高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。
私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。
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27. 家庭裁判所への申し立てで何ができる?―親の囲い込み問題に悩む人のために
はじめに
「親に会いたいのに、兄弟姉妹の一人に阻まれて会えない」
「親のお金がどう管理されているのか不透明で不安」。
高齢の親をめぐる“囲い込み問題”でよく聞かれる声です。
親の囲い込みは、単なる兄弟姉妹間の感情のもつれではなく、深刻な人権問題であり、時には財産トラブルや虐待の温床にもなりえます。
こうした状況に置かれたとき、家庭裁判所へ申し立てることができる制度があります。
しかし「家庭裁判所に行けばすべて解決してくれる」と誤解している方も少なくありません。
そこで今回は、「家庭裁判所に申し立てると何ができるのか」を整理しながら、現実的な効果と限界をわかりやすく解説していきます。
1. 家庭裁判所とは何をするところか
家庭裁判所は、家族や身近な生活に関する紛争や問題を扱う専門の裁判所です。
たとえば以下のような分野を担当します。
- 離婚・親権・養育費などの家事事件
- 相続、遺産分割、遺言の効力に関する問題
- 成年後見制度や財産管理に関する問題
- 面会交流(離婚後の親子、または高齢親と子の交流)
- 保護命令や人身保護などの人権救済
つまり、家庭裁判所は「刑事事件」や「商取引の大きな訴訟」ではなく、身近な家族・親族間のもめごとを扱う場所なのです。
2. 高齢親の囲い込みに関係する家庭裁判所の手続き
親が囲い込まれ、会えなくなったり、財産が不透明になったりしたときに、家庭裁判所でできる主な申し立ては以下の通りです。
(1)成年後見制度の利用申立て
親が認知症などで判断力が低下している場合、家庭裁判所に「成年後見人」を選任してもらうことができます。
成年後見人は、親の財産を管理したり、介護サービスの契約を代行したりする立場にあります。
ただし、後見人に選ばれるのは必ずしも子どもではなく、弁護士や司法書士といった第三者専門職が選ばれることも多いです。
「きょうだいの一人が勝手に親のお金を使い込んでいるのでは?」という疑念がある場合には、有効な制度ですが、後見人がつくことで家庭内のしこりがさらに強くなるケースもあります。
(2)保佐・補助の申立て
親がまだある程度判断できるものの、一部に不安があるときは「保佐人」「補助人」をつけてもらうことが可能です。
たとえば「大きな金銭契約のときだけサポートが必要」という状況に適しています。
(3)遺産分割前の財産管理人の選任
親が亡くなったあと、相続手続きに入る前に「財産を誰が管理するのか」で争いになることがあります。
このとき家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てることができます。
ただし、これは親の生前の囲い込み問題とは少しタイミングが異なります。
(4)面会交流の申立て
離婚後の子どもと親の面会交流だけでなく、「高齢親と子の交流」にも応用できるケースがあります。
例えば、兄弟の一人が親を施設に囲い込み、他の子どもに面会を拒んでいる場合、「面会交流の申立て」を通じて家庭裁判所に判断を求めることができます。
もっとも、この分野はまだ法制度上の整備が十分ではなく、必ずしも期待通りの結果が得られるわけではありません。
(5)人身保護請求(ハードルは高い)
親が事実上監禁されている、虐待を受けているといった深刻な状況では、「人身保護請求」という制度もあります。
これは人権救済のための強力な手続きですが、要件は厳しく、現実には多くのケースで認められません。
3. 家庭裁判所に申し立てるメリット
では、家庭裁判所に申し立てるとどのようなメリットがあるのでしょうか。
- 中立的な立場で判断してくれる
兄弟同士で話し合っても平行線をたどることが多いですが、裁判所を介することで第三者の公平な視点が入ります。 - 法的拘束力がある
単なる話し合いではなく、裁判所の審判や決定には法的な効力があり、相手を動かす力になります。 - 親の利益を優先する枠組み
成年後見などの制度は、あくまで「親の生活と権利を守る」ことを目的にしています。
子ども同士の取り合いではなく、親のためにどうするかという視点を持ち込める点が重要です。
4. 家庭裁判所の限界
一方で、家庭裁判所には限界もあります。
- 「親に会いたい」という気持ちに十分応えてくれるわけではない
面会交流の申立てをしても、実際に定期的な面会が実現するとは限りません。
親自身が「会いたくない」と言えば、それが尊重される場合もあります。 - 時間と費用がかかる
成年後見制度を利用すると、毎月の報酬が発生することがあります。
裁判所の審理も数か月単位で進むため、すぐの解決を期待するのは難しいです。 - 家族関係の溝を深める可能性
裁判所を介することで「相手を訴えた」という感情が強まり、兄弟姉妹の関係が決定的に悪化することもあります。
5. 現実的な活用の仕方
こうしたメリットと限界を踏まえると、家庭裁判所への申し立ては「最後の手段」として考えるのが現実的です。
- まずは対話や調停を検討する
家庭裁判所にも「調停」という仕組みがあり、まずは中立的な調停委員を通じた話し合いからスタートします。
裁判に比べると柔軟な解決が期待できます。 - 親の意思を尊重する
たとえ囲い込みがあると感じても、親自身がどうしたいのかを確認することが大切です。
親の意思と子どもの思いがズレている場合、裁判所は親の意思を優先します。 - 専門家の助けを借りる
弁護士だけでなく、公認会計士・税理士、社会福祉士など、多方面の専門家が関わることで、より現実的な解決策が見えてきます。
6. まとめ
家庭裁判所への申し立てでできることは、主に以下の5つです。
- 成年後見制度の利用申立て
- 保佐・補助の申立て
- 財産管理人の選任
- 面会交流の申立て
- 人身保護請求(例外的)
これらはすべて「親の利益を守る」ことを基本にしています。
一方で、家庭裁判所は万能ではなく、「親にもっと会いたい」という感情面の願いには十分応えてくれないことも多いのが現実です。
だからこそ、まずは冷静に制度の限界を理解した上で、調停や専門家の助力を得ながら、一歩ずつ解決の道を探ることが大切です。
「親は家族みんなのもの」――。
その思いを胸に、家庭裁判所を上手に活用しつつ、高齢親が安心して過ごせる環境を取り戻していきましょう。
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(期間: 2025/7/17~2025/8/16)
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