【タイトル】
ギター弾きの恋(原題:Sweet and Lowdown)
【概要】
1999年のアメリカ映画
上映時間は95分
【あらすじ】
ジャズ全盛期の1930年代。ギタリストのエメット・レイはジャズの演奏以外にも裏社会で顔が通じる男だった。そんな彼は友人のビルと難破した口のきけないハッティという女性と付き合うようになる。
【スタッフ】
監督はウディ・アレン
音楽はディック・ハイマン
撮影はフェイ・チャオ
【キャスト】
ショーン・ペン(エメット・レイ)
サマンサ・モートン(ハッティ)
ユマ・サーマン(ブランチ)
【感想】
アカデミー賞ではショーン・ペンが主演男優賞に、サマンサ・モートンが助演女優賞にノミネートされた。また、ウディ・アレンはフェデリコ・フェリーニの「道(1954)」にオマージュを捧げていると公言している。
本作はウディ・アレンがかつて監督・主演した「カメレオンマン(1983)」のように疑似ドキュメンタリー方式をとっている。本作に登場するジャンゴ・ラインハルトは実在のジャズミュージシャンだが、主人公エメット・レイは架空の人物となっている。そして、このエメット・レイがどんな人物だったかをいろんな人がインタビューに答える映像で語らせており、そのインタビューに答える人物の中に本作の監督ウディ・アレンもいるのである。個人的にはウディ・アレンは主演しないなら登場しない方がいいと思う。しかも本作のラストカットはウディ・アレンがインタビューに答えている映像である。ウディ・アレンが出演してなくたって本作はどっからどう見てもウディ・アレンの映画である。ショーン・ペンが演じたエメット・レイにはあらゆる意味での偽物感が十分に表現されていたと思う。実は当初はエメット・レイ役をウディ・アレンが演じようとしていたんだからその未練みたいなものがウディ・アレン本人出演に現れたのだろう。本作の最大の失敗はウディ・アレンが出演したことだろう。これなら一層のことウディ・アレンが主演すれば良かったのだ。
実在しないジャズミュージシャンのエメット役をショーン・ペンが演じているのだが、やはり見事である。基本的に偉そうでありながら、自身も天才と認めているジャンゴがいるとなるとその場から逃げ出し、趣味は銃でネズミを撃ち殺すことである。かつてイギリスの貴族がしていたキツネ狩りを真似たようなものかもしれないが、自分より弱い存在を虐めることで自分という存在を保っていたのだろう。だからこそ、終盤になってユマ・サーマン演じるブランチと結婚してもうまくいかないのだろう。このブランチ役にショーン・ペンよりも身長の高いユマ・サーマンを起用したのは意図的だろう。
それから、ハッティを演じたサマンサ・モートンも素晴らしい演技を見せた。ハッティは口がきけないという設定なので彼女は言葉を発することはないのだが、ちょっとした仕草や目の動きなどでこのハッティというキャラクターを見事に表現している。エメットは口のきけないブランチを馬鹿にしていたが口数の多いエメットにとってはちょうど良い相手だったかもしれない。また、いざベッドインとなると、エメットよりもブランチの方が早々に服を脱いでいき、エメットが面食らっているのも笑えるポイントだ。ちなみに、エメットがやっている音楽が詩なしのインストだけであるのも、ブランチが口をきけない設定に符号している。
たとえ何かが優れていたとしても人間としてダメだったらしょうがない。これは実生活で逮捕された経験がありながらも俳優として実績十分なショーン・ペンを起用したのは意図的だったかもしれない。また、1930年代という全国的に顔が割れることがまだまだ少なかった時代だからこそのリアリティがある。エメットが一番になれない理由は明確だ。別に努力らしい努力はしていないし、所詮は小悪党レベルの人間だったのだ。そういう男を面白おかしく見せるショーン・ペンの演技、ウディ・アレンの演出が見事だったのだ。
映画自体は好きだが、出演する必要のないウディ・アレンがわざわざ出てきて彼がラストカットを締めくくったことでやや台無しになった感はある。んーもったいない。
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【ソフト関連】
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映像特典
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