小説 介護される日々 -2ページ目

小説 介護される日々

介護される 介護する 寄り添う気持ちとともに。

医者の説明の日、

母さんと娘はずいぶん早く病院に来た。


母さんは心配そうな顔をしていたので、

家で待っていられなかったのだろう。


担当の医者の説明はナースステーションの中の

狭い一角だった。


「今回は腸閉塞の一歩手前ではあったので、

 鼻からの管は入れませんでした。

 しかし、数年に一度だった腸閉塞が

 1年に一度、半年に1度、二カ月に1度となり

 今回は数週間で再発という状況です。

 

 これからの生活を快適に

 年齢なりの健康体で過ごすためには手術が必要です。


 今までの経緯を見ると

 良くなれば退院したくなり、

 退院すれば家庭で食事管理が徹底できなくなり

 再発、を繰り返してしまっています。


 これ以上腸閉塞を繰り返していると

 手術もできなくなってしまいますよ。

 

 高齢という心配はあると思いますが、

 手術による危険性よりもたびたび痛くなる腸閉塞が

 治るというメリットの方が大きいと思います。」


手術は逃れられそうもない。

母さんが顔色を変えていた。


 

 

担当の医者が病室に来た。

「検査の結果、やはり腸閉塞でした。

 ひと月たたないうちの再発ですが、

 ここでちゃんと治さないと、頻繁に再発して

 食事もとれなくなります。

 手術した方が良いと思います。

 明日、ご家族にも説明しますから。」

と言われた。


明日母さんや娘も同席で一緒に説明するという。


見舞いに来た母さんと娘に報告して

「そういうことだから、明日来て反対してくれ。

 医者が手術すると言っても、

 望まないと家族からも言って欲しいんだ。」

と言っておいた。


母さんはショックのようで、

「やっぱり手術するの。」

と落ち込んでしまった。


娘はそれを気遣って

「明日、お医者さんから説明を良く聞いてから考えましょう。

 手術することのメリットやデメリットも具体的に。

 他の方法があるのかどうかも。

 何も聞かないうちから、やるもやらないも決められないし。」

と落ち着かせていた。


他の治療法があるのかな。

手術以外の。

でもそれなら私に先に説明するようなもんだが。


手術への不安は私も母さんも同じようにあるんだな。

また二人の生活、そして家族のつながりが元に戻って

前の生活を取り戻したい。


そのために手術が必要なのだろうか。


入院して四日たつが、

レントゲンを何回か撮った以外は

いつもの入院時と同じように

絶食して点滴という毎日だ。


痛みはなくなったので、

本を読んで過ごす時間が多い。


担当の医者はレントゲン結果を見てくれているのだろうか。

説明が何もないが、手術のことはどうなっているのだろうか。


今日もレントゲンを撮るというので、

その時にいた先生に聞いてみた。

「手術しなければならないんですか?

 担当の先生はなんて言ってるんですか?」


その先生の説明では

腸閉塞だったのかどうかから検査しているので、

手術はまだ検討中、ということだった。


そのあと病室に来た看護師にも

「担当の先生はレントゲン撮ったこと知っているのかな?」と

聞いてみたが、「だいじょうぶですよ~」と言われただけだった。

ムッとして「ちゃんと伝えてくれ!」と言ってしまったが、

とにかく状況が知りたい。

説明してほしいのだ。


自分のことを、自分で知って

どうするか考えたい、と思うのだが、

なぜ誰もちゃんと説明してくれないのか。


母さんにも娘にも自分で

ちゃんと私から説明しないといけないのに。

タクシーで病院へ行ったら

娘が先に病院についていた。

「なんでこんなに遅かったの?」


準備に手間取って、と母さんが説明しているが、

そんなことより早く診てもらいたい。


土曜日なので当直の先生が診察している。

順番待ちだ。


痛くて痛くて我慢できなくなってきた。

それでも診察室にはまだ入れない。


1時間半待ってようやく診てもらうことができた。


結果、「今回は手術を考えて入院してください。

ちゃんと治療しましょう。」と言われた。

めまいがして、ふらついた。


「処置室でちょっと横になりましょう。」と看護師に言われ

よろよろと横になった。


入院して手術するのか。

もう覚悟しなくてはならない。


医者は心臓の検査等もして

手術となったら状況やリスクについて

家族含めてキチンと説明しますから、と言っていたが。。


これからどうなるのか。

不安でいっぱいだ。




今日は腹痛がひどく、起きられない。

退院してから3週間しかたっていないのに、

また入院になるのだろうか。


訪問診療の医者に先に連絡しろという事だったので、

電話すると

「往診があるから夕方じゃないと行かれない」と言われる。

なんでだ?連絡しろというからしたのに。


しばらく様子見ていたが、もうどうにも我慢できない。

もう一回電話した。

「かなり腹痛がひどくなった。

 夕方まで我慢できないから、

 この前入院した病院じゃない他の病院を紹介してくれ。

 そこに自分で行くから。」


「じゃあ看護師が行きますから、ちょっとだけ待っててください。」

と言われる。


看護師さんが来てくれるなら、安心だ。

少し落ち着いて来た。

あの病院では手術されてしまう。

他の病院に連れて行ってもらおう。


看護師さんが来た。

「夕方まで我慢できません。

 入院させてもらいたい。あの病院以外に。」


「この前も説明しましたが、

 今までの病状や検査結果があるので、

 前回と同じ病院に行った方が良いんですよ。

 手術するかしないかは、また状況見て考えましょう。

 あの病院に連絡してみますね。」


結局あの病院か。

この年で手術とは。


看護師が病院に連絡して言うには

入院は難しいかもしれない、土曜日だから担当がいない、

診察することはできるがどうするか?ということだった。


とにかく診てもらいたい!と言って、病院に行くことにした。

もうしょうがない。


「救急車にしますか?」と聞くので、

タクシーで行くと答えて、母さんと支度をし始めた。


看護師さんが娘に電話している。

娘は病院へ直接行くと言っているようだ。


入院はできないかもしれないと言うが、

入院して治療してもらわないと良くならない。

入院用の支度を持って行こう。

本も必要だし、着替えや洗面道具。


看護師さんに手伝ってもらいながらようやく荷物をまとめる。

「だいじょうぶですか?痛くないですか?」と言われるが、

とにかく支度しなければ。


母さんがのろのろやっているから、

ついつい「そうじゃない!」と怒鳴ってしまう。


ついにまた入院だ。