第6回FL政治塾「LGBT施策」尾辻かなこフルレポート  | 女性首長を実現する会 愛知

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第6回FL政治塾                    2018.11.25 東海ジェンダー研究所
LGBT施策 ~現場で地方で国政で~ 尾辻 かな子(衆議院議員:立憲)
 
尾辻さん本当に素敵な方で、みんながファンになったと思いますラブラブ
 
1講演
2質疑応答
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ピンク音符同志社大学の岡野八代氏、グレンキャンベル氏が自身の性指向をカミングアウトした。そしてQueenのフレディ マーキュリーがHIVで亡くなって四半世紀がたつ、HIVやゲイに対する認識も大きく変わってきたが、今、何が変わって、何が変わっていないのか。杉田水脈氏の発言に世論としてみんながおかしいと声を上げた。人が生きるのに条件はいらないし、不寛容に寛容であってはならない。
尾辻かな子さんは同性愛者であることに向きあい、自己受容ができるまでに18歳~23歳まで5年間の時間がかかったそうです。今回のFL政治塾ではLGBTについて基本的な知識を持っているということを前提に話をすすめていただきました。
 
<外科医のエピソード>を読んでどう考えたのか。
 ある日、お父さんと息子が二人で高速道路を走っているときに事故に遭いました。お父さんは即死、息子の方は救急病院に運ばれました。 運ばれた病院で、男の子の手術をしようとした外科医が、子どもを見て驚いた表情でこう言いました。 「私には、この子どもの手術をすることができません。というのも、実は、この男の子は私の実の息子だからです」。
 さて、この外科医と子どもの間にはどのような関係があるのでしょうか。
人のものの見方にはそれぞれの癖があることや、日本人は〇〇だ。家族とは〇〇だ。というステレオタイプな考え方をしてしまいがちなことをこの設問で再認識しました。

ピンク音符ここ最近のLGBTを巡るニュースとしては企業や地方自治体での対応の変化がおきています。
具体例の一部ですが、同性パートナー制度がある地方自治体は9市町村。そして増えつつあります。
・パナソニック 同性婚、社内規定で容認 4月から (16.4) 
  同性カップルを結婚に相当する関係と認める。社員の行動指針も見直し、「LGBT(性的少数者)
を差別しない姿勢を明確化する。
• 大阪市 養育里親に 男性カップル (17.4.5)
• 台湾 司法機関 婚姻の平等(同性婚)を合憲化(17.5.24)
• 札幌市が同性パートナー証明書発行 (17.6.1)
• ドイツ 同性婚合法化(2017.10.1)
• 福岡市 同性パートナー証明書発行(18.4.1)他
 ピンク音符性的マイノリティ(少数派)と呼ばれる人たちとは、総称としてLGBTと呼ばれていますが詳しくはレズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トランスジェンダー(T)インターセクシャル(I)、クエスチョニング(Q)、アセクシュアル(A)、クイア(Q)などと別れています。そして多様な性に対するハラスメントはSOGIハラ(Sexual Orientation Gender Identity)と呼ばれています。
 2016年に連合が行った「LGBTに対する職場の意識調査」では当事者は全体の8%。差別をなくすべきと考える人は8割を超えました。仕事の場における課題としては就職活動に不利となる場合、セクシャルハラスメント、トランスジェンダーの方たちに対しては制服、トイレ、更衣室、マイナンバーなど。制度に関する問題の課題も多いです。トイレに関しては表記を変えるだけでなくLGBTのニーズと障碍者のニーズは違うことを考える必要があります。制服についてはジェンダーレスで、ジェンダーニュートラルな男女共用のものにしていく必要があるし、男女でわける必要のないものはわけないでいいものはわけない(小学生の黄色い帽子など男の子は黄色いキャップ、女の子は黄色い帽子の地方もあります)。最近はLGBTフレンドリーな企業も増え、LGBTに対する基本方針を定めるところも増えてきています。
 
 地方自治体による証明書については、渋谷方式→条例によって決める。世田谷方式→条例ではなく首長の要綱方式。と2つの方式にわかれています。渋谷方式は条例なので、法的な効力は強いのですが、証明書をもらうためには公正証書が必要です。作成にはお金がかかるので同成婚の人だけが何万円もだして書類を作るのか。という疑問もあり使いにくい点があります。
 
ピンク音符次に子供たちの抱える問題についてですが、大人になれば住みやすい地域に移ることができますが、子供はそれができません。LGBTの子供たちの抱える生きにくさは自殺者が多いことでもよくわかります。(アメリカでは異性愛者の数倍)自治体での教育の必要性を痛感するのですが、「学習要領・道徳の壁」があり教科書に反映することは難しいのが現状です。そこでガイドブックを作って、多様な性について教え、みんなで考えることをしていくことがとても重要です。家族を取り巻く課題については親との関係、病気やけがをした時に手術の同意がとれないこと、戸籍の違い→同性では配偶者ビザがとれない、葬式の喪主、養子など課題は多いのです。尾辻さんの母親も子供の状況を受け止めるまでには時間がかかったということですが、2005年の記事を紹介します。
   
ブルー音符性的マイノリティを取り巻く課題としては
 <重点分野> 教育・自殺/メンタルヘルス・HIV・男女共同参画・人権・職場での平等
 <国の課題> 差別解消法の制定、同性パートナーの法的保障 
最後に3つのお願いとして
• 人口の数%はLGBT(性的マイノリティ)。学校、家庭、職場で、すでに、あなたとともに生きている。会う人が、もしかしたら性的マイノリティかもしれないという思いを持って対応して下さい。
• マイノリティの問題は私たちの社会の問題。差別を受けている当事者だけの問題ではない。自分とは関係ないと思わずに、是非、この問題に興味を持ち続け、偏見や差別の解消に力を貸して下さい。
• この問題について、周囲の人と話をしてみて下さい。偏見や差別は、よく分からないものへと向けられます。あなたの周りから正確な知識を広げて下さい。
 
 満員の会場でのあっという間の1時間30分でした。女性だといって差別はしないでといい続けてきたのですが、人として差別のない平等な社会をめざして声をあげ続けていかなくては、と感じた次第です。(内藤)
 
2質疑応答------------------------------
質疑応答
質疑応答
 
会場:“新潮45”の杉田発言について。
尾辻:今回の杉田発言に対しては、自民党ではなく杉田さんがおかしい、というような話になっている。LGBTについて自民党は、差別解消ではなく理解増進法を作りたいと言っている。私たちは差別解消法を作りたいと思っており『性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律』案を、次の国会で出したいと思っている。
 
会場:総務省が作っている登録証明書のひな型というのには男女が書いてあって、全国の9割の市町村がそれを使っている。
選挙投票の時、入場券はがきで本人確認をするので、LGBTの人は見かけで疑問を持たれることがある。これも抗議に行ったら、総務省の外郭団体から出ている「投票の手引き」に、本人確認の仕方として、入場券と本人を見比べて、性別はもちろんのこと年齢もよく確かめなければならないと書かれている。こういう手引きなどの文書についての抗議は、どこへ言ったらいいのか。
尾辻:本人確認には、名前・生年月日・住所・性別。この4要素が基本だと総務省は決めている。しかし、実務上の変更で出来ているということなので、総務省あてにも要望書を出していただきたい。
日本では戸籍の性別の変更の要件が厳しい。本人が20歳以上、子供も20歳以上。なお且つ手術要件がある。つまり、断種をしなくてはいけないので、人権的にも問題があるし金銭的問題もある。早く、本人の申請だけで認められるようにしたい。
それが簡単にできないのは、例えば、結婚している二人のいずれかが性を変えて、そこに子供もいるという状況になると、事実上同性婚を認めてしまっていることになる。それに抵抗があるようだ。
 
会場:憲法24条は婚姻は両性の合意にのみ基づいて云々とある。この両性というのは男と女という前提で作られているのではないか。だからこれは解釈改憲でいけるのではないか。
尾辻:立憲の考え方としては、今の24条は同性婚を禁止していないという解釈を取っている。かといって解釈改憲ではない。これは全然違う。私たちは立憲主義に基づいている。憲法24条は同性婚を排除していないという考え方は、国民の権利拡大ということ。このことから、安倍政権も、憲法24条は同性婚を想定していないとしか言えない。
 
会場:当市では今、「LGBTってなあに」という小冊子を小学校で配っているが、小さい自治体では具体的に次に何をしたらいいのか。
尾辻:まずは当事者が安心して集まれるような場を作る。また、人権集会などでLGBTの人を呼ぶ。また、男女共同参画のアンケートを取るときにLGBTについての意識調査もするなど、現状の認識を深めるのが必要。現状を把握して国に対する意見書などを出すのもいい。
 
会場:大学での活動についてはどうしたらいいのか。就職についても聞きたい。
尾辻:大学は中心になる人や組織があるかどうかで違う。講演会や映画上映会などをしたり、学生向けの冊子を作ったりしているような先進事例を見てもらうとよい。大学には何かあったときの相談体制の整備と、だれでも入れるようなサークルがあるといい。
就職に関しては、企業の理解も進んできている。最近はLGBTを応援していることが企業価値にとってプラスになるという意識も出てきた。東京レインボーでも有名企業が多数スポンサーになっている。日本の企業内部でも、LGBTに理解があるというのは企業イメージを高めるという方向になってきている。
 
会場:教師に対するカウンセリング体制も必要ではないか。
尾辻:文科省ではガイドブックは出しているが、現場まで下りてきているとは思えない。研修を受けるというところまで至っていない。実は、先生にもそういう人がいるはずなのに、先生自身がカミングアウトできないのが現状だ。
今、学校では、性別違和感があるという子がいる。しかし、性別違和はあるけど性的違和なのかは実はよくわからない。性別違和を持っている人は広い。
 
会場:自閉症の子供がいるが、自閉症などの発達障害では、自分の意識を言葉に出せないし、それを理解するというのも難しい子がいる。そういうマイノリティのセクシュアルについての議論はあるのか。
尾辻:発達障害では、いわゆるコミュニケーションの障害があって理解しにくい。特にセクシュアリティの話はしにくい。日常の言葉には、裏のコミュニケーションがあったりして、日本語は難しい。言い方がこれで正しいか考え、自分の思いをきちんと言葉にして相手に伝えるという方法がいる。
 
会場:親に対して、子供達に性の多様性を知らせてほしいという提案をした。親向けに市などが広報する例はあるか。
尾辻:学校で生徒に配るというのはあるが、親向けに配っている自治体は聞いたことがない。一般的に人権講演会を開くという程度のことはする。じつは、LGBTを学校がやろうとすると、保護者からの批判がきたりするので、PTAを主体にして講演会などを企画して、生徒も一緒に聞くというのはある。
 
会場:保健所が、妊婦の検診の時などに、セクシャリティの多様性や、そういう子供が生まれることもあるということを知らせるとよいのでは。
尾辻: 行政は縦割りなので、一つの部署だけではなく様々な分野でも教育でも必要。
会:名古屋市が今年7月に1万人対象のLGBTに対する意識調査をした。杉田問題の直後ということもあって市民の関心が高く、50%も返ってきた。結果、回答した5000人のうち約4%がLGBTだということが見えてきた。
市民意識調査は、こういう差別意識をあぶりだすことも大事ではあるが、どういう風にやるのがいいのか。国や自治体でこういう統計を取る計画があるのか。もしあれば、実例とか知りたい。
尾:私が知っている限りでは、国として取ったのはない。
最近こういう調査であるのは、LGBTか性的マイノリティが多いが、当事者も周りの人も、セクシャリティというのを誤解している人もいる。セクシャリティ(性の在り方)とか書かないと難しいですね。
 
会場:いじめの問題をどう見るか。
尾辻:いじめ対策は、同調圧力といかに戦うのかということが重要。いじめがダメということは皆分かっている。しかし自分一人がそれに反発できない。そういう同調圧力にいかに対抗するかということが重要。あとは学校全体がいじめを許さないということ。
 
会場:生まれた子供がインターセクシュアルだったりしても、お医者さんがインターセクシュアルの知識がない場合問題もあると思う。医療関係者にも教育をして、頭を入れ替えるということをしなければいけないので、すごく大変なことではないかと思う。
尾辻: LGBTにIを入れるかということについては、まだ問題として残っている。実は今、ディエスディズという、どちらかというと医療的なケアが必要だということなのだという団体が出てきている。当事者ではないので、もう少し私もDSDのことを勉強しないと、そこまで踏み込めないかなと思う。
※インターセクシュアル=外性器が生殖腺の雌雄と反対の外観を示したり、同一個体に両性の生殖腺を持つ人のこと。出産時に見つかり、処理されることもある。DSDは、性分化疾患というその医学的名称。
自分が何者であるのかということはとても大事なので、性同一性というのは子供の発達段階ではとても大切。どちらでもないことでより不安定になる人もいるので、そこを見極めないといけない。子供の時からあんたは女でも男でもないよと言うことで、その子にとっての本当に自分というものを見つけられるのかどうか。とても悩ましい問題。
尾辻:ILGA(International lesbian, gay, bisexual, trans and intersex association)という団体が作った2015年5月時点での世界地図を見ていただきたい。
世界の国はほぼ三つに分かれる。一つは、同性結婚が認められているなど、LGBTが法的に平等が確保されている国、二つ目は日本のように、平等の法律もないけれども、犯罪でもないという国。三つめは犯罪とされる国で、場合によっては死刑になる国もある。つまり、生まれた場所によって扱いが全然違う。今の常識では考えられないが、かってアメリカでは異人種間結婚は犯罪だった。そういうことを思うと、きっと同性婚というのもそういうことになるのだと思う。今の常識が必ずこの先の常識になるとは限らない。これは人権の問題なのだということをぜひ広げていただいて、LGBTが差別されない国にしていきたい。(まとめ・文責伊藤)