新聞の書籍広告欄には、
コミュニケーションに関する本の紹介がない日はないぐらいです。
“できる人の話し方”、“他人のこころをつかむテクニック”、
“このコミュニケーションで部下は動く”、“営業で必ずOKをもらう説得術”等々、
つい、購入したくなるようなキャッチコピーばかりです。
対人対応法とは、
「人の話を聴き、観察し、相手によって臨機応変に対応すること」と言えるでしょう。
しかし、
相手は千差万別。
相手を世界中の人と考えれば、世界人口は65億人。
すなわち、
65億通りの対応を行うことが必要となります。
有効な対人対応方法は果たして存在するのでしょうか?
今回は、このことをテーマに考えていきたいと思います。
つい先日、
上野のあるショーウインドに気に入った商品を見つけました。
そのお店に入り、さっそく店員さんにその商品見せてもらいました。
いろいろ見て気にいり、「さあ買おう」と思った瞬間、
店員さんから「これは最近良く売れているんですよ」と言われました・・・
皆さんだったら、これを言われたらどうしますか?
私は、というとその商品を購入しませんでした。
「購入しなかった」というより、
「買う気が失せた」のでした。
それは、店員さんが発した「これは最近良く売れているんですよ」の
たったひと言を聞いたからです。
なぜなら、私は流行品に全く興味がなく、
むしろ人と同じモノを持つことに嫌悪感さえ、覚えてしまうからです。
このお店の販売員さんは、
見込客が迷っている場合は「最近、売れているんですよ」というトークが、
クロージングのトークとして、最も有効だと
経験上そう思って、あるいは店内教育によって、発言した事なのでしょうが、
私には、逆効果をもたらしたのです。
数年前のことになりますが、鮮明に覚えていることがあります。
それは、ある女性誌で「男と女の定点観測」という記事を読んだ時のことです。
街を定点で観測することで、時代のトレンドを分析していく定点観測で有名な
「 webアクロス」というマーケティング専門誌に習い、
あるエリアの女性がヴィトンブランドのバッグを持っているか定点観測を行いました。
その率を『ヴィトン率』と称してまとめてありました。
このヴィトン率は、ヴィトンの新シリーズが出ると、
全く同じヴィトンのバッグを持った女性たちをはじき出すものですが、
全く同じヴィトンのバッグを持った女性が闊歩しているシーンを何度も見ました。
銀座という立地の条件を考慮しても、実に高い率でした。
こういう経験を積んでいると、
「有効なクロージングは一つ」と思い込みますから、
さきほどの店員さんは、そう声掛けしたのかもしれません。
しかし、
結果は、顧客を一人失いました。
日本には、私に似た個性タイプは、
総人口の25%ほど存在するらしいので、
このクロージングを変えると、売上25%増は期待できるかもしれません。
このような声掛け、あるいはアドバイスを一言変えただけで、
著しい成果を挙げたスポーツ選手もいます。
日本一の実力を持っているにも係わらず、いつも決勝で力を発揮できず、
2位や3位になってしまうチームのメンタルトレーナーは・・・
まずメンバーの個性を調べました。
次に、監督やコーチが、それぞれに何をアドバイスしているかを聞き出しました。
すると、実力があるが、その実力を発揮できていない選手と
そのアドバイス法が合致していないと考えられる選手が見えてきました。
そこで、
監督及びコーチにその選手が決勝に出る時には、
次のようにアドバイスするよう伝えました。
それは、
これまでの「頑張って、期待している」ではなく、
「いつもの練習している力を出せば大丈夫だ、行ってこい」という言葉をかけるように、
ということでした。
結果は?というと、
今年は、その実力を十分に発揮し、最高の成績を残したのです。
これは、彼の個性からすると、
「期待している」という言葉、声掛けが「ストレッサー」そのものだったからなのです。
世の中には、「期待しているよ」のひと言が動機付けになる人もいれば、
プレッシャーになる人もいます。
「着実に前進すればいいよ」が、志気を高めることもあれば、
大して意味をなさない人もいます。
まさに人は百人百様であり、同じ言葉、一つの対応には限界があります。
もちろん、
皆さんも人によって使い分けをされてはいるでしょう。
そして、それは経験から身についたものですか?
あるいは本などで学んだことでしょうか?
対人対応には、その人の立場、置かれている状況、様々な条件が影響してきます。
が、何といっても変数が多く、把握しにくいにも係わらず、
個性が状況を左右することが大きいのです。
私の経験や某スポーツ選手の例がいい例です。
ところが、相手の個性をしっかり把握し、その対応法を事前にわかっていれば、
確実な効果が期待できるのです。
あの銀座のマニュアルが個性別に合わせた対応マニュアルになっていれば、
私と同じ個性の来店客25%の気持ちを掴み、
売上を何%か上乗せすることができると予想できます。
そうです、個性に合わせた対応をすること、
これこそが最も有効な対人対応であり、
その方法とは、個性を知るために、「人を観る」ことなのです。
先人が残した故事に
「人を見て法を説け」というものがありますが、
私は、
「人を観て法を説け」が正しい表記だと考えています。
なぜなら、「観る」とは、
「しっかりした根拠を持ちつつ、人の個性を理解する」ことと考えるからです。
しっかりした根拠を持った上で、人の個性を掴む。
そして、その人に一番効く法を取れば、
それは、
同時に人を活き活きとさせるコツだと確信している今日この頃です。