ペースが落ちる
一週間に一冊は本を読んでみようと決心したのに、そのペースが守れない。
どんどん、ペースは落ちている。
今年中に読む予定の本がこれでは読めない。
読書のための時間がないんだと、嘆いてみる。
時間は、作るものだという、当たり前の答がどこかから聞こえてくる。
『ダーヴァビル家のテス』は今年中に、読むのだと、ここに宣言しておく。
翻訳本は、現在は、イギリスの文学全集の一巻としてしか手に入らない。
けっこう、高価だったが、それは、すでに手に入れているから、あとは読むだけだ。
贅沢な時間
さわやかな天気と、清涼な空気に誘われて、外に出たくなるような日。
公園のベンチに腰掛け、あるいは芝生の上に横になって、詩作に耽ってみる。
それは、なんとも、贅沢な時間。
そういう贅沢な時間を過ごすことができる者は幸いなり。
私も彼らの一人になりたい。
いつもと違う
いつも降りる駅よりは、一駅手前で彼女は電車を降りた。
アパートまでは30分くらいは歩く必要があった。
時刻は、午後10時を少し過ぎていた。
街灯はついているし、とくに暗い場所はないようだったから、彼女はほとんど不安を覚えることもなく歩くことができると思っていた。
実際のところは、この時刻にこのあたりを歩くのは、彼女にとってははじめての経験だった。
彼女の左手には線路が見えていた。彼女が歩ている道路の右手には、背の低いコンクリートの建物と、民家の連なりが見えていた。大きな声出せば、誰かにきこえるだろう。
前方には、彼女がいつも降りる駅の明かりが見えていた。彼女のアパートまで、あと10分もかからないだろう。
その時だった、彼女は、背後の足音に気がついた。
足音は彼女の歩く速度よりは速くなかった。彼女は背後の足音をやり過ごそうとして、歩く速度を少しずつ遅くした。しかし、背後の足音はぴったりと彼女の歩く速度に合わせた。
不気味だった。彼女は早くアパートの部屋帰ろうと思った。しかし、このままアパートに帰ってしまうと、背後の何ものかに、彼女のアパートの場所を教えることになってしまう。
彼女は、まっすぐにアパートには向かわずに、線路沿いの道路から脇道に入った。もし、背後の何ものかが彼女のあとをつけているのなら、彼女と同じように脇道に入るはずだ。
背後の足音は脇道に入ってきた。やはりそうだった。彼女は全身の血が抜けていくような恐怖を感じた。脚が震えて、うまく歩けなかった。
まわりには民家があるから、何かあったら、叫んでみればきっと誰かが家の中から出てきて助けてくれるはずだと彼女は思った。恐れることはないのだ。
こうなったら、背後の何ものかの正体を確かめてみようと彼女は決意した。
彼女は突然、立ち止まった。そして、ゆっくりと振り返った。
そこには、誰もいなかった。
彼女の耳に聞こえていたのは、彼女自身の足音だったのだ。
いつもと違うことをして、一駅手前で降りて、アパートまで歩いて帰ろうとしたために、彼女の深層心理の恐怖心が、幻聴を引き起こしたのだ。
いつもと違うことはしないほうがいい。
ジョン・タイターは再び現れるのか
無数の世界線、あるいは、時間軸がこの宇宙には存在していいる。
タイムトラベラーが未来から来て、過去の自分の父親を殺すと、そのタイムトラベラーはこの世界には存在しなくなるはずだが、父親が殺された時から、別の世界線が別れていくから、パラドックスは起こらない。
もし、タイムトラベラーが過去にやってきて、全く同じ世界線の未来に戻ったとしたら、それこそ、矛盾が起こる。タイムトラベラーの住む世界では、タイムトラベルをする以前にに、彼がすでにその世界線の中で、過去にタイムトラベルをしたという記憶、あるいは、記録があるはずだ。
だから、同じ全く同じ世界線のなかで、再び過去に戻るとすると、彼は、同じ過去へのタイムトラベルを二度経験することになる。いや、二度ではない、その世界線のある時点に到達すると、彼は、過去にタイムトラベルをするということを何度も繰り返すことになる。彼自身に、同じことをしているという自覚があるかどうかは別問題だが。
これは、とても奇妙なことだ。過去に戻って父親を殺すという、パラドックスよりも奇妙なことだ。
とすると、未来からのトラベラーのジョン・タイターが言っていたように、彼は、完全に同じ世界線の中の未来には戻れないことになる。いや、同じ世界線に戻ってしまうと、パラドックスが生じてしまうから、同じ世界線には戻れないはずだ。
無数の世界線がこの宇宙に存在するからこそ、タイムトラベルが可能なのかもしれない。
ジョン・タイターは再び、どこかの掲示板に書き込みをするのだろうか。
最後は帳尻が合う
まっすぐに生きようとすると、この世は住みにくい。
我儘に生きている人は、人生を謳歌しているように思える。
それでいいのだろうか。
人生は、きっと最後は、帳尻が合うはずだ。
そう、信じたい。