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新津章夫 Official Blog 《迷宮の森》

謎に満ちた迷宮のギタリスト、新津章夫のオフィシャル・ブログ。迷宮の森 《Forest in maze》

 原題は「DB」Deutsche Bundesbahn/ ドイチェ・ブンデスバーン)。ドイツ連邦鉄道、統一前の西ドイツの国有鉄道のことです。


 新津章夫にしては珍しいドラムを使ったアップテンポで軽快なメロディーは、彼が大学3年の時に一人でドイツを旅した思い出を音にしたものです。とくにユーレール・パスを使ってドイツ国中を鉄道で移動したそうです。


 コード進行がAM7、D7、GM7、C7、F、Cm、DmときてBM7の後の、ド・ミ・ソ・シの音。これは当時のドイツの駅では電車の遅れや呼び出しなどのアナウンス前に流れる合図音をそのまま用いたものでした。


 この曲には、冒頭に触れたようにドラムが入っていたり、前奏部分にはスティールドラムの音が聞こえたり、また件のド・ミ・ソ・シをピアノで弾いていたりと、ずいぶんと様々な楽器の音が聞かれますが、実はすべてスタジオにあったものを使ってみた結果です。


 そのスタジオとは、YMOがデモテープ制作のために作られた音羽にあるLDKスタジオ。新津章夫の事務所とYMOの所属するヨロシタミュージックは同じ人(現在のBridge社長)がマネージメントをつとめていたため、「I・O」のトラックダウン(マルチチャンネルのレコーダーからステレオにミキシングすること)は何度かLDKスタジオを使用しました。


 しかし、当時のLDKスタジオにはTEAC社の1インチ(8ch)のレコーダーしかなく音質面では苦労しておりました。アルバムのエンジニアである宮坂氏のご尽力もあって、新津章夫の我侭放題なアイディアは次々と具体的な音となって刻み込まれていきました。


 エフェクターの項でも紹介したフランジャーを使ったエッジの効いた音が爽快ですね。ただ、最後のシンバル音の加工、ちょっとやりすぎですよ、先生!(音が割れ放題だ…)


 スライドバーを使ったエンディング部分、ギターは12Fを越えると反対の部分の弦の長さの方が長くなり鳴り出すドップラー効果のような不思議な音が「電車」らしさを醸し出しております。

 新津章夫はアントン・カラスの大ファンでした。映画「第三の男」のテーマ曲でも知られるチターという楽器を使ったあの名曲。母親を連れて名画座にも何度か見に行っておりました。


 というわけで、「天気雨」は、いわば「アントン・カラスに捧ぐ」と副題を付けるべく制作された一曲です。ちなみに、「無印良品BGM 1980-2000」に入っている「星たちのラグタイム」もまた「第三の男」へのオマージュ(要するにパクリですね)であります。この2曲を交互に聴くとメロディーでのパクリが「星たちのラグタイム」、編曲でのパクリが「天気雨」ということがわかると思います。


 さて、この「天気雨」のバッキングに使われているのはチェンバロです。当時、新津章夫は楽器店の2階でギター教室の講師を勤めていたのですが、その店の店員さんが持っていたチェンバロを借りたのです。当時、よほど古楽の演奏家でもないかぎりは、個人でチェンバロを持っている人は、とても珍しかったのです。


 ギターは2タイプ。愛器であるテレキャスターと、僕のVOX製ギター。最初のメロディーはテレキャスター、2番目はテレキャスターを倍速で使い、そして、3番目(モコモコした音)がVOXです。


 効果としては当時出始めのデジタルリバーブが使用されていますが、美しい響きですね。シロフォンとトライアングルの使い方もユニークですね。

 アナログ盤でいうところのB面の1曲目です。しかし、アナログ盤にはA面、B面(盤の表裏)てあって、曲順を組むにも制作サイドには楽しみがありましたよね。懐古趣味でなしに、そういうものが失われたのは寂しいです。


 さて、何度か書いてきたことですが、「I・O」は、アルバム制作以前にデモテープの時点でほとんどの楽曲が完成しておりました。全8曲の中でデモテープなしにぶっつけ本番? で作られたのは、「オレンジ・パラドックス」「迷宮の森」、そして、この「ブラック・ホール(Black Hole)」です。


 この曲の最大の特徴は、新津章夫曰く「最大8倍速」の倍速ギターにあります。シンバル音を加工したかと思えるような出だしのシャーンと響き音もギターです。ベース音にはオクターブボックスを使用しています。


 別のの機会に詳しく書きますが、ここで使用しているマエストロ社のオクターブボックスのベース音はとても独特で倍音の少ないのが特徴です。まるでオルガンのようなベース音になります。


 この曲の見せ場(?)は最後の部分。コンピュータの電子音にも似た、やはり8倍速ギターでのリフ。そして、上昇していく音群…。これ、どうやって作っているか、わかりますか? アナログ人間でないと絶対にわからないでしょうね? わかった人には、抽選で新津章夫記念グッズをさしあげます新津章夫マニアの皆さん、ふるってご応募を!


 なお、この曲はマイク・オールドフィールドの「チューブラー・ベルズ」(映画「エクソシスト」のテーマ曲)ともよく並べ評されておりました。

  アンドレアス・ドーラウからまたメールが届いた。今回はちょいとビジネスがらみの内容なので原文は載せられませんが、ドイツ(欧州圏内)での発売に向けて半歩進んだ、という感じ。吉報を待っていてください。
 新津章夫、唯一の共演者であるドイツ・テクノの雄、アンドレアス・ドーラウからメールが届いた。去年の11月末に僕が新津章夫の2枚のCDを彼に送って3ヶ月以上が過ぎていた。これはもう連絡はないかなぁ、とあきらめていた矢先のことだった。

 以下は彼のメール全文。


Dear Mr. Takao Niitsu,

First of all I want to apologise that I am answering so late.

. The story is I opened your Letter one week ago, and because it came from my booking Agency( Powerline), and I thought that it would contain some old CDs of mine; that’s why I didn’t open it right away. Of course, I would like to help you to find a distributor in Germany. If you haven’t found one already, I would have two in mind - one based in Cologne and the other one in Munich. Please let me know if you need my help.

Again, I apologise for the late response.

Very best,

Andreas


 実は僕からの手紙は彼の連絡先がレコード会社とマネージメント会社しかわからなかったので、マネージメント会社の方に送ったものだった。そこから手渡された封筒だったので、彼自身のCDが入っているものと思っていたようだ。

 しかし、さすがにドイツ人、ちゃんと手渡されるんだなぁ。イタリアだったら…。ま、いいか。さっそくドーラウ氏に協力してもらってドイツでのリリースを考えます。


フランジャー


 1970年代半ば、MXRマエストロなど、海外製品に触発され、国産のエフェクターが出始めた。老舗のRolandをはじめMaxon、Bossなど、各社海外製品に負けないユニークなエフェクターを開発し、しのぎを削っていた。


 中でも新津章夫が好きだったのは、フランジャーである。アタッチメントという名称が一般的だった当時は、エフェクターはあくまでギターとアンプにアタッチするものであり、それ自体は補助的な存在であった。


 前にも書いたけど、1970年代初めの国産ギターは音が細く頼りなかったので、ファズ(ディストーション)などをアタッチしないと、とても聴けた音ではなかったからである。


 新津章夫の機材面でのサポートをしていた黒澤幸一さんが楽器店につとめていたこともあり、最新のエフェクターが手に入りやすいという環境も新津章夫にとっては好都合であった。


 フランジャーとは、フェーザーとほぼ同じ仕組みのエフェクターで、ギターの音を元にもうひとつの波形を作り出して干渉させて効果を生むものである。その構造を知ったのはつい最近のことで、当時は、ただたんに「ギュワ~ンと音がする」とか「シュワー」という効果が出るくらいにしか認識していなかった。


「I・O」の中でもっともフランジャー効果が現れている曲といえば、「未来永劫」であろう。バロック部分が終わって、9小節目(かな?)で、まさにギュワ~ンというサウンドとともに始まるギターソロがフランジャーである。また「コズミック・トレイン」のバッキングギターはずっとフランジャーをかけている。


 フランジャー・オタクともいえる新津章夫は、フランジャーだけで3機種持っていたことも書き添えておこう。

~前章からの続き~


 そんなわけで、1970年代初の国産ギターはまだ音がしょぼかったたこともあり、エフェクターを使わないことには、まともな音が出せなかったという状況もあり、新津章夫はファズやワウワウなど、当時出始めたエフェクターに関心を寄せていきました。


 その時、彼の手元にあったのはエーストーンというメーカーから発売されていたファズ(今でいうディストーション)と、僕が買ったワウワウのみ。フェーザー(フェイズマシン)はMXRが出してはいたけれど、とてもアマチュアが買える値段ではありませんでした。


 しかし、ファズとワウワウ自体はすでに完成されたエフェクターであり、それは1960年代のロック・ミュージシャンたちの音を聞けばわかります。


 デビュー・アルバムの「I・O」を録音する段階なって、フランジャーを初めとする様々なエフェクターを手にしましたが、それまでは、とにかくファズとワウワウのみ。しかし、その2つを徹底した研究した結果が「I・O」に収録されている各曲で聴くことができます。


 その代表といえるのが、「迷宮の森」の途中で雅楽が登場するシーンでしょう。あの笙や篳篥(ひちりき)の音も、やはりギターの音を加工して作ったもですが、その直前の「いよっ」(に聴こえる?)の声。これもまたギター音なのです。


 ここで活躍しているのが、件のワウワウ。ジェフ・ベック・グループ時代のジェフ・ベックがヴォーカルのロッド・スチュワートとのかけあいにワウワウを使って、あたかもギターが喋っているように弾いているシーンがありますが、それに触発されて考えたテクニックでした。


さらに、つづく。



 新津章夫がギターを始めたのは彼がまだ小学校高学年の頃。世はまさにベンチャーズとグループサウンズの時代。長兄が父親にねだって銀座の山野楽器にてYAIRI(矢入貞夫)のガットギターを買ってもらったのがきっかけだった。手始めに入門曲といえる「禁じられた遊び」を覚え「アルファンブラ宮殿の思い出」などをマスターしていった。


 その後、ベンチャーズに憧れていた長兄が「モラレス」(全音)というメーカーのモズライトのコピー・モデルを購入。エレキギターを手にした。



 日本のギターが急速に進歩したのは1970年代も半ばを過ぎてからの頃。当時のギターはとにかく、音はしょぼいし(パワーがなく、音色も悪かった)、チューニング面など楽器としても、とても質が低かった。


 高校になってジャズに目覚め河合楽器のフルアコースティックギターを手にした。神保町の中古楽器店で買ってきた。


 実はI/O」のデモテープとなった初の多重録音では、上記のモラレス、矢入のガットギター、そして、僕が持っていたHOTAKA製(モーリスの前身らしいです)のフォークギターのみで作られた。ちなみに、ベースギターは持っていなかったので、ギターの4、5、6弦をつかってベース・フレーズを弾いていた。


 当時、すでにグレコはギブソン、フェンダーのコピーを作り始めていて、マニアの間でグネコ・ロゴと呼ばれる(GrecoのrがnのようなデザインだったためGnecoに見える)、それまでの日本のギターとは一線を隔す出来となっていはいたけれど、以前にも書いたけれど、新津章夫はギターそのものにはまったく関心がなかった。まさに、弘法筆を選ばず、だったのだ。

 むしろ、やはり当時出始めたエフェクター類(アタッチメント)にとても興味を示した。


(以下、続く)





 一応、ご報告しておきますが、昨日1月29日は、結局、なにも起こらず平穏無事な一日でした。

 実に久しぶりに新津章夫が夢枕に立ちました。夢なので、その前がどのような話の流れだったかは覚えていません。とにかく、そこへ行けば、新津章夫が現れる、ということでした。

 その場所とは、昔ながらのロック喫茶。わけもわからず、DJブースのような場所で立ったまま待ちました。どういうわけか、1960年代に流行ったYAMAHAのオルガン(左側が白黒逆になってベース音の鍵盤になっているもの)だのエーストーンの電気ピアノ(そんなのあったっけ?)だのがあり、曲にあわせて弾いている人がいました。

 どんな曲が流れていたかは良く覚えていないけど、60年代、70年代には毎日、ラジオから聞かれたような曲だったことはたしかです。

 新津章夫はすぐに現れました。相変わらず痩せていましたが、わりと元気そうでした。僕が「どう? "生き"心地は?」とくだらない冗談を言うと、ニヤついておりましたが、「29日、空いてるか?」と聞かれました。「たぶん、空いているけど」。「そう」と新津章夫は返事をするなり、その姿はボヤけていき、目が覚めました。

 時計を見ると午前6時40分。目覚ましは毎日6時45分にかけているので、典型的なレム睡眠の中での夢でしたが、1月29日にどのような事が起きるんだろう?