ネッセ・フランセと読みます(たぶん、あっていると思う…)。
新津章夫の特徴ともいえるメランコリックな名曲です。チェロのピチカートをバックにお馴染みの煌く倍速ギター。切なさあふれるメロディー。
俗っぽくなった、フツーになったとの酷評も受けたセカンド・アルバムの中でも、後に紹介する「リヨン」とともに、「I・O」の名残りをしっかりと感じる一曲です。
技術的な解説をすると、こういうリズム隊がまったくない曲の倍速ギター録音は、恐ろしく難しいです。普通、倍速ギターの録音は、ガイドとなるリズムギターを先に録音し、それを半分のテープ速度で聞きながらもう一本のギターを録音。元の速度に戻すと、あとで録音したギターは音階がオクターブ上に、逆に音の減衰が2分の1になります。
しかし、この曲にはガイドとなるノーマル速度のリズムギターは聞かれません。このあたりはよく覚えていないのですが、エンディング近くに聞こえるリズムボックスの音をガイドとして使い、ミキシングの際にはほとんどその音を使わなかったのだと記憶しております。電子音は、半分に減速しても、ギターなどに比べれば音の変化が少ないのです。
先にも言ったように、倍速ギターの録音は、まずガイドとなるリズムギターを録音するのですが、2分の1の速度、逆に減衰音は2倍の長さとなったギター音を聞きながら、次のパートを演奏することは、たいへんに難しいことです。しかし、リズムギターを弾いているのは、新津章夫自身。自分の呼吸に合わせることは、他人の演奏に合わせることに比べたら、難しさも半減です。彼の音作りが、たった一人の多重録音で行っていたことには、ちゃんと意味があるのです。
美空ひばりの名曲を新津章夫がカバー?!
ではありません。1960年代のロンドンでは、ストーンズやヤードバーズとともに人気のあったTボーンズの大ヒット曲です。
なぜ、新津章夫がこの曲をカバーしたのかといういいますと、それには理由がありまして、当時、ある女性アーティストの歌う「ピーターラビットとわたし」という曲があったのですが、これを聞いた新津章夫が、「なんだよ、これはTボーンズの曲のパクリじゃねえか」といいだし、「ならばオリジナルがどんな曲か、知らない人に教えておこう」と、録音を始めたのでした。
1980年頃といえば、近田春夫さんの深夜放送などでも、日本の歌謡曲ではいかにパクリが多いか、などということが話題になっておりました。
さて、新津章夫の「真っ赤な太陽」ですが、リズムボックスを使い(おそらくローランドのDr.リズム=TR606だとと思いますが…)、歌とともに新津章夫が"憎む"ドラムを使っている後ろめたさか、逆にこんなポップな曲なのに、ベースは入っていませんね。心底ひねくれた人です。
中盤からは倍速チェロも登場し、彼らしい仕上がりの曲になっております。
今さらですが、「千の風になって」を聴きました。良い曲ですね。
新津章夫の戒名は、冬琳院法光日章居士といいます。最初、これを聞いたときには、冬と琳から、寂しい名前だなぁと思いましたが、住職によると「冬」はそれまで積み重ねてきた物を収める事、「琳」は光り輝く音の意味であるそうです。
字面は寂しいけど、本当に新津章夫のことを表しているのだなぁと感心しました。
「千の風になって」を聴いて、なんか新津章夫が言いそうな歌詞だなぁと苦笑したくなるやら、泣きたくなるやら。「秋には光になって」だなんて、章夫と秋、琳と光がダブりました。
「夜は星になって」。そういえば、「無印良品BGM」に提供した曲はすべて「星」にまつわる曲でしたね。
もう二度と会えないかと思うと切ないです。本当に。音楽もいいですが、会うとやっぱり味わいの深い人なんです。音楽以上に新津節のある話し振りで。
「死んでなんかいません」。
本当、そう思いたいですよね。
追伸
もしよかったらYouTubeで聴いてください。
「千の風になって」
エレキギターの音を歪ませること。これはロックの基本ですが、エフェクターが生まれるまでは、アンプをフルボリュームすることでしか得られなかった効果です。
その昔、グレコのギターを買うと故・成毛滋さんの「ロックメソッド」というカセットが付いてきましたが、その中でジミー・ペイジやクラプトンなど、いろいろなギタリストの音を再現してみせるのですが、「『移民の歌』のリフは、マーシャルのアンプのボリュームを最大に…」みたいな解説が多くて、「そんなことできるわけないだろう! そもそもアマチュアがマーシャルを持っているわけがねーだろう!」みたいなことは、当時のギター少年は必ず経験したものです。
そんな時代にギターを始めた新津章夫が最初に手にしたエフェクターは、ハニー(Honey )というメーカーが作っていたファズです。
ファズ。
ディストーションとかオーバードライブでなく、ファズ。ちなみに、HoneyはGSのジャガーズやタイガースも愛用した、当時としては珍しいリッケンバッカーのコピーを作っていたメーカーです。
ファズは、当時としては貴重な、歪み系の音を得られるエフェクターでした。高音を強調したタイプと曇らせた音との2タイプの音質の切り替えが付いておりました。
その後、MAXONやRoland、BOSSなどのオーバードライブやディストーションも手にしましたが、古いのでノイズが多いことをのぞけば、このHoneyのファズを気に入って使っておりました。「I・O」の「未来永劫」や「コズミックトレイン」の中でもいくつかのパートでその音が聴かれます。
PS/下記サイトにて「Companion FY-6」として紹介されているのが該当のファズです。
新津章夫が残したアルバムは3枚。衝撃のデビュー作、「I・O」、ポップに変身した「Petstep」、そして、幻と呼ばれる「ウィンターワンダーランド」。
なぜ”幻”と呼ばれるかというと、この時期は所属事務所もバタバタしていた時期で、”とりあえず作ちゃったから、出さなきゃしょうがない”という状況の中で出されたアルバムで、発売元もポニーキャニオン系のマイナーレーベル「スウィッチ」でした。
この「スウィッチ」というのは、当時流行っていた45回転30センチのミニアルバム専門のレーベルで、そういうカラーはあったのですが、なにぶん、弱小のレコード会社ゆえ、ジャケットもおざなりの”アリモノ写真”でライナーノーツもなし。宣伝材料もコピー用紙が数枚といった有様でした。
過日、ヤフーオークションで、宣材付きで売りに出されていたので、めざとく入手。ここに紹介する運びとなりました。
「今までのCM活動」の欄に「無印良品店内BGM」とありますが、これが今話題の無印良品のオリジナルCDの原型となったことはあまり知られておりません。さらに、「西友ストア店内BGM」ともあります。無印良品は、元々は西友のプライベートブランドであり、そこから独立したものです。いかに新津章夫と無印の付き合いが深かったかがわかります。にもかかわらず、CDのクレジットは「新津彰夫」だもんね…。
※うっかり下書きのフォルダに入れっぱなしだった日記です。一応、公開しておきます。
早いもので新津章夫が亡くなって6年が経過しました。去る1月19日は七回忌でした。
ブリッジ・レコードの伊藤洋一氏、音楽プロデューサーの岩田由記夫氏の協力のもと、2003年に「I・O」を、2005年には25年ぶりの新譜「サイエンス・クラシックス」をCD化できました。
ただ、残念ながらセールス的には恵まれておらず、予定しております未発表テイク集や「PETSTEP」「ウィンター・ワンダーランド」の再発は実現できていません。
皆さんもご存知のように音楽のパッケージ販売は、ここ数年下降気味です。しかし、それは”消費としての音楽”がパッケージからネット販売に移行しているのであって、新津章夫のような普遍的な音楽は、やはりパッケージ販売が適していると信じたいです。
音だけを切り売りするのではなく、また1曲ずつ単品販売するのではなく、複数曲をアルバムとして構成し、パッケージの面白さや、ライナーノーツを読みながら聞くことは、音楽の楽しみ方のひとつだと思っています。
いつになると確約はできませんが、新津章夫の再発活動は続けていく予定でいますので、今後とも、このBlogもよろしくお願いします。
キーボードで始まる珍しい音作り。そして、チェロ。「PETSTEP」が前作とは根底から異なる象徴的な曲です。
ちなみに、ギタリストである新津章夫にとって4度チューニングのバイオリンとは異なり5度おきに調弦されているチェロを弾きこなすことはさほど難しくなく、チューニングの面倒くささから糸巻きはエレキベースのものを取り付けて使っておりました。
「邪道」とも揶揄されましたが、結果的には求めている音が得られれば良し、というのが彼の姿勢なので、当然、そんな言葉には耳も貸さずに、宣材写真にまで堂々とチェロを片手に収まっていたのでした(あの写真、どっかにないかなぁ…)。
不覚にも、この意味不明な曲名については、その理由を聞いたことがありません。これは岩田由記夫さんが付けたものではなく、新津章夫自身が付けたものです。「*」(アスタリスク)は、当時、世間一般の人はその名前を誰も知らない新鮮な記号として存在しておりました。
しかし、これだけ軽快な曲調なのに、ドラムはなし。とことん、ドラムとヴォーカルを嫌っていた、いや、憎んでいた人です。それでいて、後半の豪快なディストーション・ギターのソロ。なにがやりたいのか、なかなか伝わりにくいですね、この人は。まったく。
ちなみに、この主旋律は、ほぼ同時期に作られていた「無印良品BGM」にも共通するもので、8小節で完結するリフ作りが彼の特技でもありました。それはメロディーの美しさというよりも、数学的な組み合わせであり、いかに同じ音符を使わずに元の音に帰還するかというパズルのようなものであり、音楽を観念的なものというよりは、科学的な観点から見ていた故に生まれた旋律です。
おなじみ倍速ギターを中心にして作られたサウンド。しかし、前作「I・O」との大きな違いは、チェロを使っている点。このチェロは機材面でのサポートをしていただいていた黒澤幸一氏がプライベートで購入したのを「どーせ弾かないんだろ?」と横取りしたもの。
2分にも満たない短い曲だが、デジタルエコーの深さを細かく変えている点などは、このBlogを読んでくれている若きミュージシャンたちには参考にしてもらいたい。時に思いっきり深く、そして、時にサッと効果を切る。エフェクトだけでもリズム感というのは醸し出せるのです。

