燃えよ剣

著者: 司馬 遼太郎
タイトル: 燃えよ剣 (上巻)
新撰組。幕末の京都にあって世の志士たちから最も恐れられた史上最強の剣客集団。その最強たる所以は、酷烈な隊規による強固な組織力にありました。新撰組局中法度と呼ばれたこの隊規の根幹を作ったのが、土方歳三です。生来の喧嘩上手だった彼は、戦闘における戦術の重要性を早くから認識し、新撰組を創成するやそれを理論化してゆきます。また、強力な自己規律を隊員に課すことによって、組織としての秩序・統率力を練磨してゆくのでした。新撰組副長として、局長の近藤勇に汚名を着せないよう奮迅する彼の姿は、悲哀を伴いながらもどこか突き抜けた清々しさを感じさせます。
主君に忠義を尽くす武士ではなく、一介の百姓に過ぎなかった歳三を、何がここまで駆り立てたのか?剣に生き剣に死んでゆく、まさに侍の生涯と呼ぶに相応しい内容の作品です。本作を読めば、新撰組の本質に触れ、よりその魅力に引き込まれてゆくことでしょう。
坂の上の雲

著者: 司馬 遼太郎
タイトル: 坂の上の雲〈1〉
鎖国によって海外との国交を断ち、農耕社会を基盤に営々と築かれてきた江戸時代。しかしペリー来航によって破られた泰平の世は、幕末という激動の時期を経て、明治維新を迎えます。それまでの幕藩体制から、統一国家としての姿を形式的ながらも持った日本。しかし、折りしも世界は帝国主義が台頭していた時代、先進諸国は争って植民地を欲し、日本もまた例外ではありませんでした。対外的圧力が日増しに強まる中、ついに日本は朝鮮半島を巡り眠れる獅子と呼ばれた「清」と、さらにはそれ以上の大国である「ロシア」と戦端を開かざるを得なくなります。
本作はそんな常に亡国の危機にあった明治という時代を、日清戦争、日露戦争に従軍した秋山好古・真之兄弟、そして近代短歌・俳句の中興の祖となった正岡子規を中心に描いた物語です。序盤は三人の生涯について、そして三人が日本の枢要に関わようになるにつれて中盤以降は日本国家そのものの動きについて描かれています。日露戦争の終末までを、当時の日本に生きる人々の視点に立って克明に記した本作。もはやこれは小説などと呼べるものではなく、長大な歴史叙事詩と言うべき素晴らしい作品です。
ザ・スタンド

著者: スティーヴン・キング, 深町 眞理子
タイトル: ザ・スタンド 1
ウイルスや細菌の研究を行い、事前に対処法を研究するため政府によって管理されている施設、アトランタ防疫センター。本来は人体を守るための研究を行う機関でしたが、裏ではある恐るべき研究が行われていました。<プロジェクト・ブルー>と呼ばれるその計画の内容は、新種のウイルスを開発すること。
1990年6月13日、午前14時37分16秒。<プロジェクト・ブルー>の研究区画においてある事故が発生します。研究員の誰かの過失によって、罹患率99.4%のインフルエンザ・ウイルスが予防装置から漏れてしまったのです。瞬く間に施設内を席巻し、研究員を殺戮した新種のウイルス。施設の警備員であるチャーリー・キャンピオンは、異変が起きた直後に事故に気付き、自らの身を保全するため施設からの逃亡を図ります。幸運にも逃亡に成功したキャンピオン。しかし彼にとっての幸運は、全人類の大半に死のカーテンを引き下ろすことになるのでした…
成す術なく死滅してゆく世界。しかし、衰亡してゆく世界の中にも生き残りはいます。生き残った人物たちの行動を通して、善と悪、人間の強さと弱さ、精神的内面を克明に活写した大作。全部で5巻とかなりの長篇ですが、読みば読むほど「ザ・スタンド」が持つ魅力に引き込まれてしまいます。多作家で知られるキングの作品の中でも一、二を争う人気を誇る本作、オススメです!
ハリーポッターと不死鳥の騎士団

著者: J. K. ローリング, J. K. Rowling, 松岡 佑子
タイトル: ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 ハリー・ポッターシリーズ第五巻
類稀なる勇気と行動力で、絶望の淵から生還したハリー。しかし、ついにヴォルデモートは甦ってしまいました。夏休みに入りプリベット通りのダーズリー家に戻ったハリーでしたが、いつヴォルデモートが行動を起こすのかと気が気ではありません。さらにハリーの鬱屈に拍車をかけているのは、魔法界の友人・知人の誰もが具体的な動向について知らせてくれないこと。多分に運の要素があるとはいえ、これまで4度もヴォルデモートと闘い生き延びてきた、という自負があるだけに、ハリーの苦悩は深刻でした。そんなある日、ハリーは溜まりに溜まった鬱憤の捌け口をダドリーに求めます。互いに剣呑な状況に陥ってしまいますが、そこに突然現れたのは”吸魂鬼ディメンター” 。2年前に習得した守護霊の魔法によって事態を打開したハリーでしたが、なぜ吸魂鬼がここにいるのか、さらに悩みの種が一つ増えることになるのでした。
ハリーの苦悩が限界を越えつつあった頃、ようやく魔法界からの使いが訪れます。やって来たのはルーピン、マッド・アイ・ムーディなど知己を含めた9人の魔法使い。彼らの誘いによって、ハリーはヴォルデモートに対する抵抗組織”不死鳥の騎士団”本部に向かいます。ようやく魔法界と接触を持つことができたハリー。これで自分も騎士団の活動に参画できる、と意気込むハリーでしたが、騎士団のメンバーは何も語ってくれません。ダンブルドアさえも自分に目を向けてくれないことに意気消沈したハリーは、不安と苛立ちを募らせたまま新学期を迎えるのでした。
第5巻を読んで、前4作とはかなり様変わりした印象を受けました。具体的に明示はできないんですが、これまでのような夢と希望に溢れたファンタジーを期待するなら、あまりお勧めはできないかもしれません。若さゆえの反抗心、自分の存在に対する疑問、そして儚い恋、思春期を迎えたハリーは、もはや純粋で真っ正直な少年ではありません。良くも悪くも大人へと着実に成長してゆくハリーの姿に、少々面食らってしまうことでしょう。しかし、全ては第6巻、第7巻へと繋がる伏線だと私は考えています。ハリーの出生の秘密が明かされる「ハリーポッターと不死鳥の騎士団」。期待と不安を膨らませつつお読みください。
ハリーポッターと炎のゴブレット

著者: J. K. ローリング, J. K. Rowling, 松岡 佑子
タイトル: ハリー・ポッターと炎のゴブレット 上下巻2冊セット (4)
14歳を迎えたハリーポッター。彼はホグワーツに入校して以来、かつてないほど充実した夏休みを過ごしていました。友人のロンの誘いによって、魔法界におけるスポーツ「クィディッチ」のワールドカップを観戦することになったからです。自身も選手としてプレイしているクィディッチ。白熱する試合を観戦して興奮冷めやらないハリーでしたが、試合後の会場付近で不吉な出来事が起こります。暗夜の空に打ち上げられたエメラルド色の髑髏のマーク。それは例のあの人を象徴する「闇の印」でした。一体誰が「闇の印」を打ち上げたのか、事件の真相が判然とせぬまま、ハリーはロンたちと共にホグワーツに戻るのでした。
新学期を迎えたホグワーツ。例年通り新入生の組み分けが行われた後、ダンブルドアからある一大行事の実施が発表されます。それは過去百年以上も行われてこなかった”三大魔法学校対校試合トライウィザードトーナメント” の開催。ホグワーツ、ボーバトン、ダームストラングの三校からそれぞれ代表選手が一人ずつ選ばれ、三つの魔法競技で競い合うこの行事。ハリーは代表選手になることを夢見ますが、代表に立候補できる資格が17歳以上であることを告げられ、あえなく希望は絶たれます。炎のゴブレットによって公正に選出された代表選手たち、各校から一人ずつ名前が告げられた後、ゴブレットはもう一枚の羊皮紙を吐き出します。そこに記されていたのは、選ばれるはずのない”ハリーポッター”の名でした…
日々の喧騒の中にあって、必死に競技課題をクリアしようと奮闘するハリー。挫折しそうになりながらも、周りの助力によって着実に前へ進んでいく姿には、子供の成長を見るような喜びと愉しみがあります。また、ハリーにとってかけがえのない人物の死。死という冷厳な現実に触れることによって、ハリーの幼年期は終わりを告げます。読者にとっても、ハリーが重大な転換点を迎える本作を見逃すことはできないでしょう。