前回の投稿の間に、「今週のワイン」の投稿が入り、少し間が空いてしまいました。
前回は、テレーゼの運命の人フランツが、もう少しでテレーゼと出会えなくなるかも知れなかったと言う、話でした。
さて、ここからが、今回のお話。
亡くなった兄クレメンスの代わりとして、ハプスブルクの宮廷にやってきたフランツ。
これがテレーゼとフランツの運命の出会い。
ここまでは宿縁です。
・・・・と聞くと「やっぱり運命ってあるんだわ!」と思う方も多いかも知れません。
しかし、実は、宿縁は1つだけではなく、しかも、実に頼りないものです。
何故なら、この時の出会いは、マリア・テレジア5歳、フランツ14歳。
テレーゼは英国ロビンソン大使が「昼は女官達にフランツの事を語り、夜はフランツの夢を見る」と報告する程、フランツに首ったけだった様ですが、それは女ばかりの家族構成の中で、憧れのお兄さんを得た様なもの。
それもその筈、テレーゼの家族は、父と母、妹と女性ばかり。
テレーゼが長男ヨーゼフを出産するまで、ハプスブルク家には60年間、男の子が誕生しなかったんです。
両親から可愛がられ、宮廷とは言えアットホームな家庭に育ったテレーゼは幸せだったけれど、陽気で9歳年上のフランツは、テレーゼにとっては優しく、頼もしいお兄さんの様なもの。
それまで男性と言えば、父君と家臣位しか周りにいなかったのですから、初めて会う、割合年の近い男の子にポッとなってしまう気持ち・・・・分かりますよね?!
テレーゼにとっては憧れのお兄さんでも、フランツは果たして5歳の女の子に恋心を抱くものでしょうか?
きっと最初は、小さな妹位にしか見ていなかったと思います。
宿縁とか運命と言っても、最初はこんなに頼りのないものなんです。
しかし、テレーゼにとっては、フランツは絶対的な存在だった様ですよ。
何故なら、フランツは母方の祖母リーゼロッテからフランツを含む3人の孫の中でも「何といっても一番可愛らしいのは真ん中の子(フランツの事)です!」と言われる位、愛嬌のある男の子。
この人好きのするフランツの長所は大人になってハプスブルク家の婿養子になっても、ヨーロッパ諸侯の間でフランツの事を悪く言う人は一人もいなかったんですって。
テレーゼのパパ、カール6世も、まるで男の子が出来た様にフランツの事を可愛がったんです。
14歳の少年フランツは、スラっとしていて俊敏。
狩猟好きなカール6世の狩りのお供には、まさにうってつけの美少年だったので、フランツが勉強に取り掛かろうとしても、「フランツ、狩りに行くぞ!」とばかりに連れ出されてしまう。
フランツも楽しい事の方が好きなので、ついつい皇帝の誘いに乗ってしまう。
その為、フランツの語学の才能は一向に伸びず、国の父に宛てた手紙にもフランス語とドイツ語が混ざっていたのだそうで、当然、国の父から「ちゃんと勉強する様に」といつも叱られていたのだそうです。
でも、心を入れ替えて、いざ勉強!と思うと、テレーゼの父が狩りのお誘いに来る、と言った繰り返し。
如何に、テレーゼ一家とフランツの結びつきが強くなっていたかがお分かりになるかと思います。
しかし、宿縁とは言っても、人の世な何とも頼りないもので、平穏な毎日を過ごしていた頃、またもやテレーゼとフランツの間に、大きな障害が起きるのです。
数年が経ち、小さなテレーゼが少女に変わって行く頃、フランツの父が急死してしまったのです。
あと少しすれば、テレーゼはみずみずしい少女として、めでたく運命の赤い糸を成就させていたかもしれないと言うのに・・・・。
父の後を継ぐ為、フランツは故郷に帰らねばならず、一旦は離れ離れになってしまうのです。
カール6世もゲンキンなもので、皇帝のお気に入りとして、あれだけ家族同然に可愛がっていたにも関わらず、フランツが故郷に帰ると、「愛娘の婿は何もフランツと決めなくても良いのでは?」と言う気分になってきたのです。
しかも!最初、カール6世はテレーゼをスペイン王家の王子と結婚させるつもりでいたらしい、と言う諸説までありますから、運命の赤い糸って、かなり混線していませんか?
・・・・・to be continued