小説 介護される日々

小説 介護される日々

介護される 介護する 寄り添う気持ちとともに。

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手術が終わった。

2,3日集中治療室の方へ入っていたが、

そのあとは元の病室へ戻ってきた。


管もたくさんついているし、

お腹も痛いし、咳も出て苦しい日々が続いたが、

少しづつ落ち着いてきた。


娘は私の入院中に

手すりを付ける工事をすると言っていた。

退院してからの家での暮らしが

よりスムーズになるように、ということらしい。


確かに体力もなくなってくるし、

母さんも手すりはあった方がよいのかもしれない。


廊下とトイレ、洗面、あとは浴室の中だという。


「ついでに洗面所の入り口と居間の入口の

ドアの下の段差もなくそうと思って。」と言っていた。

少しの段差が一番転びやすいという。


「とにかく転んだら大変だからね。

 入院中に工事ができれば一番良いと思って。」

と業者の人と打ち合わせをしているらしい。


もう少し落ち着いたらリハビリも始まり、

今でも歩いているが、

もっと歩け、となるらしい。


手術の翌日から廊下を一回りしなくてはいけないので、

これも苦労している。

お腹痛いなか、結構大変なんだ。

点滴やらなにやら管ついているし。


でもまああとは時間たって回復していけば

家に帰れる。

「健康」とは言えないが、

「それなりの健康」だと思って生活していこう。




手術の日が来た。


ここ一週間は検査もほとんどなく、

呼吸練習機というのを使って

息を吸ったり吐いたりを力入れてやったり、

リハビリの練習をしたりしていた。


呼吸練習機なんて今しか使わないのに

買わなくてはいけないなんて不経済だ。


食事も美味しく感じないし、

医者も全然この部屋に来やしない。


本当は別の病院に入院したかったんだ。

もう今から無理だと言われてここにしたが、

本当にそれでよかったんだろうか。


朝早いから来なくて良いと母さんに言っておいたが、

医者から家族はいてくれと言われたらしく、

娘と母さんは8時半には病室に来ていた。


看護師が迎えに来た。

「じゃあこれから手術室に行きますね。

 歩いて行きますので。」

と言うので、しょうがない、

看護師と一緒に歩いてエレベーターに乗った。


検査つづきの入院生活の日々だ。

手術は今月末だと言われた。


まだ2週間もあるが、ずっと検査なんだろうか。

どうせなら早く手術して早く帰りたい。


昨日は母さんに電話して

「明日も検査だから来なくていいよ。」

と言ったら

「担当の先生から説明があるから来てくれと言われたから

 午後から行きますよ。」ということだった。


また説明があるのか。

本人じゃなくて、家族にするってなんだろうか。


娘と母さんが来て、

「ナースステーションで説明するって。

 お父さんも一緒にって言ってたから。」と言う。


何回も説明されてもしょうがないんだ。

早く手術してくれたら、と思う。


3人でまたナースステーションの奥のコーナーに行くと

担当の医者はまず言った、

「手術が早まりました。

 来週やります。」


え?と3人で驚いた。

そんな軽々しく手術の日なんて変わるもんなのか?

早くしてほしいとは思ったが、大丈夫なのか?


それに加えて

「心筋梗塞や脳梗塞のリスクが、

 ご本人の今の状況ですと通常より高くなります。」

などと手術の危険性の話ばかりされた。


思わず「手術しなくちゃいけないんですか」と

言ってしまった。

もう嫌になった。


 

病室に戻っても母さんは一言も口をきかない。

かなりショックだったようだ。


「まあしょうがないよ。

 手術しか良い方法がないというんだから。

 覚悟を決めるしかない。

 今日は朝早くから疲れただろう。

 何か美味しいものでも一緒に食べて帰りなさい。」


母さんと娘は帰って行った。


一人になって医者の話を思いだしていた。


入院が長くなるなら手術前に一度帰宅できなんだろうか。

このまま長期になると疲れてしまう。


手術のあとも、この病院に通院しろと言われたらどうしよう。

この足で通うこともできないし、

なにより混んだ病院で長い時間待ってなんかいられない。


手術のあとはすぐ良くなるんだろうか。


だいたい手術は危険ないのか。


落ち着かない精神状態がいつまで続くのか。

気が遠くなるようだ。


覚悟を決めたなどと言ったが、

そうもいかないようだ。


話を聞いていられないような母さんの横で

娘は冷静に質問をした。


「前回入院した時にレントゲン結果を見ましたが、

 その時に見た悪い部分、癒着している所を

 取ってまたつなぐと考えれば良いのでしょうか?」


医者が図を描きながら説明してくれた。

「腸がお腹の壁の部分にくっついてしまっているので、

 それをはがします。

 もしかしたら腸同士がくっついているところもあるかもしれません。

 そういう箇所があればそこもはがしていきます。

 はがす時に腸が損傷してしまう場合もあるので、

 その時は修復しなければなりません。」


「手術はどのくらい時間がかかるのですか?」

「先ほどの癒着や損傷の事情で左右されますが、

 通常は2,3時間だと思います。

 その後は順調に行けば一週間から10日で退院になります。

 手術の翌日から腸の癒着を防ぐために歩いてもらいます。」


心配に思っている事をこの際だから口に出しておこうと思い

私も医者に聞いてみた。

「他の方法はないってことですね。」

「そうですね。腸閉塞をくり返すことを防ぐには

 手術が一番良い方法だと思います。

 90歳の方も手術して回復して元通りの生活しています。

 ご心配はあるでしょうが、一緒にがんばりましょう。」


まだまだ聞きたいこと、言いたいことがあったような気がするが、

これ以上言葉が出なかった。


家族と病室へ戻った。