Q05 quest -10ページ目

また瞼が腫れた。

朝だと思って起きたら、午後の3:00だった。

休日出勤で、5:00からアポイントのある彼を慌てて起こす。

パンを焼いて、彼のぶんのコーヒーと、自分には紅茶を入れた。

切らしてしまっているバターの代わりに、はちみつを塗った。


忙しくシャワーを浴びて、スーツを着て、

あっという間に恋人は部屋から居なくなってしまった。

寝坊をしたせいで、今日は帰りが遅いらしい。

惰性で眠り続けた、午前中の時間が恨めしい。



私は、自分の紅茶を啜りながら、

彼が飲み残したコーヒーを台所に流した。



::



昨日の夜、私はひどく情緒不安定だった。



なんだかよくわからないけれど、

涙が止まらなくなったので、

お風呂に逃げ込んだ。

少しだけ声を出して泣いた。

本当にわけもわからず悲しくなった。



私と入れ替わりにシャワーをした彼が、

お風呂場から出てきた時、

私は寝たフリをしていた。

本当に眠りにつけたら楽なのに、と思いながら、

彼が体に触れてくれるのを待った。

求められることで、

寂しさを埋めてしまいたかったから。



何度もキスをしてから、

それでも涙を流す私に彼は困っていたのだと思う。



「傷つけてるの?」と、訊いた。

私は細かく首を振った。

違うの、そうじゃないのと否定をしたいのに、

涙がのどにつまって声が出なかった。





それからしばらく、

私が落ち着くのを待ってから、セックスをした。

体を重ねることは本当に重要だと思う。

快楽とは別のところで、

もっと素朴で奥深い感動がある。




そうして、私は少し、安心する。




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怖くて仕方がない。

本当は知っている、涙の理由。



「必要だよ」と、言って欲しくて仕方がない。

私は何も出来ないから。

お金も稼げないし、

料理も下手だし、

セックスも上手じゃない。




わかってる。

こんな風に考えるのは馬鹿げてる。

一緒に居る理由は、

そういうことじゃない。わかってる。



先に眠ってしまった彼の腕枕を解きながら、

しつこく込み上げてくる涙を堪えた。



眠ろう。

それでも、2人ここにいるんだから。

明日の朝は私からおはようのキスをしよう。


彼の肩に、頬を当てた。

皮膚の温かさにほっとした。

約三十の嘘

約三十の嘘 特別版

普通に面白かった。

中谷美紀はすごくキレイで、

きれいめの服をあれだけ着こなせたら素敵だと思ったけれど、

目ヂカラがありすぎて泣き顔にひどく迫力があった。

椎名桔平は歯磨きが本当によく似合う。

あの歯ブラシは絶対にシステマだったと思う。


みんなそれなりにハマり役で、

ストーリーもそれなりに面白くて、

それなりの満足感があった。


うん。

とりあえずのど飴買いに行こう。

ノンシュガーのやつ。

角川エンタテインメント

さぁいこう

初出勤。


スーツが嫌いで、

「絶対に私服通勤が良い。」と宣言していた私だけど、

考えてみるとこの半年、ろくに服も買っていない。

季節の変わり目のこの時期、着る服がない。

なんて言っていたら遅刻してしまうので、

ともかくそれなりに見える服を着た。

さすがに初出勤なので、

ぴらぴらのワンピースはやめておいた。



新しい会社には、

真新しいデスクに、大きくて座り心地の良い椅子。

「新鮮さ」というプラスアルファを差し引いても、

ずいぶんと快適なオフィスだと思う。



「ドリウィ使えるんだっけ?」

「いえ。」

「コーディングはどれくらい出来るんだっけ?」

「これから第一歩を踏み出そうかな、って、とこですかね…。」

「・・・。」



「ちなみにフォトショップもほとんど使えません。」

と、小声でささやいてにっこりと笑った。




相手の苦笑に、はにかみ笑いを返す。

いまさら採用を取り消せはしまいと、高を括っている私。

一から叩き込んでもらう構えだ。

堂々たる態度で無知をさらけだした。

こういう事は最初が肝心だから。

「一生懸命教えてあげよう。」と、

思ってもらわないと、困る。



::



正直に言って、

転職は正解だった。

抱えていたいろんな問題が一気に解決した気がする。


前の会社を辞めたきっかけは、

確かに「逃げ」だった。

言い訳をすれば沢山あるけど、

出来る努力はもっと沢山あったと思う。



それでも今、

愛する人と同じ空気の中で暮らし、

好きな服を着て、

好きな色のネイルを塗って、

きれいなオフィスに通う。

4月のがむしゃらさとは違う、

穏やかで強靭な前向きさを感じながら。




::



♪~


自分を嫌いになっても

恋人を愛し続けることで

何とか取り戻してきたよ


             ~♪




と、小さな声で唄いながら雑踏を歩く私。



課題本

長谷川 恭久
進歩し続けるWebデザイナーの考え方―Web designer 2.0

今日読んだ本。

内容は、カタカナが多いけれど、

それなりにわかりやすくて良いとして。


誤植が多すぎる。

大きなものから小さなものまで。

10個以上あったと思う。

数々の誤字脱字は100歩譲って仕方ないとしても。

ある章のはじめの3行が、

2,3コ前の章の始まりとまるっきり同じとかどうなんだろう。

画像の解説文が前のページのコピーしてそのまま、とか。



ちょっとびっくりした。



体温

誰かが帰ってくる、ということを知っていて、

ひとり部屋にいるのは楽しい。



今日は窓の外がひどく明るくて、

思わず出かけそうになったけれど、

日に焼けたくない、と思い返した。

私の体はいつになったら白く戻るのだろう。

GWに沖縄に行った時の日焼けが、

お尻のラインにまだ残っているし、

夏に焼けた腕の黒さもとれない。



今日は部屋に居よう。

勉強しよう。

もうずいぶんとwebとか触れていないし、

HTMLのタグも、あんまり覚えていない。

もともとあんまり知らないのだけど。



ともかく勉強しよう。




::




夕方、彼から電話があった。

今日も名古屋に行っている。

会議の合間に電話をくれた。


「帰ってくる?」と訊いた私に、

「帰るよ。飯食うかもしれないけど。」と答える。

彼の声は少しくせのある、甘い声だと思う。




一緒に生きていく中で重要なのは、

隣で体温を感じながら眠れるかどうかだと思う。


昨日の夜、思ったのだけど。




ふと、

「大事にしよう。」って。




抱きしめてくれる腕の優しさとか、

おでこに触れる唇のやわらかさとか、

ゆっくりと上下する胸の厚みとか、

全部。

全部大事にしよう。




ここが、私の居場所だから。

絶対に失わないように、

毎日、感謝をしながら眠ろう。




忙しい毎日を送る、

これからの自分に言い聞かせた。