- 帚木 蓬生
- 受精
☆☆☆
結構な読み応えのある小説だった。
恋人を交通事故で亡くした北島舞子は、生きていることに意味が感じられなくなり
空っぽの状態になっていた。あるとき、かつて二人で訪れた寺院で、外国人の老僧に出会い、
「恋人は生きている、彼の子供を生みたくないか」ともちかけられる。
舞子は老僧に導かれ、死んだ恋人の子どもを妊娠するために、ブラジルの港町サルヴァドールへと旅立つ。
そこには舞子と同じ境遇の女性が韓国やフランスからも来ていた。
地球の裏側サルヴァドールにある病院は最新設備がそろっているホテルのようなところだが、
実際には膨大な数の血液と遺伝情報のデータベースだった。
その情報を元に保険会社などから多くの利益を得ている組織だった。
そしてその裏側にはヒトラーの遺伝子を再生させようとする陰謀。
なぜ「死んだ人の子どもを妊娠できるのか」という理由については全く説明されず
マインドコントロールされた状態でそう信じてしまうところに、少し抵抗を感じたが
催眠術のようなものは、本当にそう信じさせることができるのかもしれない。
冷静に振り返るとちょっと設定に無理があるかなと思うところもあるが、
総じてダイナミックで読むものを飽きさせない大作だと思う。
子どもを授かりたいと思う女性の心理も丁寧に描かれていて嫌味がなかった。