ロビンソンの家 著:打海文三 | 105円読書

ロビンソンの家 著:打海文三

ロビンソンの家

打海文三:著
中央公論新社 ISBN:4-12-500837-X
2004年2月発行 定価945円(税込)









幼いときに自殺した母親の秘密を探る…高校生の少年の物語…。物凄く切なくて、エロティックで、ミステリアスな物語だ。2001年に他社より発行された「Rの家」という作品を改題したノベルズ版。

高校を休学して、一人暮らしをするためにRの家へやってきたぼく、山部リョウは…そこで勘当され行方知れずになっていた伯父・雅彦と…年上の従姉で風俗嬢の李花に遭遇する。二人と奇妙の共同生活を送る羽目になったリョウは…そこで幼いときに自殺した母の知られざる秘密と対峙していくことになるのだ…。

幼いときに死んだ、母親のことを…順子さんと名前で呼ぶ少年。母親を性的な目で考えてしまう少年というだけで、淫靡さを感じるのだが…この作品に出てくるキャラクターたち(血縁者が多いのだけど)、実にオープンな関係であり…お互いに淫乱な秘密の部分を語っていくのだ。物凄く複雑な家庭環境であり、不幸な部分も出てくる。決して全てをさらけ出しているわけではないのだが…自分の周りにはありえない、このオープンな関係に、なんか惹かれるものがあった。

だけど…読み進めていくと、17歳の真っ直ぐな少年に対し…、大人の身勝手さもたくさん描かれている。

前半はまったりとした感じで…物語らしいものが全然進まないんだけど(こういう感覚は好き)、ミステリ仕立てということで…母の秘密を探っていくと、後半で急にあっと驚く展開になっていくのが…自分にはかえって邪魔に感じた。別にミステリにしなくても…なんか新鮮な文章でこれは面白かったのになぁと思うのですが…。





個人的採点:65点