高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。
私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。
自己紹介など
1. 自己紹介
https://www.ameba.jp/profile/general/release-advisor/
2.高齢親の囲い込み問題について体系的な説明(ChatGPT DeepResearchより)
https://ameblo.jp/release-advisor/entry-12919635429.html
3.出版済の電子書籍キンドルリストはこちら
https://ameblo.jp/release-advisor/entry-12920372756.html
4.無料オンライン相談(30分)を受付しております(2025/7時点)。詳しくは以下のホームページをご覧ください。
30.親の意思をどう確認するか?判断能力があいまいな場合の対処
親の意思が見えない。
きょうだいの一人が面会や連絡を制限し、他の家族は「本当に親が望んでいるのか?」と疑いを抱く。
こうした“囲い込み”の現場で最初に問われるのは、親の「意思の確認」です。
高齢になると判断能力は白黒ではなくグラデーションになり、時間帯や環境で揺らぎます。
本稿では、平易さを保ちつつ、法律・税務・心理の観点を交えて、判断能力があいまいな場合の“実務的な意思確認のしかた”をまとめます。
一般的な情報提供であり、具体的な手続は各専門職(弁護士・司法書士・公証人・医師等)へ個別相談してください。
1. 原則:本人の意思を最優先する
意思決定は「本人の権利」です。
家族が代わりに決めるのはあくまで例外であり、まずは本人が理解できる形に情報を整え、決められる部分は本人に決めてもらう「意思決定支援」が基本姿勢になります。判断能力は行為ごとに評価され(例:大きな不動産売買と、日々の生活選好は別)、同じ人でも「午前中ははっきりしている」「静かな場所だと理解が進む」などの差が出ます。
2. 判断能力はグラデーションで捉える
「話せる/話せない」で切らず、次の三点で見立てます。
- テーマ別能力:財産・医療・居住・面会など、領域ごとに理解力は異なる。
- 環境依存:時間帯(夕方は疲れやすい)、同席者(威圧する家族の前では黙る)、騒音や照明。
- 反復での安定性:同じ説明を日を改めても同様に理解・選択できるか。
3. 意思確認の実務ステップ(6段階)
- 目的の明確化
何を決めるのかを一つに絞る(例:面会の頻度、生活の希望、相続方針の大枠など)。 - 場を整える
静かで中立的、短時間(15~30分)を目安。疲れやすい場合は午前中。利害関係者が圧をかけない座席配置。水分や眼鏡・補聴器の準備。 - わかりやすい説明+要約返し(Teach-back)
専門用語を日常語に置換し、図やメモを使う。説明後に「いま私が言ったことを、あなたの言葉で教えてください」と要約してもらい、理解度を確認する。 - 選択肢は少なく、保留と撤回を可
二択+“保留”を提示する。「今日はここまで、明日また考えましょう」と時間的余裕を必ず示す。 - 価値観・感情の聴取
事実質問(誰と住みたいか)に加え、価値観質問(何を大切に感じるか)を聞く。過去の生活史や口癖から“その人らしさ”を拾い上げる。 - 記録化
日時、場所、同席者、説明内容(使った紙資料も保存)、本人の言葉(できれば逐語)、合意事項、保留事項。録音・録画や、第三者の同席メモがあると後日の紛争予防に有効。
4. 記録の具体策
- 面談メモ/議事録:A4一枚で要点化。本人の発言は引用符で。署名・押印が取れればベター。
- 音声・映像:短時間で要点のみ。疲労が見えたら中断。
- 医師の意見書:もの忘れ外来や主治医に“現時点の理解・判断の目安”をコメントしてもらう(医療機関による)。
- 公的関与:重要意思(遺言・任意後見契約など)は、公証人の関与で手続の適正を担保する方法がある。
※いずれも証拠化のためであり、誘導や圧力をかける材料に使ってはならない。
5. 第三者を入れる判断基準
- 利害関係が強いきょうだい同士で合意形成が難しい
- 親が特定の子の前だと萎縮する
- 財産・住まい・医療など影響が大きいテーマ
この場合、地域包括支援センター、ケアマネジャー、社会福祉士、公証人、弁護士・司法書士など“中立目線を持てる専門職”の同席を検討します。税務・相続設計に関わる場面では、贈与や遺言の前に「本人の意思が十分に表明できているか」を確認し、必要に応じて法的専門家へ接続します(ここは非弁行為にあたらない範囲での一般的助言に留めます)。
6. 使える仕組みと道具
- 任意後見契約・見守り契約・財産管理契約:判断力が不安定なうちに将来の代理人を決める。公証役場での手続が一般的。
- ACP(人生会議)/事前指示書:医療・ケアの希望を平時に共有。
- 家族会議のテンプレ:定例化(例:月1回30分)、議題と結論、次回までの宿題を明記。
- 意思表示カード/チェックリスト:視覚化して迷いを減らす。
- 面会合意書:面会の頻度・方法・同席者・オンライン可否を合意文書にする。
7. “囲い込み”下での工夫
- 個別面談の確保:圧になる同席者を外し、短時間で本人だけに聞く機会を要請。
- 文書による意思確認:手紙や質問票を郵送し、本人の筆跡や返答を保存。
- オンライン面談:施設ルールに沿って職員の同席で短時間実施。
- 第三者同席の要請:包括支援センターやケアマネに「中立の場の設定」を依頼。
- リスクの記録:通帳の急な移動、印鑑の所在不明、連絡遮断の急変など“異常の兆し”は日付付きで記録し、感情論ではなく事実で相談につなげる。
8. 事例で学ぶ(書面上の表現/心理的な内面仮説を区別)
事例A:居住と生活の希望
- 書面上の事実(想定):父は夕方に混乱しがち。午前10時、静かな個室で「今後どこで暮らしたい?」をテーマに15分面談。写真アルバムを見ながら生活史を想起。父は「病院より家が落ち着く。長男の近くが安心」と発言。面談メモに署名。
- 心理的な内面仮説:家の“匂い”や馴染みの商店街が安心感の基盤。長男への信頼は“送迎をよくしてくれた”体験の積み重ね。
事例B:生前贈与の意思
- 書面上の事実(想定):母が「長女に500万円を前渡ししたい」と表明。専門用語を避け、税負担・他の兄弟への影響を図で説明。Teach-backで母が自分の言葉で要点を再述。翌週に同旨を再確認し、医師の簡易意見とともに公証役場へ相談。
- 心理的な内面仮説:長女の介護負担への感謝を形にしたい。公平と平等の違いを理解したうえで「納得のいく分け方」を望む。
事例C:面会交流の希望
- 書面上の事実(想定):父が「月1回は皆に会いたい」と発言。面会合意書に「第1土曜午前/1時間/職員同席/オンライン代替可」を明記し、家族全員が署名。
- 心理的な内面仮説:「会うこと」が家族である実感と生きがいにつながる。頻度より“予定が見えている安心”が重要。
9. NG例とリスク管理
- 誘導尋問(「こうしたいんだよね?」と答えを誘う)
- 長時間面談・疲労時の意思確認、飲酒後の確認
- 録音もメモもない口頭合意だけで重要事項を決める
- 専門家の関与なしに遺言や大規模財産移動を進める
- 利害関係者が周囲を固めて他の家族を排除する
これらは後日の紛争・無効主張の温床になります。
10. よくある疑問
- 診断が出ていないが、物忘れがある:診断名の有無と意思能力は別問題。テーマごと・場面ごとに支援を工夫し、反復確認と記録で補強します。
- 一度決めた意思は変えられない?:状況や理解が深まれば変更はあり得ます。撤回可能性を常に開いておくのが誠実です。
- 家族が対立している:中立第三者の同席で“圧”を除去し、本人の言葉を丁寧に拾います。合意書面化で運用を安定させる。
まとめ:今日からできるチェックリスト
- テーマを一つに絞り、静かな場を15~30分確保する
- 説明は日常語と図、最後に本人の要約で理解確認
- 選択肢は少なく、保留と撤回を常に可にする
- 面談メモ・録音・第三者同席で“事実”を残す
- 重要事項は医師・公証人・弁護士・司法書士等と連携する
親の意思は、適切な支援と環境があれば、たとえ“あいまい”に見える状況でも確かに届きます。家族それぞれの正しさをぶつけ合う前に、まずは“その人の声”を取り戻す――それが囲い込みの解消に向けた第一歩です。
人気記事ランキング
1.22.面会交流権に法的な権利はあるのか?― 親に会えない40〜50代のあなたへ
2.21. 成年後見制度と囲い込みの関係 ― 親に会えないとき、何が起きているのか ―
3.09_高齢者施設で実際に起きている「家族間対立」─ 面会、財産、そして“親をめぐる戦争”
(期間: 2025/7/17~2025/8/16)
ブログのご紹介
ブログ主宰 しらいわ は以下のブログも作成しています。併せてご覧ください。
1. 自己愛性ハラスメント対策室 ~ 感情的な人に振り回されている方向け~
2. 高齢親の囲い込み 解放アドバイザー ~ 介護が必要になった高齢親が自分以外のきょうだいに囲い込まれて会えなくなった方へ~
3. 家族心理学・家族療法スクール オンライン ~ 家族関係に悩む方や支援職のための学びの場。家族との距離の取り方や関係性の見直しに役立つ知恵を、心理学の視点から発信
4. あなたのメンタルを守りたい (休止中)~心が少し軽くなるメンタルケアの情報を発信中~
5. インナーチャイルド解放コーチ しらいわとしまさ (休止中)幼少期の心の傷が未処理のため大人になっても生きづらさを感じる方へ
6. 感情の地図 〜EQナビゲーターが届ける“心の航海術”(休止中)~感情と向き合う「心の航海術」を発信中
7. 女性起業家×アドラー心理学(準備中)