相手投手も結構スピードがあるが、ゴリも負けていない。

初球から強く振り抜き、真後ろに飛ぶファールであった。

2球目も強振である。今度は大きく空を切った。

面白い。正直な感想である。

その後、相手も慎重になったのか、ゴリのあまりに力強いスイングに恐れたのか、ボールが3つ続いた。

カウントはフルカウント。ここで打たなきゃゴリではない。

そう思った瞬間、打球は見事に左翼線へのタイムリーとなった。

さすが、チャンスに強い男である。恐れ入った。

これで点差は2点となり、試合は分からなくなった。

そして次の回から、ヤンチャーズのおっさん代表である私がマウンドに立った。

再度、我がチームの主力と相まみえることとなる。

また久しぶりにゴリとバッテリーを組む。なぜか精神的にホッとする。

やはり今までいろんなところでともに悩み、喜び、悲しんできたからだろうか。ここは私自身も明確にはわからない。

そのお陰か、先頭を三振にとり、さい先良いスタートを切れた。

次の打者にはフルカウントから四球を出してしまい、1死1塁でノリと対戦することになった。

さてさて、どう攻めるか。ゴリの構えるミットめがけて投げ込むことだけに集中する。

まずはストレートでカウントを取りに行く。しかし、ノリも分かっているのか、初球から振りに来る。

2球続けてファールとなり、その後、カウントは2S1Bとなった。

よしっ、と気持ちを入れ直し、勝負の5球目を投じた。

ノリも振りに行く、打球は左翼線に大きく飛んだ。

「やられた!」正直、そう思った。。。。。しかし、打球はそれほど伸びず、左翼フライに打ち取った。

これが、この日ノリと向き合った最後の対戦である。

試合はそのまま0が続き、4-2のままゲームは進んだ。若手の投手もノリに代わり、ヤンチャーズの投げ合いになっていた。

最終回のおっさんの攻撃、先頭打者が安打で出塁し、その後失策等もあり、2死1・2塁となった。

ここで迎える打者はハマ。そしてその次は私であった。

ノリに「次は俺や!ワシと勝負せい!」と聞こえるようにアピールするが、周りからはハマと勝負しろ!との声が上がっていた。

どうなるのか?ここもノリのさじ加減でどうにでもなる。

カウントは2S2Bとなった。どちらにしろ、まずはハマとの勝負だ!

運命の1球はノリの手から投じられた。

試合も大詰め、いよいよノリと私の真剣勝負が始まった。

初球は見事なストレートだった。

「よしっ!」気合いを入れ直し、ノリに向き合う。

第2球、これもストレートである。私も負けじと打ちにいく。

食らいついたがファールとなり、追い込まれた。

その後、慎重になっているのか、ノリはストライクを投じない。私もじっくり見ていくことにする。

結局2S2Bとなる。次が勝負の時である。お互いそう思っているに違いない。

私はストレートで三振を取った。だからノリも変化球はないはずだ。

これは確信していた。

第5球目、ノリの手から渾身の1球が投じられ、それに無意識に反応するように私も思いきり振り抜いた。

打球は1・2塁間を破るタイムリーとなり、2塁走者が生還した。

私は無意識に歓喜の声を上げ、ガッツポーズをしながら1塁へと向かった。

ノリにとってはこれほど屈辱的なことはないであろう。

しかし、あそこで変化球だったら、まず打てなかったと思う。

そこはノリの男気だろうか。まさに直球勝負であった。

結果はともあれ、非常に楽しい、ワクワクできた一瞬であった。

その後は、ノリも落ち着きを取り戻し、次の打者を右翼フライに打ち取り、結局この試合4-2で終了し、ヤンチャーズの勝利となった。

ヤンチャーズが勝ったのはよいが、やはり今回所属したチームIが負けたのは何とも気分が良いものではない。


少し休憩をおいて、今度は若手チームとおっさんチームで試合をすることとなった。

おっさんチームは、ナベさん、ハマ、ゴリなど、、、、そしてチーム名は「チーム加齢臭」である。

うぅ・・・・嫌なネーミングだ。


さて、おっさんチームの先発はヤナさんがリベンジでマウンドに立った。

しかし、失策や不運な安打もあり、初回に1点取られた。

その裏のおっさんチームはあっさり三者凡退で終わってしまった。

若手の先発投手はチームIのホープで今回初参加の若者だった。

癖のあるフォームから鋭いストレートが決まる本格派である。

2回の若手の攻撃は、先頭のノリが四球を選んで出塁し、続く打者はニシモである。

そのニシモ、フルカウントからの6球目をジャストミートし、左翼線に特大のホームランを放った。

私は右翼を守っていたが、恐ろしいくらいのあたりであった。

そのようなことがあり、この回3点取られてしまい、雲行きが何とも怪しい。

その後のおっさんの攻撃、安打と四球で2死満塁となり、大きなチャンスが訪れた。

ここでバッターボックスにたつのは我らがゴリ。ささっ、どのような勝負が見られるのか!

打ってくれと、ベンチから熱い期待を背負い、ゴリが投手をにらみつけた。

6回裏のチームIの攻撃。

いまだチームIはノーヒットノーランである。さすがノリだ。すばらしい。

って言っている場合ではない。今はチームIの一員として、一矢報いたいところだが、先頭打者が三振に打ち取られ、なんとも反撃の兆しさえ見えない。

しかし、ノリには珍しく、続く1番打者に死球を与えてしまう。

ここから悲劇が始まった。

すかさず走者が盗塁で2塁に走る、それを見て捕手のリョウタが2塁に投げた。

しかしそれをズッコケくんが後逸・・・・それを見て走者が3塁を狙う。

そうはさせるかとカバーに入った遊撃手のタッキーが球を拾い3塁へ送球・・・しかし、その投球が悪送球になり、結局、そのまま生還し、1点いただいた。

ピッチャーとしてはたまらない展開である。

結局、この時点でノーヒットノーランと完封は逃れられたものの、なんとも複雑な心境であった。

さて、最終回のヤンチャーズの攻撃。打順はバンブー、ノリ、リョウタの3人である。

ここを抑えてこそ、私の投球の真意が試されるのである。

先頭のバンブーに対し、ストレート中心に攻めていった。今日は変化球の調子がいまいちである。

フルカウントまで粘られた6球目、渾身のストレートがバンブーのバットに空を切らせた。

続いての打者はノリである。私にとってはわくわくするほどの場面である。

初球はボール。慎重に入った。

その後、すべてストレートで勝負にいった。悪くない、ノリもとらえられずファールの山を築き、カウントは2S1Bのまま、私に有利なカウントは続く。

その5球目である。渾身の力を込めて投じたストレートが外角低めに食い込んだ。

さすがのノリもバットが届かず、三振に仕留めた。

何度かノリとは対戦したことがあるが、ストレートで三振に仕留めたことはなかったと思う。とてもうれしかった。

続く打者はリョウタ。まだまだ気を許せない。

しかしリョウタに対しては、初球をストライクに取ったものの、その後制球が定まらず、ボールとなってしまいカウントは1S3Bとなってしまった。

次の球が勝負である。そう割り切り、ここもストレートで取りに行った。その結果、幸運なことに詰まらせることができ、2塁ゴロに仕留めることができた。

よってヤンチャーズの強力打線をしっかり抑え、3者凡退に押さえ込んだ。さっ、後は打つのみである。

7回裏。泣いても笑っても最終回である。

未だノーヒットであり、先頭打者はハッシーさんである。

1S1Bから強振し、右翼線の2塁打を放った。初安打である。

しかしノリは崩れない。その後、2者三振にしとめた。

そこでノリに向かって、「ノリ!この打者の次は俺やぞ。勝負せいや!」と、言うとノリはわざとだろうが、そのままストレートの四球を出した。

先ほど私に三振を取られたのがよほど悔しかったのだろう。完全に二人でゲームを私物化していた。

泣いても笑っても最後の戦いであり、そして私とノリの対決である。

真剣勝負の第1球は投じられた。

試合が始まった。私たち、チームIは後攻である。(なんか変な感じだ・・・・。)

ヤンチャーズの先発はもちろんノリであった。

立ち上がりのノリ、先頭に四球を与えてしまったものの、その後3人をきっちり打ち取り、なんなく0点で終えた。

その裏のヤンチャーズの攻撃。先発投手はヤナさんである。

こちらは先頭バンブーが死球で出塁し、2番ノリ、3番リョウタの連続長打で2点とった。

敵にすると結構怖いチームである。

2回はノリに3者三振にしとめられた。その裏は、安打や失策でピンチになるものの、ヤナさんがしっかり押さえ込み、0点で終了した。

3回の攻撃。先頭は私からであり、ノリと真剣勝負をすることとなった。

しかし、結果はフルカウントまで粘るものの、最後はインハイに来た速球で見事空振り三振に打ち取られた。

最近のノリの球は速い。まったくあたる気配がなかった。

すばらしい速球であった。その次の打席も三振に倒れ2連続三振でまったく手も足もでない。惨敗である。

その後、ヤンチャーズが2点取り、4-0で試合は6回まで進んだ。

6回の表、チームIの主将より、投げてほしいと頼まれた。

投げろといわれればいくらでも投げるが、対戦打者がすべてチームメイトというのはなんかとっても変な感じである。

とりあえずマウンドに立ち、打者と向き合う。先頭は7番のズッコケくんである。

とりあえず丁寧に丁寧に投げた結果、空振り三振に打ち取った。

今日は直球が良い。低めに集まっている。

つづくタッキーも三振に打ち取り、難なく2死とした。

ここで迎える打者はナベさんである。

何度も触れているようにナベさんのバットコントロールはヒデキと並んでわがチームでは1,2を争う。

気合を入れていかねば、、、、そう思いながらストライク先行で追い込んだ後の3球目、見事3塁ゴロに打ち取った。

何とか、足を引っ張らずにすんだと胸をなでおろした。

さ、この調子で、ヤンチャーズ相手に大暴れすることとしよう。

試合当日、天候は梅雨の晴れ間の快晴となった。

快晴というより汗ばむくらいの天候である。

ま、雨が降るよりは、よっぽどマシであり、かつありがたい。

久しぶりに雨男の影はどこかへ行ったようであり、胸を張って参加出来る。

3日前に静岡で誓ったヤナさんとの約束を守るために、私は30分前にグラウンドに入り、リョウタと投げ込みをすることになった。

本当にリョウタはいやな顔ひとつせず付き合ってくれる。ありがたいことである。

さて、たっぷり100球ほど投げたであろうか、集合時間になったので、指定の場所に行くとチームIの面々とヤンチャーズの仲間たちがそろっていた。

ただ、ヤナさんの元気がない。どうしたのかと聞いたところ、3日前に一緒に飲みに行ってから風邪を引いて体調が悪いとのことであった。

なんということかと、自分の行いを悔やんだ。

仕事で疲れていたのだろうに、私たちが来るということで無理をして付合ってくださったのだと思う。

本当に申し訳ない。

さて、それぞれのチームに別れ、軽く練習を行い、その後、ヤンチャーズ恒例のくじ引きを行った。

ノリには事前に、1試合目はヤナさんと投げ合う約束をしていたので、申し訳ないが先発をさせてくれと頼み、快諾いただいている。

そんなことで、投げる気満々でくじを引いた。


しかぁ~し。


引いたくじは「12」のビリのくじであった。げげっ!

これがどういうことかというと、スタメンでは出られないということであり、さらに今日はチームIさんに一人欠員が出たため、人数が足らない。

よって、ビリッけつの私がチームIの助っ人として入らなければならず、ヤナさんと戦うどころか、チームメイトとして戦わなければならないのである。

テンションはバリ下がりである。

でも、こうなったからにはしょうがない。これはこれとして、精一杯やってやろうじゃないか。

とにかく第1試合の敵はチームIではなく、わがヤンチャーズの面々である。

いざっ!

先日、静岡で仕事があり、ナベさん、ニシモと一緒に行った。

当日の仕事は予想以上に早く終わり、夜8時には解散となった。

このまま3人で飲みに行くのも良いが、せっかく静岡に来たんだからと、私の独断でいつも京都に試合に来られるチームIさんに一緒に晩御飯を食べないかと声をかけた。

その結果、チームIさんから、先鋭の選手4人とマネージャーが1人わざわざ来てくれた。

静岡駅屋上のビヤガーデンで落ち合い、久しぶりの再会を喜んだ。

実はチームIさん、3日後にわざわざ京都に来ていただき、試合をし、その後、懇親会をすることになっている。

今日は人数こそ少ないがそれぞれ3日後の京都遠征の前哨戦として盃を交わすことになった。

チームIさんからは、ヤナさん、ハッシーを含む主力が来てくれている。

前回、私は所用で静岡に来られなかったので、本当にひさしぶりの再会になる。

みんな変わらず元気そうで私としてもうれしかった。

特にヤナさんとハッシーとの話は盛り上がる、この2人、私と同年で、ヤナさんが1歳年上でハッシーは私と同い年である。

そんなことで、おっさん同士、話が盛り上がるのだ。

特に最近は、チームIの先発投手をヤナさん、ヤンチャーズの先発投手を私が勤めて、お互い歳を感じさせない試合をしてきた。

今回もぜひ一緒に投げあおうと誓い、若いやつに負けてなるかと健闘を誓い合った。


このヤナさん、子供のころから野球をやっておられ、聞くところによるとリトルで野球をされていたと聞く、そのことから針の穴を通るくらいの制球を持っている。

ただ、過去に肩を壊し、球威はそれほどないが、緩急を自在に使われることにより、より早く、より遅く感じられる投球術を持っている。

さらに投球モーションを微妙に変えることにより、打者のタイミングをずらし、凡打の山を築くなど、以前の試合では完璧に抑えられた。

「草野球は球威ではない。」このことを痛烈に教えられた試合だった。

また、ハッシーのバッティングセンスはすばらしいものがあり、高い確率で芯で捕らえ、安打を量産している。

そのようなことで、投手としてはヤナさん、打者としてはハッシーと、それぞれ私に大きな刺激を与えてくれる存在なのである。

こんな連中とナベさん、ニシモを含めた野球バカどもの談義は延々続くのであった。

そして、ヤナさんと「京都では投げあいましょうね。絶対に負けませんから。」と硬く誓い合った。

久しぶりのチームIとの戦いが待ち遠しくてたまらない。

楽しくて熱い静岡の夜は、楽しい想い出となって知らないうちに更けていくのであった。

家に帰っても、やっぱり腑に落ちなかった。

何ともやりきれない休日だった。

翌週の月曜日、仕事でヒデキに電話をかけた、電話を切る間際、ヒデキにこう聞いた。

「土曜日の試合、おれ、そんなに悪かったか?」

そう言うと、ヒデキは笑いながら、

「愛を感じましたね(笑)。あれは愛の鞭ですよ。キャップ。良い方向に考えましょうよ。」

そう即答した。

それを聞いた瞬間、自分に問いかけた。


”おい、お前(自分)、ぬるま湯につかろうとしてへんか?精一杯やったか?ほんまか?勝とうと思うて投げたか?うそつけ、最終回、にげたやろ?この回、投げきったら終わりや、ま、まずまずの投球やったし、これやったら怒られへんし、また投げさせてもらえるわ。そう思うて投げとったんちゃうか?”


その結果、自分の中で反論することはできなかった。

自分を追いつめず、妥協点を見つけ、無難に収めようとしていた自分がそこにいたのだ。

今まで何度も自分に言い聞かせてきた「逃げるのは簡単だ。」のとおり、簡単な道を選んでしまったのだ。

「全然成長してない・・・・。」またヒデキにそう気づかせてもらった。

「逃げていた。あれほど嫌っていた言葉を無意識のうちに選んでいた。。。。」

そう思うと今度は自分に嫌気がさしてきた。

第一、自分が努力しているのは勝手だ。別に誰にも頼まれちゃいない。

レベルを上げたいと思ったから、勝手に努力をしただけだ。それなのに自分を傷だらけのヒーローと勘違いし、やさしい言葉をかけてもらおうとぬるま湯につかろうとしていただけだったのではないか。


”腐ったら終わりだ。俺は試ためされている。このまま腐るか、なにくそ根性を見せられるか。”


よし、見せてやろうじゃないか。東京で使うかどうかは監督の責任だ。だからたとえ東京で炎上しても監督の責任だ。俺は悪くない、俺を使う監督が悪いんだ!

そう、考えることができた。

練習は裏切らない、、、、走りこみの成果が私の心も少しずつではあるが鍛えてくれているように感じる。

東京まで2ヶ月。もう、悩んでいる時間はない。


明くる朝、いつものとおり、ウィンドブレーカーに身をまとい、いつものルートを走っている自分がいた。

「腐ったら終わりだよ。もっと前へ前へ、それが君らしさじゃないか・・・・。」

どんより曇っている梅雨空が、私にそう声をかけているように感じた。

「お前みたいな投球しとったらあかんわ。まだ、独り相撲やっとんか、ワンマンショーしてからに・・・・・。全然あかん。先頭打者に四球与えるなんぞもってのほかや・・・・・・。」


くそったれ、もうピッチャーなんか辞めたるわ。内心マジでそんな衝動に駆られた。

そして、その後さらに付け加えられた。


「今日、よかったんは2者連続で三振に打ち取ったあの2球だけや。あの球、マスターせい。あれが思い通りに投げられたら、お前はそうそう打たれへん。それにしても今日の試合はいただけん。四球もさながら、追い込んでから、何球高めに変化球ほっとんや。そのほとんどを打たれとるやないか・・・・・。もっと、コントロールつけい。」

言い返しようがなかった。

悔しくて、むなしくて、情けない気持ちで一杯だった。

”こんなにがんばってるのに、、、、こんなに努力してるのに。もうちょっと言い方があるだろう・・・・。ひと昔の俺だったら、完全に試合をつぶしてたわい。試合つぶさんと、かつ勝てただけでも良かったとおもわんかい!”

そんなことを心の中でつぶやきながら監督の話を聞いていた。

ただ、監督の目はマジだった。

目が合うと恐ろしいほど私をにらみつけていた。

試合後のミーティングでも私に対して厳しい言葉は容赦なく続いた。

何も反論せず、「がんばります。」と心にもない言葉を発し、その場を取り繕うのに必死だった。


帰りの車で、監督の言葉の一つ一つを思い浮かべた。

腹が立ってしょうがない。でも、監督の言葉の真意を善意に理解しようと考えた。

でも今の状態では、冷静に考えるのは無理である。

監督の一言一言が、胸に突き刺さって、思い出すたびにはらわたが煮えくりかえった。

辞めてやろうか、マジで。別にノリがおるし、東京まで行って嫌な思いするんもなんやし・・・・・。

ノリには悪いけど、ひとりで投げ抜いてもらおう。。。。

そんなことを考えながら、ぼーっと車の外を眺めた。

雨の中、ひとりのランナーがジョギングをしていた。

「あの人は、何のために走っとんのやろ・・・・・。」

考えても答えの見つからない疑問が私の頭をめぐっていた。

さて、試合はいよいよ最終回であり、この回を押さえれば試合は終了である。

4点差があることと、四死球が1つしか出ていないことで、少しばかり有頂天になっていた。

投球が雑になり、やってはいけない行為が出てしまう。

そう、先頭打者への四球である。それも4球続けてボールを投げてしまった。

やってはいけないことと分かりながら、もうどうすることもできなかった。

また、悪い癖も出てしまい、ついついネガティブに考えてしまう。気がつくと2者連続で四球を与えていた。

無死1・2塁のピンチを自分ひとりで勝手に作り上げていた。

「くっそぉ、、、なぜ最後の最後で、、、、」悔しいと言うより、情けなかった。

その次の打者だった。1S2Bからの3球目を強打し、三塁に強いゴロに打ち取った。

「よしっ!ゲッツーだ!」そう、思った。

しかし、打球はハマの股間をすり抜けていた。

「えっ!?」そう思うまもなく、2塁ランナーが生還した。

その後はあまり覚えていない、気がつけば何とかその回を終え、結局7-3で試合を終えた。

何とか勝利を得たものの、心の底から喜べない、気がつけば3点差まで追いつめられていた。

終了後、自分の中で今日の試合を振り返る。

四死球3つの4失点、不安定ながらも何とか試合を作ったという自負があった。

徐々にではあるが、安定して来ているようにも感じた。

挨拶を終え、雨が降ってきたので急いで荷物をまとめ、ベンチをあけた。

終了後、監督が近くに来てこういわれた。

「お前みたいな投球しとったらあかんわ。まだ、独り相撲やっとんか。ワンマンショーしてからに。全然あかん、先頭打者に四球与えるなんぞもってのほかや・・・・・・。ハマの失策もそうや、あいつは悪ない、お前があんな投球するから、野手の気持ちにも隙ができるんや。」

その時、私自身、マジで切れそうになった。

「もうえぇ、もうえぇ。ピッチャーなんか辞めたるわ。お宅らで適当に東京行ってください。こんだけ必死こいて、この言われ様やったら、辞めたるわ。」そんな言葉がのどから出そうになった。

自分自身、必死でその言葉を飲み込んだ。

練習は裏切らない。その言葉を信じてやってきたのに。。。。。

自分的には悪いながらも試合を作ったと思った。

少しはほめてくれても良いのではないか、それにもう少し言い方があるだろう・・・・。

いったい、俺にどこまでを求めるのか?

やりきれない気分になった。たぶん私の表情には出ていたと思う。

冷たい雨が、さらにむなしい気分にさせていた。

次の回、気合いを入れてマウンドにたったと同時にとにかく丁寧に投げることを心がけた。

先頭打者に対して2S3Bのフルカウントになり、ファールで粘られるものの、しっかりと1球1球慎重に投じることで、何とか連続してストライクが取れた。

その結果、打者が根負けし、投手ゴロに打ち取った。

「よしっ!先頭いただき!」

正直、うれしかったし、ホッとした。

そして良い意味で何か体の力が抜け、気持ちよく投球できた。

その後、失策で走者をゆるすものの、8番・9番を連続して三振にしとめた。

この2人については、追い込んでからの変化球が自分でも驚くくらいの切れを見せた。

まさにストライクゾーンからボールへと流れるように変化し、右打者はまったく手が届かなかった。

自分で言うのも何だが、変化球が決まる時はそうそう打たれない。

この球が投げたいように投げられたら、もっと投球の幅ができるのに。


その裏の我々の攻撃。簡単に2死になったものの、その後、ニシモ・ヒデキ・マツさん・ナベさんの連続安打で2点いただき、点差は5-1と4点のリードをもらった。

この調子で一気に試合を決めてしまいたい。

しかし、そうは甘くはなかった。

次の回、連続安打を放たれ、さらにそこに失策が絡んで2点を取られてしまった。

また、天候も雲行きが悪くなり、雨もぱらついてきた。

「早く終わらせなきゃ。」

そんなこと考えなくても良いのに、なぜかくだらないことを気にしながら、投球していた。

その裏の攻撃は私からである。安打を放ち、試合を決定づける展開に持って行こうと思ったが、思っただけで簡単に左翼フライに打ち取られてしまった。

後続も1本がでず、我々はあっさり凡打に倒れた。

試合は6回に進み、残すところあと2回である。何とかきっちり終了したい。

また、この試合、四死球は1つである。そして先頭打者には与えていない。

「がんばれ、がんばれ。」そう自分に言い聞かせながら、全力で投じた。

疲れも出てきて、制球にばらつきが出てきたものの、不安定ながら0点に抑え、6回の裏にはセオッチ・ニシモの連続安打から、相手の失策などもからみ、さらに2点いただき7-3と4点差のまま、最終回を迎えた。

「あと1回。きっちり抑えれば。。。。。」

そんな浅はかな考えが、自分に大きな落とし穴を作っていることに今の私は気づくことすらできなかった。