言いました。それで彼女たちの存在が膨らんだのです。
また、女性側の視点として、高齢出産も重要な問題です。現代女性はキャリアを優先して妊娠・出産が高齢化することで、障害児が生まれる可能性が増しています。

私が演じたソニアは女優で、彼女が“演じる”ことでチームにお金が入ります。

また、私はソニアを通して自分自身の問題や困難を表現することができました。

 

館長:映画はスペインで大ヒットしたが、想像していたか?
プロデューサー:成功はまったく想像しておらず、予想外の結果だった。製作資金を獲得するために、我々は小さな映画を作ってスポンサーに見せなければならなかった。リスクを背負っていた。

 

*観客との質疑応答(質問はメモしなかったので適当)

質問:なぜバスケットボール?
監督:スポーツは、知的障害児が社会参加をするためのきっかけ。彼らは試合に出場するため、荷造りをしたり、予定時間に合わせてバスに乗るなど、様々な社会的行動をとる必要がある。
 
質問:彼らはとてもユーモラスだったが、演技指導はどのように?
監督:彼らの演技指導については、(プロとして?)最大の厳しさを求めた。そして、彼らがまるで自分の家にいるかのように感じられるよう努めた。それは何よりも、彼らが自分自身であるためだった。その結果、撮影時間は非常に長くなった。

 

質問:彼らはユーモラスだが、知的障害者を笑い者にしないように気を付けた点は?
監督:私にとって彼らはヒーロー。尊敬と愛をもってすれば笑い者にはならない。

マタ:演じることを英語でplay、スペイン語でjugarというが、彼らと演じるなかで遊び心を感じました。それは演者の極意です。プロの俳優は自分が目立つシーンだけ頑張り、そうでないシーンは力を抜いたりするが、彼らは常に全身全霊で演じていた。

 

監督の談話
スペイン・パラリンピックのキャプテンは、大きな悲劇の犠牲者だった。それは実際に起きた恥ずべき事件で、健常者が知的障害者の振りをして、大会を盛り上げようとしたのです。

 

※ また、前日(25日)にも同じく「セルバンテス東京」で、「アミーゴス」のメンバーを演じた障がい者の方々のドキュメンタリーが上映され、トーク・イベントも行われました。

                      

プロデューサーの言葉
「映画を撮るときから、個人個人の人生を撮ることも興味深いことなのではないかと考え、ドキュメンタリーを撮ることにした」

 

トークでの発言あれこれ
障がい者のための教育には「統合教育(integración)」という健常児と一緒のクラスと「特殊教育」の2つの形がある。前者に比べ、後者の方が障がい者たちは引け目を感じない。

『だれもが愛しいチャンピオン』は、観客に考えさせる映画。
そして、映画のチカラにはジャーナリズムと同じチカラと責任がある。

「映画のヒットは革命的だったが、それは長年の目に見えない努力の結果でもある。
 映画のおかげで、障害者たちが前より自然に受け入れられるようになった。

★みんな違う。違いを認めて欲しい。それが意図。

 

監督:「(明日見る)映画はフィクションだが、役者たちはドキュメンタリーと同じように振る舞っている」。同情ではなく、感動・関心をベースにオプティミストな視点から撮った。

 

マタ:出演して人生観が変わった。映画界は虚栄の世界だが、彼らは違う。友情を感じた。

 

Marysolからひとこと
ドキュメンタリーのなかで、障がい児の親御さんが「生まれた子が障がい児がと知ったときは絶望したが、育てるうちに喜びに変わった」という言葉が印象的でした。
そして、先日あらためて映画を見直して、「子供が幸せなら親は幸せなのよ」というマルコの母の台詞に深く共感すると同時に、その気持ちを忘れてはいけないと自戒しました。(人生の勝者であるより、幸せ者であれ!)

映画のなかの「あなたのような父親が欲しい」というマリンの台詞と、マリンを演じたヘスス・ビダルのゴヤ賞受賞時の両親に対する感謝の言葉が、呼応していて感動的! ビダル親子は、最高に幸せな親子ですね!

 

ただ、親御さんたちは自分たちの死後、障がい児がどう生きて行けるか心配していました。
兄弟がケアしてくれる場合は良いのですが。
また、彼らの結婚・妊娠(子供をもつ権利)も気にかけていました。