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新津章夫 Official Blog 《迷宮の森》

謎に満ちた迷宮のギタリスト、新津章夫のオフィシャル・ブログ。迷宮の森 《Forest in maze》

 起きている時は本を読んでいるかギターを弾いているか、あるいは酒飲んでいるかという新津章夫ですが、意外にもテレビが大好き


 というわけで、「His Favorites!」の中に「テレビ番組」という項目を作ろうかと思うほど。中でも彼の旧友たちの間でも有名なのが、「パパと呼ばないで」フリークであったことでしょう。


 しかも、杉田かおるのファンではなくて、石立鉄男のファン。その昔、日本テレビ系で放送していた「おひかえあそばせ」「気になる嫁さん」など、まだ石立鉄男が主役でない時代から見続けており、その後、「水もれ甲介」だの「気まぐれ天使」だの、すべての石立ドラマを見ておりました。


 では、石立ドラマのどこが好きだったのか。これまた意外かもしれませんが、フーテンの寅さんに通じるドタバタと下町気質な部分。


 あんな音楽作っていながら、実に下町なんです、新津章夫とは。音楽を続けている間は、ずっと蔵前、浅草、駒形から離れなかったし。


 前にもお話しましたが、我々は男3人兄弟で、長兄に早くから子供がいたため、「パパと呼ばないで」よろしく、上野動物園だの当時は神田にあった鉄道博物館だのよく連れて歩いておりました。


 まぁ、音楽とは直接関係のない話ですけど。

 新津章夫は変わった。良くも悪くも、大きな変化を遂げた。ファンからそう言われたアルバム「PETSTEP」。その1曲目「トリック・スター」を聴けば、その驚きは容易に感じ取ることができる。


 まずポップである。「I・O」にも親しみやすいという意味ではポップな曲はあったけど、悪く言えば軽い。たしかに、曲調は前作にはまったくなかったタイプのものだけど、彼なりの新しいトライは十分に感じられる。


 そのひとつは、シンセサイザー、KorgのMSシリーズやRolandの打ち込み型リズムボックス、TR-909の導入。しかし、いかにも新津章夫だと思わせるのは、この曲でもホワイトノイズ音をリズム系に用いているものの、同期は使わずに手で鍵盤を打って録音している。無機質なデジタル感がない


 また、エフェクター面ではベースにオクターバーをかけて重厚感を出している。ギターにオクターバーをかけるのは誰でもやることだけど、ベースの下のベース音? という一見むちゃくちゃな発想が、新津章夫独自の倍速ギターを引き立たせる結果となっている。


 さらに、デジタルエコーを手にしたことで、キラキラときらめく倍速ギターの響きはより美しくなった。


 匠のごとく入念に手をかけて作られた「I・O」に比べて「PETSTEP」がポップに感じられるのは、音作りの面でデジタル機材をふんだんに用いたことが、そのひとつの理由なのである。


 ちなみに、「トリック・スター」の製作中のコード名は「アーリー・バード」(早起き鳥)。こっちの方がしっくり来るんだけどなぁ…。


PETSTEP (PETSTEP/ジャパンレコード)


 新津章夫のLPレコード研究、第二弾は2枚目のアルバム「PETSTEP」について。


 1978年、フィリップス・レコードよりデビューアルバム「I・O」の発売後、新津章夫の周囲にはいくつかの変化があった。ひとつは、「I・O」の担当ディレクターである伊藤洋一氏がフィリップス・レコードを退社し、YMOのマネジメント会社である「ヨロシタ・ミュージック」を立ち上げたこと。そして、その参加に新津章夫、鈴木さえ子などをマネジメントする「オレンヂパラドックス」を設立した。


 新津章夫は「I・O」の発売後、スーパーバイザーである岩田由記夫氏を通じてFM東京のジングル(放送局が流す社名のコール)やSE(システムエンジニニアではありません。サウンド・エフェクト=効果音のことです)などを担当したり、また機材面でのサポートをしてくれていた黒澤幸一氏の勤める楽器店で子供たちにギターを教えていた。その間に2度、引越しもした。


 そして、3年間のブランクを経て1982年、ジャパン・レコードより2枚目のアルバム「PETSTEP」を発表した。タイトルはもちろん、新津章夫の大好きな回文。頭から読んでも最後から呼んでも「PetSteP」。その言葉の響きの通り、楽しくもユニークな出来となったが、「I・O」の衝撃が忘れられないファンからは「ニーツはフツーになった」と酷評も受けた


 ちなみに、発売元のジャパンレコードは現在、徳間ジャパンと名称が変わっている。当時ジャパンレコードの専務だった三浦光紀氏は「I・O」のプロデューサーでもあった。


 各楽曲についての解説は続く。

以前、新津章夫の「成分分析」というのを紹介した。
結果は、新津章夫は「99㌫の謎」と「1㌫の媚」でできているという、「本当は彼のこと知っている人が作ってんじゃないの?」という見事な結果になった。
そして、今度は、コレ。
脳内メーカー


脳内2
結果はここに書いちゃうけど、外側すべてが「休」ううむ、たしかにもう死んじゃっているもんなぁ。たしかに、たしかに。そして、中心部分にポチッと「欲」これは、なんかの間違いでCDが売れちゃったりしたらいいなぁという、僕の煩悩を写したものだろうか?
ちなみに、僕の脳内メーカーは、こうだった。

隆夫の脳
救いがない。

 新津章夫には数冊の出版物がある(現在はすべて絶版)。


 そのひとつが、東京楽譜出版という版元から出した「エフェクター・マニュアル」という本。文字通りギターのエフェクター=アタッチメントの使い方を紹介したものだ。


 当時、エフェクターは小手先の音処理というイメージが強かった。このBlogでも何度も書いたけど、そのころの国産ギターは音が細くショボかったため、エフェクターを通さないと使い物にならなかったためだ。


 しかし、新津章夫のエフェクターの使い方は、ご存知の通りそれによって個性的な音作りをするというポジティブなもの。エフェクターひとつひとつの音の波形に与える変化をチェックしながら使い方を紹介するというアカデミックな内容だった。


 残念ながら彼のレコード同様に部数的にはたいした結果は出ていない。しかし、おそらく日本で最初のエフェクター・ガイドとしての功労は大きいと思う。



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 7月中旬から1か月半ほど日本に帰国しておりました。暑かったですねぇ。今年のミラノは10年住んで初めてというほど爽やかな夏だっただけに、この寒暖の差は堪えました。


 新津章夫の次のCD発売は残念ながらまったく見えておりません。「サイエンス・クラシックス」の売れ行きも悪く、今、考えなしに出したところでレコード店もCDを置いてくれるスペースを作ってくれないだろう、との話です。しばらく様子見です。原盤はできているのですけど…。


 やはり、アーティスト本人が亡くなっているので、プロモーションができないし、死んでしまった以上、新しい話題も出てこないし、時間が止まったままなので風化するのを待つばかりという状況に陥っています。


 ううむ、作者の没後、その弟が作品を世に広めて評価を得たゴッホの音楽版、という夢は断ち切れてしまうのでしょうか?


 何かいいアイディアがありましたら教えてくださいませ。

デビュー・アルバム「I・O」の中で、1曲だけで新津章夫を語れといわれたら、迷わずこの「迷宮の森」をあげます。このブログのタイトルにも用いた名曲。


作曲、編曲、演奏、エンジニアリング、ミキシング。すべての面で最高の曲。彼が亡くなったと聞いたとき、まっさきに「ああ、新津章夫は迷宮の森に入り込んだだなぁ」と感じました。


冒頭、ギターのハーモニックス音から始まるこの曲、もちろんバックの鳥のさえずりや猫の鳴き声もすべてギター音。そして、長い長いアルペジオ奏法。なんと録り直しすることなく一気に弾いています。高い演奏技術のなせる業です。テレキャスターにMXRのフェイズ100を使っています。


理由は聞いたことがありませんが、なぜか、この曲を録音した時には、アルペジオが引っかかったら、その場所から取り直してつないでもよさそうなものなのに、彼は頑なに一気に弾きとおしておりました。


そして、倍速ギターの音とともにこの曲のひとつの山場にさしかかります。


「イオッ!」の掛け声(当然、ギターの音なんですよ)とともに荘厳な雅楽。笙や篳篥の音、これらすべてギターで作り出した音です。「イオッ!」などは何度も何度も、幾度も幾度も練習をしていたこと思い出します。エフェクターはワウワウを使っています。別名、クライベビーというだけあって、人の声に似た加工ができます。


そうそう、この琵琶のような音も練習に練習を重ねておりました。どうやったら減衰音を短くできるか。研究に研究を重ねた結果のサウンドなのです。


そして、美しい倍速ギターのトレモロ。あのアンドレアス・ドーラウも惚れこんだ音。さらには、ワルツ・フェチ、新津章夫の独壇場といえる三拍子へ。


ラストは「シロス・リンダーホフ」(サイエンス・クラシックス)でもお馴染みのストリート・オルガンのような遊園地サウンドへ…。


今も新津章夫は、自らが作り上げた「迷宮の森」をさ迷い歩いているのでしょう。




 原題は「DB」Deutsche Bundesbahn/ ドイチェ・ブンデスバーン)。ドイツ連邦鉄道、統一前の西ドイツの国有鉄道のことです。


 新津章夫にしては珍しいドラムを使ったアップテンポで軽快なメロディーは、彼が大学3年の時に一人でドイツを旅した思い出を音にしたものです。とくにユーレール・パスを使ってドイツ国中を鉄道で移動したそうです。


 コード進行がAM7、D7、GM7、C7、F、Cm、DmときてBM7の後の、ド・ミ・ソ・シの音。これは当時のドイツの駅では電車の遅れや呼び出しなどのアナウンス前に流れる合図音をそのまま用いたものでした。


 この曲には、冒頭に触れたようにドラムが入っていたり、前奏部分にはスティールドラムの音が聞こえたり、また件のド・ミ・ソ・シをピアノで弾いていたりと、ずいぶんと様々な楽器の音が聞かれますが、実はすべてスタジオにあったものを使ってみた結果です。


 そのスタジオとは、YMOがデモテープ制作のために作られた音羽にあるLDKスタジオ。新津章夫の事務所とYMOの所属するヨロシタミュージックは同じ人(現在のBridge社長)がマネージメントをつとめていたため、「I・O」のトラックダウン(マルチチャンネルのレコーダーからステレオにミキシングすること)は何度かLDKスタジオを使用しました。


 しかし、当時のLDKスタジオにはTEAC社の1インチ(8ch)のレコーダーしかなく音質面では苦労しておりました。アルバムのエンジニアである宮坂氏のご尽力もあって、新津章夫の我侭放題なアイディアは次々と具体的な音となって刻み込まれていきました。


 エフェクターの項でも紹介したフランジャーを使ったエッジの効いた音が爽快ですね。ただ、最後のシンバル音の加工、ちょっとやりすぎですよ、先生!(音が割れ放題だ…)


 スライドバーを使ったエンディング部分、ギターは12Fを越えると反対の部分の弦の長さの方が長くなり鳴り出すドップラー効果のような不思議な音が「電車」らしさを醸し出しております。

 新津章夫はアントン・カラスの大ファンでした。映画「第三の男」のテーマ曲でも知られるチターという楽器を使ったあの名曲。母親を連れて名画座にも何度か見に行っておりました。


 というわけで、「天気雨」は、いわば「アントン・カラスに捧ぐ」と副題を付けるべく制作された一曲です。ちなみに、「無印良品BGM 1980-2000」に入っている「星たちのラグタイム」もまた「第三の男」へのオマージュ(要するにパクリですね)であります。この2曲を交互に聴くとメロディーでのパクリが「星たちのラグタイム」、編曲でのパクリが「天気雨」ということがわかると思います。


 さて、この「天気雨」のバッキングに使われているのはチェンバロです。当時、新津章夫は楽器店の2階でギター教室の講師を勤めていたのですが、その店の店員さんが持っていたチェンバロを借りたのです。当時、よほど古楽の演奏家でもないかぎりは、個人でチェンバロを持っている人は、とても珍しかったのです。


 ギターは2タイプ。愛器であるテレキャスターと、僕のVOX製ギター。最初のメロディーはテレキャスター、2番目はテレキャスターを倍速で使い、そして、3番目(モコモコした音)がVOXです。


 効果としては当時出始めのデジタルリバーブが使用されていますが、美しい響きですね。シロフォンとトライアングルの使い方もユニークですね。

 アナログ盤でいうところのB面の1曲目です。しかし、アナログ盤にはA面、B面(盤の表裏)てあって、曲順を組むにも制作サイドには楽しみがありましたよね。懐古趣味でなしに、そういうものが失われたのは寂しいです。


 さて、何度か書いてきたことですが、「I・O」は、アルバム制作以前にデモテープの時点でほとんどの楽曲が完成しておりました。全8曲の中でデモテープなしにぶっつけ本番? で作られたのは、「オレンジ・パラドックス」「迷宮の森」、そして、この「ブラック・ホール(Black Hole)」です。


 この曲の最大の特徴は、新津章夫曰く「最大8倍速」の倍速ギターにあります。シンバル音を加工したかと思えるような出だしのシャーンと響き音もギターです。ベース音にはオクターブボックスを使用しています。


 別のの機会に詳しく書きますが、ここで使用しているマエストロ社のオクターブボックスのベース音はとても独特で倍音の少ないのが特徴です。まるでオルガンのようなベース音になります。


 この曲の見せ場(?)は最後の部分。コンピュータの電子音にも似た、やはり8倍速ギターでのリフ。そして、上昇していく音群…。これ、どうやって作っているか、わかりますか? アナログ人間でないと絶対にわからないでしょうね? わかった人には、抽選で新津章夫記念グッズをさしあげます新津章夫マニアの皆さん、ふるってご応募を!


 なお、この曲はマイク・オールドフィールドの「チューブラー・ベルズ」(映画「エクソシスト」のテーマ曲)ともよく並べ評されておりました。