クラック・ハウンド 聖人の条件 著:榊一郎
クラック・ハウンド 聖人の条件
榊一郎:著
徳間書店 ISBN:4-19-850664-7
2005年4月発行 定価860円(税込)
最近は、ブックオフも、100円に落とすのやたらと早くないですか?それとも、ただの店員の値段のつけ間違えなのか(笑) ついこの間、本屋で平積みされていたのを覚えていたので…新しい本だという認識だけで、内容も確かめずに買ってみました(笑)とりあえず、アクション系だろうと。こういう、いい加減な理由で買えるのも古本の魅力ですよね。知らない作家ですが…著者紹介などを読むと、ライトノベル系の作家らしいです。
アメリカの特殊部隊が、非公式に日本で実行した作戦…長野県の山奥にあるとある施設の殲滅作戦だったのだが、逆に返り討ちにされ全滅してしまった。その時…あるものが解き放たれ、世界は終ったのだ。そして…そのことに、ほとんどの人は気づいていなかった。数年後…セイントとよばれる怪しげな薬物による中毒患者が、とんでもない犯罪を起こすという出来事が続出。普通の警官では太刀打ちできない事件に乗り出したのは通称“クラック・ハウンド”と呼ばれる…公安委員会直属の非公開特務機関『特殊犯罪調査局』の橘北斗と柘植克美の2人だった。
本当にライトノベルの作家?けっこう、エログロいっぱい…ホラーもどきのアクション作品でしたね。コンビにの店員や客をナイフでブチ殺し…突入した警官隊も返り討ち。主人公が現れるまで、片想いのコンビニ店員を延々と犯し続けるって、凄いシーンの連続だった。薬物でイっちゃってる犯罪者たちの描写とか、なかなかでした。ただ…主人公たちが特殊能力を持っていたりするのが、SFっぽい。そのくせ…ちょっと萌えっぽい要素のキャラとか出てくるのが、ライトノベル作家としての要素なのかなぁ。主人公の2人も…アニメやマンガにしたらさぞかし絵になりそうな設定のキャラだし。それでも、許容範囲内…普通に楽しめる作品だった。銃器描写など、なかなかマニアック。
話が完結していないので…きっと、続編があるんだろう…と思います。
個人的採点:65点
Θは遊んでくれたよ 著:森博嗣
Θは遊んでくれたよ
森博嗣
講談社 ISBN:4-06-182431-7
2005年5月 定価945円(税込)
森博嗣の新シリーズ、Gシリーズの第二弾。5月に出たばかりなのだが、何故か安く買えた。きっと値段の付け間違いだろう(笑)何日か前に読み終わっていたのだが、なかなか文章の更新ができなかった…。
飛び降り死体の身体の一部に、“Θ”が描かれているという事件が相次ぐ。警察では殺人の可能性は薄いと考えられていたが…西之園萌絵やC大メンバーは、この異常な事件に興味を抱き、調査を始める…。
前作より萌ちゃんの活躍度がアップしたか?しかし…今までの他のシリーズに関係ありそうな思わせぶりな展開も出てきて、これは読み逃しているVシリーズや、四季シリーズを読まないとついていけないのかなって印象を受けた。事件そのものは独立していたが、前作との関連性も匂わせていることから…なにやらシリーズの構成に仕掛けがありそうだ。前作での、中途半端さにも多少は納得できるかもしれない?まだ先が読めないシリーズだ。
一昔前にあった映画「自殺サークル」みたいな、謎めいた事件であったが…この作品はちゃんと事件を解決しますね。
他シリーズを読んでない人間を無視した展開はしょうがないとして、事件などは前作よりちょっと面白かったかな。なんとか四季も揃えて読んでみようと思った。積読本を探したら、Vシリーズの最終巻は出てきた。あっ、買ってあったんだって…今ごろ思い出す。
個人的採点:60点
Φは壊れたね 著:森博嗣
Φは壊れたね
- 森博嗣:著
講談社 ISBN:4-06-182392-2
2004年9月発行 定価861円(税込)
昔は、必ず新刊で買っていた森博嗣の講談社ノベルスも…Vシリーズの最後辺りから古本待ちになっています(笑)いまだにVシリーズの完結編と、前シリーズの四季シリーズ全4巻を読んでいないのだが、犀川&萌ちゃんが復活した新シリーズを105円でGETしたので、読み始めてしまう。今年の5月に出たばかりの新シリーズ第二弾「Θは遊んでくれたよ」も何故か105円でGETできてしまったので、続けて読むつもりだ。
マンションの一室で芸大生が宙吊りで殺されているのが見つかった。現場は密室で、さらに死体発見の様子を犯人が残していったと思われるビデオカメラで録画されていたのだ。N大学学院生の西之園萌が出入りするC大学の学生の1人が、思わぬ形で事件に関わったことから…萌とC大の学生たちは事件の捜査に乗り出す!
なーんだ、萌ちゃん復活したと思ったら、かなりの脇役なんですねぇ、このシリーズは。知らない間に、文章が二段組じゃなくなってるし(唯一、古本で見つけて買ってある「四季 夏」を見たら、既に変更されていた…そういえば、他社の小説が1段組だったなぁ) 。
森博嗣のディープなファンの間では、ベタ誉めしてる人と、冷静にキャラクター紹介編なので程ほどと解説している人がいるみたいですが…普通に推理小説ファンの意見として…初期作品に比べて面白くなくなってきている。確かに、偏屈なキャラクターの会話を読むのは楽しいんだけど…事件だとか、犯人の意外性、その他バックボーンでもう少しひきつけられる要素が欲しい。事件自体は摩訶不思議に見えたのだが…結末などがやたらとあっさりしすぎてて、正直物足りない。
ファンの人が解説していた…キャラクター紹介編という意見を踏まえて、次作に期待!
個人的採点:60点
ハード・ヒート 著:三上洸
ハード・ヒート
三上洸:著
光文社 ISBN:4-334-07598-3
2004年12月 定価840円(税込)
裏表紙のあらすじに書いてあった、東京を舞台にしたマカロニ・ウェスタンという言葉にちょっと惹かれました。チェイシング・ロード・ノベルってジャンルらしいですが(最近の小説は長ったらしいジャンル名をいちいちつけますよね)…簡単にジャンルわけすると、ハードボイルドでいいんじゃないかな?
マフィアの跡目争いに巻き込まれてしまった日系アメリカ人のルチアは、警官殺しの濡れ衣までかぶせられ日本へ逃亡。日本で唯一のバウンティハンター沢木丈は、賞金首のルチアを探し東京の街をさまよい歩くのだが、真実を知った丈はルチアとの逃避行を選択!警察、公安、ヤクザにマフィアを敵にまわし…2人は生き延びることができるのか?
「シティーハンター」とか、そういうマンガやアニメみたいに、とにかく銃をぶっ放しまくる作品なのだが…日本人が主人公、日本が舞台ということで…リアリティを持たせるためか、主人公のバウンティ・ハンターは過剰な武器を所持していない。 防犯用のペイント弾や、特殊警防片手に…アメリカ人マフィアと互角に戦う。カーチェイスに銃撃戦…作者がアメリカのアクション映画なんかに影響をめちゃくちゃ受けているのがわかるのだが…自分もその手の作品が大好きなので、大いに楽しんだ。最近、お目にかからないが…一時期講談社ノベルスなんかで頑張っていた西村健なんかと同じような雰囲気を感じるハードボイルドアクション。
著者の言葉に、“栞を挟んでまた明日は駄目です”なんて書いてあるけどさ…それは守らなかったけど(笑)、確かにテンポがあって、グイグイと勢いで惹きこまれてしまう。実際の東京の地形などは詳しく描写されているので…場面を想像するのも容易く、文章の上手さは実感。まだ…2冊目の新人作家さんなのだそうだが…デビュー作の「アリスの夜」という作品もぜひ読んでみたい。
個人的採点:70点
真夜中の五分前 side-A 著:本多孝好
- 真夜中の五分前 side-A
本多孝好:著
新潮社 ISBN:4-10-471602-2
2004年10月発行 定価1,260円(税込)
多分、ジャンル的には恋愛小説になるのではなかろうか?ただ、全体的にミステリアスであり…ドライであり、他の甘ったるい恋愛小説とは一線を隔す不思議な物語ではあった。この小説のラストで…物語が終っていいようにも感じるが、実は「真夜中の五分前 side-B」という続きがあることを読み終わってから知る(オイオイ)。普通に上下巻、前後編などと記してくれれば…2冊揃ってから読み始めたのに…。
小さな広告代理店に勤める僕…学生時代に恋人を交通事故で亡くし、それ以来恋愛には不器用になっている。会社では、仕事は出来るが偏屈な女性上司のおかげで…社内の派閥争いに巻き込まれている。そんな僕は…運動の為に通っているプールで、一卵性双生児の片割れの“かすみ”という不思議な女性と出会う…。
愛ってなんだろう?出てくる登場人物たちは…仕事も恋も器用に振舞っているようで、実はみんな不器用なヤツだった。お互いに触れ合っていくうちに、ボロボロとそういったものが剥がれ落ちてくる…。確かに、これ1冊だと…まだ物足りない箇所ってあるんだけど、別に続きは読者の想像に任せてもいいと思う終り方だった。だけど続きがあるなら、やっぱり読みたい。でも、100円コーナーには、これしか無かった。今度、また探してみよう…そろそろ100円コーナーに出てくるかもしれない(笑)
個人的採点:65点
007/赤い刺青の男 著:レイモンド・ベンスン
- 007/赤い刺青の男
著:レイモンド・ベンスン
訳:小林浩子
早川書房 ISBN:4-15-001740-9)
2003年10月発行 定価1,260円(税込)
ポケミスのレイモンド・ベンソンによる007シリーズ。イアン・フレミングの「007は二度死ぬ」以来、久々に日本を舞台にした作品。ベンソンの007小説は、過去に映画のノベライズと…「ゼロ・マイナス・テン」を読んでいる。
成田発、ロンド行きのJALの国際線の中で1人の女性が変死した…。同時刻、日本でも彼女の家族が同じような症状で死んでいたのだ。日本で行われるG8サミットの警護を兼ねて…英国情報部のジェイムズ・ボンドは旧知のタイガー田中の協力のもと、日本での調査を開始する!
今回の敵は、欧米諸国に媚びてばかりいる軟弱な日本なんてクソくらいだ!と、三島由紀夫に心酔しているテロリストをはじめ、ヤクザ、暴走族、河童まで登場(笑)007史上“最小”の敵とされている…細菌兵器がボンドを狙う。
一時期、次の007映画を、この「赤い刺青の男」にしてもらって、日本ロケ、北海道ロケを行ってもらおうという…運動が、作品の主要舞台になった北海道の温泉町で起こっていたのが記憶に残っているが、残念ながら次回は「カジノロワイアル」のリメイクになるらしいという情報が伝わってきている。
それにしても、これが本当に映像化されたら…「007は二度死ぬ」以上に奇妙な、土曜ワイド劇場みたいな007映画が生まれていたんではないかと、ちょっと興味はある(ボンドを古谷一行あたりに置き換えれば、そのままドラマ化できそう)。決して…この小説が変だとかはいわないけど(いや、変なところも多々ある)、日本でロケして映像化しちゃったら、007のカッコよさは立ち消えになるだろうよ。
だって、ボンドが築地で追いかけっこしたり、歌舞伎町で立ち食いうどん食べたり、札幌のススキノででソープランド行ったり…。映像になったらソープ嬢のボンドガールは、誰が演じるんだろう(笑)ヤクザや暴走族たちを…お馴染みのVシネスターの顔に置き換えて、タランティーノの「キルビル」を思い出しながら、 軽い気持ちで読んでしまった。
安心した007のカッコよさは…他の作品の方が味わえるが、これはこれで、なかなか面白い。西村京太郎のトラベルミステリーを読んでいるような気分も味わえたし、やたらと緻密に描写されている歌舞伎町やススキノの夜の世界は…大沢在昌や馳星周のハードボイルドのようでもある。
個人的採点:70点
ダーティペアの大復活 著:高千穂遙
- ダーティペアの大復活
高千穂遙:著
早川書房 ISBN:4-15-208584-3
2004年8月発行 価格1,260円(税込)
- タイトル通り、ダーティペアシリーズが久しぶりに復活。原作よりTVアニメの方を夢中になって見ていた思い出がある。
ある事件の結果、冷凍睡眠状態で宇宙を漂流していたWWWAのトラブルコンサルタント、ケイとユリ…救出してくれたバイオボーグ・フローラから仰天の真実を告げられた。なんと、2人が冷凍睡眠に入ってから、153年もの時間が経過し…人類は絶滅したというのだ。人類存亡の僅かな希望をかけて…ダーティペアが大復活!
というよりは…相変わらず大暴れでした(笑)
SF小説だけど…難しいことは一切考えないで楽しめるこのシリーズ。久しぶりに過去のダーティペアも読みたくなった(実は小説は、ほとんど読んでいない)。2人が冷凍睡眠になってしまうきっかけになった話も読んでなくて…、まぁ、読んでなくても今回の作品の中でその経緯は語られているので、心配は要らないが…その分、「ダーティペアの大脱走」というシリーズ第4弾のネタが割れてしまうという欠点はあります。本当のファンなら順番通りに読むのがいいのでしょうが…自分は行き当たりバッタりなもんで(笑)まぁ、そんなのを気にしなくても、関係なしに楽しめるパワーは、このシリーズにはあると思います。
人類が絶滅して、残ったのがこの2人だったというとんでもない幕開けでしたが…ノーテンキで、ハチャメチャな展開がテンポよく進む。冷凍睡眠なんてネタは…ちょっと「エイリアン」のリプリーを思い出しますね。後半では、巨大ロボットまで出てきて爆笑必至!
個人的採点:65点
失踪HOLIDAY 著:乙一
- 失踪HOLIDAY
乙一:著
角川書店 ISBN:4-04-425301-3
2001年1月発行 定価580円(税込)
表題作の中編+短編1本を収録した乙一の作品。相変わらず、文章などは上手だったが…「失踪HOLIDAY」は他の作品に比べて、案外普通な内容で拍子抜けした。
しあわせは子猫のかたち
人付き合いがあまり上手でない“僕”は…大学生になったのを機に、伯父の所有する家で一人暮らしをはじめる…。実はその家では殺人事件が起きたばかりで、どうやらその殺された前の住人が幽霊となって住み着いている様子だ…。“僕”と“幽霊”の奇妙なお話…。
うーん、サスペンス調の“いま、会いに行きます”って感じかなぁ。オチが読めるのは乙一作品らしいが、作品の雰囲気がいい。
失踪HOLIDAY
大金持ちの娘ナオ…しかし家族とは血のつながりがない。ある日、継母のキョウコと喧嘩した彼女は家を飛び出してしまう。しかしコッソリと屋敷に戻り、ちょっとトロイ使用人のクニコを抱き込み…偽装誘拐を企てるのだが、事態は思わぬ方向に進んでいく…。
東野圭吾の「ゲームの名は誘拐」(映画「g@me」)みたいな内容だったなぁ。乙一にしては普通すぎるくらいの話で、やや拍子抜け。主人公のナオが、やたらとオヤジくさくみえたけど、今時の女の子ってこんななのかなぁ?(笑)コミカルな感じで進んでいって、一応どんでん返しのオチが用意されているが、やっぱりそれも想像の範疇。決してつまらなくはなかったが…乙一はやはり、短編の方が本領を発揮するようだ。
他の作品同様、これも巷での評判はいいみたいだけど…個人的にはグロテスクな路線の方が、好きです。
個人的採点:60点
新本格謎夜会 監修:綾辻行人 有栖川有栖
- 新本格謎夜会
綾辻行人 有栖川有栖:監修
講談社 ISBN:4-06-182334-5
2003年9月発行 定価882円(税込)
2002年に東京・神戸で行われた、新本格誕生15周年記念イベントの様子を再現したもの。イベント内で上演された、参加型の推理劇を誌上再現したものと…イベントにゲスト出演した豪華推理作家陣のインタビューやコメントで構成されている。一応、この本の読者も推理劇に参加できるような、小説仕立ての構成になっている部分もあるが…作家陣の素顔を楽しむといった主旨の方が強いか?
推理劇の内容は、盗作で有名な推理作家が何者かに殺され、現場は密室であったという事件。提示された証拠を元に、真犯人、密室トリック、動機を暴けといった内容だった。
はなっから…真剣に推理するつもりはなかったので、パーフェクトに解答は出せなかったが(言い訳?)、犯人のめぼしはなんとなく?これは実際にイベントで体験しなきゃ、面白さがでないんじゃないかなぁって程度のものだった。
作家陣のトークはなかなか面白く、本格推理ファンなら読んで損はないと思う。
登場作家:綾辻行人 有栖川有栖 山口雅也 竹本健治 二階堂黎人 倉知淳 法月綸太郎 我孫子武丸 麻耶雄嵩 太田忠司 西澤保彦
いつもの通り、105円なんで満足だが…定価で買いたいかは微妙な線(笑)
個人的採点:60点
ファック・ミー・テンダー 著:大泉りか
- ファック・ミー・テンダー
大泉りか:著
講談社 ISBN:4-06-212031-3
2004年10月発行 定価1,470円(税込)
こういう下品で、インパクトのあるタイトルには何故か惹かれます…。この作者のデビュー作であり、自伝的な物語。若い2人の女性の生と性…今時の大学生の女の子の秘密です!
リカとミキ…2人の大学の同級生だったが、お互いに知らない秘密があった。リカはヌードモデルとして活躍し、ミキはキャバ嬢として働いていた。大学卒業間近の彼女たちが選んだ道とは…。
普通じゃない世界なんだけど…今時の若い女性の考えは、これが普通なのかもしれないなぁ…。ちょうど、この作品の主人公と同じくらいの年齢の大学生の従妹がいるんだけど…なんか心配になってきたよ(笑)でも、たとえ身内が同じようなことになっていても、他人がどうこういうことじゃないんだよなぁって…この本を読むと思います。
ほんの少しだけだけど…自分の身体を売っている女性たちの気持ちが垣間見れたような気になった。
なかなか興味深く読めた作品だが…もう少しリカとミキの大学の友人としての、関わり…普通に大学生活を送っている様子なんかも読んでみたかった気もする。
個人的採点:65点