高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。


私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。

 

自己紹介など

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29.介護記録を取る/開示請求する際の注意点―囲い込みを防ぎ、親の権利と家族の関係を守るために―
 

「最近、きょうだいが介護先との窓口を独占し、こちらには何も共有されない」

「施設に問い合わせても“家族代表者からの依頼のみ”と言われてしまう」

 

こうした相談が増えています。囲い込みの渦中では、感情が揺さぶられる一方で、判断の土台となるのは客観的な記録です。
 

本記事では、実務と心理の両面から、

 

①家族が自分で取る介護記録の作り方

②施設・事業者に対する記録の開示請求の要点

③断られた場合の対応

 

を整理します。

 

なお、以下は一般論であり、個別の法的助言ではありません。具体的な紛争や手続きは弁護士等の専門家へご相談ください(非弁行為を避けるための注記)。

 

 

 

1.なぜ「記録」が要になるのか

 

書面上の表現(事実)

  • 事実の時系列が可視化され、面会制限・身体状態の変化・事故対応・費用の流れ等を第三者に説明できる。
  • 介護サービスの質改善や、担当者会議での建設的な議論に資する。
  • 紛争・後見・苦情申立て・税務申告(医療費控除等)での裏付けになる。

心理的な内面仮説(背景理解)

  • 記録は「相手を責める道具」ではなく、「不安を言語化し、関係を整理する枠組み」。
  • 感情と事実を分けて残すことで、無用な対立を避け、交渉の余地を残す。
 

 

2.家族が自分で取る「介護記録」――今日からできる実務

 

記録する項目(最低限)

  1. 日時・場所・関与者(職員名・部署を含む)
  2. 面会・連絡のやり取り(要点、相手の回答、次の約束)
  3. 親の様子(食事量・睡眠・表情・発言・痛み訴え、転倒痕の有無など)
  4. 重要イベント(転倒・発熱・受診・身体拘束の説明・同意取得の有無)
  5. 介護サービスの提供内容と所要時間(分かる範囲で)
  6. 金銭関連(領収書、預り金の出納、交通費メモ)
  7. 添付(写真・文書の写し。施設ルールに従い、他入居者の映り込みに配慮)

書き方のコツ

  • 事実/評価の分離:「看護師Aが13:20に“解熱傾向”と説明」までが事実。「安心した」は評価。
  • 固有名詞と数字:人名・部署・体温・時間・回数を入れる。
  • 一次情報優先:伝聞は「Bさんからの伝聞」と明示。
  • 一件一葉:1出来事=1ページ(または1ノート)で検索性を高める。

フォーマット例(簡易テンプレ)

  • 表題/通し番号
  • いつ(日時)/どこで/誰が
  • 何が起きたか(事実)
  • こちらの要望・合意点・次回確認事項
  • 添付(写真・領収書・通知文など)

NGと注意

  • 無断の録音・撮影、SNSでの拡散(プライバシー・施設ルール違反の恐れ)。
  • 感情的表現や断定的非難のみの記載(交渉の障害)。
  • データ散逸(クラウド+紙バインダーの二重保管を推奨)。
 
 

 

3.施設・事業者が保有する主な記録(概観)

  • 介護過程:アセスメント、ケアプラン、モニタリング、サービス提供記録(介護・看護)、担当者会議録
  • 安全管理:事故・ヒヤリハット報告、再発防止策、身体拘束の実施記録と根拠
  • 医療・服薬:服薬管理表、医師指示書、受診記録、検査結果の受領状況
  • 連絡・面会:面会簿、苦情・要望・回答記録、連絡票
  • 請求関連:介護給付の算定根拠、利用明細、預り金出納
    ※保存年限や開示範囲は、サービス類型・規程で異なります(概ね数年単位)。古いものは残っていない可能性があるため、期間を特定して請求するのが合理的です。
 

 

4.開示請求の基本設計

 

誰が請求できるか(原則)

  • 本人
  • 代理人(本人の委任状+本人確認書類)。
  • 法定代理人(成年後見人等。審判書謄本・登記事項証明の提示)。
  • 家族でも、本人の明示同意があれば可能な場合が多い。判断能力が不十分な場合は代理権の確認が要。

事前に揃える書類

  • 本人確認(写し)/請求者の本人確認
  • 続柄の分かる公的書類(必要に応じて)
  • 代理権の根拠(委任状、後見登記事項証明等)
  • 請求の目的と利用範囲(苦情解決、本人理解、医療連携等。対立色の強い表現は避ける)
  • 対象期間・対象文書の特定(例:2025年4–6月のケア記録と事故報告)

方式・費用

  • **閲覧のみ/写し交付(紙・PDF)**を選択。
  • 手数料や準備期間は規程依存。早期に相談し、相手の作業負担に配慮して分割交付も可。

文面テンプレ(要約)

介護記録等の開示・写し交付のお願い
貴施設に入所中の○○(生年月日:…)の家族△△です。本人同意(別紙)に基づき、下記の期間・文書の開示(写し交付)をお願いします。

  1. 対象期間:2025年4月1日〜6月30日
  2. 対象文書:ケアプラン、サービス提供記録、事故報告、面会簿の該当部分
  3. 利用目的:本人状態の把握と家族間の情報共有、今後の支援方針検討
  4. 交付方法:PDFデータ(パスワード付)可。費用は貴規程に従い負担します。
  5. 連絡先:…
    以上、業務ご多忙のところ恐れ入りますが、可能な日程をご教示ください。
 
 

 

5.断られた場合の丁寧な打開策

 

よくある説明と返し方(攻撃せず、根拠と配慮で)

  • 「家族代表者のみ対応」→「代表者一本化の方針は理解します。本人同意書と委任状を添付しますので、期間と文書を限定して交付いただけますか」
  • 「個人情報なので…」→「本人の自己情報の開示であり、同意書を同封しています。第三者情報はマスキングで構いません」
  • 「作業が大変」→「負担軽減のため、最近3か月分のみ先に、残りは次回で結構です」

外部の関与

  • まずは地域包括支援センターや自治体の高齢福祉・介護保険担当に相談。
  • 明白な不当拒否や権利侵害が疑われるときは、弁護士への相談も選択肢。
 

 

6.記録を「活かす」整理術(実務)

  • タイムライン化:自作記録と開示資料を同じ時系列に並べる。
  • エビデンス束ね:一件一束(出来事→証拠→相手説明→当方要望→結果)。
  • 争点マップ:面会、転倒、金銭、医療連携などテーマ別に論点を見える化。
  • 合意の文書化:口頭合意→メール要約→議事録→サイン、の順で確度を上げる。
 
 

 

7.囲い込みを予防する「先手」

  • 同意書の事前取得:判断力が十分なうちに「家族間共有に同意」文面を作成。
  • 家族代表者の合意メモ:複数連絡先を施設に登録し、情報共有ルールを文書化。
  • 委任契約・見守り契約:親と子の間で、連絡受領・情報取得の権限を明確化。
  • 後見・任意後見の検討:判断能力低下に備え、誰が代理権を持つかを早めに設計。
  • 証憑の保存:領収書・明細は確定申告や費用精算の根拠。医療費控除の可能性もあるため、年単位で保管。
 

 

8.よくあるQ&A(要点だけ)

 

Q:費用はどれくらい?
A:規程によります。写しの枚数・方法で変動。事前に見積り依頼を。

 

Q:第三者情報は見られない?
A:他入居者や職員の個人情報はマスキングが一般的。本人に関する部分は原則対象。

 

Q:本人が同意してくれない
A:本人の意思が最優先。説得ではなく、理解のための説明と小刻みな共有から。どうしても必要な場合は法的代理の検討を。

 

Q:相続人は亡くなった親の記録を取れる?
A:取扱いが分かれる領域。目的・範囲を明確にし、施設規程や専門家の助言に沿って進める。

 

Q:録音・録画は?
A:施設ルールと法令に配慮。事前許可と限定利用、第三者の写り込み回避が基本。

 

 

9.まとめ――安心・理解・行動へ

  • 囲い込み下では、感情と事実を切り分ける記録が力になります。
  • 開示請求は「攻撃」ではなく、本人の生活の質を高めるための情報連携です。
  • 期間・文書を限定し、相手の負担に配慮した丁寧な依頼が、結果的に最短距離。
  • 断られても、粘り強く・礼節を尽くしてステップを踏めば道は開けます。

 

(注)本稿は一般的解説であり、特定の事案に対する法的助言ではありません。手続・紛争対応は弁護士等の専門家にご相談ください。

 

 

 

 

 

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