Make my day | 創作ラボ2

Make my day

小春日和というよりは、暑かった。


こういう日は何か起こりそうな、嫌な予感がしていた。


彼女は、いつものように夕食のための食材を求めて、近所のスーパーに行った。


今日は、特売の日だった。


レジには、人の列ができていた。


食材を選んだ彼女は人の列がもっとも短いレジを選んで最後尾についた。


特売の日はいつもいらいらさせられていた。


ほんとに、うんざりしていた。


特売の日はレジの数を増やすとか、なにかの対応をしてほしかった。


やっと彼女のすぐ前にレジが見えてきた。


あと二人で、彼女の順番だった。


その時だった。


「早くしろ」と、腹の底から絞り出すような男の怒声が彼女の並んでいた列の後方から聞こえた。


彼女は、声のするほうに振り向いた。


次の瞬間、男は、並んでいる人の列を横からすり抜けて、レジの前まできて、ポケットからリボルバーを取り出した。そして、レジで計算をしている女性に突きつけた。


一瞬、何が起こったのかわ分からず、レジ係りの女性は、リボルバーに視線を奪われたまま、フリーズ状態になった。


「順番を守ってよ。みんな並んで待っているんだから」と、彼女はリボルバーを手にした男に言った。


男は振り返ると、深い井戸の底のような目で彼女を無言で睨み、左手で、彼女の喉元をつかもうとした。しかし、その手はむなしく空を切った。


そして次の瞬間、「うっ」と、くぐもった声を出して、男はその場に崩れ落ちた。


男の左手が彼女の喉元に届く一瞬前に、彼女の右足の膝が、男の肝臓に食い込んでいた。


「運が悪かったわね。今日は、暑くて、私もいらいらしていたの。ダーティ・ハリーだったら、“Make my day”って言うところよね」

彼女は床に仰向けに倒れている男の顔を右足の靴の底でなでながら言った。