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茜のフライト・ログ 著:夏見正隆

茜のフライト・ログ 

夏見正隆:著
徳間書店 ISBN:4-19-850635-3
2004年5月発行 定価860円(税込)









「僕はイーグル」シリーズの夏見正隆による航空サスペンス…ってことだが、ぶっちゃけス●ュワーデス物語って感じでしょうか?えらいアクシデントが巻き起こりますが、別に機内で殺人事件もハイジャックも起きるわけではない。

ニューヨークのケネディ空港発のボーイング747-400に搭乗するキャビンアテンダント訓練生の伊豆丸茜。まだまだ実務経験の浅い彼女は…失敗を繰り返し、先輩CA達に叱られながらも、戦場のようなフライト前の準備を終え…彼女が搭乗する飛行機は無事に成田へ向けて出発した。しかし…彼女がクレーム対応をしたばかりの乗客が急病で倒れてしまったのだ!

いまだにスチュワーデスっていっちゃうんだけど、キャビンアテンダントって言わなきゃいけないんだね。看護婦を看護師と呼ぶように…。ちょうど、この作品の中に看護師も出てきました。

前半は、綺麗な顔したCAのおねーさんたちも…お客さんの見ていないところでは、凄いことになってますという、CAの大変な仕事ぶりを克明に描いています。ただ…あくまで主人公である新人CAの視点で。次から次へとトラブルが起き、これが日常茶飯事の出来事だというのだから、スッチー…じゃなかったCAの世界は過酷です。で…後半は、急病人が発生して機内が大混乱するという、ちょっとパニックな内容になっていくのだが…物語としてはちょっとベタすぎちゃったかなぁ。二流の映画やドラマでよく見聞きするような内容と同じようで、ちょっと物足りない。ただ…ドジでのろまなカメな人にソックリな普通の女の子の視点で描かれているので、多少、面白おかしく読めるようになっている。

シリーズ化を目論んでいるのか、それぞれのキャラクターが意味深な感じを受ける。






個人的採点:65点







刹那の魔女の冒険 著:関田涙

刹那の魔女の冒険

関田涙:著
講談社 ISBN:4-06-182358-2
2004年2月発行 定価1,260円(税込)









関田涙のヴィッキーシリーズ第三弾なんだけど、分厚くて、内容も異色で、読みづらく、読み終わるのにちょっと時間がかかってしまった。ブログやその他ネットでミステリのレビュー書いてるような人は、やたらと誉めてるんだけどね…単純に推理小説を楽しむなら、過去の作品の方が良かった。

雪の別荘、文化祭のお化け屋敷…そして人気作家・関田涙のサイン会場が関田自身が首を切られて死ぬという怪奇な事件が起きる。

詳しくあらすじとか、書けません(笑)冒頭からいきなり…この推理小説には二通りの読み方がありますなんて、作者の代弁者である美少女探偵ヴィッキーちゃんからの提案が記されています。“A.最初から最後まで、順番に読み進める。 B.作者の指示通りに読み進める。”この選択次第で、物語…いやシリーズ全体を根本から覆すような、とんでもない分かれ道を選択させられているのです。最初の文章で…メタミステリ的な仕掛けがしてあることを、既に匂わす(というか、思いっきり暴露している)ので…本文を読んでいる最中は違和感は感じまくりで、ちょっと気持ち悪かった程だ。


とりあえず、せっかくだから全部の文章を読まなきゃ勿体無いという理由で…自分はAの読み方を選択して、読みました。 で、最後にB用の結末もちゃっかり読むと…。作者も何気に、この方法を推奨しています。

実は、この文章を書く前に…色々な人のレビューに目を通したんです。正直、自分はあまり面白いとは思わなかったんで…他の人はどう思ってるんだって。いや~これが、色々な評論や解釈があって…小説本編より面白い。中には、これでもかーってネタバレ書いて、わけわからんウザイ意見書いてた人もいたけど、自分も似たようなもんだから、文句は言えないですよね。きっと…これを目にしたコアなミステリファンの方に馬鹿じゃんコイツって思われてるんだろうなぁ(^^ゞ

別にメタミステリが嫌いなわけじゃないし…トリックや構成の奇抜さで、惹きつけられる部分もあるんだけど…ただ単に原作者が自分で築き上げたシリーズものという概念を、ぶち壊したくなっちゃっただけのようにも感じるんだよなぁ。それだけを語るのに…あれだけの事件やトリックが果たして必要だったのか?実は、最近、関田涙の「刹那の魔女の冒険」以来の新刊が、発売になってるそうなんだ。それがどうやら新シリーズらしい。なんか…この作品を読んだ直後だと、新作「エルの終らない夏」が気になってしょうがないけど(講談社の公式サイトのあらすじ読んだら、登場人物に見覚えのある名前が出てくるし) …自分が読むのは、また一年後くらいなのかな(笑)

横着してBにしときゃ、良かったかなぁなんて感想じゃ、ヴィッキーファンは失格でしょうか?






個人的採点:60点






装甲騎兵ボトムズ Ⅳ.クエント編 著:高橋良輔

装甲騎兵ボトムズ Ⅳ.クエント編

高橋良輔:著
角川書店 ISBN:4-04-428404-0
2003年10月発行 定価580円(税込)









TV版ボトムズを忠実に再現したこのノベライズシリーズもようやく完結になる。

自分はいったい何者なのか?ロッチナの助言で…惑星クエントにて、一人降り立つキリコ。クメンでの傭兵仲間だったシャッコと再会を果たし…クエントに伝わる数々の奇跡に遭遇。キリコ自身が、生まれながらの異能者…神の座を受け継ぐ存在だというのが明らかになる。

やっぱり最後まで読んで…全体像を思い出せた。そうそう、こんなんだったよね。クライマックスに向かって…今まで以上にSF色が濃厚になっていった感じ(もちろんロボットSFなんだけど…途中まではミリタリーっぽさが強い印象)。自分はこのあたりは、文章で読んだほうが理解しやすかったと思うのだが…いくら詳しい内容を忘れているとはいえ、それは映像の記憶がどこかに残っているからかもしれない。

あんな高いDVDボックス買えないので…レンタルで出して欲しいなぁ、なんて思いながら読了。巻末には、著者で監督の高橋良輔氏のインタビュー掲載。そういえば、ちょうど日経キャラクターズで、高橋良輔のボトムズ小説が連載開始されている。






個人的採点:65点







装甲騎兵ボトムズ Ⅲ.サンサ編 著:高橋良輔

装甲騎兵ボトムズ Ⅲ.サンサ編

高橋良輔:著
角川書店 ISBN:4-04-428403-2
2003年6月発行 定価540円(税込)









3月に2巻まで読んでいたボトムズの小説だが、4巻を5月のはじめに入手し、ようやく3巻目も105円で入手できたので、読み始めたのだ。

フィアナとともにシャトルでクメンを脱出したキリコだったが…気がつくと自動航行で行き先も分からない、誰もいない艦の中にいた。誰の陰謀なのか…そこでキリコは思い出したくない過去と対峙させられる羽目になる。そして…キリコたちの乗る艦がバララント領を侵犯したため…バララント軍に包囲され、さらにはキリコとフィアナを追うイプシロンたち迫っていた。

前巻までと同じように…DVDを買えないので、これを読みながら…昔のアニメの記憶を辿ってる感じ。ウド編、クメン編あたりは…けっこうアニメの印象も強く残っているのだが…後半になると、けっこう話をうる覚えなのが、ボトムズだったり。

相変わらず…あっさりとノベライズという作業に徹した文章。クライマックスのイプシロンとの因縁めいた対決あたりを…もうちょっと情緒的な文章で綴ってくれてもいいのになぁ…なんてちょっとだけ思ったり。逃げるキリコとフィアナ、追うイプシロン…テンポはよく一気に読めたけど。個人的にアニメもクメン編が好きだったからだろうけど…今のところ2巻目が一番面白く読めたなぁ。

巻末にはキャラクターデザイン、本文内イラストの塩山紀生先生のインタビューあり。さぁ、次は最終巻だ。






個人的採点:65点







チェルシー 著:桜井亜美

チェルシー

桜井亜美:著
講談社 ISBN:4-06-212248-0
2004年6月発行 定価1,365円(税込)










桜井亜美の本を読むのは「ミラクル」に続いて2冊目…。今回は今でもブーム(?)が続いている集団自殺にスポットをあてたものだ。

自殺サイトのネット掲示板で知り合った…チェルシー、ポッキー、ハイジ、プリッツ…若い4人の男女。この4人は、チェルシーが企画し、呼びかけた自殺旅行“フェアウエル・ツアー”を実行するために集まった仲間なのだが…お互いに本名も知らない。彼ら、彼女らの死のカウントダウンが始まり…それぞれ最期の夜をどんな気持ちで過ごすのか?そして…結構当日、彼らの旅の終着地点で何が起きるのか?

当たり前だけど、自分は死ぬのが怖い気持ちの方が強いので、自殺する人間のことなんてよく分からないんだけど…人それぞれ悩みは抱えてるもんですからね、こればっかりは当人でなければ…。でも、この本の中のキャラクターたちみたいに中途半端な気持ちで死を選んで、直前になって気持ちが変わる場合もあるんじゃないか?その時に手遅れになってしまうのか、それとも助かるのか…。だから安易に自殺を選ぶのはよしましょうよ。

ってことをいいたいのかな?あんまり、共感できる作品ではなかったので…そういう風に受け止めておきます。


ネタバレになっちゃうかもしれないけどさ…ぶっちゃけ…寂しがりやのヤリマン女とオタクな童貞男が、死ぬ前にSEXしたら…恋が芽生えたと勘違いして…死ぬの嫌になっちゃったっていう…中途半端な恋愛物語なんだよね。なんかなぁ…つまらなかった。

最近、古本屋でこの人の本を見つけると…表紙の女の子が可愛くて、思わず買っちゃうんですよね(笑)






個人的採点:50点







ロビンソンの家 著:打海文三

ロビンソンの家

打海文三:著
中央公論新社 ISBN:4-12-500837-X
2004年2月発行 定価945円(税込)









幼いときに自殺した母親の秘密を探る…高校生の少年の物語…。物凄く切なくて、エロティックで、ミステリアスな物語だ。2001年に他社より発行された「Rの家」という作品を改題したノベルズ版。

高校を休学して、一人暮らしをするためにRの家へやってきたぼく、山部リョウは…そこで勘当され行方知れずになっていた伯父・雅彦と…年上の従姉で風俗嬢の李花に遭遇する。二人と奇妙の共同生活を送る羽目になったリョウは…そこで幼いときに自殺した母の知られざる秘密と対峙していくことになるのだ…。

幼いときに死んだ、母親のことを…順子さんと名前で呼ぶ少年。母親を性的な目で考えてしまう少年というだけで、淫靡さを感じるのだが…この作品に出てくるキャラクターたち(血縁者が多いのだけど)、実にオープンな関係であり…お互いに淫乱な秘密の部分を語っていくのだ。物凄く複雑な家庭環境であり、不幸な部分も出てくる。決して全てをさらけ出しているわけではないのだが…自分の周りにはありえない、このオープンな関係に、なんか惹かれるものがあった。

だけど…読み進めていくと、17歳の真っ直ぐな少年に対し…、大人の身勝手さもたくさん描かれている。

前半はまったりとした感じで…物語らしいものが全然進まないんだけど(こういう感覚は好き)、ミステリ仕立てということで…母の秘密を探っていくと、後半で急にあっと驚く展開になっていくのが…自分にはかえって邪魔に感じた。別にミステリにしなくても…なんか新鮮な文章でこれは面白かったのになぁと思うのですが…。





個人的採点:65点







マリオネット症候群 著:乾くるみ

マリオネット症候群

乾くるみ:著
徳間書店 ISBN:4-19-905078-7
2001年10月発行 定価500円(税込)









絶版でAmazonでも、定価の3倍くらいで売られてるらしいです。もちろん、自分は105円ですが…探せば、積読状態の本の中に、こういった本が何冊もありそうだなぁ。著書曰く、一応はSF小説ってことなんですけど…あっと驚くとんでもない展開の作品になっています。

開明高校に通う御子柴里美は、夜中に目を覚ますと…勝手に誰かが身体を操っていた。意識ははっきりしているのだが…声を出しても通じない。いったい何が起こったのか?誰が操っているのか?実は操り主は里美が憧れる、高校の先輩、森川先輩だということが判明するのだが…実は、その森川自身は何者かによって殺されたいたのだ…。

自分は、読み始めて直にゆうきまさみのコミック「鉄腕バーディー」を思い出したのですが、解説などを読むと東野圭吾の「秘密」とか北村薫の「スキップ」なども同系列の作品ではないかと語られていた。

次から次へととんでもない真実が明らかにされて、とにかく大笑いさせられる。いや、笑って済まされるような話じゃないんですよ…殺人だぁ、不倫だぁってドロドロした内容ですから(笑)これ以上書くと、ネタバレになってしまうが…最後の最後でここまでやるかという、畳み掛けるような仰天の展開が凄い。最初の女子高生が主人公という可愛らしい文体からは想像もできない結末、読み終わった後は…“がはははは”って笑うしかない作品です。読んだ方ならわかりますよね…“がはははは”。






個人的採点:70点







クールトラッシュ 裏切られた男 著:戸梶圭太

クールトラッシュ 裏切られた男

戸梶圭太:著
光文社 ISBN:4-334-07581-9
2004年9月発行 定価840円(税込)









戸梶圭太の犯罪小説。深作欣二の傑作アクション「いつかギラギラする日」を彷彿とさせる強盗の仲間割れの話だ。

とある田舎町のパチスロ店を襲った、鉤崎、米田、植本、浜村の4人は、現金の強奪には成功したものの、運転手役の米田のミスで脱出に失敗。万が一の為に用意した隠れ家へ逃げ込んだのだが…今度は盗んだ金が予定よりも少なかったので仲間割れが起きてしまった。裏切り者の米田は、植本と浜村の二人を殺すことに成功したのだが…鉤崎を取り逃がしてしまう。東京へ戻った鉤崎は、米田の行方を追うのだが…さらに第三者の何者かが鉤崎を狙っていたのだ。

今回は…意外とまともに読める作品だった。若干、いつものように下品な描写が出てくるが…戸梶にしてはクレージーさが手加減されていて、題名どおり、わりとクールなストーリー展開だった。自分が初めて戸梶にハマった…「なぎらツイスター」の路線に近い作品だと思う。これだったら…戸梶ファン以外の人にも普通に薦められるかなって思いますね。逆にダーティ戸梶を期待している人には物足りないのかも?個人的には、こういう路線も嫌いじゃない。

でも…鉤崎は、映画「いつかギラギラする日」でショーケンが演じた神崎にソックリだったなぁ。映画好きの戸梶圭太だから、やっぱり少しは影響受けてるのかもしれないなぁ。鉤崎が名乗る、偽名が石丸なのは…“ご近所探偵TOMOE”からかな?






個人的採点:70点







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各務原氏の逆説 著:氷川透

各務原氏の逆説

氷川透:著
徳間書店 ISBN:4-19-850636-1
2004年5月発行 定価860円(税込)









講談社の初期メフィスト賞受賞者でもある…氷川透の学園ミステリ。

私立秀青高校の軽音部に所属する“ぼく”が…部の仲間の不審死を、生徒から各務原氏と呼ばれ、慕われている用務員のアドバイスを得ながら…真相を突き止める!

学園ミステリとして気軽に読める作品。本編前の登場人物一覧に、“重要な人物が一人だけ抜けていますのでご注意ください”という注釈が書いてあり、ベタな仕掛けがしてあるのだが、事件にはあまり関係がない。

事件自体はけっこうフェアに書かれているので…犯人にたどり着くのは容易だろう。物足りなさは若干感じるが…無駄話のようにみえる、ひねくれた各務原氏の逆説の数々が、なかなか面白い。

このシリーズの続編も、今年になって発刊されているようで…入門編といったところか?






個人的採点:65点