ポーランド総選挙、与野党逆転。 通貨統合早まる可能盛大 1
今年 8月 13日、ポーランド与党の第一党である法と正義党は、連立政権を組んでいた
自衛党およびポーランド家族同盟とのあいだに政策の違いが生じ連立を解消し、議会を解散。
2年前倒しで昨日 ( 10月 21日 日曜日) 総選挙を実施した。
当初から予定されていたとおり与党 3党はその選挙に苦戦。 本日東京時間午前 09時現在
投票最終集計結果はまだ出ていないものの、出口調査では下記のように法と正義党の惨敗、
野党第一党であった市民プラットホーム党がその議席数を大きく上回り、新政権を獲得したようだ。
出口調査を実施した 2社の集計結果によると、
. PBS社 TNS OBOP社
. 今回選挙 (2005年時) 獲得議席数 今回選挙 議席数
市民プラットホーム 44.2 % (24.0 %) 227席 43.7 % 224席
法 と 正 義 31.3 % (27.0 %) 158席 30.4 % 156席
民主左翼連合 12.2 % (11.3 %) 47席 13.3 % 53席
農 民 党 7.9 % ( 7.0 %) 27席 8.4 % 27席
自 衛 党 1.4 % (11.4 %) 1.4 %
ポーランド家族同盟 1.6 % ( 8.0 %) 1.5 %
ポーランド課員の議席総数は 460議席。 過半数は 231議席となるが、上記のように出口
調査では市民プラットホームが約 44 % ( 225席以上 ) の議席を確保しており、単独過半数を
獲得するにはあと数議席が必要なところとなっている。 なお公式な最終開票結果は明日までに
発表される予定。
また昨日の選挙は、1989年に同国共産主義崩壊後に行われた選挙の中で、最も高い投票率に
なった模様。
- to be continued -
ポーランド総選挙、与野党逆転。 通貨統合早まる可能盛大 2
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今回大幅議席数を伸ばした「市民プラットホーム Civic Platform – PO 」 は、ドナルド・トスク
( Donald Tusk ) が党首を務め、自由経済を求める民主主義主張派。 下院総選挙において
下記のような公約を掲げている。
* 欧州連合憲章を尊重し、ポーランドもその一員となるよう誘導する 欧州連合寄りの政策を採る。
* 早期のユーロ導入。 その時期は早ければ、2012年 ~ 2013年。
* イラクに派兵している900名の戦士の早期撤収。
* 景気成長を重視した経済政策。
* 税制の簡素化。 均衡税の導入。
* 公務員賃金の引き上げ。
* 共産政権の下、荒廃したインフラ整備の建て直し。 高速道路建設。
* 医料、病院、健康保険サービスの整備および加入の促進。
* 2004年、ポーランドが EU加盟を果たしてから約 200万人がポーランドを捨て、海外で就労。
再び帰国出来るように諸問題の解決・その環境の導入。
* 教育の質の向上。インターネットの活用。
* 汚職の根絶。
市民プラットホームの党首であるドナルド・トスク ( Donald Tusk ) 氏であるが、現在 50歳。
ポーランドの地方都市人口 30万人のカシュビアン市で生まれた生粋のポーランド人。
その後1980年代に非共産主義者として活躍。 1989年ポーランド共産主義崩壊と共に、
1990年初期 政府を自由経済主義へと導くためにワレサ議長率いる 「 連帯 」 に参加。
さらに自由経済改革をより進めることを目的に、2001年に市民プラットホーム党を結成。
現在に至っている。
同氏は自分のことを自身で頑固者と分析。 妻および 2人の子供を持つ 4人家族。 2005年の
総選挙において僅差で敗れたことから、「 Mr. Almost – ミスター・あとちょっと」というあだ名が
付いたが、その後数多くの政治著書を出版。 特に青年層からの支持が強い。
トスク党首は社会主義からの離別を主張しており、減税、奇跡的な景気回復に主眼を置いている。
また非常に親ドイツ派として知られており、選挙前に行われた法と正義の党首であるカチンスキー
首相とのテレビ討論では、「カチンスキー兄弟 (大統領および首相) の誤った政策により、ドイツや
同盟国との緊張関係を高めた」と述べ、今後より密接な関係を作り上げていくことになりそうだ。
-tobecontinued-
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今回の下院総選挙で大躍進した市民プラットホームは夕刻遅く早々と勝利宣言。 トスク党首を
はじめ同党幹部議員が次々と発言しており、下記のような主要項目を述べている。
* 最重要課題ではないが、ユーロ導入は早ければ 2012年 ~ 2013年に実施する。
* 夏休み後、議会で可決となった歳出目標上限である GDP + 3.0 % の見直しおよび修正。
また新政権における次期財務大臣は独立性を保つため、議員ではなく外部から任命する。
* 旧政権はすでに米国と協議済みであろうが、ポーランドはイラク問題にすでに十分貢献した。
派兵兵士の年内撤退を実行する。
今後の議会開催の予定であるが、ポーランド下院議会 460議席は 11月 5日に召集となる。
この召集から 14日以内に新首相が決まることとなるが、過去の経緯からすると議会召集当日に
決定されていることもあり、11月 5日には恐らくトスク党首が新首相となろう。 さらに任命と
首班信任が同時に実施され、議会過半数 231票以上の賛成が必要となる。
仮に不信任となった場合、新たな 2回の協議が必要とされ、それでも決まらない場合は再選挙
実施となるが、まずそれはないであろう。
一方、法と正義党党首であるヤロスワフ・カチンスキー首相は、「無党派層の関心を呼び込む
ことが出来なかった。 今後は強い野党として戦って生きたい」と敗北宣言。 また在籍年数は
変わらないものの、レフ・カチンスキー大統領は議会の多数を占める市民プラットホームに押され、
その政策運営に大きな支障が出てくる公算がある。
また今回第 3の党となった民主左翼連合 ( 47議席前後を獲得 ) は、声明を発表。 「市民
プラットホームと連立政権を組む予定はない。 あくまでも社会主義の流れを汲んだ、建設的な
意見を持った野党として存在感を示したい」と、連立合意を否定。 一方農民党 (Peasant
27議席前後獲得) は、「話があれば討議したい」と、連立政権参画を表明している。
ポーランドおよび欧州市場関係者の大半は今回の選挙結果について、予想以上の市民プラット
ホームの躍進を総じて歓迎。 今後レフ・カチンスキー大統領との間で摩擦が残るものの、
積極的な経済運営、財政の健全化、早期通貨統合実現など、今後のポーランドの将来性と
信頼感の増幅を予測する声が多い。 さらに欧州諸国とのより密接な関係と、国としての信頼感の
広がりが期待できることに平行し、この選挙結果は同国に残っていた数々の政治・経済の諸問題の
解決に、一通りの目処がすでについたとする意見も発せられている。
さらに市場では、今後ズロチは対ユーロで強含み、一年内1ユーロ 3.650 ~ 2.620ズロチまで
買い進まれるとの見通しが支配的である。
選挙の最終結果はまだ出ていないものの、今後ポーランドの政治・経済体制はドラッチックに
変わっていくものと考えられよう。
米 ド ル/対 円: 113.60円 - 0.90 02年国債: 5.38 % - 2.7 bp
ズ ロ チ/対 円: 44.19円 - 0.21 10年国債: 5.73 % - 6.2 bp
米 ド ル/ズ ロ チ: PLN 2.5790 + 0.002 原油価格: $ 88.60 - 0.87ドル
ユ ー ロ/ズ ロ チ: PLN 3.6885 + 0.001 金価格: $768.40 - 0.30ドル
来週 8月29日の政策決定会合、利上げ実施か ?
ポーランド中央銀行は昨日、7月政策決定会合の議事録を公表した。 この報告書には
どの理事が利上げに賛成したか否かとの記載はない ( 後日発表 ) が、各理事の意見が
述べられている。 同報告書によると、一旦は利上げ方向で話がまとまりかけたが、当時
ズロチに方向感がなかったことで一旦見送り、再度協議をすることで終了したという。
各理事が述べている金利引き上げの必要な理由として、
· 労働市場に改善が見られ、賃金の大幅上昇と生産性が向上している。
· 製造業が大きく伸び、国内需要が拡大。 インフレ助長の要因となる可能性が高い。
· 上記需要の拡大が、旺盛な小売販売を生み出している。
· 食品および石油価格の上昇が主要因となり、同国 CPI は2009年に中銀のインフレ・
ターゲット上限である、+ 3.5 % に到達してしまいそうだ。
· ただしインフレと輸出の観点から、ズロチの為替水準を精査する必要がある。
などの意見が述べられており、為替レートを除けば意見はいずれも利上げの方向に
傾いている。 7月現在のポーランドの CPI は年率で + 2.3 %、コア CPI は + 1.5 % と
中銀のインフレ・ターゲットのミッド・レンジである + 2.5 % を下回っているものの、7月の
平均賃金上昇率は年率で + 9.3 % と、中銀が危険水域としている + 9.0 % を上回り、
熟練工不足から今後も高水準に張り付きそうだ。
いずれにしてもインフレ要因が目立ち始めたポーランドの国内経済、第 2、第3四半期の
GDP も + 6.0 % 前後の成長が見込まれており、市場関係者のあいだでもポーランド中銀は
利上げによるインフレ・コントロールに走る可能性が高いとの見通しが増え始めている。
来週 8月 29日のポーランド中銀 政策決定会合に注目されたし。
現行政策金利 (7日間 貸出金利 7-day Reference Rate ) は、 + 4.50 % となっている。
米 ド ル/対 円: 116.05円 + 0.20 02年国債: 5.34 % + 1.2 bp
ズ ロ チ/対 円: 40.93円 - 0.01 10年国債: 5.78 % + 0.1 bp
米 ド ル/ズ ロ チ: PLN 2.8350 - 0.005 原油価格: $ 69.83 + 0.57ドル
ユ ー ロ/ズ ロ チ: PLN 3.8440 - 0.011 金価格: $668.40 - 0.30ドル
8月利上げ説が残る中、金融当局者の発言が相次ぐ 1
高度経済成長、および大幅な賃金上昇が続いているポーランド。 市場関係者の一部で
来週 8月 29日に開催されるポーランド国立銀行 政策決定会合において利上げが実施される
との観測が多い中、昨日はポーランド中銀理事の発言が相次いだ。
* まずトレンクナー・ポーランド中銀理事 ( 中立 ) が 朝刊記事で、
「 世界の金融市場が混乱した状況に入り、ポーランド・ズロチは反落し 一時的にせよ
(輸入) インフレを招くことになろう。 国内経済は引き続き好調ではあるが、ズロチ安は我々に
とって阻害要因である。
7月の生産性と賃金上昇率のデータから判断すると、インフレは恐らく当局が見込んだものより
加速するであろう。 よって今月金利引き上げで対処する必要がある 」と、来週の政策決定会合で
利上げ実施の可能性を述べていた。
* ノガ・ポーランド中銀理事 ( 極タカ派 )
「 国内インフレが中銀のインフレ・ターゲット上限値 ( + 3.5 % )を越えてくる可能性が高く、
ポーランドは 2008年 年央までに 100 bp の利上げを必要とする。 すなわち 5.5 % の
政策金利 (現行 4.5 % ) が望ましい。 インフレを阻止するために、直ちに金融引き締め策を
講じなければならない 」 と、8月だけではなく今年から来年にかけての追加利上げ実施を主張。
さらに、
「 現在年率 + 2.3 % のポーランドのインフレは、今年末に + 2.9 % にまで上昇すると考える。
仮に金融引き締めで対処するのであれば、 2008年初めには低下傾向に入ると思われる。
賃金上昇圧力が芽生え始めたことが主要因となり、ポーランドの景気はやや減速に入っているが、
インフレ圧力が沈静化しているとは思えない。 利上げサイクルはまだ終わっておらず、仮に
今年第 4四半期に CPI が + 2.9 % にまで上昇するのであれば、2008年上半期に 2回の
利上げが必要になってくる。 早期の金利引き上げで対処すれば、経済環境の悪化を食い止める
ことが出来るであろう 」 と、予想以上の CPI 上昇見通しに対し、迅速な金融政策での対応の
必要性を強調している。
- to be continued -
8月利上げ説が残る中、金融当局者の発言が相次ぐ 2
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* オーシアク・ポーランド中銀理事 (ハト派)
「 現在インフレ圧力は見当たらない。 ただ仮に労働市場のひっ迫と食品価格の上昇が続く
のであれば、年内あと 1回の利上げが必要になって来よう。 なぜなら食品価格は、 CPI指数
そのものの重要な構成要素の一つとなっているからである。 また最近の賃金上昇に衝撃を
受けているわけではないが、生産性が伴わない場合問題となってくる。 最近の生産性と
賃金上昇の相関関係に悪化の傾向が見受けられるのであれば懸念材料の一つとなるが、
今後どのような方向を辿るのかが焦点となろう」と賃金と食品価格の上昇を指摘。
ただ一方で、「 エコノミストの中にはインフレ上昇圧力を指摘するものもいるが、ポーランド
経済はそれにうまく適合している。 ポーランドのインフレは今年年末まで、中銀のミッド・
ターゲットである + 2.5 % 前後での推移を遂げよう。 夏場はインフレが低下する時期である。
今年はまだ見受けられないものの、昨年は食品価格が急落したことで CPIは下落に転じている。
最新のデーターを見るとポーランドの経済は高水準ではあるが、これ以上の加速は望むことが
出来ないであろう。 今年第 1四半期の GDP は + 7.4 % と大幅な伸びとなったものの、恐らく
これがピークと考えられる。 今年の GDP は通年で + 6.2 % ~ + 6.3 % 程度の伸びと
なろう」 と、景気の頭打ちを指摘し、生産性の向上と食品価格の落ち込みが見えれば、利上げの
必要性はないとする意見を述べている。
昨日のポーランド債券市場、ランドが引き続き軟調地合となっていることや今週から来週にかけて
上ぶれが予測される重要経済指標の発表ラッシュとなること。 さらには来週 29日の政策決定
会合で利上げ観測が増え始めていることなどで債券市場は終日軟調。 イールド・カーブ全体に
+ 2.0 ~ + 3.0 bp 利回りは上昇して引けている。
ズロチも終日冴えない動きで、2日連続の下落。 対ユーロで 3.8455と、 6月 8日に記録した
3.8605 の安値とほぼ同じレンジに差し掛かりつつある。
金利・為替とも、来週 28日まで動きが採りづらい環境。 良いニュースに無反応、悪材料に
過剰反応し易いセンチメントに入っているようだ。
米 ド ル/対 円: 114.35円 - 0.40 02年国債: 5.36 % + 2.1 bp
ズ ロ チ/対 円: 40.00円 - 0.26 10年国債: 5.79 % + 3.2 bp
米 ド ル/ズ ロ チ: PLN 2.8560 - 0.005 原油価格: $ 69.57 – 1.39ドル
ユ ー ロ/ズ ロ チ: PLN 3.8455 - 0.004 金価格: $666.20 - 0.30ドル
鉱工業生産高く、中銀理事は利上げ示唆。 債券は売られる
今週のポーランドは、経済指標の発表ラッシュとなる。
まず昨日発表になった 2つの重要経済指標、
7月 鉱工業生産 : - 2.0 % (MM) / + 10.4 % (YY) ( 6月 + 0.2 % / + 5.6 % )
7月 P. P. I. : + 0.4 % (MM) / + 1.5 % (YY) ( 6月 + 0.5 % / + 1.7 % )
まずポーランドの 7月 鉱工業生産であるが、前月比ベースでは – 2.0 % と、4ヶ月ぶりの
マイナス成長となった。 しかしながら前年同月比では + 10.4 % と、6月の + 5.6 % から
約 2倍の上昇。 事前予測である + 10.0 % も若干上回り、相変わらず高い成長が続いている。
一方の 7月 PPI は、前月および前年比とも 落ち着いた内容となり、市場の評価はまずまず。
しかしながら市場ではハイ・ペースで成長を続ける鉱工業生産に、現在の高い賃金上昇率
(6月 + 9.3 % YY ) と熟練工不足が重なれば、やがて価格転嫁へと進む可能性を指摘。
実数そのものは予想の範囲ながらも総合的に見た場合には、景気の過熱感は拭い去られて
いないとする向きが強い。
上記 7月鉱工業生産指数の数値発表後 タカ派で知られるトレンクナー・ポーランド中銀
理事は、「賃金と生産コストの上昇がみられ、今後恐らく生産性は鈍化傾向に入ろう。 我々は
来週 8月 29日開催の理事会で、インフレを助長する賃金動向および生産コストの上昇
のみならず、世界の経済発展動向を充分に精査する予定である」 と、利上げを示唆するような
コメントを残している。
また先週クロウスカ財務次官は、「ポーランドの今年第 1四半期 GDP は、 + 7.4 %、
第 2四半期は賃金上昇と燃料費コストの上昇が阻害要因となり、やや鈍化。 + 6.0 % 前後の
成長となりそうだ。 一方今年下半期の同国経済成長は、ややスピード・アップするであろう。
しかしながら2008年全体の GDP は、当初見通しであった + 5.7 % を下回る可能性が強く、
今年の GDP も下方修正されるであろう 」 とコメント。 政府自体もここに来て国内賃金が
急速に上昇し始めたことを確認。 今後同国 経済成長の足かせ要因となることを懸念している。
昨日のポーランド債券市場、上記トレンクナー理事の発言と東欧通貨全体に回復力が乏しく
ズロチは続落。対ユーロで金曜日の戻しをすべて吐き出し、直近の安値である 3.850 近辺の
底値推移となったことから国内債も連れ安。 2年国債利回りは 2.5 bp、長期債利回りも
約 4.0 bp 近く上昇し、ポーランド金融市場全体に、足取りの重いセンチメントで引けている。
米 ド ル/対 円: 114.75円 + 0.60 02年国債: 5.34 % + 2.5 bp
ズ ロ チ/対 円: 40.26円 + 0.01 10年国債: 5.76 % + 3.9 bp
米 ド ル/ズ ロ チ: PLN 2.8510 - 0.015 原油価格: $ 71.12 + 0.86ドル
ユ ー ロ/ズ ロ チ: PLN 3.8410 - 0.017 金価格: $666.50 - 0.30ドル
ポーランド連立政権、崩壊 解散・総選挙が決まる
カチンスキー・ポーランド首相は 13日月曜日、法と正義党、自衛党そしてポーランド
家族同盟党の 3党で組んでいる連立政権を解消し、解散・総選挙の実施を正式に発表した。
これでポーランドは 2009年の選挙予定が 2年前倒しされることになる。
時容器発表に伴い、カチンスキー首相は自衛党とポーランド家族同盟所属の 4人の閣僚を解任。
連立政権解消でポーランド議会における過半数維持の政党はなくなった。 同首相はまた、
「総選挙は 10月 21日か 11月に実施したい」と表明。 夏季休暇明け 8月 22日から議会が
再開されるが、当日解散を決める予定となろう。
ただ 8月 13日に行われた聞き取り調査 (CBOS社) において、各政党への支持率は野党
第一党である市民プラットホーム党 (PO) が 30ポイントを獲得しているのに対し、現与党
第一党の法と正義党 (PiS) は 24 ポイントと その差 6ポイントの開きがある。前回 7月 6日に
CBOS社の調査時はその開きが 2ポイントであったことからもわかるように、法と正義党の
人気凋落に更なる拍車がかかっているようだ。
この支持率を背景に、野党第一党の市民プラットホームは、「一刻も早く総選挙を実施すべきだ」と
語っており、法と正義党にとっては難航が予想される選挙になると思われる。
ただマスコミ関係者の評価では、解散総選挙実施は短期的に同国の政治リスクは高まるものの、
中期的観点からするとむしろメリットがあるとの見方が多い。 現連立政権は法と正義の主導の元、
自衛党とポーランド家族同盟がそれに加わっている。 しかしながら両党は共産主義の流れを汲み、
財政支出増をたびたび法と正義に要求。 さらに欧州連合加盟にも反対した経緯があり、
法と正義にとっては足を引っ張る存在に なっていた。
また新政権が誕生した場合、企業寄りである市民プラット・ホームが政権を取る可能性や
法と正義が他党と連立を組むことも予測され、財政赤字の一層の削減、およびユーロ導入が
早まるとの観測が根強い。
また金融市場の評価は 以前からわかっていたことでもあり、特に今回の議会解散正式発表には
いたって冷静。 ただ短期的リスクが高まったこともあり、昨日ズロチは対ユーロで 2.750
レベルから 2.7775 までやや売られて引けている。
債券市場はエマージング諸国の金融市場が回復を示し始めたこともあり、まずまずの動き。
長期債は若干軟調推移となったものの、2年国債利回りは 5.27 % と、前週末比 0.9 bp 低下して
引けている。
米 ド ル/対 円: 118.25円 - 0.05 02年国債: 5.26 % - 0.9 bp
ズ ロ チ/対 円: 42.60円 - 0.32 10年国債: 5.61 % + 1.1 bp
米 ド ル/ズ ロ チ: PLN 2.7745 - 0.008 原油価格: $ 71.62 – 0.15ドル
ユ ー ロ/ズ ロ チ: PLN 3.7760 - 0.003 金価格: $680.90 - 0.70ドル
レフ・カチンスキー大統領、野党市民プラットホーム党と 解散総選挙で合意
レフ・カチンスキー・ポーランド大統領は、野党第 1党である市民プラットホーム党の
タスク党首と4時間に渡って会談。 現在与党連立政権内 3党の意見相違の溝が埋まる
様子がなく、解散総選挙が濃厚となりつつあることから、その実施時期を確認するため、
長時間の話し合いを持った。
両者の見解によると、市民プラットホームも解散総選挙に合意。 10月ないしは 11月と
暫定合意を示したが、8月 22日の閣議再開までは、それを封印。 とりあえず早急に
可決すべき議案を処理したのち正式選挙日程を決めるようだが、10月が濃厚。
ただこれまで与党 3党は解散・連立維持を繰り返して来た経緯もあり、まだ流動的な
動きとなる可能性も残っている。さらに 8月 9日に発表になったオピニオン・ポールでは、
与党第一党の法と正義のポイントが 22 と、野党第一党の市民プラットフォームの 33 を
10ポイントも下回っている。 このまま選挙に突入するとなれば、支持率が急落している
法と正義はかなりの議席数を失う可能性があり、解散総選挙は避けたいというのが本音
かもしれない。 8月末から 9月には、今後の動向がどうなるか判明するであろう。
昨日発表された経済指標は、
第 2四半期 平均賃金上昇 + 2.4 % (QQ) / + 8.9 % (YY) ( Q-1 + 7.1 % YY )
やはり一部産業で熟練工不足が目立ち、一般企業の大幅賃上げが見られたことで第 2四半期
ポーランドの賃金上昇は加速。 国内平均賃金は 2,644.34ズロチ ( 約 11万 2,000円 ) と
多くなく、未だ国外に職を求める労働者が多い反面、低賃金がポーランドの低いインフレ
( 6月 + 2.6 % ) を作り上げているのも事実。
8月 16日に公表になる 7月の平均賃金上昇率も、 6月の + 9.3 % に続き、+ 9.0 % と
ポーランド中銀が危険水域としている水準と同じ数値が予測されており、市場関係者は
8月 29日に開催される政策決定会合で 25 bp の利上げが実施されると予測する向きが
多くなり始めているようだ。
昨日のポーランド債券市場、米国サブ・プライム問題再燃と国内政局不安、並びに賃金上昇の
伸びが影響し、2年国債利回りは約 3.5 bp、10年債利回りは 1.5 bp それぞれ上昇し、
軟調地合いで引けを迎えた。
BNPパリバによる 3本の ABSファンド凍結で、ユーロは主要通貨に対し大幅に売られたが、
ズロチはそれ以上に対ユーロで売られ、寄り付き 3.7650 から安値 3.7850
引けは 3.7750 。
米 ド ル/対 円: 117.90円 - 1.75 02年国債: 5.27 % + 3.3 bp
ズ ロ チ/対 円: 42.63円 - 1.23 10年国債: 5.60 % + 1.5 bp
米 ド ル/ズ ロ チ: PLN 2.7640 - 0.038 原油価格: $ 71.59 – 0.59ドル
ユ ー ロ/ズ ロ チ: PLN 3.7777 - 0.012 金価格: $672.80 -13.50ドル
S&P社、ポーランドの政局混乱は影響なしと公表
法と正義党と自衛党・ポーランド家族同盟の仲たがいで政局混乱が続き、早ければ今年秋にも
総選挙が実施されると見られているポーランド連立政権であるが、昨日米国格付け会社の
一つであるスタンダード・プアーズ社 (Standard & Poor’s) は、「ポーランドの政局混乱は、
同国の格付けに全く影響を与えない」とのレポートを公表した。
同報告書によると、現在ポーランドに付与している同社格付けは、
外貨建て債務 「 A-1 / Stable / A-2 」、自国通貨建て債務が 「 A / Stable / A-1 」 となって
いるが、ポーランドの経済と混乱した政権の環境はすでに独立して働いており、力強くかつ
バランスの取れた成長が見込まれると評価。 現在の格付けに全く影響を与えないとしている。
S&P社は今年 3月 29日に同国格付けを 1ノッチ引き上げたが (外貨建て債務
BBB+ → A- )、これは同国の経済に底堅い成長が見込まれることを理由に、格付けを
引き上げている。 ただ政局不安定から、今後財政赤字削減を伴う構造改革 ( 経済市場、
社会保障改革など) に遅延が生じる可能性を指摘している。
首相退任と公務員および農民に対して大幅な補助金支出を掲げる自衛党とポーランド家族
同盟に対し、法と正義党のカチンスキー首相は、解散総選挙を示唆。 8月 22日に再度
3党で話し合いが持たれる予定ではあるが、合意する目処は立っていない。 関係者の観測では
この秋、もしくは来年早々に総選挙となる公算が高いと見られており、仮に新政権が経済・
財政政策の改革を一段と進めるのであれば新たなチャンスとなろうとしている。
ポーランドの財政赤字、累積債務の削減がもう一段明確になり、粘り強い構造改革がとられる
のであれば、ポーランドの格付けに更なる恩恵を与えることになると述べている。
一方財政収支であるが、昨日ログスカ・ポーランド財務次官がコメント。 「 8月のポーランド
財政収支は支出削減と高水準の景気成長がもたらす税収増が功を奏し、7月に続き財政
黒字となる見通しだ。 現在 今年度全体の赤字幅を見積もることはかなり難しいが、当初
見込みであった 300億ズロチの赤字を下回り、250億ズロチの赤字に収まる可能性が
高くなってきている 」 と語り、「 2009年にユーロ導入適合条件である対 GDP 比 3.0 % の
財政赤字達成を見込んでいるが、まだその可能性を論じることは時期尚早であろう」と述べている。
ポーランドの今年の財政赤字見通しは対 GDP 比 3.4 % 。 この数値クリアは問題ないと
思われ、今後議会解散 新政権誕生ということになるのであれば、その手腕に注目が集まる
ことになろう。
米 ド ル/対 円: 119.65円 + 0.75 02年国債: 5.24 % + 1.4 bp
ズ ロ チ/対 円: 43.86円 + 0.66 10年国債: 5.58 % + 1.2 bp
米 ド ル/ズ ロ チ: PLN 2.7280 + 0.023 原油価格: $ 72.15 – 0.27ドル
ユ ー ロ/ズ ロ チ: PLN 3.7645 + 0.014 金価格: $686.30 + 4.00ドル