坂の上の雲 | RIDDLE CRITIC

坂の上の雲







著者: 司馬 遼太郎
タイトル: 坂の上の雲〈1〉

鎖国によって海外との国交を断ち、農耕社会を基盤に営々と築かれてきた江戸時代。しかしペリー来航によって破られた泰平の世は、幕末という激動の時期を経て、明治維新を迎えます。それまでの幕藩体制から、統一国家としての姿を形式的ながらも持った日本。しかし、折りしも世界は帝国主義が台頭していた時代、先進諸国は争って植民地を欲し、日本もまた例外ではありませんでした。対外的圧力が日増しに強まる中、ついに日本は朝鮮半島を巡り眠れる獅子と呼ばれた「」と、さらにはそれ以上の大国である「ロシア」と戦端を開かざるを得なくなります。

本作はそんな常に亡国の危機にあった明治という時代を、日清戦争、日露戦争に従軍した秋山好古・真之兄弟、そして近代短歌・俳句の中興の祖となった正岡子規を中心に描いた物語です。序盤は三人の生涯について、そして三人が日本の枢要に関わようになるにつれて中盤以降は日本国家そのものの動きについて描かれています。日露戦争の終末までを、当時の日本に生きる人々の視点に立って克明に記した本作。もはやこれは小説などと呼べるものではなく、長大な歴史叙事詩と言うべき素晴らしい作品です。