【タイトル】
キングコング2(原題:King Kong Lives)
【概要】
1986年のアメリカ映画
上映時間は105分
【あらすじ】
かつて殺されたはずのキングコングは研究所で昏睡状態のまま生かされていた。ただ、蘇生のためには大量の血液が必要であった。そこへジャングルで捕らえた雌のコングが連れて来られるが…。
【スタッフ】
監督はジョン・ギラーミン
音楽はジョン・スコット
撮影はアレック・ミルズ
【キャスト】
リンダ・ハミルトン(エイミー・フランクリン)
ブライアン・カーウィン(ハンク・ミッチェル)
ジョン・アシュトン(ネヴィット中佐)
【感想】
リンダ・ハミルトンが本作に出演したのは前作に出演したジェシカ・ラングがそれを機にキャリアを築いていったからであったようだが、本作の出来を見てリンダ・ハミルトンは絶望したそうだ。また、ピーター・ウェラーはミッチェル役のオファーを受けたがそれを断り「ロボコップ(1987)」に出演した。また、2015年に89歳で亡くなったジョン・ギラーミン監督にとって劇場用映画では本作が遺作となった。
キングコングは死んだから良かったんじゃないのか。なぜ前作から10年後という設定で生かされているのか。本作の企画のために10年間生かされたというのならなかなか残酷な話である。ただ、昏睡状態のまま10年間も生かし続けることが良いことなのか悪いことなのかとかそんなことに本作は興味がない。人工心臓まで作って輸血が必要となれば新たなコングを捕獲してくるような連中だ。もうこの時点で主演の二人には共感できないよ。100歩譲ってコングを生かせるのを許せても新たなコングを捕獲してくるなよ。せめて連れて行けよ。
そして、あっさり心臓移植も成功してキングコングは元気になる。人間の人工心臓すら難しいのにコングの人工心臓移植に成功って凄すぎるぞ。しかもこれが1例目。ノーベル賞ものじゃないか。まぁそれも良いとして、近くにいるレディコングの悲鳴を聞いたキングコングが暴れだしてコングらは山に逃げてしまうなんて、この人間たちの危機管理能力の無さよ。
このコングらは前作の反省を生かしてか人がいる都会へは決して近づかず、山間部で大人しくしている。番のコングが山間部で仲良くしている様子を誰が見たいのか。しかも昭和の特撮レベルですよ。
で、大人しくしていたコングの元へやって来たボランティアのハンターらによって命を狙われることになり、コングはそのハンターを殺して食べてしまう。これによりフランクリンとミッチェルは「コングがついに人を殺してしまった」とアメリカ軍によって殺されてしまうことが決まったことを嘆く。別にハンターを殺さなくても殺される運命でしょうが。
そんな感じでコング2体を捕獲するアメリカ軍と、コングを保護したいフランクリンやミッチェルが対立するという二項対立で物語は進んでいく。フランクリンとミッチェルは事ある度に捕まるのだがその度にあっさり解放される。ラストもアメリカ軍基地に忍び込んだフランクリンとミッチェルは護衛に向かうアメリカ軍兵士二人をいとも簡単にやっつける(いくら何でも兵士が素人相手にあっさり倒されてどうする)。
さらに前作の興行的な成功から味を占めたのか、コングとは関係のない人間同士のロマンスを押し出していくスタイルには驚かされる。フランクリンとミッチェルのロマンスを描いてどうする。しかもコングが仲良くしているのを見て発情してしまったようで野外で彼らは結ばれてしまう。いたって真剣に描いているようだが失笑もののシークエンスだぞ。また、前作は美人でスタイルの良い女優を中心に据えていたが、もし二匹目のどじょうを狙うならリンダ・ハミルトンは違うでしょ。
またその前段階として描かれる、フランクリンが滝に落ちそうになって無事に助かる場面も、その際のミッチェルのけがをフランクリンが手当てする場面も後の彼らのロマンスを描くための道具でしかない。
ラストでついにコングの間に赤ちゃんが生まれるのだが、まるでゴリラの赤ちゃんのサイズ。人間でも生まれてきたら50センチくらいあるわけで母体の1/3くらいの大きさはある。そして調べたところによるとどうやら本作に登場するコングは身長20メートルくらいあるらしい。仮にその赤ちゃんのサイズが1/3程度だとすると6~7メートルくらいあることになる。いくら何でもあのサイズの体から赤ちゃんのゴリラサイズの子供が生まれてきたら心配になるわ。
あと、コングが川に飛び込む場面ではコングの体が川の水にすっぽり収まっている。どうやらこの川の水深20メートル以上あるらしい。谷の間に流れる川でしかも川幅もそこまで広くないのに、水深20メートルはないだろう。デタラメが過ぎるでしょう。
そもそもの話だが、仮に番のコングが生き延びたとして、また仮にこのコングの間に子供が生まれたとして、その代でコングは途絶えてしまうぞ(うまくいくかは別にして、たくさん子供を作って子供同士で繁殖させる以外に手段はないぞ)。別にそれは良いのか。とにかく目の前にある命が助かれば良いのか。これは2024年現在に見ると、野生の熊が人里までやってきて人間を殺したり危害を加えたりする日本の問題を少し考える。熊を殺すことに反対して役所に抗議の電話をする連中がいるように、たとえコングが人間の脅威となろうが決して殺すことなく保護するという「頭の中お花畑」状態の人間は世界中どこでもいるんだろうな。この描写を多様性の受容と結びつけるのは無理がある。「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者(2022)」でも最終的には人間と恐竜の共存という道を選んでいたけど、理想主義も甚だしいよ。
話は逸れてしまったが、巨大な二体のコングの命とその他大勢の人命を天秤にかけて、それでもなおコングの命を選ぼうとする二人に共感できない時点で本作はすでに破綻している。保護する方法も考えずにとりあえず保護するなんてただの向こう見ずでしかない。これは本作製作のゴーサインを出した時点と同じじゃないの。
本作のような映画にリアリティを求めてもしょうがないのだが、いかんせんそのどれもがデタラメすぎる。コングの描き方にしたって人間側のロマンスや対立にしたってそのどれもにリアリティがない。このレベルの事態になっておきながら政府は出て来ず軍だけ登場というのもなぁ。コングは一度殺したらそっとしておきましょう。
【関連作品】
「キング・コング(1933)」…シリーズ1作目
「コングの復讐(1933)」…シリーズ2作目
「キングコング(1976)」…「キング・コング(1933)」の1度目のリメイク
「キングコング2(1986)」…「キングコング(1976)」の続編
「キング・コング(2005)」…「キング・コング(1933)」の2度目のリメイク
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