ブログネタ:今年のお年玉で買いたいものって何? 参加中
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プーぺガール
http://www.youtube.com/watch?v=kmpJzA2wqTs
SONYのオーダーメイドファクトリーを以前から利用していて、リイシューCDに散在している昨今なんだけれど、自分のためのお年玉プレゼントというか、先日待ちに待った『山本達彦 1978-1981』が手元に届いた。今では入手困難な山本達彦のフィリップス時代の1st~3rd+シングル・カップリング、おまけにオレンジのシングルまで収録した初期音源網羅のボックス。これは買うしかないでしょう!と即予約していたのだけれど、随分と淡白なボックスの仕上がりでかなりがっかり。凝り性の田原春樹さん(山本達彦のプロデューサー)が全面的に手掛けていたらこんなことにならなかったのでは? 達彦さんのライナーっていうのもペラ1枚だものなぁ…。せっかくの機会なんだし、達彦さん自身が執筆することに限界があるならばインタビューをするとか、それこそ田原さん自身がテキストを書けばよかったのだ。もしくは『夜のピアノ』の書かれている1st~3rdの部分を抜粋するとかね。オーダーメイドファクトリーは完全予約制リイシューCDだから、そりゃ購入するひとはそれなりに山本達彦のファンなのだと思う。でも僕はレコードというのは記録であるとともに資料的側面も自ずと持っていると考えるから、過去のものを今一度リイシューというかたちで再リリースするならば、改めてその資料価値を現時点の視点で語ったテキストなどが付随するというのはごくごく当然だと思う。僕などはむしろそれを楽しみにしていたのだ。もっとも『突風』『メモリアルレイン』『ポーカーフェイス』をCDで聴けるというだけでも素直に喜ぶべきか…。
僕が山本達彦を聴きだしたのは中学時代。周りに聴いているひとはいなかったけれど、FMではよく耳にしていたし典型的な“アルバムアーティスト”だった。背伸びしてFM雑誌などをチェックしてエアチェックしていると、シングルヒットはないけれど(チャート番組には登場しないけれど)アルバムは確実に売れるアーティストというのが確実にいることに気づく。安部恭弘、伊藤銀次、大貫妙子、尾崎亜美、角松敏生、濱田金吾、村田和人、ムーンライダーズ、山本達彦っていう人たちはラジオで存在を知り好きになった人たちである。その中でも山本達彦はメジャーな存在じゃなかったかな? 僕が聴きだした頃は特に東芝EMIの全盛期だったし、コーセー化粧品のCMソングをいくつも手掛けていたし、FM東京土曜13:00~のエアチェックアイテム「コーセー化粧品歌謡ベストテン」をエアチェックしていると必ず耳に入って来たし。モダンなサウンドとその声色にハマってしまった。そしてハードボイルドな大人の歌詞の世界。自分も20代になったら、沖合にクルーザー停めて背中の空いたドレスの女性とカクテルを飲みながらアバンチュールな一夜限りの愛を…みたいなものが待ち受けているのかと勘違いしていたのだが、それはあくまで歌の世界だけなのであった(笑)。バブルもはじけた僕に待ち受けていたのはそれまで夢にみていた世界が来ないってこと。と同時に、それまで聴いていた虚構の音楽がバカバカしく思え出した。そんな中、当時大江千里が書いた詩世界は僕にとって現実だったし、村上春樹や村上 龍なんかの小説と同様に大江千里の言葉に陶酔していくことになるわけだけれど、山本達彦の音楽は急激に僕の中でイミテーションになってしまい離れていくことになる。杉山清貴、カルロストシキ、オメガトライブ絡みのものもみんなそうだね。歌はメッセージソングであるべきであり、リアリティがないと駄目じゃないかと真面目に思い込んで生きて来た。でもそれじゃつまらないって思い出したのは30代に入ってから。何を持ってリアリティとするかがグラついたし、相変わらず邦楽の歌詞っていうのは洋楽の訳詞と比べると歌っている世界が狭くてパターン化しているのは感じるけれど、かといっても、洋楽の歌詞もくだらないものが多いしね。
たとえ虚構でもたしかに夢や浪漫はあった。今の視点(いや、あの頃もあったけれど)でバカバカしい描写と思える部分があっても、それでも酔える音楽は良い。山本達彦は確実に酔わせてくれる。シンセを多用した東芝EMI時代の音源は特に僕にとっての“80年代のパースペクティブ”だ。それを実感するようになって30代後半から彼の音楽がまた恋しくなって来たのである。と同時に随分と手放してしまってベスト盤しか残っていないことにも気づき、また少しずつ集めだしたのだ。そしてそのとき気づいたのは当時あれほど中古レコード屋にあふれていた山本達彦のCDなりレコードがあまりなくて、しかも値段が高くなっているという事実(とはいえ、中古市場では高騰している部類に入るひとではないけれど)。フィリップス時代は『ポーカーフェイス』はともかく、最初の2枚を探すのは今は大変になっているかも。オレンジなんていまだに現物のシングルを僕は観たことがない。当時は写真集まで発売されるほどポップス界の貴公子と言われていたときのひとだったながらも、今みたいにインターネットなんてない時代、ディスコグラフィを把握するのがもの凄く大変だった。そんなときに役立ったのが小学館から刊行された自叙伝『夜のピアノ』。現在もアンコールの最後に「夜のピアノ」を演奏しているようだけれど、『ポーカーフェイス』のラストを飾る曲でもある。
自叙伝『夜のピアノ』を読むと、加藤和彦同様に生まれたときから差がついているひとだなぁ、と思う。プロデューサーである田原春樹とは学生時代からの長い付き合いであることもわかるし、かの渡辺香津美とも同学年の同級生であり、1st『突風』で渡辺香津美がアレンジ、香津美バンドがバッキングしている曲がある謎も解ける。でもこの本がなかったら僕もまったくもって山本達彦というひとのバックボーンを伺い知れることはなかっただろう。今もコアファンを除いてはあまりよく知らないひとが多いだろうとも思うのだ。『突風』『メモリアルレイン』はいかにもニューミュージックという感じで、まだまだ黎明期の作品という感じであるが『ポーカーフェイス』は今に繋がる音ができている。その後東芝EMIに移籍して黄金期が開けるのも当然の帰結だったわけだ。でもこうした考察も長きに渡って山本達彦の音楽を聴いて知ったことばかりであり、それこそインターネットのツールがあり達彦さんや田原さんが書いているブログなどもありつつも、それでもまだ『夜のピアノ』の内容を知り得ていないファンは僕よりも若ければ若いほど確実にあるはずだ。コアファンの囲い込みっていうのは当然のこととはいえ、どうしたって新たなファンが出逢う可能性を薄めてはいけない。その意味では今回のボックスは期待以下だったなぁ…。予算がなかったのかなぁとかいろいろ邪推してしまう職業病な自分がまた自己嫌悪してしまうんだけれど。
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SONYのオーダーメイドファクトリーを以前から利用していて、リイシューCDに散在している昨今なんだけれど、自分のためのお年玉プレゼントというか、先日待ちに待った『山本達彦 1978-1981』が手元に届いた。今では入手困難な山本達彦のフィリップス時代の1st~3rd+シングル・カップリング、おまけにオレンジのシングルまで収録した初期音源網羅のボックス。これは買うしかないでしょう!と即予約していたのだけれど、随分と淡白なボックスの仕上がりでかなりがっかり。凝り性の田原春樹さん(山本達彦のプロデューサー)が全面的に手掛けていたらこんなことにならなかったのでは? 達彦さんのライナーっていうのもペラ1枚だものなぁ…。せっかくの機会なんだし、達彦さん自身が執筆することに限界があるならばインタビューをするとか、それこそ田原さん自身がテキストを書けばよかったのだ。もしくは『夜のピアノ』の書かれている1st~3rdの部分を抜粋するとかね。オーダーメイドファクトリーは完全予約制リイシューCDだから、そりゃ購入するひとはそれなりに山本達彦のファンなのだと思う。でも僕はレコードというのは記録であるとともに資料的側面も自ずと持っていると考えるから、過去のものを今一度リイシューというかたちで再リリースするならば、改めてその資料価値を現時点の視点で語ったテキストなどが付随するというのはごくごく当然だと思う。僕などはむしろそれを楽しみにしていたのだ。もっとも『突風』『メモリアルレイン』『ポーカーフェイス』をCDで聴けるというだけでも素直に喜ぶべきか…。
僕が山本達彦を聴きだしたのは中学時代。周りに聴いているひとはいなかったけれど、FMではよく耳にしていたし典型的な“アルバムアーティスト”だった。背伸びしてFM雑誌などをチェックしてエアチェックしていると、シングルヒットはないけれど(チャート番組には登場しないけれど)アルバムは確実に売れるアーティストというのが確実にいることに気づく。安部恭弘、伊藤銀次、大貫妙子、尾崎亜美、角松敏生、濱田金吾、村田和人、ムーンライダーズ、山本達彦っていう人たちはラジオで存在を知り好きになった人たちである。その中でも山本達彦はメジャーな存在じゃなかったかな? 僕が聴きだした頃は特に東芝EMIの全盛期だったし、コーセー化粧品のCMソングをいくつも手掛けていたし、FM東京土曜13:00~のエアチェックアイテム「コーセー化粧品歌謡ベストテン」をエアチェックしていると必ず耳に入って来たし。モダンなサウンドとその声色にハマってしまった。そしてハードボイルドな大人の歌詞の世界。自分も20代になったら、沖合にクルーザー停めて背中の空いたドレスの女性とカクテルを飲みながらアバンチュールな一夜限りの愛を…みたいなものが待ち受けているのかと勘違いしていたのだが、それはあくまで歌の世界だけなのであった(笑)。バブルもはじけた僕に待ち受けていたのはそれまで夢にみていた世界が来ないってこと。と同時に、それまで聴いていた虚構の音楽がバカバカしく思え出した。そんな中、当時大江千里が書いた詩世界は僕にとって現実だったし、村上春樹や村上 龍なんかの小説と同様に大江千里の言葉に陶酔していくことになるわけだけれど、山本達彦の音楽は急激に僕の中でイミテーションになってしまい離れていくことになる。杉山清貴、カルロストシキ、オメガトライブ絡みのものもみんなそうだね。歌はメッセージソングであるべきであり、リアリティがないと駄目じゃないかと真面目に思い込んで生きて来た。でもそれじゃつまらないって思い出したのは30代に入ってから。何を持ってリアリティとするかがグラついたし、相変わらず邦楽の歌詞っていうのは洋楽の訳詞と比べると歌っている世界が狭くてパターン化しているのは感じるけれど、かといっても、洋楽の歌詞もくだらないものが多いしね。
たとえ虚構でもたしかに夢や浪漫はあった。今の視点(いや、あの頃もあったけれど)でバカバカしい描写と思える部分があっても、それでも酔える音楽は良い。山本達彦は確実に酔わせてくれる。シンセを多用した東芝EMI時代の音源は特に僕にとっての“80年代のパースペクティブ”だ。それを実感するようになって30代後半から彼の音楽がまた恋しくなって来たのである。と同時に随分と手放してしまってベスト盤しか残っていないことにも気づき、また少しずつ集めだしたのだ。そしてそのとき気づいたのは当時あれほど中古レコード屋にあふれていた山本達彦のCDなりレコードがあまりなくて、しかも値段が高くなっているという事実(とはいえ、中古市場では高騰している部類に入るひとではないけれど)。フィリップス時代は『ポーカーフェイス』はともかく、最初の2枚を探すのは今は大変になっているかも。オレンジなんていまだに現物のシングルを僕は観たことがない。当時は写真集まで発売されるほどポップス界の貴公子と言われていたときのひとだったながらも、今みたいにインターネットなんてない時代、ディスコグラフィを把握するのがもの凄く大変だった。そんなときに役立ったのが小学館から刊行された自叙伝『夜のピアノ』。現在もアンコールの最後に「夜のピアノ」を演奏しているようだけれど、『ポーカーフェイス』のラストを飾る曲でもある。
自叙伝『夜のピアノ』を読むと、加藤和彦同様に生まれたときから差がついているひとだなぁ、と思う。プロデューサーである田原春樹とは学生時代からの長い付き合いであることもわかるし、かの渡辺香津美とも同学年の同級生であり、1st『突風』で渡辺香津美がアレンジ、香津美バンドがバッキングしている曲がある謎も解ける。でもこの本がなかったら僕もまったくもって山本達彦というひとのバックボーンを伺い知れることはなかっただろう。今もコアファンを除いてはあまりよく知らないひとが多いだろうとも思うのだ。『突風』『メモリアルレイン』はいかにもニューミュージックという感じで、まだまだ黎明期の作品という感じであるが『ポーカーフェイス』は今に繋がる音ができている。その後東芝EMIに移籍して黄金期が開けるのも当然の帰結だったわけだ。でもこうした考察も長きに渡って山本達彦の音楽を聴いて知ったことばかりであり、それこそインターネットのツールがあり達彦さんや田原さんが書いているブログなどもありつつも、それでもまだ『夜のピアノ』の内容を知り得ていないファンは僕よりも若ければ若いほど確実にあるはずだ。コアファンの囲い込みっていうのは当然のこととはいえ、どうしたって新たなファンが出逢う可能性を薄めてはいけない。その意味では今回のボックスは期待以下だったなぁ…。予算がなかったのかなぁとかいろいろ邪推してしまう職業病な自分がまた自己嫌悪してしまうんだけれど。