- 石田 恵子
- 女が定年退職するとき
- ☆☆☆☆
大変示唆に富む本だとおもう。
日本出版販売株式会社で32年間、定年まで勤め上げた著者が
仕事人生、私人生を振り返りながら
定年後の心の揺れ動きについて語っている。
女性が定年まで勤め上げることがまだまだ少ないなか、
社会で生きるうえでの経験・教訓を惜しげなく教えてくれている。
著者は働く女性には4つのトンネルが待っているという。
一つ目は会社に入社し職場の人間関係の中に投げ込まれたとき
2つ目はキャリアが身につき、ゆとりをもって見渡したときに感じる男性主導社会の矛盾
3つ目は恋愛・結婚、そして育児と仕事の両立
4つ目が定年である。
退職という孤独なトンネルを、著者は古代ローマの詩人ホラティウスの叙事詩を胸に
歩こうとする。
神々が定め給もうた おのが行く末を
知ろうとはするな 御法度だ
・・・・・・ただ摘んで行け その日その日を
著者は退職後、日々の時間割と月単位の計画をたて、
それに沿って生活をすることで、会社を離れて孤独になった自分を支えようとする。
しかし、不意におきた体調の変化と闘病生活を経て
退職後の焦りの気持から抜け出し、穏やかな心境になっている。
これからはまったく未知の道を歩いていくのだ。
管理社会から外れた私は、これからは一歩一歩自分の足で踏みしめながら、
道を作る覚悟で、歩いていかなければならない。
疲れたら無理をせず、立ち止まって一息いれよう.
自分のまわりに吹く風に誘われながら、先に歩いていくしかない。
職業に就くまでは、人は教育課程をはじめとした決められた枠組みの中にいる。
そして会社に就職をしたら、ほとんどの人は会社という枠の中にいる。
その会社を定年で卒業したら、人はどのような枠に入ればいいのだろう。
枠がないと自由だけど、孤独になりがちだ。
体も無理がきかない状態で孤独と向き合うのは、けっこうしんどいのではないかと思う。
人生80年とも言われる中、定年後の枠をいくつか用意することは
もっと国レベルで取り組んでもよいのかもしれないと思った。