日本文明は孤立している 2023/12/20 19:00
世界の文明は8つに分けられるという。文明とは、宗教・歴史・文化などの要素により古くから形成されてきた。中でも、文化がidentityを規定しているという。
以下はYoutube「Japan チャンネル」さんの投稿内容を参考にしてまとめたものである。
サミエル・P・ハンチィントンは、1996年に出版した『文明の衝突』で、世界の文明は文化を共有する8つの文化圏で構成されていると述べている。
① 西ヨーロッパ、アメリカなどの北米で西方教会に基づいた文明で、19~20cに世界の中心で あった文明圏
② ギリシャ正教に基づいたギリシャ、ロシア、東ヨーロッパ周辺の国からなる文明圏
③ 西洋文化と土着文化が混合した南米のラテンアメリカ文明圏
④ イスラム教に基づいたイスラム文明圏
⑤ イスラム教以外のアフリカ文明圏。アフリカについては一つの文明圏にまとめられない可能性があるが、便宜上「アフリカ文明圏」とする
⑥ インドやその周辺のヒンドゥー教の文明圏
⑦ 儒教に基づき中国の影響を強く受けた中国周辺の国々で、国外居住の華人の経済活動の著しい地域
⑧ 日本一国での日本文明
サミエル・ハンチィントンは「日本文明」の形成の歴史を次のように述べている。2~5世紀に中国文明の影響を強く受けた日本であるが、その後地形上の幸運もあって日本一国のみで成立する孤立文明として発展した。日本だけが一国で文明を作っているというのである。
ハンチィントンは、日本を唯一無二の国と評し、日本の独自性を強調している。その特徴として日本語における言語系統が他のアジア言語系統と異なっていることだという。
韓国語も中国語と異なる言語系統をもっているが、長い間中国の支配下にあったことから日本よりも中国に近いと考えている。
日本語は漢字、ひらがな、カタカナの3つからなる。これは英語などの言語と比べると複雑で、特に主語を示さないという点においてヨーロッパ語と大きく異なる。ヨーロッパ語は単語を置く位置で文法的役割を決定する構造語であるのに比べて、日本語は単語と単語とつなぐ接着剤の役目を果たす語を必要とする膠着語であるという。同じく膠着語の言語には、トルコ語や朝鮮語、モンゴル語があるという。
これは、Youtubeの投稿者の例示だが、例えば雨に関する呼び名は400種もあるという。その例でいけば、魚に対する呼び名も世界の中でおそらく群を抜いて大いに違いない。また、英語に翻訳しにくい日本語独特のことばがある。「おもてなし」「以心伝心」などがそれであるという。また、日本語には擬音語やオノマトペが多種多様である。
ハンチィントンは、特に江戸末期の日本の社会における夫人の地位が高かったこと、気品にあふれていたことを特に評価している。天皇を中心とした国家体制が長く続いたこと。地形上の海洋国家であったことは天の采配ともいうべきで、日本の戦国時代、スペインやポルトガルの脅威を退けて連続した文明を築き上げてきたと書いている。
「神道は2~3世紀ごろに興り、6世紀ごろに入ってきた仏教の仏様を八百万の神々の化身として自分たちの文化に取り入れた」
と分析し
「日本人は、本当にいいものは別のところで形を変えて現れると考えた」
「この神仏習合の時代が何百年も続き、八百万の神が共存する社会を築き上げた」
という。伝統仏教の宗派は13宗と書き、信者数8420万人と捉え、新年に初詣に行く人数を8000万人と書いている。
そして
「日本だけは一つの国家で中国文明から独立している。主観的な自己認識を持つ独自の文明圏を築いている孤立文明である」
と結論付けているのである。
以上は、Youtubeからの引用と参考であるが、かかる「文明論」はいくつか聞いてきたように思う。
かって、エズラ・ボーゲルが「Japan as NO.1」という著作を出した。調べたら1979年である。「漢江の奇跡」ということばも記憶している。近い将来中国が、GDPで米国を凌駕するという経済学者が示したグラフを見た記憶がある。
日本が高度成長を遂げている時期であり、エズラ・ボーゲルが見た日本はその10年後には不動産と株のバブルを迎え、数年も経たずにバブルは弾け、日本経済はどん底に落とされるのである。それから、30年もがいて、ここ最近になってその暗闇からようやく脱出しつつある状況にあるといえる。
韓国の「漢江の軌跡」は朴正煕大統領の時であるが、あの時から50年が経つのであるが、確かに韓国の経済成長には目を見張るものがあったが、ここ最近の世界銀行の成長予測はOECD諸国の中で最下位圏に位置している。
中国の経済予測についておもしろい記事を見つけた。2020/12/27のBBC Japan newsである。
「中国、2028年までにアメリカを追い抜き、世界最大の経済大国に=英シンクタンク」
とタイトルした記事である。
経済学者が予測する経済の行方というものは実に当てにならない。まあ、社会科学全般がそうであるのだが。主張に都合のいいファクターを並べて論理を展開していくのだから。
BBCの記事が書かれた2020年12月というのは今からたった3年前である。中国にあっては、2022年10月に第20回の共産党大会が開催され、習近平が異例の3期目に就任する。その2年前の記事である。
そして、今は中国は不動産事業がほぼ崩壊の途上にあり、輸出も消費も低迷し、国家統計局は7月に青年失業率を21%と発表して以来その後は発表していない。外資はどんどん中国から撤退し、かっては中国は世界の工場と称賛された時代から完全にすべり落ちようとしている。中国経済の回復はもう見込めないのではないかとさえ言われている。
ガラパゴス化した日本文化が今外国人に愛されている。観光客の足は地方へ、田舎へと伸びている。和食を美味しいと言い、日本人の生活習慣を自らも体験したいという。通の外国人は高野山の宿坊に泊まり、中には四国お遍路に挑戦するという。
経済の見通しは極めて困難であるが、生活習慣と歴史の積み重ねから受け継がれてきた文化というものは時代の流れの中にあってもかなりしなやかで強靭であるのかもしれない。