花神

著者: 司馬 遼太郎
タイトル: 花神 (下巻)
無愛想で、およそ人間としての面白味は皆無の村田蔵六。あるのは勉学に対するのめり込むような熱意だけでした。当時まだあまり世間に認められていなかった蘭学を学び始めた彼は、一念発起して緒方洪庵の適塾に入塾します。人付き合いは苦手な蔵六も、勉学にかけては右に出るものは無くやがては塾頭にまでのぼりつめます。そんな折、鎖国の安寧に眠る日本に衝撃が訪れます。黒船の来襲です。ペリーは日本に開国を強要し、世襲制度で腐敗しきっていた幕府は、言われるがままに条約を締結してしまいます。幕府の弱腰を糾弾する攘夷の熱は日に日に高まり、世は動乱の時期を迎えました。そこで注目を浴びたのが、蘭学です。諸外国の公使と折衝したり、外国語の本を翻訳するにも、蘭語が出来なければ話になりません。蔵六も時代の要求に流されるがままに外国の兵法書を翻訳したり、その内容を教示したりしました。そんな時にめぐり合ったのが、維新の立役者桂小五郎。蔵六には向学心以外にもう一つ、想像力という天賦の才がありました。蔵六の恐るべき能力を見抜いた桂は、蔵六を長州に連れ帰り倒幕軍の総司令官に抜擢します。名を大村益次郎と変えた彼は、維新の波に最も遅く乗りながらも大きな役割を果たしていくのでした。
本作では、主人公の村田蔵六にあまり好感が持てません。無愛想で煮え切らない性格のため、何とももどかしい気分にさせられるのですが、幕末という、社会が目まぐるしく変転した時代を知る上では、非常に面白い作品です。