小説 介護される日々 -6ページ目

小説 介護される日々

介護される 介護する 寄り添う気持ちとともに。

今日は母さんがクリニックへ行くというので、

医者に手紙を書いた。


このクリニックの医者は

私の訪問診療に来てくれている医者と同じだというので、

どうせ家に来てくれるのだから

母さんも一緒に診てくれ、とお願いしてみたのだ。


わざわざ通わなくても良いだろう。


娘と一緒にクリニックへ行った母さんが帰ってきたので、

「医者は手紙読んだか?」と聞くと

「読んでいたけど、『奥さんはたまには外出した方が良いから

 がんばって通ってくださいね。』と言っていたわ。」

と言っていた。


効率悪いことこの上ないな。

なぜもっと往診の時間を有効に使わないんだ。


母さんの薬がなかったのだが、医者にそれを言ったのだろうか。

「あ、忘れていた。」というのでクリニックへ電話した。


まもなく看護師が来たが、

「このお薬カレンダーにこの前セットしておいたのですが。。」

とあるはずの薬を探していた。


飲みすぎてしまったか?他に置いたか?


「ご主人の薬がちょっと残っていますね。

 飲み忘れちゃったみたいなので、

 余っている薬は持ち帰りますね。」と私に言う。


そんなはずはない。ちゃんと飲んだはずだが。


「余っているからと言って、私が買った薬だ!

 勝手に持って行っては困る。

 ちゃんと残しておいてくれ。」と置いていかせた。


薬が大事なことはわかっている。

自分の身体なんだから、自分で守っていくのが当たり前だ。

とにかく大丈夫。


今日は腹痛がする。

昨日までは調子も良く、食事も美味しく食べていたのに。

また入院しないとダメか!

保険証はどこだ。

誰かが持って行ったきり戻って来てないのじゃないか?


医者に電話したのにまだ来ない。

娘がちょうど来たのでもう一回電話させた。

夕方になるという。

具合悪い時に来ないなんて、どうなっているんだ!


夕方暗くなってからやっと医者が来た。

自分の都合で来るなんて全く勝手だ。


痛み止めの注射をした。

「薬飲み忘れていたようですね。」と医者に言われる。

それが原因の一つだという。


毎日決められた通りに飲んでいる、と答えた。

忘れることはない。


そう言っているので、

壁に「薬カレンダー」というポケット付きのカレンダーを

看護師に貼らせていた。

「ここに朝昼晩と寝る前の薬を入れておけば忘れないですから。」と。


いらないと言っているだろう、と怒ると

「用心のためです。

 試しに使ってみましょう。」と言う。


しょうがない。

看護師が毎週そこに薬を入れてくれるというので

とりあえず使ってみることにする。

結局言いなりになってしまう。


「奥さんは来週クリニックの方へ来てくださいね。」と看護師が話している。


「どうせ家に来ているんだから妻も診てくれるようにできませんか。」と聞くと

それはできないという。

「奥さんは元気で歩ける方なので、月に二回くらいだから

 来てくださいね。」と言っていた。


母さんもその時は娘と一緒にお茶飲んで来たりできるので、

それはそれで楽しみなのか。


私は腹痛さえおさまればいい。

そうすれば本を読んで好きに過ごせるのだから。

普通に暮らすことが何より大事だ。


薬がないので、看護師に電話した。

すぐ行きますから、と午後には来てくれた。


「いつもの薬の置き場にない。」と話すと、

テレビの横を指さし

「昨日来た時に個々に置いたんですが、

 わかりにくかったですね。すみません。」

と出してくれた。


薬がどこにあるか、とか飲んだかどうかを

見てくれるヘルパーという人に来てもらったらと言われたが、

「そんな必要はないです。

 ありかさえわかれば自分で食後に飲めます。」と

断った。

そんな子どもじゃあるまいし。


そのあと、ケアマネジャーという人が来た。

何か話があるのかと思ったが

「退院して、体調どうですか?」と様子を見に来たらしい。


「母さんも買い物に行ってますし

 私もこのとおり、体調良くなって

 二人でなんとかやれてますから。」と話した。


どうやら訪問診療の医者から

子どもと同居した方がいいのではないか、とか

老人ホームを勧めた方が良いのではないかと

言われたらしい。


娘と一緒に住むという考えはないが、

将来的に老人ホームというのはあるかもしれない。


しかしまだまだ先の話だ。

今はふたりでこの生活をしていくのが一番だ。



今日やっと退院できた。

10日間も入院していたのだ。


退院の時に病院から来週診察に来るように言われたが、

来れるわけない。

いつも往診の医者に来てもらっているんだから。


しかし薬がないのは困る。

娘に往診に来ている医者に連絡するように言う。


「訪問診療の先生に連絡するけど、

 看護師さんが今日来てくれると言っていたので

 お願いできると思う。」と言っていた。


これからは看護師さんが毎週来ることにしたと言う。


そんな必要ないと言おうと思ったが、

退院してしばらくはその方が良いか、と思い直した。

必要なくなったら断ればいいのだろう。

なにより薬を持ってきてもらわなければ。


家に帰ってきてほっとした。

おかゆももう食べなくてすむし、

好きなものが食べられるだろうし。


午後、看護師が来た。

お腹が少し張っていると言われたが、様子みることにした。

まだ退院したばかりだからな。

「薬飲めばなおりますから。」と言っておいた。


母さんがだいぶ疲れている様子だと娘が言っていた。

毎日病院へ通っていたからだろう、と。


それももう今日からはしなくて良いから大丈夫だ。

二人でいつもの暮らしになるから大丈夫だ。


退院が決まった。

まだ3分がゆを食べている状態だが、大丈夫だろうか。


だが母さんもだいぶ疲れている様子だから

もう退院できないと、と思っていたところだ。

とにかく家に帰ろう。


家にいつも来ている訪問看護の人が

引き継ぎに来てくれるから、と娘が言っていた。

ケアマネも来ると言う。

そんな大げさにする必要ない、と娘に言ったが、

必要なことだと言う。


退院の日は手続きもあるから、と

母さんは娘に一緒に来てもらいたいと話していた。


「なるべく早く、9時には来れるか?」と言うと

娘から

「そんなの無理。私が家を出てお母さん迎えに行って、10時頃。」

と言われる。

「そうか。」しょうがない。


朝食食べたらすぐ着替えて支度して

すぐ帰れるようにしておこう。


痛みもないし、帰ればまたいつものように暮らせる。

おかゆじゃなくても食べられる。

普通の静かな生活ができる。