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新津章夫 Official Blog 《迷宮の森》

謎に満ちた迷宮のギタリスト、新津章夫のオフィシャル・ブログ。迷宮の森 《Forest in maze》

 キーボードで始まる珍しい音作り。そして、チェロ。「PETSTEP」が前作とは根底から異なる象徴的な曲です。

 

 ちなみに、ギタリストである新津章夫にとって4度チューニングのバイオリンとは異なり5度おきに調弦されているチェロを弾きこなすことはさほど難しくなく、チューニングの面倒くささから糸巻きはエレキベースのものを取り付けて使っておりました。

 

「邪道」とも揶揄されましたが、結果的には求めている音が得られれば良し、というのが彼の姿勢なので、当然、そんな言葉には耳も貸さずに、宣材写真にまで堂々とチェロを片手に収まっていたのでした(あの写真、どっかにないかなぁ…)。

 不覚にも、この意味不明な曲名については、その理由を聞いたことがありません。これは岩田由記夫さんが付けたものではなく、新津章夫自身が付けたものです。「*」(アスタリスク)は、当時、世間一般の人はその名前を誰も知らない新鮮な記号として存在しておりました。


 しかし、これだけ軽快な曲調なのに、ドラムはなし。とことん、ドラムとヴォーカルを嫌っていた、いや、憎んでいた人です。それでいて、後半の豪快なディストーション・ギターのソロ。なにがやりたいのか、なかなか伝わりにくいですね、この人は。まったく。


 ちなみに、この主旋律は、ほぼ同時期に作られていた「無印良品BGM」にも共通するもので、8小節で完結するリフ作りが彼の特技でもありました。それはメロディーの美しさというよりも、数学的な組み合わせであり、いかに同じ音符を使わずに元の音に帰還するかというパズルのようなものであり、音楽を観念的なものというよりは、科学的な観点から見ていた故に生まれた旋律です。

 おなじみ倍速ギターを中心にして作られたサウンド。しかし、前作「I・O」との大きな違いは、チェロを使っている点。このチェロは機材面でのサポートをしていただいていた黒澤幸一氏がプライベートで購入したのを「どーせ弾かないんだろ?」と横取りしたもの。


 2分にも満たない短い曲だが、デジタルエコーの深さを細かく変えている点などは、このBlogを読んでくれている若きミュージシャンたちには参考にしてもらいたい。時に思いっきり深く、そして、時にサッと効果を切る。エフェクトだけでもリズム感というのは醸し出せるのです。

 起きている時は本を読んでいるかギターを弾いているか、あるいは酒飲んでいるかという新津章夫ですが、意外にもテレビが大好き


 というわけで、「His Favorites!」の中に「テレビ番組」という項目を作ろうかと思うほど。中でも彼の旧友たちの間でも有名なのが、「パパと呼ばないで」フリークであったことでしょう。


 しかも、杉田かおるのファンではなくて、石立鉄男のファン。その昔、日本テレビ系で放送していた「おひかえあそばせ」「気になる嫁さん」など、まだ石立鉄男が主役でない時代から見続けており、その後、「水もれ甲介」だの「気まぐれ天使」だの、すべての石立ドラマを見ておりました。


 では、石立ドラマのどこが好きだったのか。これまた意外かもしれませんが、フーテンの寅さんに通じるドタバタと下町気質な部分。


 あんな音楽作っていながら、実に下町なんです、新津章夫とは。音楽を続けている間は、ずっと蔵前、浅草、駒形から離れなかったし。


 前にもお話しましたが、我々は男3人兄弟で、長兄に早くから子供がいたため、「パパと呼ばないで」よろしく、上野動物園だの当時は神田にあった鉄道博物館だのよく連れて歩いておりました。


 まぁ、音楽とは直接関係のない話ですけど。

 新津章夫は変わった。良くも悪くも、大きな変化を遂げた。ファンからそう言われたアルバム「PETSTEP」。その1曲目「トリック・スター」を聴けば、その驚きは容易に感じ取ることができる。


 まずポップである。「I・O」にも親しみやすいという意味ではポップな曲はあったけど、悪く言えば軽い。たしかに、曲調は前作にはまったくなかったタイプのものだけど、彼なりの新しいトライは十分に感じられる。


 そのひとつは、シンセサイザー、KorgのMSシリーズやRolandの打ち込み型リズムボックス、TR-909の導入。しかし、いかにも新津章夫だと思わせるのは、この曲でもホワイトノイズ音をリズム系に用いているものの、同期は使わずに手で鍵盤を打って録音している。無機質なデジタル感がない


 また、エフェクター面ではベースにオクターバーをかけて重厚感を出している。ギターにオクターバーをかけるのは誰でもやることだけど、ベースの下のベース音? という一見むちゃくちゃな発想が、新津章夫独自の倍速ギターを引き立たせる結果となっている。


 さらに、デジタルエコーを手にしたことで、キラキラときらめく倍速ギターの響きはより美しくなった。


 匠のごとく入念に手をかけて作られた「I・O」に比べて「PETSTEP」がポップに感じられるのは、音作りの面でデジタル機材をふんだんに用いたことが、そのひとつの理由なのである。


 ちなみに、「トリック・スター」の製作中のコード名は「アーリー・バード」(早起き鳥)。こっちの方がしっくり来るんだけどなぁ…。


PETSTEP (PETSTEP/ジャパンレコード)


 新津章夫のLPレコード研究、第二弾は2枚目のアルバム「PETSTEP」について。


 1978年、フィリップス・レコードよりデビューアルバム「I・O」の発売後、新津章夫の周囲にはいくつかの変化があった。ひとつは、「I・O」の担当ディレクターである伊藤洋一氏がフィリップス・レコードを退社し、YMOのマネジメント会社である「ヨロシタ・ミュージック」を立ち上げたこと。そして、その参加に新津章夫、鈴木さえ子などをマネジメントする「オレンヂパラドックス」を設立した。


 新津章夫は「I・O」の発売後、スーパーバイザーである岩田由記夫氏を通じてFM東京のジングル(放送局が流す社名のコール)やSE(システムエンジニニアではありません。サウンド・エフェクト=効果音のことです)などを担当したり、また機材面でのサポートをしてくれていた黒澤幸一氏の勤める楽器店で子供たちにギターを教えていた。その間に2度、引越しもした。


 そして、3年間のブランクを経て1982年、ジャパン・レコードより2枚目のアルバム「PETSTEP」を発表した。タイトルはもちろん、新津章夫の大好きな回文。頭から読んでも最後から呼んでも「PetSteP」。その言葉の響きの通り、楽しくもユニークな出来となったが、「I・O」の衝撃が忘れられないファンからは「ニーツはフツーになった」と酷評も受けた


 ちなみに、発売元のジャパンレコードは現在、徳間ジャパンと名称が変わっている。当時ジャパンレコードの専務だった三浦光紀氏は「I・O」のプロデューサーでもあった。


 各楽曲についての解説は続く。

以前、新津章夫の「成分分析」というのを紹介した。
結果は、新津章夫は「99㌫の謎」と「1㌫の媚」でできているという、「本当は彼のこと知っている人が作ってんじゃないの?」という見事な結果になった。
そして、今度は、コレ。
脳内メーカー


脳内2
結果はここに書いちゃうけど、外側すべてが「休」ううむ、たしかにもう死んじゃっているもんなぁ。たしかに、たしかに。そして、中心部分にポチッと「欲」これは、なんかの間違いでCDが売れちゃったりしたらいいなぁという、僕の煩悩を写したものだろうか?
ちなみに、僕の脳内メーカーは、こうだった。

隆夫の脳
救いがない。

 新津章夫には数冊の出版物がある(現在はすべて絶版)。


 そのひとつが、東京楽譜出版という版元から出した「エフェクター・マニュアル」という本。文字通りギターのエフェクター=アタッチメントの使い方を紹介したものだ。


 当時、エフェクターは小手先の音処理というイメージが強かった。このBlogでも何度も書いたけど、そのころの国産ギターは音が細くショボかったため、エフェクターを通さないと使い物にならなかったためだ。


 しかし、新津章夫のエフェクターの使い方は、ご存知の通りそれによって個性的な音作りをするというポジティブなもの。エフェクターひとつひとつの音の波形に与える変化をチェックしながら使い方を紹介するというアカデミックな内容だった。


 残念ながら彼のレコード同様に部数的にはたいした結果は出ていない。しかし、おそらく日本で最初のエフェクター・ガイドとしての功労は大きいと思う。



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 7月中旬から1か月半ほど日本に帰国しておりました。暑かったですねぇ。今年のミラノは10年住んで初めてというほど爽やかな夏だっただけに、この寒暖の差は堪えました。


 新津章夫の次のCD発売は残念ながらまったく見えておりません。「サイエンス・クラシックス」の売れ行きも悪く、今、考えなしに出したところでレコード店もCDを置いてくれるスペースを作ってくれないだろう、との話です。しばらく様子見です。原盤はできているのですけど…。


 やはり、アーティスト本人が亡くなっているので、プロモーションができないし、死んでしまった以上、新しい話題も出てこないし、時間が止まったままなので風化するのを待つばかりという状況に陥っています。


 ううむ、作者の没後、その弟が作品を世に広めて評価を得たゴッホの音楽版、という夢は断ち切れてしまうのでしょうか?


 何かいいアイディアがありましたら教えてくださいませ。

デビュー・アルバム「I・O」の中で、1曲だけで新津章夫を語れといわれたら、迷わずこの「迷宮の森」をあげます。このブログのタイトルにも用いた名曲。


作曲、編曲、演奏、エンジニアリング、ミキシング。すべての面で最高の曲。彼が亡くなったと聞いたとき、まっさきに「ああ、新津章夫は迷宮の森に入り込んだだなぁ」と感じました。


冒頭、ギターのハーモニックス音から始まるこの曲、もちろんバックの鳥のさえずりや猫の鳴き声もすべてギター音。そして、長い長いアルペジオ奏法。なんと録り直しすることなく一気に弾いています。高い演奏技術のなせる業です。テレキャスターにMXRのフェイズ100を使っています。


理由は聞いたことがありませんが、なぜか、この曲を録音した時には、アルペジオが引っかかったら、その場所から取り直してつないでもよさそうなものなのに、彼は頑なに一気に弾きとおしておりました。


そして、倍速ギターの音とともにこの曲のひとつの山場にさしかかります。


「イオッ!」の掛け声(当然、ギターの音なんですよ)とともに荘厳な雅楽。笙や篳篥の音、これらすべてギターで作り出した音です。「イオッ!」などは何度も何度も、幾度も幾度も練習をしていたこと思い出します。エフェクターはワウワウを使っています。別名、クライベビーというだけあって、人の声に似た加工ができます。


そうそう、この琵琶のような音も練習に練習を重ねておりました。どうやったら減衰音を短くできるか。研究に研究を重ねた結果のサウンドなのです。


そして、美しい倍速ギターのトレモロ。あのアンドレアス・ドーラウも惚れこんだ音。さらには、ワルツ・フェチ、新津章夫の独壇場といえる三拍子へ。


ラストは「シロス・リンダーホフ」(サイエンス・クラシックス)でもお馴染みのストリート・オルガンのような遊園地サウンドへ…。


今も新津章夫は、自らが作り上げた「迷宮の森」をさ迷い歩いているのでしょう。