多田
富雄先生が今新聞でエッセイを連載中。
これが実に自分の普段思っていることを語ってくれていて、すばらしい。切り抜いて研究室に貼ったくらい。曰く、
「自分は専門外のことにも熱中し文学や能など道草をくった」
「でも無駄に見えてあとで役立つ」
「国際会議で様々な国籍の科学者と話していても、ただ科学の話だけしていては競争一辺倒になるし友情も信頼も芽生えない。論文にするときもギスギスした論文にしかならない」
「友情や信頼があって、より効率的な研究ができる」
「他国の文化を知ることも競争相手のモチベーションを知る大事な手がかり」
「最近は競争だけ、あと から参入して成果だけ横取り。これでは嫉妬と憎しみがのこるだけ」
実際そうなんだよね。1人でできることって限られるし、信頼できる価値観の近い得がたい友人を持つことは研究上非常に有意義。実際新しいアイディアをくれることもあるし、新しい分野に目を開かされることもある。競争だけしていたんではそうはならない。世界で研究上の友人を作るにはやはり①日本の歴史や文化を語れて、②相手の国の文化や歴史を対等に話せる(議論できる)、こと。実際ヨーロッパの研究者は半端でないインテリが多いので、そもそも教養のない研究サイボーグみたいな人間はあっという間に無視される。
アメリカはちょっと違うかもしれないが、それでも有名な話ではノーベル賞を取ったマレー・ゲルマンは中国の「道」思想に詳しくて、その思想をベースに当時バラバラだった素粒子を分類したら綺麗に分類できた(八道説)、というのもある。ヨーロッパではC60の発見者のクロトーは建築・デザインも詳しく(英国で賞をとったこともある)、それがC60の構造を決める上で決定的な貢献をした、というような話は多い。
ということで学生には「本を読め」「教養を身に付けろ」「ただしゃべるだけの外国語じゃなくて、それを通じて表現する自分を確立しろ」と言っている。多田先生のエッセイを読んで、我が意を得たり、という感じ。
大きなプロジェクト
新聞にも出たが(小さく、だが。2年目なので扱いが小さい)、うちの学科が出していた大きなプロジェクトが通ったらしい。明日、メンバーに報告がある。自分も参画しているので、自分のところにも案内が来た。
額だけ見ると大きいが、メンバーの数も多いので、1人アタマに換算すると少ないなぁ(苦笑)。まぁ留学生の受け入れとか(秋に1人来る)、外国の大学への派遣(去年1人行った)とか、海外との連携(好き)とかが重要なのでいいけれども。オブリゲーションも少ないし、良かったといえばよかった。助教も1人取れることになりそうだし(これは明日の会議で主張しないとダメ)。
大江
健三郎氏が新聞にオルハン・パムクとの対談をベースに評 論を書いていた。
パムクの小説に関する内容は概ね世評に近いものだったが、「雪」の主人公を「記者」と理解したんではダメなんじゃないの?という疑問は大量に残る。「詩人」でなければ、スランプからの脱出がやはり神の啓示と存在を示したものだ、と本人が理解せざるをえなくなり、それ故に以前の無神論と現在自分が直面している原理主義的思想とのギャップにゆれる、というポイントを見失うことになると思うのだが。そんな理解でいいの?
本人が翻訳の問題に拘るのは確かに理解できる。講演録ではその独特の翻訳が味となったが、小説のほうはやや読みにくい。もっとも氏が拘る時制の問題、というのは私は気にならなかったが・・・。ノーベル文学賞受賞者というのは変なところに拘って大雑把にものごとをとらえる感じでいいのかな。以前から実はあまり好きではないのだが(というかどこがいいのかよく分からない。いくつか読んだが初期のものはテイストにあわず、中期のものは模倣の臭いがし、後期のものは個人的体験すぎて共鳴できず)、なんとなく肌合いが会わない感じが評論でも残った。
ハーゲンカルテット
この前の”ラ・プティット・バ ンド”で盛り上がったわけではないが、10月に来るハーゲンカルテットのチケットを買ってしまった。土曜夕方の開始、といい曲目(セリオーソと14番、ドビュッシー)といい、条件は最高。でもってハーゲン。今から楽しみ。
あ、そのラ・プティット・バンドの演奏会評を岡田暁生氏が新聞に書いていた。プログラムの後半について完全に黙殺していたので、やはり岡田氏も「ダメ」評価をしたんだろう。全般にやや切れ味のない評論で、いろいろ配慮して書いたのかな、と勘ぐった。
ナポレオンIII世って
人間的にも政治家としてもなかなか面白い人だったようだ。
もっとも漁色家で陰謀家でもあったので隣人とか友人としては大変だったと思うが、なんだか人間臭いうえに、「皇帝民主主義」みたいな労働者階級にずいぶんと福祉の面で貢献するなど、独裁者っていう色分けではなかなか判別できない何かがあるみたい。
ということをいろいろ勉強できて「怪帝 ナポレオンIII世」はあっという間に(大作だったけど)読了。次は「魅惑する帝国」。著者の田野大輔氏は自分の2つ後輩なんだな(学部は違うが)。きっとキャンパスですれ違うくらいはしていたはず 。文学部は工学部の隣だったし、自分の研究棟の筋向いだったから・・。
講義の悩み
今担当している講義での話し。
敬語が使えない学生がいる話は以前した。今回は講義を聴いていない(と思われる)のに、堂々と「何をしたらいいのかわからない」と開き直る学生がいる。
他の学生はちゃんとできているので、説明が悪い、ということはなさそう。でも本人は「聞いていない」「何をしたらいいんですか」を連発。課題も「分かる範囲で簡単にすませていいか」(という趣旨のことを)と言う。そろそろイライラしてきた。
休日出勤
某重要委員会で休日出勤。
会社員時代は「絶対に」休日出勤などしなかった私。でも大学では苦にならない。だいたい学会も休 日にかかってやることが多いが別に代休が欲しいと思ったこともないし・・・。モチベーションと周囲の評価でこうも態度は変わる(君子は豹変す?)ものか、と自分でびっくり。
研究室に来てみるとここ3ヶ月ほど(頭痛がするほど)頑張っている某重要論文が編集部を突破し、レフリーに回った、というメールが。久々に興奮して、そして嬉しい。まだ通ったわけじゃないけど、やっぱり休日出勤して頑張るものですねぇ。でも本当は今日は親しい仲間とテニスのお誘いがあってテニスに興じるはずだったのだ。みんな、すみません。来週は参加します。
最近はスピンに関する基本的な物理に関するいい解説があったので、ネチネチ計算をフォローしたり物理の大きな捕らえ方(最近の自分のテーマ。やっぱり優秀な人は物理の捕らえ方が大きい、ということを実感したので)を目指したり。いい勉強になっている。そもそも、その解説記事は非常にすばらしくて、自分が講義を担当したらこういう風にやりたい、と思うような名作。最近、自分もいろいろな学会誌とか専門誌に解説記事を依頼されることが多くて、それはそれでありがたいことだが、今読んでいる記事のような深みのあるものを書きたいなぁ。
成果報告
6/5-6は淡路島で重要プロジェクトの成果報告&進捗管理の会。
まだ去年秋開始のメンバーだけなので、なんとかこぢんまりと開催できる(全員オーラル)。ただ発表が10分というのは短すぎるなぁ。で、議論が実質20分。ほとんど全員が10分以上話した、というのは笑ったが。自分も15分くらい話し、さらに質疑が盛り上がったので30分では足らなかった。
今期はいろいろ面白い&いい(と思う)成果が出たので、わりと気が楽に参加できた。アドバイザーの先生方からも概ね好評だった感じで褒めてもいただけた。ここまでは順調。もっとも出だしで1つのカベを乗り越えたのでここまで楽なのは織り込み済み。むしろここからが勝負、かな。実際これから半年はなかなか成果が出にくい感じはある。学生と死線を乗り越えるか。
夜は懇親会。前回は2時か3時まで呑んでいた人もいたようだが、今回は12時過ぎには終了したみたい。自分も11時半くらいに退却。でもこの会、興奮しているからか(初日に発表なので)、夜が眠れない・・・。前回も4時間くらいで目が覚めてアメフトを見ていた(Coltsが負けるところ)。今回も4時には起きてしまって、仕方がないので音楽を聴きながら少し仕事して、瀬戸内海を眺めていた。漁船の大艦隊が航行しているところとか・・・。霧がすごかったなぁ。とにかく眠い、という感じだが2日目も(居眠りしたくても)なぜか眠れず、疲労しきって研究室にもどる。あ、眠れなかったのは慶應のSさんの超弩級の大成果に興奮した、ということもあるが。
次回10月、浅草開催。今から心配だ(何が・・・?)
ポアンカレからナポレオンIII世へ
以前紹介したポアンカレ予想の本は楽しく読了し、今は鹿島茂「怪帝・ナポレオン3世」を開始。
かなり大判の本だが中身は読みやすくスイスイ進む。歴史的には自分が詳しくないウィーン会議後から普仏戦争までなのでいい勉強になる。ちなみにナポレオンの孫、じゃなくて甥ですね、3世は。なんでも「暗愚の皇帝」っていうレッテルが貼られているようだが(それすら知らない私)、もう一度再評価してみよう、というのがこの本の目的。意外と、というか相当に現代の民主思想の片鱗を感じる人物。もちろん現代で言うところの反動的な行為もいろいろあったみたいだが。
溜まった本もだんだん消化して、そろそろまとめ買いの時期。ちょうど原稿料などが入ったので、グイッチャルディーニのイタリア史全巻買いでもしてみるかな。
演 奏会のハプニング
お互いに読者である空庵さんのブログで話題になったハプニング。30年以上楽器を弾いていればいろいろある・・・(苦笑)。
自分の演奏史の中で最大のハプニングは1996年9月の某オケの演奏会。曲は第九。このブログ読者でまざまざとあのシーンを思い出す人もいると思うが、事故は終楽章の後半,、コーダの前のG.P.で発生(したはず、だよね?水さま)。
HCDD DCHA....とVnが出るところで、おそらく指揮がリハと違った振り方(余拍1つだったのに2つとった)をして、パート全体が完全に2分割。悪いことに2つのうち1つ目が微妙な取り方だったので、いつもどおり2つと思うほうにもそれなりの正当性があった(と思う)。ぐちゃぐちゃになってテノールとソプラノのソロに入ってしまい、大変だった。「もうダメ。止まる」と覚悟したらソロが力づくで全体をまとめてくれてなんとかクリア。でも本当に冷や汗かいた。
似たような出来事は2年くらい前の某オケでもあった。曲はマーラーの1番。1楽章最後の最後。G.P.後の最後のところで指揮がよくわからない振り方をした(前日のリハから毎回違った振り方をしていたしテンポもどんどん遅くなるし、で自分は危ないな、と思って警戒していた)ところ、1stのうしろのほうがどっかーんと飛び出してグチャグチャに。毎回違う指揮者も責任あるが、ちゃんと見ないで(指揮とトップを)適当に弾き散らすほうが責任重大。ちなみにこの演奏会では同じマラ1の3楽章のチューバがほとんど音が出ず(忘れたのではなく、単にヘタなだけ)、唖然とした。これも一種の事故かも。
止まりそうだったのはもう1回あって、1995年くらいの室内楽演奏会。ブラームスのピアノ五重奏をやったが、他の4人に対してピアノのレベルがlogプロットしても足らないくらい低い。(よく知らないまま、無理やり組まされたのと、本人の自己申告に虚偽があってわからなかった)とにかくヘタでミスタッチは頻発するにテンポは守れないし(要するに簡単なところは早く、難しいところは遅れる)弦楽器の音や和音は聴けないし、でどうしようもない。おまけに本人にヘタだ、という自覚がないので「いやぁ時間なくてさらえてないんですよね」としゃぁしゃぁと言ってくれる。さすがに本番1週間前くらいにキレたチェリストがその台詞を聞いた瞬間に「お前は必死で練習しろ!」と一喝(笑い)。それでおとなしくなったが、才能のない人間が1週間でさらえる量なんてしれてる。前日のリハもぼろぼろでいつ止まってもおかしくない状況。で弦の4人で示し合わせて「何があってピアノは無視して俺たち4人でしっかり弾こう。終わりが揃わなくてもいい。楕円球(私)がとにかく引っ張れ」となった。あ、私が1st Vnだったので。実質的リーダーはVcだったが、まぁとにかくそうなった。そのおかげで本番2箇所あぶなかったが、全くピアノには忖度せずに淡々と演奏した。
ということで本当に演奏って大変。楽しいことは楽しいけれど・・・。