創作ラボ2 -716ページ目

1枚の紙切れ

今日は、彼の叔父の葬儀の日だった。


彼女は、葬儀には参列できなかった。


彼女と彼は八年間いっしょに暮らしていたが、婚姻関係はなかった。


だから、お互いの家族の行事には参加できなかった。


好きな人といっしょに暮らす。そして、お互いの家族の行事には関わらない。


それが理想的な男女の関係だろうと彼女は信じていた。


つまり、二人は永遠に家族にはならないで、他人の男と女の関係でいる。


婚姻していないのだから、嫌いになればいつでも彼と別れて一人で暮らすことができると彼女は思っていた。


婚姻届がないのだから、理屈としてはそれで間違いない。


しかし、10年後、20年後はどうなるのだろう。彼女はそんな先のことは想像できなかった。


しかし、20年後は確実にやってきた。それも突然に。まだ、50代という年齢にもかかわらず、彼は、夢のように死亡してしまった。劇症肝炎だった。


当然、葬儀の喪主は彼女であるべきはずだった。しかし、彼の家族がそれを許すはずがなかった。他人である彼女が喪主を務めるということは彼の家族が納得するはずがなかった。


彼の弟が喪主だった。


彼女は彼の葬儀に参列することも許されなかった。


なぜなら、彼女は家族でもなく、他人よりも、他人だったからだ。


婚姻届は、ただの1枚の紙切れだが、その1枚の紙切れは人の命と同じ程の重さがある。





しっくりと身体に馴染む

探偵小説など書いたこともないので、どういう展開にしていけばいいのか分からない。


そこで、探偵小説を読んでみる。


何人かの作家の短編が一つの本になっているアンソロジーの文庫本を本棚から引っ張り出して読んでみた。


だが、どうもしっくりこない。


目は活字を追うのだが、途中であきらめてしまう。


目的地にたどり着くまでに、途中下車してしまうようなものだ。


そこで、レイモンド・チャンドラーの、『かわいい女』の文庫本を読み始める。


すると、まるで、馴染みの店に来たように、あるいは長年愛用しているレザーコートを着たように、しっくりと身体に馴染む。


お気に入りの作家というのはそういうものだ。



デジタル化で絶版はなくなる

スコット・フィッツジェラルドの、『楽園のこちら側』を読みたいと思っても、翻訳本は今では絶版状態。


ペーパーバックで読めばいいだろうと言ってしまえば、それまでだが、なかなか原書で読むというのは苦しい。


できれば、翻訳されたものを読みたい。


それで、ネットで検索してみる。すると、簡単に見つけることができた。


ただし、それは、デシタル化されたものだった。つまり、紙に印刷された本の形になっているものではなくて、パソコンにダウンロードして、専用のソフトを使って読むといったものだ。


これだと、どうも、本を読んだという気分にはなれないのだが、デジタル化しておけば、基本的には、絶版ということがなくなる。


デシタル化しておけば、紙代も、印刷代も、製本代も、流通コストもほとんど発生しないから、大げさに言えば、半永久的にネット上で販売ができるということになる。


すぐれた作品はデジタルで蘇らせてほしいもだ。

三度読み返す

コンテスト用の五十枚の短編を読み返してみた。


一度目は、誤字、脱字をチェックしたみた。


予想していたよりも、誤字が多い。


二度目は、間違った言葉の遣い方と、意味がよく分からない文のチェックをしてみた。


これで、いいだろうと思ったが、もう一度読み直してみた。


すでに二度読んでいるにも関わらず、まだ、誤字とか脱字があるし、変な言葉遣いもあった。


文章を書いていると正確な日本語の意味が分からなくなることがあるし、言葉も間違ったまま理解していることがある。


つまり、知識がないだけのことか。


自分の書いたものを三度も読むと、つくづく、気分が悪くなる。たとえ、誤字、脱字、おかしな表現があったとしても、もう、これ以上は読み返したくはない。



才能がほしい。



今は、探偵小説を書いてる。初めて、探偵ものを書くので、どう書いていいのか分からないし、コンテストに応募するかどうかも未定。しかし、とにかく、一度は、探偵ものを書き上げてみたい。

預言者は予言をしない

この世には、預言者だと、大きな声で宣言している者がいる。


何年後、あるいは、何年何月何日にどこかで、大きな地震が起こるとか、彗星が地球に衝突するとか、予言する。


すると、その予言はは当たらないことが多い。


なぜ、当たらないのか、


預言者などというのは戯言で、そもそも、そういう者はこの世界にいないのだという常識的な見解を持ちだして、多くの者は納得してしまう。


いや、そうじゃない。預言者は現実に、この世界に存在している。ただし、ほんとの預言者は予言はしない。


なぜなら、予言を大きな声で世間に知らしめると、未来は予言通りにはならないからだ。


つまり、予言を公のものにした瞬間に、未来が変わってしまうのだ。


予言によって、世界線は無数に枝分かれして行く。


だから、ほんとの預言者の予言は封印される。