【作品#0902】キングコング(1976) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

キングコング(原題:King Kong)

 

【概要】

 

1976年のアメリカ/日本合作映画

上映時間は134分

 

【あらすじ】

 

石油会社のフレッドは新たな油田を求めて船で無人島へ向かう。その無人島には謎の生物がいるとしてジャックが船に密航し、島に向かう途中で難破した船から救命ボートに乗って助かったドワンを救助する。いよいよその無人島に到着すると、そこは無人ではなく、油田も使い物にならず、フレッドは謎の生物を連れて帰ってショーに出して一儲けしようとするが…。

 

【スタッフ】

 

監督はジョン・ギラーミン

音楽はジョン・バリー

撮影はリチャード・H・クライン

 

【キャスト】

 

ジェフ・ブリッジス(ジャック)

チャールズ・グローディン(フレッド)

ジェシカ・ラング(ドワン)

 

【感想】

 

ジェシカ・ラングの映画デビュー作。ドワン役にはメリル・ストリープやキム・ベイシンガーもオーディションを受けているが落ちている。興行的には成功したが、評価は分かれた。

 

誰がどう見てもキングコングの映画ではなく、本作が映画デビューとなったジェシカ・ラングのための映画になっている。キングコングが野獣ならジェシカ・ラングは美女。とにかく美人でスタイルの良い女性を主演に据えて「どうですか、お客さん‼美人でしょ‼」という感じである。ジェシカ・ラングのファーストシーンもきわどい衣装のまま救命ボートに乗っている場面である。その衣装のまま船内のベッドに移され神々しい照明に照らされたジェシカ・ラングの肢体とその美貌。男性の観客に「いやらしいことを考えてください」と言わんばかり。

 

ジェシカ・ラング演じるドワンは女優という設定であり、乗っていた船が難破して救命ボートに乗った彼女だけが助かったという設定だ。オリジナル通り女優という設定なんだが、なんともいい加減な設定だとは思う。そして、彼女は自分だけが助かったと知ると他の船員を思って悲しむのだが、「まぁいっか」とあっさりと気持ちを切り替えていく。悲しみもすぐに乗り越えられる強い女性として描きたかったのだろう(棒)。すると、その船には男しか乗っていないのにジェシカ・ラングはまるでアイドル映画のごとく次々に衣装チェンジをし、島に到着すると体の半分くらいは露出しているんじゃないかと思えるような格好(Tシャツとホットパンツ)でジャングルを突き進んでいく。この地に野生のキングコングがいるなんていうリアリティは関係なく、ジェシカ・ラングの体をとにかく見せたいのだ。

 

そもそもと言えば、この船は無人島と思われる島から石油会社のフレッドが新たな油田開発のために訪れたのだ。なのに、この島の石油が使い物にならないと分かると、フレッドはキングコングを捕獲してアメリカでショーをやろってひと儲けしようと考える。この時点でフレッドはキングコングの姿は見てすらいないわけで、ここにも無理がある。石油会社のフレッドというキャラ設定は必要だったか。おそらく、1970年代はオイルショックが二度も発生したので、発見した油田が使い物にならないのはそういう時代を反映したのだろうが、だから何だって話である。だったら最初からキングコングを探している資産家とかで良かったと思う。

 

それから、本作のファーストクレジットはジェフ・ブリッジスである。彼が演じたのは動物学者のジャックである。石油会社のフレッドが向かう島に謎の生物がいるという噂を聞きつけ、フレッドの船に密航したのだ。密航するや否やフレッドらの会議に侵入してあっさり取り押さえられてしまう。そして上述のようにドワンが来たことでこの一件は有耶無耶になり、ジャックは当たり前のようにフレッドらと行動することになる。この設定もチンプンカンプンだ。ドワンが流れ着いて来なければジャックは捕まえられたままだったはずだ。また仮にドワンが来たとして、フレッドにはジャックがこの船でウロウロする理由もメリットもないはずだ。この三者のキャラクター設定はあまりにも遠すぎる。彼らに接点なんてない。強引にも程がある。だったらオリジナル通りで良いじゃないかという話になってしまう。

 

そして、無人島だと思っていた島には原住民が多数住んでおり、満を持してキングコングが登場する。当時は12mもの巨大なキングコングの顔面が作られたが、製作費用に対して効果を発揮せず、それが映画に登場したのはたった15秒程度だったようだ。正直言って「キング・コング(1933)」と何がどう変わったのか。もちろんストップモーションだったオリジナルのコングに対して本作はスーツアクターが演じるコングになっている。ただ、モノクロだったオリジナルと違いカラーになった本作ではその粗さはより目立つ形となっている。原住民によってキングコングに差し出されたドワンをジャックらが救出に行く流れとなる。コング登場前が特段面白いわけではないのだが、肝心のコング登場後から驚くほどにつまらなくなっていく。

 

油田開発に訪れたフレッドらは、なぜか用意していたクロロホルムでキングコングを眠らせ、なぜかキングコングが収容できる船でアメリカへ連れて帰ることにする。すると、オリジナル同様にショー当日に場面は切り替わる。フレッドは金儲けができたら何でも良いと考え、ジャックはキングコングを見世物にすることに反対し彼らの意見は対立する。では、ドワンはというと、あれだけ「コングは私を助けてくれた」とコングを大事に思っていたのに、ショーに出演しなければ今後仕事はないと脅されてショーに出演することにする。序盤にも亡くなった船員のことを思って悲しんでいた彼女が気持ちを切り替えたように、ここでもコングに助けられたけど女優として成功したいから「それはそれ、これはこれ」と気持ちを切り替えて進んでいく。

 

そして、案の定キングコングは暴れて街へ繰り出していく。こんな事態になってもドワンとジャックが愛を語らう場面を入れるセンスには脱帽だ。キングコングを捕まえるために、ジャックはキングコングがいた島の二つの岩山を見たことを思い出し、キングコングが向かうのは世界貿易センターのツインタワーに向かうと予想する。字面で見るとギャグみたいな話だが当の本人たちはいたって真剣である。そんな馬鹿なという話だが、ジャックの予想は見事に的中してキングコングは世界貿易センターのツインタワーをよじ登っていく。そしてジャックやドワンの叫びも空しくキングコングは殺されて映画は終わる。

 

結局、本作は「キングコング」という題材を借りたジェシカ・ラングのプロモーション映画でしかない。美人でスタイルの良い女優にいろんな衣装を着せ替え、笑ったり泣いたりいろんな表情を見せた。別にドワンとキングコングのロマンスや愛を描くわけでもない。もしジェシカ・ラングのプロモーション映画を作りたいなら「キングコング」でやる必要はないだろう。どのキャラクターにも同情できない、ただただキングコングが可哀そうなだけの映画。

 

【関連作品】

 

「キング・コング(1933)」…シリーズ1作目

「コングの復讐(1933)」…シリーズ2作目

「キングコング(1976)」…「キング・コング(1933)」の1度目のリメイク

キングコング2(1986)」…「キングコング(1976)」の続編

「キング・コング(2005)」…「キング・コング(1933)」の2度目のリメイク

 

 

 

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【配信関連】

 

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├オリジナル(英語)

 

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