高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。


私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。

 

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30.親の意思をどう確認するか?判断能力があいまいな場合の対処

 

親の意思が見えない。

きょうだいの一人が面会や連絡を制限し、他の家族は「本当に親が望んでいるのか?」と疑いを抱く。

 

こうした“囲い込み”の現場で最初に問われるのは、親の「意思の確認」です。

高齢になると判断能力は白黒ではなくグラデーションになり、時間帯や環境で揺らぎます。

 

本稿では、平易さを保ちつつ、法律・税務・心理の観点を交えて、判断能力があいまいな場合の“実務的な意思確認のしかた”をまとめます。

一般的な情報提供であり、具体的な手続は各専門職(弁護士・司法書士・公証人・医師等)へ個別相談してください。

 

 

 

1. 原則:本人の意思を最優先する

 

意思決定は「本人の権利」です。

家族が代わりに決めるのはあくまで例外であり、まずは本人が理解できる形に情報を整え、決められる部分は本人に決めてもらう「意思決定支援」が基本姿勢になります。判断能力は行為ごとに評価され(例:大きな不動産売買と、日々の生活選好は別)、同じ人でも「午前中ははっきりしている」「静かな場所だと理解が進む」などの差が出ます。

 

 

2. 判断能力はグラデーションで捉える

 

「話せる/話せない」で切らず、次の三点で見立てます。

  1. テーマ別能力:財産・医療・居住・面会など、領域ごとに理解力は異なる。
  2. 環境依存:時間帯(夕方は疲れやすい)、同席者(威圧する家族の前では黙る)、騒音や照明。
  3. 反復での安定性:同じ説明を日を改めても同様に理解・選択できるか。

 

 

3. 意思確認の実務ステップ(6段階)

  1. 目的の明確化
     何を決めるのかを一つに絞る(例:面会の頻度、生活の希望、相続方針の大枠など)。
  2. 場を整える
     静かで中立的、短時間(15~30分)を目安。疲れやすい場合は午前中。利害関係者が圧をかけない座席配置。水分や眼鏡・補聴器の準備。
  3. わかりやすい説明+要約返し(Teach-back)
     専門用語を日常語に置換し、図やメモを使う。説明後に「いま私が言ったことを、あなたの言葉で教えてください」と要約してもらい、理解度を確認する。
  4. 選択肢は少なく、保留と撤回を可
     二択+“保留”を提示する。「今日はここまで、明日また考えましょう」と時間的余裕を必ず示す。
  5. 価値観・感情の聴取
     事実質問(誰と住みたいか)に加え、価値観質問(何を大切に感じるか)を聞く。過去の生活史や口癖から“その人らしさ”を拾い上げる。
  6. 記録化
     日時、場所、同席者、説明内容(使った紙資料も保存)、本人の言葉(できれば逐語)、合意事項、保留事項。録音・録画や、第三者の同席メモがあると後日の紛争予防に有効。
 

 

4. 記録の具体策

  • 面談メモ/議事録:A4一枚で要点化。本人の発言は引用符で。署名・押印が取れればベター。
  • 音声・映像:短時間で要点のみ。疲労が見えたら中断。
  • 医師の意見書:もの忘れ外来や主治医に“現時点の理解・判断の目安”をコメントしてもらう(医療機関による)。
  • 公的関与:重要意思(遺言・任意後見契約など)は、公証人の関与で手続の適正を担保する方法がある。

※いずれも証拠化のためであり、誘導や圧力をかける材料に使ってはならない。

 

 

5. 第三者を入れる判断基準

  • 利害関係が強いきょうだい同士で合意形成が難しい
  • 親が特定の子の前だと萎縮する
  • 財産・住まい・医療など影響が大きいテーマ
    この場合、地域包括支援センターケアマネジャー社会福祉士公証人弁護士・司法書士など“中立目線を持てる専門職”の同席を検討します。税務・相続設計に関わる場面では、贈与や遺言の前に「本人の意思が十分に表明できているか」を確認し、必要に応じて法的専門家へ接続します(ここは非弁行為にあたらない範囲での一般的助言に留めます)。

 

 

6. 使える仕組みと道具

  • 任意後見契約・見守り契約・財産管理契約:判断力が不安定なうちに将来の代理人を決める。公証役場での手続が一般的。
  • ACP(人生会議)/事前指示書:医療・ケアの希望を平時に共有。
  • 家族会議のテンプレ:定例化(例:月1回30分)、議題と結論、次回までの宿題を明記。
  • 意思表示カード/チェックリスト:視覚化して迷いを減らす。
  • 面会合意書:面会の頻度・方法・同席者・オンライン可否を合意文書にする。

 

 

7. “囲い込み”下での工夫

  • 個別面談の確保:圧になる同席者を外し、短時間で本人だけに聞く機会を要請。
  • 文書による意思確認:手紙や質問票を郵送し、本人の筆跡や返答を保存。
  • オンライン面談:施設ルールに沿って職員の同席で短時間実施。
  • 第三者同席の要請:包括支援センターやケアマネに「中立の場の設定」を依頼。
  • リスクの記録:通帳の急な移動、印鑑の所在不明、連絡遮断の急変など“異常の兆し”は日付付きで記録し、感情論ではなく事実で相談につなげる。

 

 

8. 事例で学ぶ(書面上の表現/心理的な内面仮説を区別)

 

事例A:居住と生活の希望

  • 書面上の事実(想定):父は夕方に混乱しがち。午前10時、静かな個室で「今後どこで暮らしたい?」をテーマに15分面談。写真アルバムを見ながら生活史を想起。父は「病院より家が落ち着く。長男の近くが安心」と発言。面談メモに署名。
  • 心理的な内面仮説:家の“匂い”や馴染みの商店街が安心感の基盤。長男への信頼は“送迎をよくしてくれた”体験の積み重ね。

 

事例B:生前贈与の意思

  • 書面上の事実(想定):母が「長女に500万円を前渡ししたい」と表明。専門用語を避け、税負担・他の兄弟への影響を図で説明。Teach-backで母が自分の言葉で要点を再述。翌週に同旨を再確認し、医師の簡易意見とともに公証役場へ相談。
  • 心理的な内面仮説:長女の介護負担への感謝を形にしたい。公平と平等の違いを理解したうえで「納得のいく分け方」を望む。

 

事例C:面会交流の希望

  • 書面上の事実(想定):父が「月1回は皆に会いたい」と発言。面会合意書に「第1土曜午前/1時間/職員同席/オンライン代替可」を明記し、家族全員が署名。
  • 心理的な内面仮説:「会うこと」が家族である実感と生きがいにつながる。頻度より“予定が見えている安心”が重要。

 

 

 

9. NG例とリスク管理

  • 誘導尋問(「こうしたいんだよね?」と答えを誘う)
  • 長時間面談・疲労時の意思確認、飲酒後の確認
  • 録音もメモもない口頭合意だけで重要事項を決める
  • 専門家の関与なしに遺言や大規模財産移動を進める
  • 利害関係者が周囲を固めて他の家族を排除する

これらは後日の紛争・無効主張の温床になります。

 

 

10. よくある疑問

  • 診断が出ていないが、物忘れがある:診断名の有無と意思能力は別問題。テーマごと・場面ごとに支援を工夫し、反復確認と記録で補強します。
  • 一度決めた意思は変えられない?:状況や理解が深まれば変更はあり得ます。撤回可能性を常に開いておくのが誠実です。
  • 家族が対立している:中立第三者の同席で“圧”を除去し、本人の言葉を丁寧に拾います。合意書面化で運用を安定させる。

 

 

まとめ:今日からできるチェックリスト

  1. テーマを一つに絞り、静かな場を15~30分確保する
  2. 説明は日常語と図、最後に本人の要約で理解確認
  3. 選択肢は少なく、保留と撤回を常に可にする
  4. 面談メモ・録音・第三者同席で“事実”を残す
  5. 重要事項は医師・公証人・弁護士・司法書士等と連携する

 

親の意思は、適切な支援と環境があれば、たとえ“あいまい”に見える状況でも確かに届きます。家族それぞれの正しさをぶつけ合う前に、まずは“その人の声”を取り戻す――それが囲い込みの解消に向けた第一歩です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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