昨年、セリフ録音用のコンプとしてdbx162SLを購入しました。うちのサークル名に沿った美しい紫色のコンプです。
dbx162SL
さすがに高級品だけあって音が良い。商業作品のセリフ収録にも使っていますが特にS/Nが良い。強いて気になる点を挙げるとすれば、僕の使い方が甘いのかもしれませんが、VCAで圧縮が始まるときや抜ける瞬間に、少し詰まったような音がすることと(なのでOVEREASYで使ったほうが使いやすい)、やはり太さを求めてがっつりと潰して上げる時は少し物足りなさを感じます。

で、偶然なのですが、またしても紫色のコンプをジャンク品で入手することができました。それが本記事で紹介するPurple Audio MC76です。チェックした所、コンプレッサーとしての基本機能には問題が無かったものの、数か所に不具合がありましたので修理と調整を行いました。
MC76:ツマミ外し
※毎度の注意書きですが、当記事を参考に機材に手を入れてトラブルが発生しても私は一切責任持てません。国内には有償で機材の調整やメンテナンスを引き受けて下さる業者が存在しますので、自己責任でやれない方は必ず業者を頼って下さい。

Purple Audio MC76はコンプレッサーの名機Urei 1176の復刻版(再構成品)です。MC76の名前の由来が"MonoCompressor76"のなのか、それともローマ数字で1100を意味する"MC+76"なのかは謎ですが、元モデルになったのはブラックパネルのRev.Eで、入力側にも出力側にもトランスが入っています。オリジナルと比べると入出力端子が現代的なXLRキャノン(2番ホット)になっていること、1176では外付けのステレオアダプターが内蔵されているのでケーブル1本でステレオ動作すること、などが違います。MC76をベースにサイドチェイン機能やバイパススイッチなどを付加し、VU計のランプをLED化したものがMC77という現行機種になります。

MC76のマニュアルは、英文ですが回路図や調整方法も含んだものがメーカーサイトで公開されています。

【メンテ前の状況】
長期間、通電されていなかった古い機材の常として、通電後しばらく音が不安定でした。初回の通電直後に音が出るかどうか、圧縮がかかるかどうかはチェックしたものの、その際は音がいまいちで、特に2台のうちの1台は音が痩せてカリカリな感じを受けました。無圧縮設定のまま2台をステレオにして左右の音量を揃えても、特性が違うので微妙に音がセンターに来ない感じ。部品の異常加熱や異臭が無い事を確認して、1日半ほど通電したまま放置したところ特性が揃ってきました。しばらく通電していなかった音響機器は、アルミ電解コンデンサの自己修復などで音が変化すると言われていますが、大抵は30分ほどで良くなるものです。が、何故か時間がかかりましたね。
MC76:修理前

1号機
・2002年に国内の代理店で修理をしたというステッカーが貼ってある。
・どこを修理したのかわからないがVU計にステッカーと日付がある所を見るとメーターかランプ?
・メーターのランプ点灯せず。
・電源用のIECコネクタがぐらぐらする、が特に不具合ではない様子。
・調整前はメーター位置がかなり狂っていた。
・GR OFFにしていてもRATIO 4:1でリリースを長い側に回すと2dBほどリダクションしているような針の動きがある。
・INPUTボリュームにガリあり。
・天板固定がマイナスネジ。
・パネル塗装は艶消しっぽい仕上がり。

2号機
・RATIOスイッチの4:1のボタンが欠落している。スイッチの軸も途中で折れている。
・メーターのランプ点灯せず。
・GR ONにしているのに圧縮がかからなかったり、OFFにしたのに圧縮がかかったりすることがある。
・ステレオリンクで親機とした場合にリンクしない。
・INPUTボリュームにガリあり。
・天板固定がプラスネジ。
・パネル塗装はヘアライン仕上げで艶ありっぽい仕上がり。

MC76:基板全体

つづく
(がんくま)

Purple Audio MC76のメンテナンス(2)
Purple Audio MC76のメンテナンス(3)
Purple Audio MC76のメンテナンス(4)
Purple Audio MC76のメンテナンス(5)

追記:本機は2年後に再修理をしています。
Purple Audio MC76 の再修理(1)
Purple Audio MC76 の再修理(2)
Purple Audio MC76 の再修理(3)
Purple Audio MC76 の再修理(4)
Purple Audio MC76 の再修理(5)
Purple Audio MC76 の再修理(6)
Purple Audio MC76 の再修理(7)