ラッツ&スター「憧れのスレンダーガール」

落ち込んだ時の復活方法 ブログネタ:落ち込んだ時の復活方法 参加中

 何かに裏切られて、躓いて、どうにもこうにも袋小路で、解決策がなくて、頼れる宛もなくて、とりあえず今は時間が過ぎるのをやり過ごすしかなくて…そんな逆境なりなんなりにたまに感じられる幸福感のために誰もが我慢して生きているんだと思います。面倒くさいのでそれはもう誰だってだいたいはそういうもんだと思うことにします。

 さてそんな落ち込んだときの自分を救済する方法ってみなさんなんでしょう? お酒? ショッピング? クラブに行って踊る? 車走らせる? バイク? スポーツ? 旅行? …ひとそれぞれだよね。僕の場合は音楽です。聴くのも弾くのも作るのも書くのも一通りやりますので。しかしそんな音楽に裏切られてしまったらどうすればいいんでしょう? そして救済方法にドラッグを選ぶという場合。薬物問題なんて今始まったことではありません。が、ここんところあまりにそういうニュースが多いとは思う。でもって、そういうのを社会のせいとかにするのは10代までにしておきたい。やはりどうしようもない時代の中でいかにサヴァイヴァルをしていくかが働き盛りの人間の正常なる思考だとしておきたいので。

 先週からの件でとにかくショックを受けたのは田代まさしさんの再々再々逮捕でした。僕、もともとファンでしたし応援していたんです。そして今回こそ断ち切ってくれると信じていた。着々とメディア復帰の動向に動いていたしみんな基本的に応援姿勢でしたよね。一部では甘いという声もあったし、結果的にそういう発言者の危惧する結果になってしまったわけなんですけれど、僕なんかそんなアマちゃんな発想により余計にショックを受けているのです。僕、お笑いの田代まさしなんてどうでもよかった。それよかあなたにはソウルミュージック/ドゥワップがあるじゃないかと。復帰後、企画盤ではあったけれど音楽もやるようになって、その辺は興味持てなかったんだけれど。ただ去年からの動向ではラッツファンなら知っているだろうけれど、田代まさし&山崎廣明監修によるDoo-WopコンピレーションCD『DOO-WOP MANIA ORIGINAL VOL.1』がリリースされたり、しかもこれは伏線で山崎廣明&ダイナミクスを率いてのニュー・アルバム『ジャップ! ジャンプ! ジャイヴ!』に繋がっていた。この中で田代まさしは2曲リードヴォーカルをとっているんです。インディーズだから出してくれるとは思うんだけれどどうだろう? でもってラッツ&スターBOX『The Complete History of RATS&STAR Complete Black』もリリースされた。マーチンのアニヴァーサリーライブでの共演は叶わなかったけれど、そのほかではちょくちょく共演するようにもなっていたんです。僕はこのままいけばラッツ&スター再編は夢じゃないと思っていました。現にマーチンも「いつか田代を俺の横に立たせたい」と公言していたわけですから。そんな中、まさかの報道…TBSラジオ「ゆうゆうワイド」で臨時ニュースみたいに入ったのを聞いたんですが、その瞬間別に関係者でもないので頭が真っ白になりました。

 しかし、正直再犯性に関しては否定的というわけではなかった。煙草でさえあんなにやめられずに困っているひとがいるというのに、一度薬物を知った身体がそう簡単に断ち切ることができるか? 実際、彼はすでに再犯者だったわけだし、同様に好きな音楽家のケースとしては岡村靖幸もいます。岡村ちゃんは裁判時、出所後はカウンセリングを受けることを公言していたので多分今そういうリハビリ期間なのかなという感じもしますが、それでも彼に次がないとはいえないと思う。これは彼らを信用する、しないというんではなくて、薬物の常習性というのは並の人間で太刀打ちできるものではないんだっていうデータがきっちりあるわけですから。やめようと思っても、たとえば睡眠時に夢でキメてる快感が蘇ったりするわけだよ? 本人のハイヤーパワーで簡単に完治できる容易いことじゃない。病気なんだもの。その上でイネイブラーの手招きなんて常にあるんだろうから。ダルクに通って特定の医師について、それこそ定期的に警察署に出向いて目の前で尿検査だとか、徹底的なケアをしてなんとかまともな生活が近づいてくるんだと思う。田代まさしの出所後の言葉で気になったものが2つある。「あんな(刑務所で)つらい想いをしたんだから二度と薬物には手を出すわけがない」「(薬物反応がないという)医者の診断書も持っている」…この手の発言は考えの浅はかなことの証明なんだよね。どんなつらい経験をしようが断てないのが薬物中毒なんだから。

 報道を聞いたとき、一緒に逮捕された女性に「また薬物の道に引きづりやがって!」と一瞬逆上したんだけれど、多分彼女は田代まさしのカモフラージュとして薬物を入手していたんだろうし、彼女がどれだけ薬物に対する経験値があったのかはしらないが、得てして親密な人間関係ほどイネイブラーになりやすいっていう落とし穴もあるってこと。もちろん最大に悪いのは田代まさし本人に違いないわけだけれど、周りのスタッフなり保護観察者も甘かったと言わざるをえない。「じゃぁ、どうすればいいんだ!?」って言われても困るけれど、極端な話、薬物中毒者に人権なんてないんだっていうくらいに監視していないと。本当それくらいどうにもならないんじゃないかって気がする。手を出すときは「一回だけ」と思うんだし、そんなもん禁酒禁煙ダイエットのひとも一緒でしょう? その「一回だけ」の自分との葛藤で勝てるひとがどれだけいるか? 奇麗ごとじゃないんだよ。なかなか難しいのでは? 僕が田代まさし本人だったらやはり自信ないね。どれだけ迷惑がかかるひとの顔やら、悲しむファンの顔が脳裏によぎろうとね。快楽ってそういうもの。

 別の発想もあった。快楽には快楽で打ち勝つ。クスリの快楽に打ち勝つのはひょっとしたら音楽では? 田代まさしでも岡村靖幸でも最後の望みはそこなのでは? ずーっとそう思っていた。今も思う。だからバンドやろうとしていた動向は良いと思っていたんだけれどね…そんな甘くはなかった。つまりは田代まさしは僕のそういう期待を二重の意味で裏切った。それでも僕はあまちゃんだからさっさと刑期まっとうして次こそ更生しろって思うけれどね、もしくは死ぬか。僕なら死ぬかな。それくらい今回の裏切りっていうのはとてつもなく重たい。絶望的。でも先述のように放っておいて治るものじゃないんだ、薬物中毒は。結局は誰かが手を差し伸べなければいけないんだろうし。じゃなかったら、アムステルダムにでも高飛びしたら? 最もこの犯罪歴で“コーヒーショップ”は無理だろうけれどね。

 重ね重ね「お笑い」のことはわからないのだけれど、ミュージシャン/パフォーマーとしての田代まさしはどんなジャンキーにしろ魅力的だ、残念ながら。彼に見切りつけてラッツ&スターを再編しても物足りないものになるだろうしね。ラッツ再編の夢はもしかしたら、いや、もしかしなくてもこれで終わりかも。でも人間生きていれば奇蹟は起きるから。でもって真逆のことを書くけれど、僕のように『Mr.BLACK』でも『SING! SING! SING!』でも『SOUL VACATION』でも、“残りの人生であと何回聴くことができるんだろうな”とそういう覚悟で聴く人間にとっては、今回のような事件は本当に絶望的なことなんだ。音楽でもなんでも生きていればであって、実際問題僕も田代まさしも先はそう長くないかもしれない。だから一瞬の快楽に身を落ちるよりも、レコードなりライブパフォーマンスなり“田代マサシ”しての歌詞や描画…後世に残るものに生命をかけてほしい。あんたもう人一倍、しかも一般人が獲ない快楽を散々味わって来たんだ。この先は慈善事業で身を滅ぼすくらいのつもりでやってもお釣りがくるんだろうしね。

 悔しいけれど僕だけはあなたを待っているよ。ひょっとしたらお互いあと何ヶ月生きられるかわからないような身体なのかもしれないけれどさ。好きになっちゃったんだから仕方がない、あなたにとってのマリファナみたいなものなんだろうね、僕にとっての音楽ってさ。