香咲弥須子
本棚の中をごそごそと、覗いていると、香咲弥須子さんの本を見つけました。この本以外に数冊あります。
彼女は、オートバイに乗る女性をテーマにした小説を書いていた作家というふうに記憶しています。彼女自身も、オートバイに乗っていたはずです。
なぜ、彼女の本が本棚の中にあったかというと、私自身が、オートバイ乗りだったからです。今でも、スクーターには乗ります。
片岡義男氏の作品を読み続けている過程で、彼女の存在を知りました。
ふと、思ったのです。彼女は、今どうしているのかと。
ニューヨークに住処を移したということまでは分かっていたのですが、ニューヨークで何をしていたのかまでは分かりませんでした。
気なる彼女の消息を確かめるのは、そんなに難しいことではありませんでした。
ネットで検索すれば分かりました。
今でも、活躍されているということです。
下記のアドレスで、確認できます。
http://www.crsny.org/drupal/ja
他の誰が知らなくても、私だけは知っているという作家、世間が見捨てても、私だけはしとっかりと見ているだという作家の作品も紹介していきたいと思います。
Make my day
小春日和というよりは、暑かった。
こういう日は何か起こりそうな、嫌な予感がしていた。
彼女は、いつものように夕食のための食材を求めて、近所のスーパーに行った。
今日は、特売の日だった。
レジには、人の列ができていた。
食材を選んだ彼女は人の列がもっとも短いレジを選んで最後尾についた。
特売の日はいつもいらいらさせられていた。
ほんとに、うんざりしていた。
特売の日はレジの数を増やすとか、なにかの対応をしてほしかった。
やっと彼女のすぐ前にレジが見えてきた。
あと二人で、彼女の順番だった。
その時だった。
「早くしろ」と、腹の底から絞り出すような男の怒声が彼女の並んでいた列の後方から聞こえた。
彼女は、声のするほうに振り向いた。
次の瞬間、男は、並んでいる人の列を横からすり抜けて、レジの前まできて、ポケットからリボルバーを取り出した。そして、レジで計算をしている女性に突きつけた。
一瞬、何が起こったのかわ分からず、レジ係りの女性は、リボルバーに視線を奪われたまま、フリーズ状態になった。
「順番を守ってよ。みんな並んで待っているんだから」と、彼女はリボルバーを手にした男に言った。
男は振り返ると、深い井戸の底のような目で彼女を無言で睨み、左手で、彼女の喉元をつかもうとした。しかし、その手はむなしく空を切った。
そして次の瞬間、「うっ」と、くぐもった声を出して、男はその場に崩れ落ちた。
男の左手が彼女の喉元に届く一瞬前に、彼女の右足の膝が、男の肝臓に食い込んでいた。
「運が悪かったわね。今日は、暑くて、私もいらいらしていたの。ダーティ・ハリーだったら、“Make my day”って言うところよね」
彼女は床に仰向けに倒れている男の顔を右足の靴の底でなでながら言った。
ゼルダ・フィッツジェラルドの短編
ゼルダ・フィッツジェラルドの短編をいくつか読んでみたのですが、ゼルダというよりは、スコット・フィッツジェラルドが書いた作品のような気がします。
短編はすべて、ゼルダとスコットの合作ということですが、ほぼスコット・フィッツジェラルドが書いているのではないかと思われるくらいに、スコットの色が濃くでています。
スコットの文章らしく、文体はとても流麗です。
時折、比喩的表現で、意味がよくは分からない部分もあるのですが、霧の中にぼっーと浮かぶ摩天楼をイメージさせるような文体です。
文章から、オスカー・ピーターソンのピアノトリオの演奏が聴こえてくるようです。
あいかわらず、物哀しく、美しい、ジャズ・エイジの物語です。
こういう文体で、小説を書ける才能がほしい。
スコット・フィッツジェラルド YOU TUBE
『文学的娼婦』だと、自らのことをスコット・フィッツジェラルドはそのように言っていたのでしょうか。
スコット・フィッツジェラルドの文体は、エリザベス朝的で、ヘミングウェイは、ハードボイルドです。
文体としてのハードボイルドを確立したのはヘミングウェイです。
文体に関しては、また、別の機会に書いてみます。
この動画は、ナレーションの声が聴こえにくく、最後の部分は全く聴きとることができません。
なんて言っているのでしょうか。
間違いの喜劇 シェイクスピア
シェイクスピアの、『間違いの喜劇』をやっと読み終えました。
シェイクスピアの作品は、もっと以前から読むべきだったのですが、戯曲というものには馴染みがなかったので、これまでは積極的には読もうとは思いませんでした。
小説とは違うで、毎日ほんの少しづづ読んで、おそらく、二か月かかってやっと読み終えました。
少し読んで、何日も、放置して、そしてまた読んで、放置するということを繰り返しながら読みました。
この作品は、所蔵する、白水社のシェイクスピア全集の第一巻の最初の戯曲です。全部で七巻あります。果たして、すべてを読み切ってしまうには、何年かかることでしょう。
本棚に20年以上も眠っていました。ところどころ、カビが生えています。
読んでやらないと本が可哀そうです。
だから、読むと決意しました。死ぬまでに、全巻読み切りますと、ここに、宣言しておきます。
間違いの喜劇というくらいですから、誰かが誰かを取り違えることによって起こった喜劇ということです。
双子の兄弟が、幼くして、別離し、双子の兄弟がいることを知らないままに、ある町に双子の兄弟が現れて、一騒動起こるというわけです。
とくに、何かの教訓とかがあるわけではありません。
ただ、一つの戯曲を読んだという達成感は残ります。
次は、『ロミオとジュリエット』を読みます。
