小説 介護される日々 -3ページ目

小説 介護される日々

介護される 介護する 寄り添う気持ちとともに。

娘が介護保険でこんなことができる、あんなことができる

と説明を書いたものを持ってきた。


「ヘルパーさんに買い物に行ってもらったり

 掃除をしてもらったらどうかと思うの。

 介護保険を使ってお願いすれば

 一割負担だから、必要なことを助けてもらおうよ。」


そんなの必要ない。

まだまだそんなに弱ってないだろう。

母さんも買い物に行けるし、掃除だってできる。


母さんは、と顔を見ると

「頼めるといいわね~。」と言いだした。

「買い物も大変だし、掃除もあんまりしてないし。」


負担になっているのだろうか。

母さんが出来ないというのなら、考えるか。


新しいケアマネという人が介護保険証を持って家に来た。

娘と時間合わせて来たのか?


「この書類にサインを印鑑を押してくださいね。

 こちらにもお願いします。」

とものすごい大量の書類を説明もろくにしないで出してくる。


「だいだいあなたはどこの人なんですか?

 どういう組織の人?

 なんの書類なんですか?

 そんなに簡単に印鑑なんて押せないよ。」

と言うと、困ったように娘を見る。


「このまえ病院にも来てくれた人だよ。

 今度から担当のケアマネになった方です。」

と娘が説明するが、会ったことあるような気がしない。


「ヘルパーさんはどうしますか?

 頼むようなら早速手配して、また書類持ってきますが。」

とどんどん進めて行くので、

「ちょっと待ってくれ。

 今日はもう帰ってくれ。」と帰ってもらった。


なんだか疲れて、横になった。

また腹痛もしてきた気がする。

早く良くならないと、煩わしいことばかり増えていく。


退院して3週間。

相変わらず時々腹痛がする。


痛い時は食事を抜いて安静にしている。

そうすると治ってくるので、一日一回くらいは食べている。


訪問診療の日がちょうど来たが、

大丈夫ですね、と言っていた。


なのであまり食べていないことは言わなかった。


腹痛があるとか食事してないとか言うと

入院と言われてしまうかもしれない。

それは嫌だ。


食べているものも聞かれたので、

「インスタント焼きそば」と答えたら

それはやめた方が良いと言われた。

油分が今の身体には良くない

母さんの体調にも良くない、と言うことだった。


ただ面倒だから、

そして焼きそばが好きだから、と言ってみたが、

考えるようにとのことだった。


ビールも実は飲んでいる。

しかし以前のように美味しく感じないのはなぜだろうか。


だんだん体調が悪くなっているのだろうか。

また入院になるのだろうか。


母さんもやっと落ち着いて生活できている所だ。

なんとか自分の生活、家族の生活を守りたい。



退院して2週間、時々腹痛があるが、

今度入院したら手術だから

気をつけている。


薬も忘れないようにしているが、

ついつい飲んだつもりで薬カレンダーに残っている時がある。


看護師が来ると注意されるから

カレンダーから出して部屋にしまっておくが。。。。


訪問診療で来てくれている医者は

信頼できそうだが、まだよく知らないので

なかなかうまく話せない。


腹痛がしたら病院に行くのではなく

すぐ訪問診療の医者に連絡するように言われているが、

電話するほどでもない時が多いからな。

急にすごく痛くなったら病院に行ってしまった方が早いし。


娘から「ちゃんとかかりつけ医の判断がないと入院できないって言われたから。」

と説明されたが、

それも変な話だ。


自分の体調を自分で判断して

どうするか決めるのも自分だろう。


自分と家族が良いと思ったことが何故できなんだろうか。



娘が訪問診療の医者から手紙を預かってきた。


それによると

今度入院する時は必ず手術する、という書類は

サインしてあっても本人や家族の意思は尊重されるらしい。

説明したということを証明する書類だということだった。


それでも、今の病状からは

手術した方が良さそうという意見だと書いてあった。


そして別な病院に行っても、その状況は変わらないだろうと言う。


別な病院に行ったら、検査も最初からやるので

かなりの負担になるとも書いてある。


この年で手術なんて出来るのか?

無理だろう。

でも今後のことを考えるとその方が良いのだろうか。

覚悟しなければいけないのか。


訪問診療の医者は良くやってくれている。

病院にもわざわざ来てくれていた。

こんな手紙も書いてくれるなんて、親切だ。


あの病院の医者も、もしかしたら親切で言ってくれていたのか。

若いと思って信用できずにいたが。。。


娘が「入院していた時と言ってること違いすぎる。」と言われた。

「あの時に、あんなに悪く言うから、

 ちょっと信用しちゃったじゃないの。

 書類を書いた経緯だって、無理矢理だって言うから。。」


そうだったかな。


あの病院の医者も看護師も親切だったかもしれないなぁ。



訪問診療の医者が帰ってやっと

昼ごはんになった。


サンイッチやスープだったが、

病院食とは違い美味しかった。

ビールも一口飲んでみたが、美味しく感じなかった。

残念だ。

もう少し復調したら美味しくなるだろうか。


娘はまだ病院での担当の医者が気になるようだ。

これからどうしたら良いのか、と言っている。

手術しなくてはいけないのかしら、母さんも心配そうだ。


書類を見せてと言われたが、

どこかにいってしまって持っていない。


娘は訪問診療の看護師に電話して

その書類が見たいので送ってもらえないかと頼んでいた。


「あの書類にサインしないと退院できないと言うから

 しょうがなくサインしたんだ。

 もうあの病院へは行かない。

 手術されてしまうからな。

 別な良い病院を探しておこう。」


娘は今度は新しく担当になったケアマネという人にも電話した。

病院にも来ていたらしい。

「その時の状況を教えてもらえませんか?」と聞いている。


電話が終わってから言うには

「ケアマネの人が言うには、サインしないと退院できないというよりは

 手術する気じゃないと今度は入院できないってことみたい。

 手術以外の選択肢はないのかしら。」

あまり要領を得ないようだ。

「訪問診療の先生にも聞いてみようかしら。」とつぶやいた。


「訪問診療の医者が入院先にも来ていたんだ。

 ぐるだからダメだ。

 薬なんて飲んだって腸閉塞にはなるんだから、こんなのも気休めだ。

 違う病院を探す。」

そう言って席を立った。