- 島崎 藤村
- 破戒
- ☆☆
明治39年に自費出版され、広く読まれるようになった
藤村の代表作。
全国水平社の結成が大正11年ということを考えると
部落差別問題を扱った藤村の先駆性は高い。
舞台は明治後期。部落出身の瀬川丑松は、
その身分を隠して教員になり、その人柄から生徒たちの人気をあつめていた。
しかし内面では、部落出身の解放運動家である猪子錬太郎を崇拝し
自らが出身を隠していることに罪悪感をかかえ深く悩んでいた。
丑松は父から厳しく身分を隠せと戒められていたが
父の死、錬太郎の客死を経てついにその戒めを破ってしまう。
そして、教員を続けることはできず、テキサスへ向けて旅発つ。
物語の前半ではひたすらに部落差別の実態と
丑松の苦悩について描かれる。
本を投げ出したくなる暗さがそこにあった。
残念に思うのは、丑松以外の彼のまわりを固める人物について
描写が不十分だということだ。
丑松が思いを寄せるお志保にしても、親友の銀之助にしても
十分に人物をイメージできる段階までは書き込まれていない。
それゆえに作品としては、物足りなさを感じてしまうのかもしれない。
また、部落出身であることを告白する時の丑松は
連太郎のように解放を叫んで堂々とするのではなく、
土下座をして涙を流しながら「今まで黙っていて悪かった」と告白する。
そして逃げるようにテキサスへと旅立つ。
明治の時点では、そうなってしまう結末が一番素直だったのかもしれないが、
やはりここは、部落解放を叫んで欲しかった。
丑松の教え子には新平民の子もいたであろう。その生徒たちを前にして
「新平民では教員ではいられない。」といってしまったら、救われないと思う。
「破戒」とは
「父の戒めを破り、部落出身であることを打ち明けてしまう丑松」 と
「人としての戒めを破るもの義父(性的にお志保に迫る)」 の
二つが題材を差すのだろう。
この本に関しては水平社を始めとしていろいろな非難もでて
藤村自身により改悪もされた。
解説に詳しいので、こちらもよく読む価値が高い。
個人的には被差別地域の方々が
この本を読んで率直にどのように感じたのかを聞いてみたい。