サー・ウィンストン・チャーチル 2000
ポル・ロジェ
我が家のお正月はお屠蘇代わりにプレステージ・シャンパーニュを空けますが、今年はヴーヴ・クリコのドゥミ・ブティーユ(ハーフサイズ)でさっくり乾杯。
3日の週末ワインとしてポル・ロジェのプレステージ「サー・ウィンストン・チャーチル」を楽しみました。
プレステージと言うと、ドン・ペリニヨンやクリスタル等が有名どころですが、それに比べるとポル・ジェのチャーチルは地味な存在かもしれませんが、安定感があり、いつも期待を裏切らないシャンパーニュ。
やはりチャーチルを飲むと「ポル・ロジェは美味しいよね」と思わず言いたくなってしまうシャンパーニュです。
何を隠そう、私が初めて飲んだプレステージが、実はこのチャーチルで、プレステージと並のシャンパーニュの違いを実感した思い出のシャンパンです。
ポル・ロジェと言えばボランジェと並んで英国王室御用達のシャンパーニュ。
チャールズ皇太子と故ダイアナ元妃の結婚式やウィリアム王子とキャサリン妃の結婚式でも振舞われたのもポル・ロジェのシャンパーニュ。
実は、今の様な発泡性のワインが抜発的人気となったのは、フランスではなくイギリスが先でした。
シャンパーニュは今でこそ泡のあるワインですが、元々は泡のない普通の赤ワインを作っており、代々フランス宮廷ではシャンパーニュ地方の赤ワインが愛飲されていました。
しかし、発酵が途中で止まり、ワインの中に泡が残るワインは次第に、フランス人の嗜好に合わなくなり、流通機構が良くなり、遠方のワインも容易に手に入る様になったパリでは、シャンパーニュの人気が下火になり、メゾンでは国外のシャンパン人気を頼って国外への販売網を広げて行ったのですが、そのお得意さんが産業革命に沸く英国。
フランスでは、いかに泡を失くすか研究に明け暮れている中、英国ではシャンパンの気圧に耐えられる良質なガラス瓶の改良も手伝って、勢いよくコルクがはじけ飛ぶ様に、糖を加えるなど泡立ちを良くするために改良され、言わば、フランスに逆輸入された様なもの。
ヨーロッパやアメリカのセレブ達に愛されたシャンパーニュですが、ポル・ロジェ社の夫人が英国の元首チャーチルにシャンパンを進呈したところ、すっかり、虜になってしまったチャーチル。
自分のお気に入りの競走馬に「ポル・ロジェ」とつけて全世界に広めました。
そして、自社のシャンパーニュをこよなく愛した英国元首へのオマージュとして名づけたのが「サー・ウィンストン・チャーチル」です。
看板商品に外国人の名前を冠したシャンパーニュ。
フランスと英国は仲が良くありませんが、歴史を紐解き、その関係を絡めてみると当時のチャーチル人気にあやかって名前を冠したのも不思議ではありません。
さて「気品と優美」を哲学とするポル・ロジェのシャンパーニュは、木樽を使用せずステンレスタンクで発酵する事によって、葡萄本来の繊細な味わいを引き出しています。
また、セパージュは非常に古いグラン・クリュの畑から収穫されたピノ・ノワール50%とシャルドネ50%使用。
澱抜きをする際、瓶口に澱を集める作業をするルミアージュ(動瓶)は、今でも熟練した職人による手作業で行われています。
プレステージシャンパーニュは、ヴィンテージから10年を過ぎないと飲み頃を迎えないと言いますが、確かに10年経たないとその本領は発揮しません。
この2000年ヴィンテージのチャーチルは、縁に若干のグリーンを残しながらも、濃い目の黄金色。
香りは、アプリコット、洋梨のコンフィ。蜂蜜の香り。ミネラルの香り。
木樽による複雑性ではなく、ステンレス発酵のクリーンな果汁が綺麗に熟成を遂げた感があります。グラスを回すと、ヘーゼルナッツの様な香りもジワジワと現れますが、直ぐに閉じてしまう若々しさが未だにあります。
アップルパイの様な香りも感じられますが、最初からアフターフレーバーまで一貫して蜂蜜の香りが印象的です。
味わいは、木樽を使っていないせいか、クリーンな印象。苦味が非常に少なく、アタックはドサージュと熟成にから、まろやかな甘味を感じ、クリーンで心地よい酸味が最後まで持続。
苦味は穏やかな印象。サラッと飲んでしまうと、それ程苦味を感じる程ではありません。
鰹と昆布を使った上質なお出汁と薄口醤油で煮漬けた根菜類に非常に良く合います。
それと、スモークしたハム類やチーズ。
カマンベールチーズの外皮の様な香りもある為、白カビ系のチーズにも合います。
2000年はシャンパーニュにとってもビッグヴィンテージ。
綺麗に熟成していますが、まだまだこれから円熟味を増す熟成途中のシャンパーニュ。
他には、てっちりや蟹、オマールにも合わせられるシャンパーニュです。
↑ボックス チャーチルが印刷されています。ミュズレ(王冠)にも・・・・。