高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。
私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。
自己紹介など
1. 自己紹介
https://www.ameba.jp/profile/general/release-advisor/
2.高齢親の囲い込み問題について体系的な説明(ChatGPT DeepResearchより)
https://ameblo.jp/release-advisor/entry-12919635429.html
3.出版済の電子書籍キンドルリストはこちら
https://ameblo.jp/release-advisor/entry-12920372756.html
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26.親の財産が“囲い込んだ子”の管理下にあるリスク
親の通帳・キャッシュカードや印鑑、マイナンバーカード、保険証券、権利証等が、きょうだいの一人の手元に集中している――。
介護や通院の実務を担う中で「私が預かっておくね」と始まることは珍しくありません。
しかし、この状態が長期化し、他の家族が中身を確認できないままになると、相続・税務・家族関係のすべてで深刻な火種になります。
本稿では、公認会計士・税理士としての実務視点と、「親は家族みんなのもの」という立場から、何が危険で、どう予防・是正すべきかを整理します。
なお、以下は一般的解説であり、具体的紛争の法的助言は弁護士、登記・後見等の実務は司法書士、税務は税理士へ個別にご相談ください。
1. 「管理下」とは何が起きている状態か
- 預貯金の出入金明細・残高が家族に共有されない
- 印鑑・通帳・キャッシュカード・暗証番号を特定の子が独占
- 不動産・保険・有価証券の契約書類がその子の保管下にある
- 代理権(任意後見・見守り契約・委任状等)をその子だけが把握
- 面会や連絡をその子がコントロールし、第三者確認が難しい
可視化されない「善意の管理」は、本人の自己決定を侵食し、家庭内の情報非対称を極端に拡大させます。
2. 主なリスク(法・税・家族)
- 使途不明金・横領疑義
介護費や生活費の名目で多額の引出しが続くと、後日の遺産分割や調停で説明責任が問われます。領収書・メモが無い支出は「原資は誰のものか」「本人の利益か」が焦点になります。 - 不当な名義変更・偏った生前贈与
預金の振替、保険受取人の変更、不動産の持分移転等が、他の家族に知られないまま進むことがあります。相続税では「名義預金」「贈与の成立要件未充足」などの否認リスクも。 - 納税資金・介護資金の枯渇
無計画な支出で流動資金が減ると、施設入居一時金・医療費・固定資産税の支払いが滞ります。結果として資産売却や高利の借入へ追い込まれることも。 - 遺言・公正証書への不当介入疑義
作成過程の独占や面会制限は、「影響力による意思形成の歪み」を疑われ、遺言の有効性争いを招きます。証拠化が不十分だと長期紛争化しがちです。 - 情報非対称による紛争の深刻化
残高・契約一覧を他の家族が見られない状態は、疑心暗鬼を増幅し、話合いの土台を壊します。心理的負荷は本人にも悪影響です。 - デジタル資産の散逸
ネット銀行・証券・ポイント・暗号資産等のID管理が一人に偏ると、退去・死亡時に所在不明となり、実質的に喪失します。
3. リスクが現実化するメカニズム
- 情報の独占 → 監視・牽制が働かない
- 「善意」の自己正当化 → 支出の線引きが曖昧化
- 面会・連絡の遮断 → 外部からの是正圧力が消える
- 証拠(領収書・記録)の欠落 → 後から検証不能
- 本人の認知機能低下 → 意思確認が困難になり紛争化
4. 事例と二つの視点
【事例】次女Aが母の通帳と印鑑を預かり、施設支払い・買物を代行。半年後、出金が月30万円超。兄Bが疑問を呈するも、明細は「忙しいから」と共有されず対立へ。
- 書面上の表現:明細・領収書の不備があり、支出の必要性・相当性の立証に弱点。
- 心理的な内面仮説:Aは介護負担の不満と「自分だけが頑張っている」感情から、自己報酬化(ガス代・外食代を混在)した可能性。他方Bは排除感から敵意が増幅。
このように、書面(証拠)と感情(物語)の両輪で分析しないと、解決は進みません。
5. いますぐできる予防策(最低限の型)
- 財産目録の共同更新
預金・証券・保険・不動産・年金・借入・デジタル資産を一覧化。保管場所・連絡先も記す。四半期ごとに家族で更新・署名。 - 二重承認ルール
10万円超の出金は、少なくとも別の家族(または第三者専門家)の事前・事後承認。LINEやメールで記録を残す。 - レシート・契約の電子保管
支払い根拠はスマホ撮影でクラウド共有。用途メモ(例:母食費、医療費、介護移動)を残す。 - 通帳・印鑑・カードの分散管理
物理的保管は別人が、暗証番号は封印保管。安易なカード共用を避け、可能なら口座振替・請求書払いへ移行。 - 月次レポート
出金サマリー、施設・医療の見込み費用、残高見通しをA4一枚で共有。エクセルでも十分。 - 本人意思の定期確認
本人が何を望んでいるかを録音・議事録化(可能な範囲で)。第三者(ケアマネ・医師・士業)同席での確認が理想。 - デジタル資産リスト
ID・パスワードはパスワードマネージャで管理し、「緊急アクセス」を第二承認者へ設定。
6. 望ましい制度設計(検討オプション)
- 任意後見契約・見守り契約
判断能力が十分なうちに、誰に・何を・どう管理してもらうかを契約化。定期報告条項を入れると透明性が高まります。 - 家族信託(民事信託)
不動産・預金を「信託財産」とし、受託者(管理者)と受益者(利益を受ける人)を分ける。受託者の報告義務や受益者代理人・信託監督人を置けば、独走を抑制できます。 - 監督・関与の外部化
税理士の月次監査、司法書士の信託監督、社会福祉士の見守りなど、第三者が入るだけで牽制が効きます。
※契約・登記・税務の設計は専門家と個別検討が必須です。
7. すでに「囲い込まれている」場合の初動
- 証拠の静かな確保
手元にある通帳コピー・振込票・領収書・家計簿・LINE履歴を体系的に保存。日付順のファイルに。 - 現況の客観化
「本人の生活実態」「入出金の流れ」「財産目録」「関係者マップ」を一枚にまとめる。 - 面会・情報開示の求め方を変える
感情的な非難ではなく、「領収書の写しを月末締めで共有してほしい」「10万円超は事前合意にしたい」とルール提案で。 - 第三者同席での場づくり
ケアマネ・包括支援センター・地域の専門職を交えて、本人の意思と費用計画を再確認。 - 手続の選択肢
緊急性が高ければ家庭裁判所の保全措置(後見申立て等)を弁護士と検討。名義変更・払戻しが疑わしければ、通帳等の開示・差止めの可否も含め、法的手段の適否を専門家と判断。
8. 家族内で合意すべき「お金の線引き」例
- 本人の生活費・医療費・介護費は原則本人資産から
- 介護者の交通費・駐車場・代替家事費はどこまで本人負担にするか上限を定める
- 介護者の食事・雑費は原則自己負担(例外は事前合意)
- 現金の立替は月次で清算し、レシート添付
- 贈与・名義変更は原則停止。実施するなら全員合意と第三者確認
9. 心のケア:疑いと責めから、「機能する仕組み」へ
「頑張っている自分を認めてほしい」という思いと、「排除されている」という痛みが衝突すると、話し合いは決裂します。
責める言葉をやめ、数字と言葉を分けて整理しましょう。
数字(収支・残高・見通し)は表に、言葉(負担感・不安)は場を改めて。仕組みができれば、疑いは自然に減ります。
10. まとめ
親の財産が特定の子の管理下に固定化すると、使途不明金・不当な名義変更・遺言無効疑い・資金枯渇・税務否認といった多面的リスクが一気に顕在化します。
カギは「可視化」と「分散」と「第三者の関与」。
四半期更新の財産目録、二重承認、電子領収書、月次レポート、そして任意後見・家族信託等の制度設計で、善意を仕組みに変えていきましょう。
困ってからではなく、今日から始められる最小単位(A4一枚の現況表)をまず家族で共有する。
それが“囲い込み”を解いて、親の尊厳と家族の信頼を守る最短距離です。
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(期間: 2025/7/17~2025/8/16)
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2. 高齢親の囲い込み 解放アドバイザー ~ 介護が必要になった高齢親が自分以外のきょうだいに囲い込まれて会えなくなった方へ~
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