RIDDLE CRITIC -7ページ目

ファイアスターター







著者: スティーヴン・キング, 深町 真理子
タイトル: ファイアスターター (上)

倫理的・道義的な問題から、決して明るみに出ることのない人体実験。アンディとヴィッキーは大学生の時、その実態を知らぬまま被験者としてある実験に参加します。実験で投与された薬の名は「ロト・シックス」。何事もなく実験を終えたアンディとヴィッキーですが、それ以降2人には不思議な力が宿ります。アンディは精神操作<マインドコントロール>、ヴィッキーは念動力<サイコキネシス>。やがて二人は結婚し、子供を産みます。娘の名はチャーリー、彼女は両親よりも強力な自然発火能力を持っているのでした。
密かにアンディとヴィッキーを監視していたCIAの下部組織《》。チャーリーの能力に気づいた彼らは、彼女を実験材料として調査するため、チャーリーを捕らえようとします。組織の襲撃によって、凶弾に倒れたヴィッキー。アンディは娘を守るため、必死の逃避行を開始します。

国家の横暴から娘を守ろうと懸命に抵抗する父親。親子の深い愛情を描きつつ、特殊な力を持ってしまったがために訪れる悲劇を、リアリティ溢れる筆致で描写した作品です。

クージョ







著者: スティーヴン・キング, 永井 淳
タイトル: クージョ

狂犬病-発病すれば100%死に至る恐ろしい病気。メイン州キャッスルロックの民家で飼われていたクージョは、蝙蝠に咬まれることによって狂犬病にかかってしまいます。時間が経過するにつれて、次第にクージョの理性は蝕まれ、凶暴な攻撃性が脳内を占めてゆきます。折悪しくクージョが飼われている民家を訪れたドナタッド親子。車の故障によって閉じ込められてしまった二人を、狂った大型犬が襲います。

心ならずも人を襲う衝動に駆られてしまうクージョ。獰猛な獣と化したクージョから、果たして母子は無事に逃げられるのか。刻々と悪化する状況において、狂気に陥るまいとする理性と本能の内面的葛藤を描いた本作。自分の身に置き換えて考えると、非常に怖い物語です。

花神







著者: 司馬 遼太郎
タイトル: 花神 (下巻)

無愛想で、およそ人間としての面白味は皆無の村田蔵六。あるのは勉学に対するのめり込むような熱意だけでした。当時まだあまり世間に認められていなかった蘭学を学び始めた彼は、一念発起して緒方洪庵の適塾に入塾します。人付き合いは苦手な蔵六も、勉学にかけては右に出るものは無くやがては塾頭にまでのぼりつめます。そんな折、鎖国の安寧に眠る日本に衝撃が訪れます。黒船の来襲です。ペリーは日本に開国を強要し、世襲制度で腐敗しきっていた幕府は、言われるがままに条約を締結してしまいます。幕府の弱腰を糾弾する攘夷の熱は日に日に高まり、世は動乱の時期を迎えました。そこで注目を浴びたのが、蘭学です。諸外国の公使と折衝したり、外国語の本を翻訳するにも、蘭語が出来なければ話になりません。蔵六も時代の要求に流されるがままに外国の兵法書を翻訳したり、その内容を教示したりしました。そんな時にめぐり合ったのが、維新の立役者桂小五郎。蔵六には向学心以外にもう一つ、想像力という天賦の才がありました。蔵六の恐るべき能力を見抜いた桂は、蔵六を長州に連れ帰り倒幕軍の総司令官に抜擢します。名を大村益次郎と変えた彼は、維新の波に最も遅く乗りながらも大きな役割を果たしていくのでした。

本作では、主人公の村田蔵六にあまり好感が持てません。無愛想で煮え切らない性格のため、何とももどかしい気分にさせられるのですが、幕末という、社会が目まぐるしく変転した時代を知る上では、非常に面白い作品です。







著者: 司馬 遼太郎
タイトル: 峠 (上巻)

越前長岡藩。わずか七万4千石という小藩に、眼光鋭い異相の男が一人いました。名は河井継之助。知行合一を旨とする陽明学の徒であった彼は、変転する時勢の本質を見極めるため馬車馬のように東奔西走します。やがて天性の慧眼を認められた継之助は、長岡藩の家老に推挙され、停頓としていた藩内政を一変させてゆきます。洋式軍装を積極的に取り入れ、小藩ながらも当時の日本ではずば抜けた兵力を養ってゆく継之助。彼の洞察力を持ってすれば、すでに幕府に政権担当能力が無いことは明白でしたが、御親藩である長岡藩の家老としての立場を最後まで捨てず、討幕軍との戦いに臨んでいくのでした。

周りから嘲弄を受け、蔑まれながらも決して己の信念を曲げなかった継之助の生涯は、日本武士としての光輝に満ち溢れています。本作を読めば、継之助のような生き方に大きな魅力を覚えてしまうこと必至です。慧眼を身に付けたいと言う方は、是非読んでみてください。

ゴールデンボーイ





著者: スティーヴン キング, Stephen King, 浅倉 久志
タイトル: ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編

刑務所のリタ・ヘイワース<春は希望の泉>
メイン州はキャッスルロックにあるショーシャンク刑務所。そこに一人の男が入所してきます。名前はアンディー・デュフレーン。大手銀行の副頭取という要職に就き、人生の勝利者を歩んできた彼は、妻と間男を殺した罪で投獄されます。無罪を訴えながらも受け入れられず、刑務所での生活を余儀なくされるアンディー。刑務所内では外界とは全く隔絶したルールがあり、舎監や他の囚人の洗礼を受け彼は辛酸をなめさせられます。しかし、そんな苦難にも負けない不撓不屈の精神、そして目的を達成する執念がアンディーには備わっていたのでした。

「ショーシャンクの空に」という映画の原作にもなった本作。絶望的な状況でも決して諦めず、ついに勝利を掴み取った男の物語。まさに希望を体現したような作品です。

ゴールデンボーイ<転落の夏>
明朗快活で成績優秀、さらには容姿端麗と誰からも好かれるような行動力ある少年、トッド・ボウデン。彼は友人宅である雑誌を見つけます。それはとても古い雑誌で、ナチスが行っていた強制収容所での虐殺を特集していました。トッドはその陰惨な記事に眩暈を覚えながらも、雑誌の内容が本当に事実だったのか、確かめずにはおれない衝動に駆られます。ナチスや強制収容所に関する資料を集め始めたトッド。偶然かはたまた運命のいたずらか、トッドは近くに住む老人そっくりの人間が写った写真を手に入れます。老人はアーサー・デンカーと称していましたが、実はクルト・ドゥサンダーというナチスの軍人でした。老人の正体を持ち前の行動力で見破ったトッド。彼はドゥサンダーの正体を明かさない代わりに、強制収容所での実情を話すよう老人に持ちかけます。かくして所期の目的を果たしたトッドですが、ドゥサンダーの秘密を知れば知るほど、気づかぬうちに自分も泥沼にはまってゆくのでした…

深化する少年と老人の相互依存。堕ちてゆく人間の狂気を、生々しく描き出した作品です。