人生を動かす私の中の何か。
久しぶりに、黒いジャケットを羽織って、
先の細い、バックストラップの黒いパンプスを履いた。
会社を辞めてから、初めての面接。
webで仕事を探して、3社エントリーした。
web上の履歴書は、かなり奔放に書いた。
かしこまらず、自分らしく。
1社は、そのwebの書類選考で断られた。
1社は、手書きの履歴書を送ってくださいと。
そしてもう1社は、すぐに面接日時を指定された。
面接日時が決まった時点で、
私は、もう1社の履歴書を郵送するのを辞めた。
予感がした。
きっと決まる。
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「即日採用なんて初めてだ。」と、若い副社長は笑っていた。
私は控えめに笑みを返しながら、
大きな声で笑いたいのをこらえていた。
きれいなオフィスであること。
私服通勤でいいこと。
家から近いこと。
見通しの明るい感じのすること。
社員の雰囲気がいいこと。
考えていた条件をすべて満たした会社で、即日採用。
描いていたよりも数倍立派なビル。
キレイなオフィス。
お洒落な社員さん達。
嬉しすぎる。嬉しすぎて笑い出しそう。
物事がぽんぽん進むのは、
それが自分に合った道である証拠だと、
ミカコちゃんも言っていたし。
大丈夫。
きっとうまくいく。
明後日から、出勤。
仕事仕事の日々になる、きっと。
覚悟をしよう。
きちんと。
力まず、進んでいく。
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うん。
タイミングを、逃さなかった自分に感謝。
明日は本を読んで勉強しよう。
テニスコートの熱。
若菜から電話があった。
声で泣いているのだとわかった。
私ほどでもないけれど、彼女もかなり涙腺が脆い。
「負けました…。」
今日は、秋季関東リーグの最終日だった。
私の母校は、負けてしまったらしい。
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応援に来て欲しいと、1週間ほど前に言われていたけれど、
新幹線で横浜まで行く交通費を考えると、
引っ越したばかりで無職の私にはかなり厳しいのが現実で。
私は若菜がすごく好きで、後輩として、本当に可愛い。
彼女の高校までの恩師には悪いけれど、
基本技術よりも先の、試合に勝つ術を、
彼女に教えたのは私だと、おこがましくも自負している。
もちろん、その殆どは自分の恩師からのうけうりなのだけれど。
大学で、同じコートに立っていた時、
彼女の打つボールの方向も、高さも、
それに込められた気持ちの揺れ方も、
きちんと正確に理解出来ていたと思う。
試合の最中も、終わった後も。
どんな言葉が適切なのか、
どうすればそこから前へ行けるのか、
私は、彼女と同じ熱さを持って、
それから冷静に、判断できた。
だけど、
電話じゃわからない。
泣きながら電話をかけてくる、可愛い後輩に、
私は何を伝えればいい。
テニスコートでの、緊張感や、恐怖を、
忘れてしまった私が。
ひとつ思うことは、
極めようと思ったものがあるのなら、
それを終える時はいつだって「途中」だと言うこと。
高みを見たと思っても、
見渡せばもっと高い山に囲まれてる。
死ぬまでやるか、
「途中」でやめるか。
そのどちらか。
「途中」でやめることの歯痒さを、
どれだけ軽減できるかは、
悲しきかな。
どれだけ、
情熱を失えるか。
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そんなこと、
教えないけどね。
どうか、
若菜の選手としての最後が、
晴々とした青空のようでありますように。
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本当は逃げ出してしまいたかった。
どうしてこんな風になってしまうんだろう。
笑顔をつくることがひどく難しい。
食べていれば喋らなくてすむから、
食べれらるものを探して食べた。
23年間も生きてきて、やっと気づいたのだけど。
私は知っている人が沢山集まる場所が苦手なのだと思う。
嫌いなわけではなくて、苦手。
どうすればいいのかわからなくなって、
本当に、子供みたいに泣き出しそうになる。
ひどく体が固くなる。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
と、心の中で何度も彼に謝った。
もっと上手に、出来れば良かったのだけど。
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終電で、大阪に帰ってきた。
駅のホームで、
ごめんねと言った私に、
彼は少しだけ笑った。
2人で同じ場所に帰れるのが嬉しかった。
前髪。
切った。
眉上1,5センチ。
のつもりだったのに、
美容師さんが遠慮したのか、
眉上5ミリ。
まあ、いいか。
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前髪を切って、枝毛もごまかせる程度に切って、
それから全体的にパーマをかけた。
わりと気に入っている。
お久しぶりです。私の前髪。
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新幹線で、名古屋へ。
結局、1週間でまた名古屋へ向かう私。
明日バーベキューをやるから、と、
仕事で朝から名古屋に行っていた彼に呼ばれた。
生理だし、あまり気が進まなかったけれど、
「香代が行くなら、行きたい。」と言われて、
あなたが行きたいなら、と思って、行くことにした。
新大阪から名古屋への道のりは、
ひどく体になじんでいる。
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もう社員じゃない私。
恋人の恋人である私。
腰にぶらさがる鈍痛。
空中庭園
- 角田 光代
- 空中庭園
映画では小泉今日子が主演するということで、
その帯にひかれて買った。
面白かったけれど、
「幸せな家庭をつくる」ことが人生の最大の夢である私は、
ひどく考えさせられました。
幸せな家庭って何だろう。